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理研と上海光学精密機械研究所との研究協力覚書の調印式。日本の先端技術研究は中国の軍事に応用されるリスクを抱えている=2013年9月11日、上海
【日曜経済講座】狙われる日本の最先端技術 研究機関の対中連携見直せ 編集委員・田村秀男
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140915/dms1409151139001-n1.htm
2014.09.15 夕刊フジ
■狙われる日本の最先端技術
本紙サイバー問題取材班は東京版の連載企画「狙われた情報通信」で、独立行政法人「情報通信研究機構(NICT)」と同「理化学研究所(理研)」が中国人民解放軍系の研究機関と連携していることを明らかにした。自らの先端技術研究が軍事に応用されるリスクを意識しないまま中国と交流する国内の有力研究機関は大学など他にも多い。政府は公的資金によって支えられる日本の研究機関に対し、対中連携の全面見直しを求めるべきではないか。
度重なる中国からのサイバー攻撃に慣れっこになっているはずの米軍関係者を震撼(しんかん)させる事件が8月18日に表面化した。米国最大級の病院グループ、コミュニティー・ヘルス・システムズ(CHS)がサイバー攻撃を受け、約450万人分の患者の個人情報が盗まれたのだ。6月にはモンタナ州保健衛生局のサーバーから約100万人の個人情報が奪われた。攻撃を仕掛けたのは、いずれも「APT18」と呼ばれる中国のハッカー集団という。
知り合いの米情報筋に聞くと、「最も懸念したのは米国市民の遺伝子情報の流出だった」という。特定の遺伝子だけを狙い撃ちにする生物化学兵器が開発されると、その遺伝子を持つ人種すべてが標的にされる危険性が高まる。それは科学フィクションのような話だが、ロシアは国防を理由に2007年に遺伝子サンプルの輸出を禁止した。
理研は06年5月から今年5月までの8年間、中国科学院上海分院との間で「包括的協力協定」を結んでいた。対象項目には「化学生物学」「バイオリソース」(研究用実験動物・植物、細胞、遺伝子、微生物などの情報)が含まれる。上海分院は人民解放軍と一体となっており、傘下にはレーザー兵器開発に取り組んでいる上海光学精密機械研究所(SIOM)がある。理研はSIOMと昨年9月に研究協力覚書に調印した。
米情報筋は、「中国科学院は10年以上前から遺伝子攻撃兵器の開発に取り組んでいる。亡くなられた理研発生・再生科学総合研究センター副センター長の笹井芳樹さんのゲノム分析手法に中国側は着目していたはずだ」とみている。
中国系投資ファンドが日本の代理人を通じて医科大学系を含む首都圏の大型病院を買収する動きも耳に入る。利益動機によるものには違いないが背後の気配は不気味だ。
NICTは13年1月、中国科学院・上海微系統研究所(SIMIT)と協力覚書に調印した。重点協力分野は、「超電導」「バイオ・エレクトロニクス」「テラヘルツ(光波と電波の中間域にある電磁波)」の3つ。テラヘルツは超高速大容量通信手段となる。NICTは民生用をめざすが、人民解放軍系と目されるSIMITの思惑がそうだとはとてもいえまい。
12年にはシンガポールで、テラヘルツ用素材の米国人技術者が怪死した。この事件について英フィナンシャル・タイムズ紙は13年、解放軍系と米政府がみる中国の通信機器大手の関与疑惑を報道。シンガポール政府の判定は「シロ」だが、今年7月に米CBSが同当局による重要証拠物件破壊を特報するなど、米国側の関心は依然として高い。
理研やNICTの研究連携先の総元締めである「中国科学院」は純然とした科学研究を装い、中国全土で114件もの研究所群を統括する。傘下の研究所は党指令に応じて共同体制を組む。SIMITもSIOMもサイバー戦争や大量破壊兵器開発のような軍事プロジェクトで結集するし、他の研究所も党や軍の要請に応じて軍事技術研究に関わる可能性がある。
東大医科学研究所は中国科学院微生物研究所と分子生物学や分子免疫学で協力しているし、独立行政法人「物質・材料研究機構」は中国科学院大連化学物理研究所と燃料電池の共同研究に取り組んでいる。これらは民生用に見えるが、中国側は随時、日本の技術研究成果を軍事用に生かそうとしている点を見落とすべきではない。
中国は対米や対日サイバー攻撃の激化にみられるように、習近平体制のもとで、トウ小平氏が敷いた「韜光養晦(とうこうようかい)(自分の能力を隠す一方で力を蓄える)」というソフト戦術を全面放棄し、力をむき出しにして取るべきものを最大限取っていく路線に転じた。脇の甘い日本の研究機関は絶好の標的に違いない。
日本政府と関係機関は、古色蒼然(こしょくそうぜん)とした「日中友好」路線と決別し、虎の子の最先端技術が流出して日本国と国民をかみ砕く牙にならないようにすべきなのだ。
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