05. 2014年9月24日 07:42:23
: jXbiWWJBCA
中国経済、「バランスシート不況」に陥る恐れ 2014年09月24日(Wed) Financial Times (2014年9月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 中国が中央銀行による資金供給という新たな景気てこ入れ策を打ち出した。しかし最近は、金融政策による景気への刺激が効かなくなりつつある兆しも多い。すでに多額の債務を抱えた企業は、たとえ低金利であっても新たに資金を借りようとはしないからだ。 今年4月の「ミニ景気刺激策」は、通貨供給と信用の増大に焦点を当てたものだった。 実体経済に流れないマネー 中国で今年4度目の追加利上げ、インフレ抑制へ 中国は今春、中国人民銀行(中央銀行)による資金供給という形で「ミニ景気刺激策」を打ち出した〔AFPBB News〕 中央銀行は先週、5大銀行への貸し付けという形で金融システムに810億ドルの資金を注入した。 またその前には、小規模な銀行が維持しなければならない預金準備率の引き下げや、銀行が貸し出しを伸ばせるようにする預貸率規制の緩和といった措置も講じていた。 当局は、注入した資金を大手銀行が実体経済に流すことを望んでいる。しかし銀行幹部やアナリストらによれば、信用創造の勢いがここ数カ月間弱いのは、銀行の貸し出しに制約が課せられているからというよりも借り手の需要がないからだという。 そのため、中国はいわゆる「バランスシート不況」に陥るかもしれないとの懸念が浮上している。莫大な債務を抱えた企業がその返済に力を注ぎ、金利水準が低下しても資金を借りようとしなくなるために金融政策が効果を失ってしまう不況のことだ。 また、経済成長が減速する中でモノに対する需要が減退していることも、企業の投資意欲をさらに削いでいる。 バブル崩壊後の苦境にあえいだ日本経済との類似点 「多額の債務を抱えた企業の経営者なら誰でも、最終需要の見通しには非常に敏感になる」。野村総合研究所のリチャード・クー氏はこう語る。バブル崩壊後の苦境にあえぐ1990年代の日本経済の分析で、バランスシート不況という概念を初めて提唱したエコノミストだ。 クー氏は同じ分析を金融危機後の米国、欧州連合(EU)、英国についても行っている。これらの国や地域では、中央銀行がベースマネーを大幅に増やしたものの、市中銀行による実体経済への貸し出しはあまり増えていない。 「もし誰もが上機嫌で、お金をどんどん使うのであれば、レバレッジは大した問題にはならない」とクー氏は言う。「1980年代が終わるまで、日本企業はそういう行動を取っていた。ところがいったん流れが逆になると、企業はものすごく慎重にならざるを得なくなる。少なくとも一部の中国企業は今、(当時の日本企業と)同じ行動を取っている」 人民元、対ドル基準値6.7896元に 最高値更新 人民元建て融資残高は、2005年以来の低い伸びとなっている〔AFPBB News〕 確かに、中国の中央銀行が先週19日に公表した調査結果によれば、第3四半期の銀行借り入れの需要は減少している。これとは別の調査でも、製造業者が景気についてますます悲観的になっている様子が示されている。 19日公表の調査結果は、これより先に発表されていた統計の説明にもなっている。この統計によれば、中国における今年8月の人民元建て融資残高は、前年比13.3%増という2005年以来の低い伸びにとどまっていた。 アナリストは今でも、中国政府は積極的な金融緩和により融資残高や投資の増加を促すことができると見ている。政策金利を下げたり、いわゆる「窓口指導」で当局が市中銀行に貸し出しの積み増しを求めたりすればいいという。 しかし銀行側は、これまで銀行の貸し付けを大きく抑制してきた預貸率の上限(75%)などの規制の運用は緩和されているものの、優良な貸し出し案件自体が乏しいと述べている。 「預貸率の規制は緩和されており、流動性も増加してきた。しかし、貸し出しを実行するのはまだ難しい。(金融緩和の)ニュースが流れた時も、銀行は一斉に国債を買った。マネーは実体経済には流入していない」。上海のある中堅商業銀行の幹部はこう話している。 正真正銘のバランスシート不況はまだ先だが・・・ 少なくとも、問題の原因の一部は債務の増加にある。有力金融機関スタンダード・チャータードの推計によれば、官民含めた中国全体の債務残高の対国内総生産(GDP)比は今年6月末時点で251%に達し、2008年末の147%を大幅に上回っている。世界金融危機の際に中国政府が打った大規模な景気刺激策により急上昇したのだ。 クー氏をはじめとする識者は、中国の資産価格がもっと大幅に下がらなければ正真正銘のバランスシート不況にはならないと述べている。 中国の不動産価格は4カ月連続で下落しているが、その規模は1990年の日本や2008年の米国で見られた壊滅的な下落に比べれば、まだはるかに小さい。 バランスシート不況の理論によれば、企業のバランスシートが傷んだことにより借り入れや投資に対する民間部門の意欲が衰えた時には、政府の財政支出でそのギャップを埋めなければならないという。 民間部門の支出がさらに落ち込めば、強力な景気刺激策が必要に 中国政府は今年に入ってからその方向に足を踏み出しており、鉄道などの分野への支出を増やすことで財政赤字を短期的に拡大させた。 しかし、民間部門の支出がさらに落ち込む事態になれば、中国の政策立案者は巨額の財政赤字に対する昔からの嫌悪感を克服し、もっと強力な景気刺激策を講じざるを得なくなるかもしれない。 大手金融機関UBSのジョージ・マグナス上級経済顧問は、中国は借り入れの減少を歓迎すべきであり、経済成長の減速についても、正真正銘のバランスシート不況に陥るのを防ぐための不可避のコストとして受け入れるべきだと主張している。 「投資が金利の変化に反応しないスランプ状態に陥るタイミングは、民間非金融法人部門の過大な借り入れによって早まる可能性があり、現在の信用創造・債務累増モデルがさらに長い期間存続することを認めてしまえば、その可能性はますます高くなると私は思う」とマグナス氏は述べている。 By Gabriel Wildau in Shanghai http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41791 |