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ケニアのナッツ農場を世界5大ナッツカンパニーに育て上げた伝説の日本人実業家・佐藤芳之氏
古賀茂明のケニア・ルワンダ現地ルポ 「これがアメリカにも中国にも負けない『日本のアフリカビジネス』だ!」【前編】
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140920-00035921-playboyz-bus_all
週プレNEWS 9月20日(土)6時0分配信
成長著しいアフリカ大陸に、アメリカや中国から膨大なマネーが流れ込んでいる。そのなかで日本もさまざまな投資をしているが、もはや物量では米中に勝てないだろう。
そんな中、現地に赴いた経済産業省の元幹部官僚・古賀茂明がアフリカでナッツビジネスを成功させた伝説の日本人実業家に話を聞いた。単なる金儲けでもなく、慈善事業でもない「アフリカビジネスの神髄」とは?
■アフリカで最も尊敬されている日本人ビジネスマン
歴代内閣最多となる49ヵ国を外遊した安倍首相。その首相がひときわ熱い視線を注ぐ地域がある。アフリカ大陸だ。
アフリカの成長は著しい。アンゴラ(11・1%)、ナイジェリア(8.9%)、チャド(7.9%)、など、高いGDP成長率を誇る国がめじろ押しだ。
それだけに、先進主要国はアフリカ諸国での開発プロジェクトに躍起で、なかでも中国のアフリカ進出は目覚ましい。
2006年にアフリカ諸国の首脳級48人を北京に招いて開いた「中国・アフリカ首脳会議」を皮切りに、アフリカへの大規模な投資、援助を行なっている。13年の時点で、中国の対アフリカ直接投資残高は約2兆2000億円で、その額は日本の3倍以上だ。
しかも中国は来年、この「中国・アフリカ会議」を自国でなく、南アフリカで開く予定だ。「アフリカへの影響力を確実なものにしたい」という、習近平政権の並々ならぬ決意がわかる。
これにライバル意識を燃やすのがアメリカ・オバマ政権だ。
今年8月上旬、アフリカ50ヵ国の首脳をワシントンに呼び寄せて「アメリカ・アフリカ首脳会議」を開き、アメリカ企業と世界銀行による3兆4000億円規模の対アフリカ投資をぶち上げた。
もちろん、日本も黙ってはいない。今年1月には安倍首相が日本企業約30社のトップを引き連れ、コートジボワール、モザンビーク、エチオピアの3ヵ国歴訪に出かけたばかりだ。また、これまで東京や横浜で主催してきたTICAD(アフリカ開発会議)を、中国のマネをして再来年にアフリカの地で開く予定だ。
だが、こうした先進主要国の行動には問題が多いと私は感じている。企業によっては国際支援の美名の下、資源獲得に奔走し、そこで稼いだ収益は本国に吸い上げ、何か問題が起きればさっさと撤退するケースが目につく。その結果、アフリカの人々は豊かになるどころか、かえって貧困と格差が拡大し、苦しむことになってしまうのだ。これでは援助したところで、国際的な尊敬は得られないだろう。
それでは日本の「アフリカ支援」「アフリカビジネス」はどうあるべきなのか?
実はアフリカの地で数十年も前からビジネスを手がけ、現地の人々から尊敬されている日本人がいる。ケニアに住む佐藤芳之(よしゆき)さん(75歳)だ。
74年、佐藤さんはひとりで「ケニアナッツカンパニー」を創業し、世界有数のナッツ企業に育て上げた。同社は今、きちんと収益をあげながら、なおかつアフリカの「自立」「自活」を促した会社として、ケニア政府だけでなく、ほかのアフリカ各国から高い評価を受けている。
いったい、佐藤さんはケニアの地でどんなビジネスを展開したのか? 佐藤さんを訪ねてケニアへと飛んだ。
「ケニアナッツカンパニー」は首都ナイロビ近郊にあった。瀟洒(しょうしゃ)なたたずまいの本社工場に驚いていたら、なんとケニア国内に9000エーカー、東京ドーム約780個分のナッツ果樹園を展開していると聞いて、またびっくり。
採取したマカデミアナッツやカシューナッツは殻を割って乾燥させ、実を選別する。取引先には「ゴディバ」や「ネスレ」など、世界的な食品企業が名を連ねる。おかげで、ケニアは、90年代にはナッツ生産量で世界トップ3の一角を占めるまでになった。
このナッツビジネスでたたき出す年商は、約50億円。ケニアでは紛れもない大企業である。
驚くのはその雇用数。直接雇用だけで4000人。関連企業や契約農家の雇用を入れれば、1万人を超える。ケニアでは、ひとりで10人を養うのが普通だから、佐藤さんの会社は10万人の生活を支えていることになる。
ケニアの人口は約4000万人。そのなかの10万人をたった1社で養っているのだ。彼は単なる企業を設立したのでない。この国に巨大な産業を生み出したと言ってもよい。
佐藤さんの会社経営における強いこだわり。それは、雇用をひとりでも増やすために、やみくもな機械化、省力化はしないということだ。そのため、工場ではいまだにナッツの選別や箱詰めは機械ではなく、人力で行なっている。
「創業当初、ここに暮らす人々は『白人に代わって、アジア人が“新しい支配者”になった』と考えていました。そうじゃない。この会社はみんなが収入を得るため、自立するためにつくったんだと説得しましたね。だからこそ、徹底して雇用の確保にこだわりました。ナッツを収める段ボール箱作りも、本来はひとりでやれる工程を6人で分担してやっています。とにかく、社員に自活のための給料を払いたい。貧しいこの国では機械化、省力化は“反社会的行為”なんです」(佐藤さん)
ケニアナッツカンパニーは健康保険、年金を完備し、医務室も工場に併設している。エイズ対策、家族計画のためのコンドーム配布も欠かさない。収益の多くは、福利厚生に回されている。
カシューナッツの工場長・ロバート(39歳)が、こつこつとためた給料で家を新築したというので、佐藤さんと一緒に訪ねてみた。
てっきり生活の便のよいナイロビ市内に建てたのかと思っていたら、これが遠い。ナイロビから車で1時間はかかる田舎だった。周囲にはビルなどなく、掘っ立て小屋のようなあばら家ばかりが目につく。
なぜなのか? ロバートがこう説明してくれた。
「都会の便利さよりも、貧しい地域を発展させることを優先しようという思いで、あえてここに家を新築しました。役所と交渉して水道と電気も引くことができました。付近の住民も喜んでくれた。自分だけがよくなってもだめ。地域がよくならないと。そのことを私はミスター佐藤から学んだのです」
佐藤さんは、現地スタッフから「メンター」と呼ばれている。メンターとは、そばに付き添って指導してくれる人のこと。現地の人々は、彼を経営のボスというより、自立をもたらす指導者として尊敬しているのだ。
*9月21日(日)配信予定の後編に続く!
●佐藤芳之(さとう・よしゆき)
1939年生まれ、宮城県出身。実業家。東京外国語大学卒業後、ガーナ大学へ留学。66年にはケニア政府と東レの合弁会社に入社するが、5年で退社。ケニアで鉛筆工場などを経営した後、74 年に「ケニアナッツカンパニー」を創業、同社をアフリカ屈指の食品メーカーに育てた
■古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元幹部官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年退官。新著『国家の暴走』(角川oneテーマ21)が発売中。『報道ステーション』(テレビ朝日系)のコメンテーターなどでも活躍している。
週刊プレイボーイにて「古賀政経塾!!」を好評連載中!
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