ソニーは17日、2015年３月期の連結業績見通しを下方修正するとともに、1958年の上場以来初の無配にすると発表した。中国勢などとの競争激化で不振が続いているスマートフォン（スマホ）事業で減損損失を計上し、最終赤字は当初見込んでいた500億円から2300億円に拡大する。エレクトロニクス分野の主力である同事業の立て直しに向け、1000人規模を削減する方針も明らかにした。

　過去10年で５回の最終赤字になるなど業績悪化が鮮明になった後も配当は続けてきたが、株主配分より財務改善を優先せざるを得ない局面に追い込まれた形だ。記者会見で平井一夫社長は「経営陣として大変重く受け止めている」と陳謝した。

　下方修正の最大の理由は、平井社長らが本業であるエレクトロニクス分野の再建の担い手と位置付けてきたスマホ事業が想定以上の苦戦を強いられていることにある。

　スマホ市場は４〜６月の世界の出荷台数が２割増え最高になるなど成長が続く。ソニーもデザインや最新機能が売り物の高級機種「エクスペリア」が人気だが、圧倒的なブランド力を誇る米アップルの「ｉＰｈｏｎｅ」や低価格を武器にシェアを伸ばしている中国製などに押され気味だ。

　すでに７月末に、今期の販売台数を4300万台（前期比10％増）と従来計画から700万台引き下げていた。平井社長は会見で「普及価格帯のモデルで中国勢との競争が激化している」と説明した。ｉＰｈｏｎｅの新機種も発売予定で競争は一段と激しくなっている。ソニーは新しい計画を示さなかったが、一段と下振れする懸念もある。

　こうした状況で12年に英ソニー・エリクソンを完全子会社化した際につくった中期的な収益見通しの達成が難しくなっている。企業会計ルールでは、収益性が低下した事業については減損処理をする必要があり、スマホ事業で1800億円の損失を計上することになった。

　これまで損益ゼロをみていたスマホ事業は赤字になり、ゲームやセンサーなどをあわせたエレクトロニクス部門も赤字が避けられない見通しだ。

　同時に発表したスマホ事業のリストラは約7000人いる社員の15％にあたる1000人程度を削減する内容。それ以外にも、スマホの販売地域や機種の絞り込みなどの対応を検討している。

　今回の業績予想の下方修正には、こうした対応策の実施に伴う追加の構造改革費用については含まれていない。対応策の詳細は10月下旬以降の４〜９月期決算発表時に示す考えで、追加の費用が発生する可能性がある。

　パソコン事業の売却やテレビの分社化に踏み切ったソニーにとって今期は「構造改革の年」。平井社長は「来期に4000億円程度の営業利益を目指すという方針は変わらない」と説明した。

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