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「アリババ集団」ジャック・マ会長を歓待するNYSE photo Getty Images
アリババ上場と日本株最高値の原動力 米金融緩和はいつまで続くのか?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40528
2014年09月23日 町田徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
ダラス連邦準備銀行のリチャード・フィッシャー総裁は19日の米テレビインタビューで、中国最大の電子商取引事業者「アリババ集団」のニューヨーク証券取引所(NYSE)上場に関連して、ユーモアたっぷりに米金融政策に対する警鐘を鳴らした。
■連銀総裁が「行き過ぎの兆候」と表明
「(米国株は)2009年3月のボトムから、2.5倍の高さに上昇した」「(それゆえ、今は新規上場に)良いタイミングだ。(アリババのジャック・マ会長は、このタイミングをうまく利用した)利口な奴(スマート・ガイ)だ」などと指摘する一方、自らも投票権を持つ連邦準備理事会(FRB)の金融政策について「相場がこうなるのを支えてきた」「私は金融資本市場には行き過ぎの兆候があると強く感じる」などと表明したのだ。
アリババが、いきなり名だたる米国のIT企業を上回る時価総額を獲得できたのは、米国株の過熱相場に乗じた結果で、FRBにその責任があるといわんばかりだった。
フィッシャー総裁は一言居士だ。FRBに早期の段階的引き締め開始を迫ってきただけに、このところの株式市場のお祭り騒ぎを黙ってみていられなかったのだろう。
しかし、FRBの金融緩和に乗じてお祭り騒ぎを演じているという点では、日本株も同じだ。騒ぎはいつまで続くのか、浮かれているだけでよいのか、フィッシャー発言は検証の格好の機会を提供している。
■「アリババ株」が相場全体を活気づける場面も
まず、フィッシャー総裁が苛立ちを隠さなかった米国株相場の動きをおさらいしておこう。ニューヨーク・ダウ(工業株30種平均)は19日で5日続伸。前日比13ドル75セント高の1万7279ドル74セントで取引を終えた。5日間の合計の上げ幅は292ドル。しかも、後半の3日間は連続して過去最高値を更新した。
19日はスコットランドの英国からの独立が回避された日だ。このため、市場では、冷戦後、イスラム諸国やウクライナなどで大きな混乱を招いている宗教や民族に端を発したテロや独立の問題の欧州への波及が防がれたと好感する買いが多かったという。
しかし、5日間、あるいは過去数年間を通じて堅調な相場を支えてきた主因と言えば、事実上のゼロ金利政策を続けてきたFRBの金融政策が最右翼だ。
特に5日間に限れば、FRBが17日まで開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和第3弾(QE3)の追加証券購入を10月末で終える方針を確認するにとどまり、イエレンFRB議長がゼロ金利政策の解除に「経済データ次第だ」と否定的な姿勢を強調したことが大きい。これにより、「カネ余り相場は不変だ」と買い方が勢い付いたからである。
そうした騒ぎの最中にニューヨーク証券取引所への上場を果たしたのがアリババだ。上場初日(19日)のアリババ株の終値は、93.89ドルと公開価格を38%上回る高水準。時価総額は約2310億ドル(約25兆円)となり、業容が似通っているアマゾン・ドット・コム、イーベイだけでなく、フェイスブックやトヨタ自動車の時価総額も凌駕した。
アリババ株の人気には「米国株市場に資金が流入する傾向は不変だ」と相場全体が活気づく場面もあったという。
■”タカ派”のタフネゴシエーター
連銀総裁としては珍しいことだが、こうした状況に黙っていられず、あえてテレビインタビューに登場して警鐘を発したのが、フィッシャー総裁だ。
同総裁はカルフォルニア州ロサンゼルス市生まれのメキシコ育ち。オーストラリア人の父と南アフリカ人の母を持つ、アメリカ移民の一世だ。
実は、筆者は、通商代表部(USTR)の次席代表時代のフィッシャー氏に何度も取材の機会を得た。日米通信摩擦が激化した時期のことだ。わずか4、5日の日本滞在中に、政府・与党の幹部だった安倍晋三、額賀福志郎、野中広務ら各氏と精力的に面談、厳しい交渉を行う、フィッシャー氏のタフネゴシエーターぶりを垣間見た。
すれ違いざまに挑発的な質問を投げかければ、黙殺することができず、信じるところを吐露せずにはいられない一言居士で、どちらかと言えば取材し易い人物だったと記憶している。
フィッシャー氏はその後民間企業を経て、2005年にダラス連銀総裁に就任した。FOMCのメンバーとして、米金融緩和策を終了して出口戦略に移行するように早くから求めてきた“タカ派”である。
今回、FOMCは、8対2の賛成多数でゼロ金利政策の解除開始まで慎重に時間をかける方針を決めたが、フィッシャー総裁は早期かつ段階的な利上げの実施を主張、フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁とともに反対票を投じた経緯がある。そして、冒頭で述べたようにテレビに出演して、米国の金融政策と株式相場の現状を憂慮する発言を行ったのだ。
■株高に胸を張れぬ首相官邸
ただ、われわれ日本人にとって気掛かりなのは、米国株やアリババ株だけでなく、日本株も米金融政策の出口戦略の遅れを謳歌している点で共通していることだろう。
日経平均株価は19日、米国株高につれ高して6年10ヵ月ぶりの高値を記録した。買い方はスコットランドの英国からの独立否決と、1ドル=110円が目前に迫った円安を買い材料にしていたという。だが、ここでも、出口戦略に対するFRBの慎重姿勢が与えた心理的影響は計り知れないほど大きかった。
ところで、今回は、過去2年近くにわたって、株高といえば必ずのように首相官邸や閣僚たちが強調した「アベノミクスの成果」というフレーズがほとんど聞かれない。これは、今回の株高がこれまでと大きく違う点である。
背景にあるのは、深刻な実体経済の落ち込みだろう。今春の消費増税によって、それまでの駆け込み需要が消えてなくなったことが響いて、今年4〜6月期の国内総生産(GDP)の改定値は、実質で前期比1.8%減(年率換算で7.1%減)と速報値の同1.7%減(同6.8%減)をさらに下方修正する事態に見舞われた。
実体経済と株価のかい離はあまりにも大きく、さしもの政治家たちでさえ、我田引水で自分たちのお手柄を強調できる環境にないと自覚したとみてよいだろう。
■米ゼロ金利政策の終焉を予言
ちなみに、フィッシャー総裁は件のテレビインタビューで、日本のアベノミクスについて問い質されて「始まったばかり。劇的な効果を早期に期待するのは無理がある」「必要なのは(金融政策や財政政策ではなく、アベノミクスの3本目の矢である)構造改革だ」などと繰り返した。
その一方で、米国の利上げの実施時期については「個人的には(来年の)夏より春になると想定している」「遅過ぎて急激な利上げが必要になれば、再び経済を悪化させることになりかねない。そうした事態を避けるためには早期に利上げを断行する必要がある」などと語り、来年前半にも日米の同時株高をけん引してきた米ゼロ金利政策が終焉を迎えると“予言”してみせた。
山高ければ、谷深し――。残された時間は決して長くないが、政府は国際公約になっている来年秋の消費増税を両立しつつ、本格的な構造改革の道筋を付けなければならない。さもないと、バブル経済の崩壊時ほどではないとしても、株高の反動が日本経済を直撃するリスクが高まっている。
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