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大前研一:インドなど南アジアは重要な投資先、「札束外交」で友好関係は築けない
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140917-00000001-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 9月17日(水)8時22分配信
日本は今後5年間でインドに官民で3.5兆円の投融資を行い、直接投資額や進出企業数を倍増させるという。安倍晋三首相とインドのモディ首相は9月1日、都内の迎賓館で約2時間会談し、共同声明に署名した。安倍首相はバングラデシュを訪問するなど南アジア外交を活発に行っているが、単なる「札束外交」に陥らないよう注意が必要だ。
■日本、そして中国から対印投資を引き出すインド
安倍首相と会談したインドのモディ首相は、日本への強い思い入れを持っている人物だ(モディ首相についてはこちらの記事を参照)。その意味でも、今回の会談で示された友好関係というのは決して偽りではないと思う。
しかしその一方で、中国の習近平国家主席が9月17、18日にインドを訪問する予定で、モディ首相との首脳会談で両国の経済協力推進を表明する意向だ。モディ首相は個人的に日本に思い入れがあるといっても、あくまでもインドの代表であることを忘れてはいけない。インドの国益を考えて、中国にリップサービスをして対印投資を引き出すのは当然のことだ。実際、習主席をモディ首相の出身地グジャラート州に案内するなど、かなりきめ細かい“友情”の演出が予定されている。
言い換えると、日本に対するモディ首相の発言も対印投資を誘うためのリップサービスであると、日本人は冷静に受け止めておいたほうがいい。実際、最終的に日印両国がサインした共同声明は、事前に日本側が用意したものから、かなり後退した修正が加えられた内容となった。
■オーストラリアにも出し抜かれる日本
具体的には、日本側が求めていた外務・防衛閣僚協議(2プラス2)の設置が見送られている。日本としては対中牽制のためインドとの関係強化を図りたかったのだが、習主席の来印を控えるインドとしては、中国を刺激することは避けたかったのだろう。
結果的に、経済援助やビジネス面で気前の良かった日本に対して、インドは最終的なコミットメントを先送りした。さらに悲しいことに、日本はオーストラリアにも出し抜かれてしまった。
9月5日にオーストラリアのアボット首相がインドを訪問し、モディ首相と会談。そこで原子力協定の締結が合意されたのである。オーストラリアからウラン燃料を輸出し、電力不足に悩むインドは原発を推進する狙いがある。
ここで「日本と原子力協定を締結した国」をご覧いただきたい。
日本もインドとの原子力協定締結を急いでいるが、首脳会談では過去数カ月間での重要な進展を評価したものの、早期妥結を目指して交渉加速を双方の事務方に指示することで一致するにとどまった。その直後に、オーストラリアがインドと素早く原子力協定を結んでしまったというわけだ。
アメリカは核不拡散条約を批准しないインドと広範な原子力の取引をする約束を交わしている。日本としては原子炉の輸出などを可能にする原子力協定を結びたかったが、それは先送りされた。おそらく中国は今回の訪印で原子炉の売り込みまで計るだろう。つまり、表面上は友好関係の演出に成功したかに見えるモディ首相の訪日は、集金目的とは言わないまでも、かなり実りの少ないものであった。
■バングラデシュへの円借款供与が急増
さて、モディ首相と会談した安倍首相は6日にバングラデシュを訪問し、ハシナ首相と会談した。円借款を軸に6000億円の対バングラデシュ援助を行うことで合意がなされている。
ここで「円借款供与額上位の国(億円、2012年までの累計額)」をご覧いただきたい。
日本がこれまで行ってきた円借款供与額を累計で見ると、1位はインドネシアの4兆6398億円、2位はインドの4兆914億円、3位は中国の3兆3165億円となっている。中国には3兆円以上の援助を行ってきたのだが、まったく感謝されていないのが実情である。
中国政府は政府開発援助(ODA)で完成した道路や橋などの完成式典で、日本のお陰で出来た、とは言わない。共産党がつくってやったのだ、というトーンで祝福している。ベトナムなどでは逆に日本大使などを呼んで、テレビなどでも日本の貢献を詳しく述べている。こうしたことの積み重ねにより、インドネシアなどで「日本が好きだ」という人が圧倒的に多くなっている。
2012年だけに限った円借款供与額上位国を見ると、累計額では9位に過ぎないバングラデシュが浮上し、近年に円借款供与額が急増していることがわかる。1位のインド(3531億円)、2位のベトナム(2029億円)、3位のミャンマー(1989億円)に次いで、バングラデシュは4位(1664億円)となっている。
■バングラデシュに辞退させたかたちの日本の「札束外交」
今回、バングラデシュとの間で合意された援助はいわゆる「ひもつき援助」(開発用資材などの調達先を供与国、すなわち日本にするなどの条件付き援助)で、最終的には日本に戻ってくる選挙対策、景気刺激策のお金でもある。ただ、安倍首相は経済援助と引き換えに国連安全保障理事会の非常任理事国を“バングラデシュから買った”ことになってしまったので、その点でバングラデシュ世論が怒っていないかどうか心配である。
2015年10月に行われる非常任理事国選挙には、日本とバングラデシュが立候補していた。同じイスラム教の国々から票を集めるバングラデシュは伝統的に非常任理事国選挙に強いので、日本は対決を避けたいと考えていた。そこで、非常任理事国選挙とは直接関係のない経済援助を持ち出すことで、バングラデシュの出馬辞退を促すかたちになったのだ。
これで日本は非常任理事国選挙に無投票当選することが濃厚になったが(当選すれば6年ぶりの復帰で、最多の11回目)、札束で議席を“買った”ことに対して、バングラデシュ人が「貧乏国だと思ってバカにするな」と国民感情を悪化させているかもしれない。
バングラデシュなど南アジアはこれからアジアの労働集約型産業の拠点になる地域であり、非常に重要な投資先だ。腐敗が横行するベトナムやミャンマーといった国々よりも、バングラデシュやインドへの援助を強化するべきである。だからこそ、相手国の感情を損ねるような「札束外交」ではなく、自制心を持った、かつ相手国の発展につながるような援助を行っていかなければならない。
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