05. 2014年9月17日 19:42:48
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調整継続のコモディティ価格(近藤雅世)
世界株式高騰の中、下落したコモディティ価格 世界の資金の流れは証券投資と債券投資に向かっているが、Bank of America Merrill Lynchのファンドマネージャー調査によれば、ファンドは次に資金をどこに持っていったら良いかに頭を悩ませており、キャッシュの比率が高まっているという。株価は日米とも天井に近く、昨年1月初めから比較すると日本株は約1.5倍に、S&P500インデックスは1.36倍になっており、ブラジルとロシアを除いたすべての株価が値上がりしている。 また、各国国債の金利はかつてない程低下し、国債が売れていることを示している。そうした中で商品価格の3分の1は昨年初めに比べて下落しており、割安感が出始めている。昨年1月初めに比べNY金は▲25%下落し、原油はほぼ同値、シカゴトウモロコシは▲51%と半値になっている。 一方為替はドル高傾向にある。一つには欧州経済がウクライナ問題等の影響で低迷を始め、9月4日欧州中央銀行が利下げを行い、Covered Bond(社債のうち住宅ローン債権などの資産の裏付けのあるもの)とRMBS(住宅ローン担保証券)等のABS(資産担保証券)を買い上げることを決定、今後国債の買い取りも行うかが注目され、資金提供による金融緩和の道を歩んでいる。また、18日に予定されるスコットランドの独立投票の結果次第では、ポンド安に一層拍車がかかることが予想され、欧州通貨は一様に安くなっており、ユーロドルは1.30を割り込んでいる。
同様に、日本も黒田日銀総裁の言動から緩和傾向を継続する意向が強いことを市場は感じ取り、ドル円は107円台に入っている。16日〜17日に予定される米国連邦制度理事会(FRB)のFOMC(公開市場委員会)では、イエレン議長の記者会見が注目されている。
9月6日の雇用統計では非農業就労者数の伸びが14万2千人と事前予想の22万5千人を大幅に下回りサプライズとなったが、一方で8月の長期失業者数は296万人と前月の315万人より減少しており、2009年1月以来の低水準となっている。7月のFOMCでは利上げの時期を2015年上半期とする意見が大勢を占めたが、今回はどうなるかが焦点となっている。いずれにせよ、欧州と日本の金融緩和傾向と、10月にも金融緩和縮小を終わり、利上げに向かいつつある米国との正反対のベクトルに今後もドル高傾向が予想される。 金やプラチナ価格は下落しているが、安値圏にあり、ことにプラチナは燃料電池車には電極として1台当たり30〜50グラムのプラチナが使用され(自動車触媒は2〜4グラム/台)、また世界各国で自動車販売が好調になっており、既存の自動車触媒需要も増加すると思われる。その中でも中国では28兆円もの大金をかけて大気汚染対策に乗り出しており、中国の自動車触媒用プラチナ需要は今後も伸びると思われる。 一方供給は、半年に及ぶストライキにも拘わらず価格が低迷したままなので、鉱山会社の業績は軒並み悪化しており、今後合理化や閉山が相次ぐと思われ、供給はますます細っていくと思われる。こうした需給ギャップを正確に反映する市場が無いことがプラチナ価格の課題であるが、割安な金価格も含め中長期的には上昇傾向にあるだろう。 原油と穀物の展望を予測する 石油の需給は基本的には供給過剰な状態が続いている。その背景には米国によるシェールオイル、ガスの生産が毎週増加しており、世界最大の原油輸入国の輸入量が減少し、石油製品輸出が増加している。米国の原油輸出は法律で禁止されているが、解禁は時間の問題と思われ、解禁となれば世界最大の原油輸出国になるのもそう遠い将来ではない。こうした北米からの原油供給が増加する中で、需要は供給の増加ほどには増えず、中国の経済成長も7.2%程度に減速すれば(UBS、Barclays Capital)、石油需給はより緩和するだろう。 その中、地政学的リスクがウクライナやイラク、シリア、ナイジェリア、南スーダン、リビア等で生じており、それは価格上昇要因となる。ただ、原油供給に直接響く地政学的リスクは少なく、一時は輸出がほとんどなくなったリビアでは港湾施設が反政府勢力による占拠から解放され、輸出は増加し始めている。イラクはシリアとの間の北部における「イスラム国」による騒乱であり、83%を占めるイラク南部の石油生産には影響はほとんど出ていない。 ウクライナには三本の天然ガスパイプラインがロシアから欧州向けにひかれており、今後冬場の欧州のガス需要が増えるとウクライナの治安が懸念される。停戦協定がしっかり守られるかどうかが鍵となり、プーチン大統領と欧米との政治的駆け引きが続くことになるだろう。
最後に穀物価格であるが、米国産トウモロコシと大豆は、今年はいずれも過去最大の単収となり、生産量も過去最大となるため、トウモロコシや大豆価格は5月の高値の半値に下落している。すでに収穫期に入っており、ハーベストプレッシャーで上値は重い展開が続いている。当面この傾向が続き、今後は南米の作付や米国の穀物輸出状況に焦点は移るが、当分価格が上昇する気配は少ないだろう。
講師紹介 ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ講師 株式会社コモディティーインテリジェンス 代表取締役社長 近藤 雅世 講師より寄稿いただいた文章をご紹介しております。 詳しくはこちら その他の記事を読む 中国4大銀行 純利益約8兆円(大前研一) http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/20140917_105616.html |