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直販保険業界、なぜ岐路に?市場伸び悩みと競争激化で赤字慢性化、淘汰進む可能性も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140924-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 9月24日(水)6時0分配信
インターネットなどで自動車保険を販売する直販型損害保険の業界が、曲がり角を迎えようとしている。大手損保が専門会社を設立し、格安な保険料を前面に押し出して顧客を取り込もうと競争が激化。市場が想定よりも伸び悩む中、利益よりも規模を重視した戦略が行き詰まりをみせている。次の一手を誤れば、撤退を迫られる企業も出てきそうだ。
「差別化が難しい。各社のテレビCMも消費者は区別がつかないのでは」。直販損保大手の幹部はこう自嘲気味に語る。若手女性タレントが「満足度ナンバーワン」などと語るお馴染みの形式のテレビCMが連日流されているが、会社ごとの特色は見いだしにくい。それは同時に、各社が保険料の安さで契約の拡大につなげてきたことの裏返しでもある。
直販損保は電話やインターネット、書類の郵送などで契約を完了させることができるが、主流はネット経由だ。代理店に手数料を支払う必要がないため、既存損保に比べて保険料を引き下げられる仕組みだ。金融の自由化以降、低価格を武器に若年層を取り込み、90年代末から右肩上がりの成長を続けてきた。
●市場伸び悩みという誤算
だが、ここ最近の業界全体の失速は否めない。保険料収入で前年度比二桁台増の成長を続けてきた市場だが、現在は一桁台に落ち込む。直販損保最大手のソニー損保ですら、伸び率が代理店を活用した既存大手損保と差がなくなってきている。保険料収入が伸びない中、競争激化による広告費の大量投入や保険金支払いの膨らみにより、赤字が続く会社がほとんどだ。
保険業界に詳しいアナリストは「最大の誤算は、直販市場の拡大が想定外にゆるやかな点」と指摘する。損害保険の過半を占める自動車保険の場合、00年度に自動車保険全体に占める直販損保の比率は1%だった。参入した各社は「10年もたたないうちに、10%に達して、将来的には30%まで伸びるのでは」(損保関係者)と声をそろえていた。ただ12年度時点で、わずか6.6%にとどまる。「日本には、ネット保険は根づかないのでは」(同)と先行きを不安視する声すら出てきている。
実際、ソニー損保の14年3月期の保険料収入は前年同期比6.1%増の886億円。一方、経常利益は直近の5年は20〜30億円で推移、損害率は改善しているが、収益性の底上げにはつながっていない。
シェアを拡大するために各社が価格競争に走っていた直販市場だが、市場自体が伸び悩みを見せるため、虎の子の顧客を囲い込む動きも出てきている。首位のソニー損保を追撃する三井ダイレクトは9月3日、3年以上の契約者を対象に優待サービスを開始。旅行代理店が取り扱うパッケージツアーを割引価格で提供するなど、複数の顧客サービスを用意する。ほかにもホームページでのゲーム形式のキャンペーンなど、工夫を凝らす。
損保関係者は「自動車保険は1年更新。価格をエサに消費者を釣っても、1年後にさらに安い保険料の企業へ流出する事態は防げない。一定のシェアを持つ上位3社クラスは、価格を一定の水準に維持しながら長期契約の増加につなげていく方向を模索し始めたのだろう」と指摘する。
●慢性的な赤字体質
ただ、こうした動きは例外だ。契約獲得に苦戦する会社や後発組は、依然としてビジネスモデルを修正せずに、収益性を無視したシェアの拡大に躍起だ。東京海上ホールディングスの直販損保であるイーデザイン損保や、損保ジャパン日本興亜の関連会社セゾン自動車火災保険、そんぽ24など大手傘下損保も例外ではない。業界に詳しい専門誌記者は「慢性的な赤字体質から抜け出せないにもかかわらず、契約の拡大を旗印に突き進んでいる。累損が膨らむだけでは」と語る。
競合他社幹部も「大手傘下のため、体力切れになることはないが、いまの事業の延長線上には何も見いだせない。大手のメンツがあるために、やめたくてもやめられない状況に追い込まれかねない」と厳しい。
自動車保険市場は少子高齢化で今後の伸びは期待できない。そうした中、低価格を武器に直販市場を取り込もうとした各社だが、消費者の直販シフトは想定外に進まず、利益を確保できない状況が続く。収益性の悪化から値上げに動く企業もあるほか、大手のバックがない外資の中には、市場撤退が噂される会社も出てきた。直販損保市場に、地殻変動の波が近づいている。
黒羽米雄/金融ジャーナリスト
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