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大和ハウス、不況の住宅業界でなぜ独り勝ち?非戸建事業で安定収益、勝ちのモデル確立
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140916-00010004-bjournal-bus_all
Business Journal 9月16日(火)6時0分配信
今年6月の新設住宅着工戸数は、前年同月比9.5%減の約7万6000戸で、4カ月連続の減少(国土交通省調べ)。消費増税前の駆け込み需要の反動で、住宅メーカー各社が受注減に険しい顔をしている中、独り頬を緩めているのが大和ハウス工業だ。
大和ハウスが8月8日に発表した15年3月期第1四半期(14年4-6月)の連結決算は、売上高が前期比4.6%増の6048億円、営業利益が同16.5%増の334億円、純利益が同65.1%増の307億円だった。消費増税の反動減を受けたのは同社も同じで、新設住宅着工戸数も14年3月から4カ月連続で前年同月比減になっている。
これを補ったのが「賃貸住宅事業」と「事業施設事業」だった。前者は前期比18.1%増の1758億円、後者は同7.9%増の1301億円を売り上げている。ちなみに、両事業の売上高は全体の50.6%を占めている。この売り上げ構成は前期の14年3月期も基本的に同じ(両事業の売り上げ比率:47.4%)。一方で、本業とみなされている「戸建住宅事業」の売り上げ比率は、15年3月期第1四半期で12.5%、14年3月期で14.6%にすぎない。
そのため、消費増税による需要反動減の影響が軽微にとどまった格好となったが、再び不況の影が近づいてきた住宅業界で、大和ハウスはどんな仕掛けで好業績を維持しているのだろうか。
今期に限らず、大和ハウスの近年の売上高と営業利益は安定的に伸びている。13年3月期には、住宅業界初の売上高2兆円の大台乗せも達成した。この決算期も戸建住宅の売上比率は17.5%。過去20年の同社新設住宅着工戸数を見ても実質横ばいを続けている。
住宅メーカーであるにもかかわらず、戸建住宅の売り上げを意図的に抑制しているのは明らかだが、その背景にはいうまでもなく戸建住宅市場の縮小がある。同市場では古くから地域に密着している地場工務店や地域ゼネコンがしのぎを削り、競争も激しい。戸建住宅最大手の積水ハウスですら、そのシェアは4%台でしかない。そのような市場に精力の大半を注ぎ込んでいたら、継続的な成長は望めない。さりとて「ミゼットハウス」を原点にプレハブ住宅のパイオニアとして大手住宅メーカーに成長した大和ハウスにとって「戸建住宅は今も祖業でありコア事業である事実に変わりはない」(同社関係者)のが悩ましいところだ。
そんなジレンマを抱えた成長戦略が「戸建住宅事業の現状維持を図りつつ、非戸建住宅事業を伸ばし、比例的に戸建の売上比率を下げて安定的な事業構造にする」(同)というものだった。そこで、成長戦略の柱に据えられたのが「賃貸住宅事業」「商業施設事業」「事業施設事業」の3事業だった。
●アフターサービスで稼ぐ
アパート・マンションの賃貸住宅建設事業は「手離れが悪い」といわれる。戸建住宅のように「開発して建設したら終わり」では済まないからだ。施主に建物を引き渡した後も、入居者募集と家賃集金、建物の管理・運営など様々なアフターサービスをしなければ、今どきの施主は満足しない。
半面、建設した後はアフターサービスが安定した収益源にもなる。建設費と比べると微々たる金額ながら、様々な手数料収入が得られるからだ。アフターサービス戸数の増加に比例して手数料も増加する。業界関係者は「このアフターサービスで差別化を図っているのが大和ハウスの強み」と指摘する。
また、コンビニ・スーパー、ショッピングセンターなどを開発・建設する商業施設事業は、1980年の「ホームセンター事業」開始を皮切りに培ってきた。全国約6500名の地主と、セブン&アイ・ホールディングスをはじめとするチェーンストア約3900社との取引関係を持っている。つまり、土地有効活用を図りたい地主と、事業用地を探しているチェーンストアのマッチングで、同社は商業施設の受注活動を行っているのだ。大和ハウス関係者は「両者をピンポイントでマッチングできるネットワークは、同業者はもとより、不動産業界にも金融機関にもない」と自慢する。
●強固な情報網を収益につなげる
一方、物流施設や工場を開発・建設する事業施設事業は、今のところは物流施設が主力。同業大手、ゼネコンなどの競合他社と違っているのは、物流施設を自社で開発・建設して物流会社などに賃貸し、その後で子会社のREIT(不動産投資信託)会社、大和ハウスリート投資法人に売却するビジネスモデルを構築している点だ。このモデルにより、事業施設事業に投下した資金を短期間で回収し、次の有望案件に迅速に資金投下でき、借入金も最小限に抑えられる。換言すれば、投資事業を行っているのだ。
物流施設の賃貸契約は10年以上が通例。供給側にとっては長期的な安定収益を確保できるのが旨味だ。さらに、ネット通販市場の拡大に伴い、物流施設の需要も拡大し続けている。このため、外資系や不動産業界からの新規参入も相次ぐなど、受注競争が激化している。そんな中で大和ハウスが競争優位を維持し業績を伸ばしているのは、自ら開発・建設した施設にテナントを呼び込む独自のビジネススタイルに加え、全国規模の情報網を有しているところが大きい。
つまり、全国主要約30都市の営業拠点に同事業専任の営業担当者を配置、彼らが各都市内の企業、地主など取引先から、日常的に様々な情報収集に努めているのだ。そうした活動の中から「とある高速道路インターチェンジの近くに数万坪の土地を保有していた地主から、土地活用の相談を受けたのをきっかけに、大型物流施設の自社開発につながったケースもある」(大和ハウス関係者)と明かす。
こうしたビジネスモデルを強みに、大和ハウスは16年3月期までの現行中期経営計画で、約2000億円を投資、全国で30件前後の物流施設を開発、ネット通販会社や自社施設の処理能力が限界に達している物流会社のニーズを取り込む計画を立てている。同社関係者は「物流施設の開発が間に合わないほど順調。当事業部門の中計目標(売上高6000億円、営業利益250億円)を前倒しで達成できるのは確実」と胸を張る。
証券アナリストは「長期的な展望で非戸建住宅の有力事業を育て、市況低迷に足を引っ張られない事業構成を目指してきた成果が表れている。あとはこれらの事業を伸ばす一方、その成功体験に溺れず、どのタイミングで現在の成長戦略を修正するかの経営判断だろう」と評価している。
当面の間、同社の経営に死角はなさそうだ。
福井晋/フリーライター
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