04. 2014年9月24日 07:12:03
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老後のお金クライシス! 深田晶恵 【第1回】 2014年9月24日 深田晶恵 [ファイナンシャルプランナー] 40代、50代に「老後貧乏予備軍」が増えている! あなたは年収200万円で老後を生きていけるか? 退職金が住宅ローンと教育ローンの 返済で無くなると、老後資金はほぼゼロに! 私はファイナンシャルプランナー(FP)として、18年以上にわたって個人の家計を見続けている。個別相談やセミナー後の質問を受けるなかで、この数年は「これからは老後貧乏になる人が増えるのだろう」と強く感じるようになった。なぜなら、老後資金の準備ができていない人の割合が年々増えてきているからだ。 仮に、60歳時に受け取れる退職金が2000万円だとしよう。住宅ローンは定年前に完済ずみで、貯蓄が別途1000万円あるなら、老後資金は3000万円。60代前半を働いて収入を得るなら、老後資金としてはまずまずの金額だ。私がFPになったばかりの頃の1990年後半は、こうしたケースが多かった。 ところが最近は、60歳時点で住宅ローンが1500万円残っている、子どもの大学進学時に借りた教育ローンは200万円、貯蓄は100万円くらいしかないといったケースが珍しくない。退職金で2つのローンを完済すると、老後資金はほとんど残らない計算になる。老後貧乏予備軍の典型例である。 老後貧乏予備軍が増加傾向にあるのは、次のような要因がある。 あなたはいくつ当てはまるだろうか。 1)住宅ローンを借りた当初の金額が多額だったため、60歳時のローン残高が退職金の半分以上になる予定(=老後資金が減る) 2)子どもを中学から大学まで私立に通わせている(=多額の教育費支出) 3)50代後半以降に教育費のピークがあり、子どもが社会人になってから親が定年を迎えるまで3年以下(=最後の貯蓄期間が少ない) 4)子どもの大学進学時に教育ローンや奨学金を借りている(=さらなる借金の増加) 5)そもそも計画的に貯蓄できていない(=消費世代のため、お金を使うのが美徳と思っている人が多い) 3つ、4つ当てはまった方は、「自分のこと?」とドキッとしたのではないだろうか。2つ以上当てはまるなら、老後貧乏予備軍である可能性が高い。 定年後も働き続ければ何とかなるだろうと思っても、再雇用後の収入は良くても年300万円台なので、暮らしていくことができたとしても老後資金は貯められない。 年金収入の目安は年200万〜240万円程度 老後のために貯蓄は必要不可欠 さらに65歳から年金生活がスタートすると、収入は一段と下がる。会社員であった人の年金収入は、年200万〜240万円程度。公的年金だけでは老後の生活を送るのは難しいので、老後のための貯蓄は必要不可欠なのである。ちなみに今のお年寄りは老後資金をしっかり貯めている人のほうが多いので、取り崩しながら生活をしても、蓄えにはまだ余裕がある。貯蓄が少ないと、老後貧乏になってしまうのだ。 と、連載初回から不安を増大させるようなことばかり書いてしまい、みなさんには申し訳ないと思っている。私のFPとしてのポリシーは「必要以上に不安を煽らず、すぐに実行できるアドバイスをすること」なのであるが、今回はあえて怖い現実を最初にお伝えすることにした。 なぜなら、お金を貯められない人が貯められるようになるには、「危機感」が必要だから。長年FPをやってきて、貯蓄の多い少ないは、収入の多寡ではなく「危機感を持っているかどうか」だと実感している。 特に危機感に乏しいのは年収が高い人。年収1000万円以上の人は、我慢せずにお金を使うことができるため、危機感が乏しく、収入に対し貯蓄額は驚くほど少ないことが多々ある。 逆に年収600万〜700万円の専業主婦世帯のほうがきちんと貯蓄している傾向にある。600万〜700万円の年収で家族4人が暮らしていくには、計画的にお金を使わないと足りなくなってしまうことを知っているので、危機感を持ち、計画的な貯蓄をしている。 危機感は、貯蓄の大きな動機付けになりえるので、「少し先の怖い現実」から目をそらさないほうがいいと覚えておこう。 「年金暮らし」の実態はどんな感じ? 今の年金生活者の収支は年約70万円の赤字! 危機感に乏しい予備軍も老後不安がないわけではない。 今年8月発表の内閣府の世論調査では、66.7%の人が「日常生活に悩みや不安がある」と答え、悩みや不安のトップに「老後の生活設計」(57.9%)が挙がっている。ざっくり言うと100人のうち40人近くが老後に不安を感じているということだ。私の個人的感覚だと、40〜50代は4割よりも多くの人が不安な気持ちでいると思う。 ならば不安を解消すべく老後資金作りをはじめているかというと、ほとんどの人は手つかずの状態だ。老後の生活を具体的にイメージすることができないから、何からはじめるといいのかわからないのだろう。問題点がクリアになっていないと対策は立てられないし、目標設定をしないとアクションプランもみつからない。 では、手はじめに「年金暮らし」がどういうものなのかを見てみよう。図は、今の高齢者の家計収支データだ。夫婦ふたりの年金収入258万円に対し、年間支出が327万円で、収支はマイナス69万円。つまり、年間約70万円の赤字ということだ。マイナス分は、現役時代に貯めてきた老後資金を取り崩している。 全国平均のデータなので、中にはもっと年金額が多い人もいるし、支出を年金収入の範囲内に抑えて生活している人もいる。だが、FP相談を受けてきた経験から見ると、この調査データはサラリーマンの定年後の収支の実態にかなり近いといえる。
65歳からの貯蓄取り崩し額(赤字補填分)が年約70万円なので、90歳までの25年間でざっくりと1750万円。このほかに、住まいの修繕費用、クルマの買い換え費用、病気になったときの備えなどといった数年に1回の「特別支出」を1000万円見積もると、65歳時点で2750万円の老後資金が必要となる。 ここで男性は「自分は90歳まで生きていない」と思ったかもしれないが、配偶者はどうだろうか。女性は長生きだし、夫の死亡後は年金収入が激減するので、赤字補填額は90歳までの25年分を見ておきたい。 老後の生活設計を立てるときは、常に配偶者のことを忘れないようにするのが重要ポイントである。 今40〜50代のあなたなら、 老後資金の目安は3500万円? さて、それでは2750万円の老後資金で果たして足りるのか。 この調査は、「現在」65歳以上の無職男性と60歳以上の無職女性の世帯が対象。今、40代、50代の人が老後を迎えたとき、今のお年寄りのような支出ですむだろうか。みなさんの多くはバブルを謳歌した消費世代なので、おそらく無理。支出はもう少し多く見積もったほうがいい。 さらに支出には、「非消費支出」という項目で、所得税・住民税、社会保険料(国民健康保険料、介護保険料)が含まれている。少子高齢化の時代に今後税金と社会保険料の負担が軽くなるとは考えにくいので、やはり支出は多めに見るのが安心だ。 将来の公的年金の減額による収入減の可能性を踏まえ、年間収支のマイナスを年100万円と見積もると25年分で2500万円、特別支出を1000万円見るなら、合計3500万円の老後資金が必要となる。 ここまで読んで、みなさんは「3500万円」の数字をどう受け止めただろうか。 「まったく問題ない」ならいいが、クラッときた人のほうが多いはず。年金生活になってから、使えるお金が激減し、慣れない節約を強いられ、つらい思いをしなくてすむようになるには、早いうちからの「家計戦略」が必要だ。 実は戦略的家計運営は、男性のほうが向いている。会社の仕事と同じように現状把握、問題点の洗い出し、解決策を見つける、実行&振り返りといったプロセスで家計運営をしていくと、驚くほどお金が貯まる家計に変身する。 私のもとへ来る相談者に家計の問題点を「仕事風」に伝えると、それまで家計を奥さん任せで傍観者だったご主人がどんどん前のめりになっていく。家計簿を「決算書」に置き換えたり、住宅ローンの重みを「バランスシート」を使って解説したりと、ちょっと工夫をするだけで当事者意識を持つようになる。なかには「だんだん面白くなってきたぞ」をつぶやきながら、メモを取り始めた人もいた。 老後の生活のために「今できること」はたくさんある。次回以降、ご紹介していくので、目をそらさずに読んでください。 ―― 今週のミッション!―― ◆「お金は天下の回りもの」、「自分たちがお金を使って日本経済を支えている」といったバブル世代特有の口癖は、今後禁句とする! ◆「何とかなるさ」という考え方は捨て、「何とかするさ」を思えるマネー知識を身につける! http://diamond.jp/articles/print/59380 |