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「成功は失敗のもと」の罠、どう回避?会長反対でも発売、あのヒット商品誕生秘話より考察
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140925-00010004-bjournal-bus_all
Business Journal 9月25日(木)6時0分配信
本稿の記事タイトルを見て、「あれ? 『失敗は成功のもと』の間違いじゃないの?」と思われたかもしれないが、そうではない。成功することは、失敗の要因になり得るのだ。
成功はさまざまな要因が積み重なってもたらされるものだ。それは経験、スキル、顧客や市場の状況、運などといったものだ。加えて、成功は多くの失敗から学んだ結果でもあり、失敗の積み重ねから「成功の方程式」が編み出される。その意味では「失敗は成功のもと」だ。
しかし、顧客や市場はどんどん変わる一方、人は成功体験をなかなか忘れることができない。ここに問題がある。つまり、「成功の方程式」の賞味期限が切れてしまうのだ。
参考になる例がある。6月20日付日本経済新聞『私の履歴書』で、アサヒグループホールディングス相談役の福地茂雄氏が、社長から会長になった後のことを書いている。
「会長としての判断には間違いも多い。アサヒ飲料が缶コーヒーの『ワンダ』で『朝に飲むコーヒー』というコンセプトの商品を発売するという。私は『人間の味覚は朝鋭い。まずいコーヒーと言われたらどうするのか』と反対した。だがワンダはこの戦略が当たり、人気商品に成長した。
01年に子会社化したニッカウヰスキーでは、創業者の名前である『竹鶴』をウイスキーの商品名につけるという。これも『創業者の名前をつけて売れるものだろうか。途中でやめるわけにはいかないし』と反対。これも読みが外れ、竹鶴ブランドは定着した。いずれも本気で反対したが、現場の強い意欲もあり、最後は押し切られた」
あの大ヒット商品「ワンダ」や「竹鶴」が生まれる舞台裏で、実はトップの会長が反対していたという話は、とても興味深い。ここで福地氏が反対している理由を改めてよく読むと、次のとおりいずれもリスク回避判断である。
「まずいコーヒーと言われたらどうする?」
「創業者の名前をつけて途中でやめるわけにはいかない」
ビジネスパーソンとして頂点を極めた福地氏は、まさに誰よりも多くの成功体験の持ち主だ。自身の成功体験があったからこそ、ブランドを守る大切さも熟知し、このような判断になったのだろう。しかし、アサヒの現場はトップの判断を押し切り、「ワンダ」「竹鶴」を世に送り出し、大ヒット商品に育て上げた。
このエピソードが示唆することは大きい。常識や成功体験は、人を成長させ、成熟させてくれる。半面、常識や成功体験に過度に囚われ、「できること」「できないこと」を基準に判断するようになると、ブレイクスルーができなくなるのだ。
●「やるべきこと」「やりたいこと」を考える
では、どうすべきか? アサヒの事例がまさに参考になる。現場が考えたように「やるべきこと」「やりたいこと」を考えるのだ。
両者の違いを図で表現してみると、冒頭の図のようになる。
「できること」と「できないこと」。言い換えれば自分の常識で考えるのは、過去を基準に判断している。確かに過去の成功経験は大切だ。人を成長させてもくれる。しかし半面、成功体験だけを基準に判断するようになると、リスクを過度に回避してしまう弊害もある。過ぎ去った経験をもとに、必要以上に未来を恐れてしまう。こうなると新しい未来を切り開くことは難しい。
だから「成功は失敗のもと」なのである。では、そうならないためにはどうすればよいのか?
未来がどうなるかは誰一人わからない。市場も顧客も変わる。さらに人は、いくつになっても成長し続けるものだ。むしろ、常に「やるべきこと」「やりたいこと」を考える。そして実行しながら学ぶ。変化が激しい現代は、成功の方程式も変わる。だから場合によっては過去の自分を否定する。「過去の自分の否定力」は、実は来るべき未来を基準に考える、未来志向の考え方なのだ。
「成功は失敗のもと」の罠から抜け出すヒントは、意外と単純なことに、過去の成功体験を一旦リセットした上で、「やるべきこと」「やりたいこと」を考えることにあるのだ。
永井孝尚/オフィス永井代表
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