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倒産した地場スーパーが発行していた釣り銭をためるカード。金額欄に「¥83」とある (一部画像処理しています)(写真:産経新聞)
スーパー倒産、買い物客1万3000人が債権者になる異例の事態
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140917-00000106-san-soci
産経新聞 9月17日(水)15時6分配信
■釣り銭預かりサービス、あだに
大阪府南部で店舗を展開していた地場スーパーの倒産をめぐり、約1万3千人の買い物客が債権者となる異例の事態が生じている。スーパーが客の釣り銭をカードに記録して預かり、一定額に達すると預かり額を上回る額面のギフト券と交換するサービスを提供していたためだ。消費者心理をくすぐる“お得なカード”は社会にあふれているが、発行元の倒産時に権利を失うケースも多く、あらかじめリスクを把握しておくことが大切だ。
8月、大阪府富田林市の女性(42)宅に大阪地裁から郵便が届いた。「裁判員裁判の案内かも」。女性は急いで開封し、予想外の中身に驚いた。近所のスーパーの倒産を知らせる文書で、「債権者各位」と書かれていたからだ。
債務者は「スーパーやまもと」(同府松原市)。倒産前は松原、富田林の両市で2店舗を展開し、女性も長年ひいきにしていた。
女性が債権者になった背景には、スーパーの独自サービスがあった。精算時にスーパー側が100円未満の釣り銭を預かり、合計2千円をためると、2500円分のギフト券などと交換できるカードを発行していた。女性は83円の釣り銭をカードに預けた結果、債権者になったのだという。
「債権といっても切手代と変わらないわね」。女性は苦笑まじりに話す。
◆配当は期待薄
スーパーの破産管財人を務める弁護士によると、地裁は7月29日に破産手続きの開始を決定。その後、スーパーの事務所でカードの利用者名簿が見つかり、財産上の請求権があるとみられる約1万3千人に同様の文書が郵送された。総額数十万円にも上る切手代はスーパーが負担したという。
企業が倒産すれば、債権者には取引先の銀行や業者が連なるのが一般的だ。弁護士は「こんな事態は初めて」と困惑を隠さない。
破産手続きでは、破産管財人が破産者の財産を整理して得た金銭を、債権額などに応じて債権者に分配する「配当」がある。
だが、スーパーの負債総額は概算で約11億円。従業員の賃金や税金が未払いになっており、2千円未満の少額債権しかない買い物客への配当の見込みは低いという。
そもそも名簿には預かった釣り銭額が記載されておらず、客の一人一人の債権額も不明だ。文書には配当希望者にカードを保管するよう注意書きもあるが、仮に配当が確保されても債権者の多さから手続きは難航する恐れがある。
◆失効ケースも
今回のように客の釣り銭を預かる形のカードを発行している例は珍しいが、特典を設けたポイントカードを発行する小売店や企業は数多い。しかし、発行元が破綻した際のポイントの扱いについて、債権と認めるかどうかなどの具体的なルールは存在しない。
平成22年に会社更生法の適用を申請した日本航空のケースでは、再建を主導した企業再生支援機構が、消費者の混乱を避けるため、飛行距離に応じてポイントが付くマイレージの継続利用を認めた。だが、この措置は例外的で、実際には倒産と同時にポイントが失効するケースが多いという。
消費者問題に詳しい加納雄二弁護士(大阪弁護士会)は「今回のスーパーも、債権額が2桁違えば消費者問題になっていただろう。例えばプリペイドカードのような金銭と同等の価値があるカードを利用する人は、入金額が高額になりすぎないよう注意が必要だ」と指摘している。
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