01. 2014年9月15日 06:36:35
: jXbiWWJBCA
【第127回】 2014年9月12日 保田 隆明 「日本は物価が高い」は今やむかし・・・? 久しぶりに訪れたアメリカは 物価高で驚きの連続だった!という話 9月初旬に出張で米国のボストンとニューヨークを訪問した。 ちょうど出発する1週間ほど前に、休暇で米国に行ってきたという友人とランチをする機会があったのだが、その際に「アメリカのいろんなものが高く感じた。日本がデフレを続けている間に、海外の物価が相対的に高くなったことを体感させられた」という話を聞いた。 「どれどれ、いかほど高くなったのだろう・・・?」と思いながらの今回の米国出張だったが、結論としては、まさにその通りであった。これで、円安にでもなろうものなら、海外旅行が高嶺の花となってしまいかねない・・・。 久しぶりの米国訪問は驚きの連続!写真はマンハッタン上空から。手前に見える緑の公園がセントラルパーク。その向こうに見えるビル群で一番高いのがエンパイアステートビルディング。先端はウォール街方面で高いビルは建て替えられたワールドトレードセンター(著者撮影) 水が2ドル!?(150〜200円)
早速であるが、日常的に利用するものの価格感から話を始めると、水の値段だ。 500ミリリットルのペットボトルがコンビニで買うと1.5ドルから2ドルする。空港で買うと3ドルであった。日本円にすると150円〜200円ということで、べらぼうには高くない印象も受けるが、13年前にニューヨークに住んでいた際の感覚では79セント程度であったと思う。 もちろん値段は店によって異なり、道ばたの露店では1ドルで売っているところも見かけることができた。よって一概には言えないが、コンビニで水に2ドルを払うのは負担感が大きい。 物価上昇のチリツモのインパクトは大きい 次は地下鉄である。 ボストンもニューヨークも乗る距離に関係なく一律料金なのだが、それぞれ2.65ドルと2.5ドルかかる。日本の場合は距離に応じて運賃が高くなるので、簡単な比較はできないが、やや高い印象ではないだろうか? ご存知の方も多いように、ニューヨークの地下鉄は東京のそれと比べると清潔さ、定時運行度合い、快適さにおいて明らかに劣る。しかし、2.5ドルする。 この数字だけでは分かりにくいと思うが、私が13年前の2001年、ニューヨークに住んでいた際は、地下鉄の料金は1.5ドルであった。10年ちょっとでなんと67%も値上がりしたのか!とびっくりするわけだが、1.5ドルから2.5ドルへの上昇をこの13年間の年率上昇率として計算すると、年率4%ずつ値上がりをしたことと等しい。 毎年数パーセントずつでも物価が上がれば、ある程度の期間が経つと、モノの値段は結構上がることになる。一方の日本は同じ期間デフレであったため、モノの値段は下がる一方であった。相対的にアメリカの物価が高く感じるわけだ。 もっとも、円に換算する場合は、為替の影響を受けるため、最終的な割高感(あるいは割安感)は時期によって異なるが、少なくともドルで過去との対比でみた場合は、「うわっ、上がったなあ」と感じざるを得ない。 同じことは、エンパイアステートビル近くのコリアンタウン(韓国街)で食事をした際にも感じた。現地の知り合いと二人で夕食を取ったのだが、ビビンバ、チヂミ、プルコギ、ビール1杯ずつで100ドル超えである。 感覚的には70〜80ドルかなと思っていたので、なぜに?と思ってレシートを見てみると、ビビンバ、チヂミ、プルコギはすべて20ドルを超えている。13年前に住んでいた時の感覚では、どれも15ドル程度だ。決してファンシーな店ではなく、普通の韓国料理屋さんである。日本で同じものを食べても6000円程度ではないかと思われる。それが100ドルオーバーだ。 このようにあげるとキリがないが、さまざまな場面で「高いなあ」と思うことが多く、ボストンで現地の人と話していた際に、「日本って物価が高いんでしょ?」と聞かれた際には、“it used to be but not anymore(かつてはね)”と答えざるを得なかった。 今回、私がニューヨークで証券会社で働いていた時の元上司(アメリカ人)とランチをした際に、これら一連の話をしたのであるが、彼も「確かに物価は毎年上がっているな」という反応であった。 そして、こう付け加えた。「でも、円がまだ比較的強いからまだマシじゃないか? 円がもっと弱くなると、お前が感じたアメリカでの物価高はより強まるものな。そもそも、日本はあんなに多額の借金を抱えているわ、金利はゼロだわと、円が評価されるべき要因なんてないんだから」 為替に対する見方は人それぞれであろうから、今の水準が適切かどうかに関してここでは議論しないが、たしかにこれが1ドル120円とかだとすると、負担感はますます増すなと思い少し暗い気分になってしまったのであった。 もっとも、日本の物価が相対的にあまり高くないのであれば、海外からの旅行客を増やすという意味ではプラスに働く。日本政府は東京オリンピックまでに海外からの観光客を倍増させたいとしているが、物価が高いから日本には行けないという状況ではなくなりつつあるのかもしれない。 アメリカではUberが大活躍 観光ネタついでに最後に脇道にそれるが、今回、ボストンでもニューヨークでもUberを活用した。最近東京でもサービスを開始しているのでご存じの方もいると思うが、白タクやリムジンサービスに近く、タクシー代わりに使える。 仕組みとしてはこうだ。スマホでUberのアプリを立ち上げると、自分の近くにいるUberの車たちが地図上に表示される。アプリで配車を依頼すると近くにいるUberの車が迎えに来てくれる。何分後に到着するか、そして、到着する車のナンバープレートとドライバーの名前が表示される。行先をアプリ内で打ち込んでおけば、ドライバーの手元のアプリで行先の地図が表示され、ナビゲーションされていく。ルートはこちらのアプリの手元でも表示され、運転中は自分がどこにいるか分かるため、遠回りされる心配もない。よって、こちら側が英語が苦手でも、快適に目的地に連れて行ってもらうことができるのだ。 使用している車は、タクシーよりもきれいだ。支払いはアプリ内で事前に登録してあるカード払いで、また、事前にチップは15%など定めておけばチップ込みでの支払いとなるため、面倒なチップの計算も必要ない。領収書はメールで送られてくる。配車を依頼するのに電話をかける必要がないのも大きい。 ドライバーは乗客からレビュー(評価)を受けるため、横柄な対応はできない。ネットでUberを活用した人たちの体験記を読むと、ドライバーが車内でもフレンドリーに話しかけてきて、あれこれ甲斐甲斐しくしてくれたという話もあったので、日本のエムケイタクシーのドライバーぐらい丁寧なのかと期待をしたのだが、今回私が何度か利用した限りでは、ドライバーの質そのものは普通のタクシーと変わらないように思った。ただ、何より料金とルートが明瞭であること、これがストレスを大いに下げてくれる。 東京五輪に向けて日本でもさまざまなインフラ整備が必要になってくるが、このようなソフト面の充実も重要になるよな、ということを今回Uberを通じて実感したわけである。 先ほど登場した元上司は何十回と日本を訪問しているが、JRや地下鉄の出口に迷う、切符が難しい、英語のメニュがある飲食店が少ない、できれば写真つきでお願いしたいと嘆いていた。なお、羽田空港の利便性を高めるために、東京の上空を飛行機が飛べるようにすることが議論されているが、今回ニューヨークからボストンに向かう国内線ではマンハッタンの真上を飛んで行った。 最後に話はそれたが、自分が海外に行くことを思うと日本の物価が相対的に高いほうがいいし、海外からの観光客を増やして国内でたくさん消費してもらうには物価が高いと困る。なんとも複雑な状況ではあるが、政府は年率2パーセント程度の物価上昇を目指している。一番困るのは、国内の物価は上がるが給料は増えないという状況である。それだけはやめてくれよと思いながら日本に戻ってきたのであった。 http://diamond.jp/articles/zai-print/59102 |