02. 2014年9月25日 21:54:42
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バブルの足音が聞こえるが、早めに摘めるかどうか http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41784 過熱感なき、熱狂なき円安・株高は 新トレンドを示唆する 2014年09月25日(Thu) 武者 陵司 (1)新たなトレンドが見えてきた
1年の膠着から脱却 先週末(9月21日)ドル/円相場は109円/ドル、日本株式相場(日経平均株価)は1万6321円と、ともにリーマン・ショック後の高値を更新した。ドル/円は100〜105円、日経平均株価は1万4000〜1万6000円と1年間の膠着状態が続いたが、ともにレンジを上抜けたのであるから、新たなトレンドが始まったと見るべきであろう。 この円安・日本株高は、(1)米国景況好転、利上げ観測が見通されるようになったこと、(2)安倍政権と黒田日銀の政策遂行の意志が再確認されたこと(安倍首相のGPIF改革に対する固い決意、黒田日銀総裁による2%インフレ実現に対する自信と覚悟の表明)の2つが引き金になった。 否定される悲観論 日本株とドル/円が新たな上昇トレンドに入ったとすれば、2つの悲観論がとりあえずは否定されたことを意味する。 第1に、アベノミクス悲観論、つまり「2013年前半までの政策による力ずくの株式とドル/円押し上げはアベノミクス失敗による経済悪化で息切れした」、との悲観論が打ち破られた。黒田日銀総裁の「消費税増税の一時的マイナスにもかわらず景気回復の好循環は途切れておらず、万一懸念が生じた場合でも追加的金融政策で回復持続と2%インフレは達成可能」との主張を市場が支持したと言える。 第2に、米国経済の悲観論、つまり「米国の超金融緩和政策では持続的景気回復と雇用創造は達成できない」という長期停滞論は、さしあたっては否定された。 日本、米国ともに現在の経済と市場回復を支えているのは「量的金融緩和によって市場の期待を変化させる」という新型の中央銀行政策であり、市場はそれに対する信任を与えたと言える。特に米国では、「slack(労働と資本余剰)の完全なる活用に金融緩和政策を全面的に割り当てる、バブルの形成とその崩壊による金融システム不安対策は、金融政策ではなくマクロプルーデンス政策で対処する」として、金融緩和の射程を広げている。それが市場参加者のリスクテイクを一段と促進している、と言える。 図表1:円相場と日本株式推移 円キャリートレードの復活も
この新トレンドを作り出した相場の担い手は、2013年とは全く変わった。2013年は海外投資家による円売り日本株買いの、キャリートレードが最大の推進力であったが、最近の推進力はもっぱら国内の長期投資家主体となっている(図表2参照)。 図表2:海外投資家の日本株式投資推移 国内長期投資家の参戦により新しいトレンドが現われたとなれば、海外投機家が本格参入し、2013年以上の円売り日本株買いのキャリートレードが積み上がる可能性が出てくる。一部産業界やエコノミストによる急ピッチの円高に対する悲鳴が高まれば高まるほど、円売り投機も高まるという可能性を考える局面に来たのではないか。かつて悲鳴を無視して円高投機が進行した時と同様に。
その場合、円安と日本株式のオーバーシュートの可能性も考えられる。市場は黒田日銀がどの程度までの円安に耐えられるかを試すことになるかもしれない。そうなると、もはや景気対策の追加緩和どころではなくなり、黒田日銀の手を縛ると見るべきだろうか。いやそうではなく、一段の円安・株高投機が追加緩和の必要性を代替することになるのではないか。予想されるグローバル投機家の円売り日本株買いのキャリートレードは日銀に対抗するものではなく、日銀政策に沿うものになると考えられる。そうしたリスクテイクスピリットの鼓舞こそ日銀のQQE(質的量的金融緩和)の狙いなのであるから。 (2)円売り投機の条件整う、円安は止まらない 円安オーバーシュートの可能性 為替決定の三大条件、(1)紙幣印刷速度、(2)貿易収支(=為替の実需給)、(3)実質金利(=為替の投機需給)、がすべて史上初めて円安方向にベクトルが揃っている。加えて30年間の執拗な円高の原因であった地政学(覇権国米国の国益)が円安容認にシフトした。購買力平価(PPP)ベースで見れば103円/ドル前後が妥当な為替水準であるが、為替にオーバーシュートはつきものである。図表4に見るように過去の主要国の為替変動幅は、PPP±30%がこれまでのレンジであった(1980年から2000年までの異常円高期を除いて)。となれば1ドル120円台後半までの可能性も出てくる。 図表3:購買力平価から乖離した長期円高
図表4:主要国通貨の購買力平価からの乖離率 以下に為替決定の三大条件が決定的に変化していることを見ていく。 第1の円安の条件は、今や日銀は世界随一のハト派でありベースマネーの伸びは世界最大であるということである。言うまでもなく、通貨の強弱を決める最も基本的条件は、マネー供給のバランスである。日銀が世界一紙幣を大量に印刷しているということは、最大の円安要因である(図表5)。 図表5:各国中銀の総資産増加推移 第2に、日本は昨年来著しいドルの実需要を生み出す空前の貿易赤字(2014年年率15兆円ペース)に陥っている。それは輸入業者が年間15兆円もの輸入代金のためのドル買いを迫られていることを意味する。かつての日本は大幅な貿易黒字が続き、輸出業者のドル売りが常態化し、ドル円の実需給は常に大幅なドル売り円買い圧力にさらされていた。それが大きく逆転したのである(図表6)。
図表6:日本の貿易収支推移 第3に、日本の実質長期金利は史上初めてマイナスかつ世界最低になっていることが注目される(図表7)。これまで日本はデフレが続いていたために、名目長期金利が世界最低であるにもかかわらず、実質金利は他国以上に高かった。実質金利が高いということは借金の負担が大きく借金返済のモチベーションが高まることであり、結果、日本では信用収縮傾向が強かった。しかし、今や日本は世界最低かつマイナスの実質金利の国となり、日本が世界で一番借金をしやすい国になったのである。言うまでもなく借金をするということは、為替取引では円ショート(円を売ること)を意味する。円は世界で一番買われやすい通貨から、売られやすい通貨に転換したのである。
図表7:各国実質長期金利推移
図表8:長期ドル循環 拡大画像表示 円=“safe haven”ステイタスの終焉 以上3つの決定的と言える円安要因は、当分変わりようがない。つまり円の価値を決定する基軸が180度転換したのである。 これまで円は世界最大のセーフヘイブン(safe haven)・スイテタスとしてリスク回避時に、避難先として選好されてきた。リスクオフの局面では、世界唯一のデフレにより実質価値が増価する円の魅力度が当然に高まってきたのである。しかし、今や円は実質金利が世界最低なのであるから、最も価値の減価が激しい通貨、つまり最も持ちたくない通貨となったのである。そうした世界の投資家に共有されるパーセプションの地滑り的変化が今、起きつつあると考えられる。 日本の投資家のパーセプションも決定的に変化しつつある。これまで「Cash is King」としてリスク回避に徹していた家計・年金・保険など日本の投資家は、リスク資産として外貨建て資産を増加させる必要が高まる。現金・預金・債券に過度に比重を置いていた日本の投資主体は、外貨建て資産を大きく増加させるだろう。GPIFの運用改革はその嚆矢となるだろう。 (3) 円安の利点は甚大である 円安のマイナスは全て一時的なもの 黒田日銀総裁の「円安が経済にとってマイナスであることはない」という表明とは裏腹に、急ピッチの円安に対して懸念が噴出している。中小企業を代表する日本商工会議所の三村明夫会頭は「日本全体として円安のデメリットよりもメリットを享受してきたが、中小企業や家計にはデメリットが大きい」と発言。「一段の円安には、原発再稼働を進めエネルギーコストを抑制するのが不可欠と強調した」(ロイター)。確かに、これまでのところ円安が輸出数量の増加に結び付いていない。また円安がもたらすエネルギーなどの輸入品物価高が実質賃金を引き下げる。円安はデメリットとの主張は筋が通っているように見える。 輸出数量が伸びないのは日本の輸出が非価格競争品になっている表れ しかし、それらのマイナスは一時的なものであり、あらゆる点で円安は望ましい。円安でも輸出数量が伸びないのは、現在の日本の輸出品の大半が価格競争品ではないので、値下げ競争を挑んでいない、つまり「円安→ドル建て輸出価格引き下げ→輸出数量増」というサイクルが起こらないから、と考えられる。輸出数量が増加しないこと自体、日本の輸出構造が非価格競争品(技術・品質)にシフトしていることの証明なのである。 言うまでもなく輸出数量が伸びなくても、円安メリットは十分に存在する。海外現地法人の円ベースでの所得が(日本からの輸入コストの低下と為替換算益により)増加し、それは所得収支の改善を通して日本の経常収支を支える。今後円安の定着により国内生産のメリットが確認されれば、製造業の国内生産回帰、輸入業者の国内調達による輸入代替によって、国内生産は活発化しよう。国内設備投資、国内生産の動きが鈍いのは、タイムラグと円安趨勢にまだ疑心暗鬼であるためと考えられる。 円安物価高で一時的に実質賃金が低下するのは確かである。しかしそれは日本に賃上げを定着させるため不可避のプロセスに過ぎない。円安は日本の賃金を国際水準から大きく引き下げるので事後に賃金上昇圧力を生む。それは円高の結果日本に賃下げ圧力が高まったのと同じ理由である。企業収益の持続的向上が実現できているのであるから、いずれ賃上げ高まりが実質所得を増加させるのは間違いあるまい。 図表9:主要国雇用者報酬の推移 先週号(9月16日号)の「週刊エコノミスト」の論考(「融緩和も財政政策も弊害に、輸出・設備投資・比人消費・公共投資『アベノミクス』の4つの誤算」)で反リフレ派の代表的論客である河野龍太郎氏は貴重な分析を披瀝している。曰く「一国経済にとって円安が良いのか円高が良いのかは、マクロ経済の状況に依存する。もし総需要が不足で大きなスラック(未稼働資産)が発生しているのなら、円安が望ましい。しかし(現在の日本はスラックがなくなっているため)円安を助長する超金融緩和のデメリットが高まっている」
この分析の前半は全く正しい。しかし後半は著しい事実誤認をしていると思われる。日本は過去15年間、世界唯一賃金下落(名目賃金も生産性を加味した単位労働コストで見ても)を余儀なくされてきた。賃金が労働需給を測るもっとも適切な指標であるとすれば、日本に労働の余剰がないなどという結論にはならないはずである(建設業などの雇用ひっ迫は一部に限られ、事務職は依然大幅な供給過剰である)。 また日本の金利は名目でも実質でも世界最低である。金利は資本需給を示す最高の指標であるから、日本は世界最大の資本余剰が存在している国である。つまり市場価格は日本経済におけるスラック(資本余剰、労働余剰)が著しく大きいことを示している。恣意性の余地が大きい潜在供給力推計に基づく余剰の推定は、実態から離れているのではないか。市場価格は日本に著しい余剰があることを示しており、河野氏の主張に従って円安が望ましいと言うことになる。 図表10:主要国単位労働コストの推移 円安→企業増益が引き起す好循環
円安継続が必至であるとすれば、デフレ脱却というアベノミクスの目的は達成される。円安はインフレを継続させ企業収益を押し上げる決定的要因だからである。経済と株式の展望を考える時、企業業績の持続性が決定的に大切である。それは企業業績が、雇用、賃金(ひいては消費)、企業投資、株価のすべての変化の起点だからである。そして、現在の日本では円安の定着が企業増益持続のカギとなっている。そのための必須の条件が日銀による質的量的金融緩和の維持にあることは言うまでもなく、それに対しても不安は全くないのである。 2015年3月期の企業業績は1割増益と史上最高と見られているが、これは円安加速によりさらなる上方修正は必至である。 くれぐれも円安批判の高まりにより、デフレ脱却、金融緩和の矛先が鈍らないように望みたい。 図表11:日本企業の業績推移
図表12: 日本企業の損益分岐点売上高推移 ◎本記事は、武者リサーチのレポート「ストラテジーブレティン」より「第125号(2014年9月22日)」を転載したものです。 http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G903/strategy/index.htm ここまでの相場展開はすべて僕の想定通り、既にレポートで述べている。だから改めて書くこともないのである。同業者のなかには、同じことを延々と繰り返しているばかりのひともいる。「同じ人間が同じ考えで書いているのだから、内容が重ならないほうが無理だ」という意見もあるが、僕の場合、前に述べたことを再び書くのは趣味じゃないのである。 これまで書いてきたレポートをいま一度ご確認願いたい。 1カ月前の8月25日付けレポート「この先の相場は米国次第」では、こう述べている。 <では、その米国はどうなるか。まず米国株は S&P500 が 2000 ポイントの大台目前。ここまで来たら、大台に乗せなければ市場は気が済まないだろう。そして S&P500 が 2000 ポイントの大台を達成したら、景色がまた違ってくるだろう。米国の利上げ時期が取沙汰されるなかで、株価が大台を塗り替える。それは、相当、相場が強い証と捉えられ、リスク選好ムードが強まるだろう。そのムードのなか、日本株も堅調持続というのがメインシナリオだ。> 9月1日付け「日本株 9月相場の展望」と題するレポートでは、日経平均は1万6000円を目指す展開となるだろう、8月末の値から500円程度の上昇となる、と述べている。 「この先の相場は米国次第」のレポートでは、為替相場の円安にも言及している。これまで、例年見られてきた傾向がすべて逆のパターンになっていることから、今年は「夏の円高」ではなく「円安の夏」であろうと予想した。それに加えてこう述べている。 <もちろん、アノマリーの逆効きだけを理由に円安を予想したわけではない。雇用統計をはじめとする米国の経済指標は米国経済の順調な改善を示しており、FRB の政策が金融緩和の出口に向かうことは明白であるからだ>。 実際に、16-17日にかけて開催されたFOMCではFRBが考える出口戦略の道筋が示された。イエレン議長は、「相当な期間、ゼロ金利を保つ」、「利上げは経済次第」といったこれまでの文言を繰り返し、市場に先入観やいたずらな動揺を与えることなく、FOMCメンバーの金利予測を淡々と示すことで、金融正常化のメッセージを上手に市場に伝えた。それを受けて米国株式市場ではNYダウ、S&P500ともに史上最高値を更新した。 これがすべて、と言ってもいい。米国経済が好調。米国の金融政策は正常化に向かう。これが世界の金融市場を読み解く、一番、基礎となるテーマである。「アンカー」である。ここから離れない限り、大きく間違うことはないだろう。 円安と輸出株 この間、大きく状況が変わったのは円安のスピードが加速したことと、それを受けた市場の反応であろう。それまでは円安にもかかわらず電機・自動車などの輸出関連株の動きは鈍かった。上記「この先の相場は米国次第」のレポート、<低調な輸出株>という部分の記述は以下の通り。 <ドル円が 102 円台半ばの膠着を放れはじめたのは先週のことだが、先週 1 週間の業種別パフォーマンスを見ると、値上がり率上位には証券、不動産、倉庫、食品、情報通信など円安メリットとは関係ない業種が散見される。一方、自動車や電機の上昇率は0.8%、精密が1%弱でともに TOPIXの1.2%を下回る。代表的な輸出株でパフォーマンスが良かったのは 2.5%上がった機械くらいである。その背景は何か。それは僕が先週のレポート、「日本のマクロ経済と企業業績の今」で、日本の代表的な輸出産業だった電機・自動車は海外生産体制が進んだ結果、日本からの輸出が激減、「外需セクター」ではあってももはや「輸出セクター」ではない、と指摘したからである。そして旺盛な海外の設備投資需要を受けて輸出が伸びているのは機械くらいである、と述べた。 (中略)これはもしかしたら、株式市場はこれ以上の円安を好感しない可能性を示唆しているのかもしれない。為替が経済や企業業績に与える効果というのはプラス・マイナス両面ある。円高にはデメリットもあるがメリットもある。それとまったく同じで円安にはメリットもあるがデメリットもあるのだ。そして何よりも、前述の通り、メーカーの多くは生産拠点の海外移転を進めているため、円安が進めば進むほど海外での価格競争力が高くなる状況にはもはやない。円安はデメリットこそあれ、もうメリットはそれほどないのかもしれない。> 実際、経済界からもこれ以上の円安を望まないといった声がちらほら聞かれ始めた。実質実効為替レートの観点からは、円相場は「未曽有の円安水準」といったレポートも発行された。 ところが、さすがにこれだけの円安になると市場も「当然の反応」を示す。22日終値までの過去1カ月の業種別パフォーマンスをみると、上位には輸送用機器、電機、機械、精密といった輸出関連株が並び、下位には不動産、陸運など内需関連株が並んでいる。(グラフ1) 非常にわかりやすい教科書通りの展開だ。トヨタが長く抜けなかった6000円台前半の「壁」を超えて6500円台をつけたことや円安効果の大きいキヤノンが連日の高値追いとなったことは象徴的である。 メディアもさっそく円安歓迎に論調を変えた。23日付日経新聞コラム「スクランブル」は、「円安、にわかに楽観論」の見出しを掲げ、<輸出が思うように伸びず、円安には従来ほどの株価押し上げ効果はなくなったとの指摘がある。だが、先週後半一気に進んだ円安・株高からは、投資家の間でにわかに高まる企業業績拡大期待も透けて見える。株式市場を見る限り、「やっぱり円安は効く」――そんな声が強まってきた>と述べている。
円安⇒海外収益の円換算上振れ⇒外需株高という図式は成り立つがそれだけではないだろう。業績押し上げ要因としての円安を好感しているというよりも、ビジネスを展開している場所である米国経済の好調さを株式市場は好感しているのではないか。「円安歓迎」というよりは米国の金融正常化⇒ドル高、の背景にある米景気の復調を市場は評価していると考える。 例えば自動車で言えば北米の比重が大きい富士重の株価上昇が完成車メーカーのなかでも群を抜いている。塩ビ事業の中核を担う米子会社シンテック社の業績好調を受けて信越化学の株価は年初来高値をつけた。味の素は、米冷凍食品メーカー、ウィンザー・クオリティ・ホールディングスの買収を発表した。前回のレポートで、味の素は新興市場開拓のパイオニア、というような紹介をしたが、米社の販路を活用していよいよ巨大な米冷食市場攻略に打って出る。株価は23年ぶりの高値をつけた。 米国企業の買収では一昨年、米空調機器大手グッドマン・グローバルを買収したダイキン工業の例がある。ダイキンは中国や欧州では基盤を築いてきたが、米国は手薄だった。米国で高いシェアを持つグッドマンを傘下に持つことで、ダイキンは、名実ともに空調世界最大手の地位を固めた。欧州の不透明感などもあって足元の株価は冴えないが、4-6月期の業績は過去最高、株価もほぼ最高値圏にある。 [ 折りたたむ ] グローバル・プレーヤー 今回は、あえて米国経済の好調を取り込む企業にフォーカスしたが、グローバルに稼げるところで稼ぐ企業が市場で評価されるというメッセージは、前回のレポートと変わらない。グラフ2は所在地別売上高を開示している企業のうち、継続してデータが取得できる約200社の地域別売上高の構成比の推移を示したものである。いまや売上高の半分は海外である。 売上高の半分は海外 - この事実を「実感」できるひとは少ない。なぜなら、われわれが日々暮らしているのは、極めて「ローカル」な世界だからである。ヒトは地元で生活するが、企業は楽々と国境を飛び越える。グローバルで活躍する企業の実態は、日本国内で生活するわれわれには見えにくいということだ。
だから、消費税増税の影響もあって国内消費が落ち込み、4-6月のGDPが大幅減速、夏場の天候不順もあって景気の停滞感がぬぐえない日本にいると、企業業績も不振というイメージをもってしまう。しかし、上場企業は - 少なくともそのなかのグローバル・プレーヤーは -日本で暮らしているわれわれとは、まったく違うフィールドで活動している。いわば欧州のクラブでプレーする日本人サッカー選手や日本人メジャー・リーガーの感覚である。日本の閉塞感が強いからと言って、そうしたグローバルで稼ぐ企業の業績まで冴えないと思ってしまうのは認識が正しくない。国内の停滞感と切り離してグローバル企業を評価することが大切である。 前回のレポートで述べた通り、第2四半期の北米の営業利益は4割増益。アジアは13%増益で4000億円を超え、日本で稼ぐ利益の半分に当たる(グラフ3)。 1カ月後の4-9月期決算発表では、グローバル企業の好業績が確認できることだろう。
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