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コラム:円安「容認と反対」の分岐点は115円超え
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPKBN0HE09Z20140919
2014年 09月 19日 13:57 JST
田巻 一彦
[東京 19日 ロイター] - 円安が進展している。19日にドル/円JPY=EBSは6年ぶりの109円台となった。政府・日銀には「円安容認」の見方が多いが、ここにきてコスト増を意識した「円安反対」の声もじわりと広がり出した。
容認と反対の勢力図が逆転する水準はどこか。政策当局内に120円の円安は行き過ぎとの指摘があることを踏まえれば、115円を超えて円安が進めば、政府から何らかのメッセージが出てくるかもしれない。
<円安めぐり意見の対立鮮明に>
外為市場では、米連邦公開市場委員会(FOMC)、スコットランド独立をめぐる住民投票などイベントをこなしつつ、ドル高が進んでいる。対円でも6年ぶりの109円台を付け、節目の110円台まで大きな障害はないとの見方が、市場の多数派だ。
この円安をめぐり、日本経済にとってプラスなのかマイナスなのかという意見の対立が、次第に鮮明になってきた。
政府・日銀内にある「円安容認」の考え方を総括すれば、輸出企業を中心に外貨建て資産や収益の円評価のかさ上げ効果で、メリットを受ける企業の株価が上がるとともに、企業マインドも好転。こうしたメリットが設備投資や雇用・所得環境にプラスとして働き、経済の好循環を生み出す原動力になるとの見方だ。
また、円安とは逆方向の円高に振れ、デフレ心理が復活し、設備投資や個人消費にマイナスの影響を与えるケースと比較すれば、円安の効果は、マイナスの要素を差し引いてもかなりな規模になるとみている。
一方、地方で活動する企業や大都市圏も含めた中小企業などからは、ガソリン代に代表される燃料費、輸入品を中心にした原材料費の上昇で、企業収益が圧迫されているとの声が挙がっている。
また、大企業400社を対象にした9月ロイター企業調査では、約75%の企業が105円を超えない程度の円安相場が「望ましい」と回答。「円安は進めば進むほどプラス」とは、受け止めていない現状を浮き彫りにした。
さて、どちらの見方が正しいのだろうか。毎月1兆円程度の貿易赤字を計上するようになった日本経済にとって、かつてのような貿易黒字国の時代と比べ、円安のデメリットが大きくなったことは間違いないだろう。
原発が止まっていて、LNG(液化天然ガス)の輸入量が増大し、その分のコストが円安でさらに膨らんでいるということもある。
外貨建ての収益がない国内の中小企業にとって、見た目にはコスト増だけを招く「円安」と映る構図が出来上がっているとみることもできる。
他方、円高が進んでさらに製造業の海外移転が加速すれば、国内に残っている中小企業が受注先を失い、そのことで国内雇用がさらに下押しされるというシナリオの実現性が高まる。
また、円高を起点にした企業や個人のマインドの冷え込みで、「デフレに逆戻りする」との心理が急速に広がれば、縮小方向への逆回転が始まって、黒田日銀が始めた量的・質的金融緩和(QQE)の効果が、あっという間に雲散霧消する懸念も、根強くあると推測できる。
<甘利再生相も急激な動きをけん制>
このように見てくると、円安の功罪を一刀両断に結論付けることは困難であると言わざるを得ない。
特に水準とテンポの2つの変数の動向で、他に波及する影響の度合いが大幅に違ってくる為替の場合、複雑さが増幅される。
19日の会見で、甘利明経済再生相が「急激に為替が動くことは好ましくない」「実力に見合って安定的に推移することが望ましい」と発言したのも、足元の円安進展のテンポが、当局からみて「スピード違反」に映っている証拠だろう。
ただ、政府・日銀内の多数意見が「円安反対」に変わったわけではないだろう。ゆっくりとしたテンポで円安が進むなら、110円は容認できる水準とみているのではないか。
だが、青天井で円安進行を認めるということもないだろう。まだ、かなり先にあるが、120円は当局にとって容認できない水準と映っていると予想する。
円安のメリットとデメリットのバランスが、デメリット方向に大きく傾くのは115円を超えたあたりではないかと考える。
この水準まで円安になると、電気・ガスなどの料金が為替変動を反映してかなり値上げされることになり、世論が円安への批判を強める方向になる可能性も出てくる。
円安の動向次第では、今後の財政・金融政策の展開にも大きな影響を与えそうだ。
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