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あの日経が論調変えた? 鈍い景気回復の足どり、ようやく認めたのか(J-CASTニュース)
http://www.asyura2.com/14/hasan90/msg/350.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 9 月 09 日 22:00:05: igsppGRN/E9PQ
 

日経が変調?「もたつく景気回復」の第1回(画像は、日本経済新聞2014年9月8日付1面より)


あの日経が論調変えた? 鈍い景気回復の足どり、ようやく認めたのか
http://www.j-cast.com/2014/09/09215452.html?p=all
2014/9/ 9 19:51 J-CASTニュース


日本経済新聞が「もたつく景気回復」の連載を開始した。

2014年9月8日付1面が、その第1回。「消費、シニア・外国人頼み」の見出しが躍り、3面には、「『7〜9月の景気回復、期待下回る』経産相 悪天候など指摘」と、景気の腰折れ懸念を伝えている。

■景気回復、「前向き」報道が目立っていた

日本経済新聞の連載「もたつく景気回復」は、景気が「安定成長に戻り、脱デフレの道筋を確実にするための課題を点検する」のが主旨のようだ。

第1回は、消費増税後に足踏みが続く消費を、高齢者と外国人が下支えしているようすを伝えているほか、「消費の減速感は地方で一段と強い」と、クルマ社会の地方では消費増税とガソリン価格の値上がりで大型量販店の売れ行きが落ちていると報じている。

さらに、3面では甘利明経済再生相が「7〜9月の(景気の)回復力は期待よりもおだやか」との認識を示したことを報じ、4面の特集記事「核心 〜消費再増税の通りゃんせ〜」では「自動車や家電など耐久財や住宅なら駆け込みの反動というのもわかるが、食品をはじめ非耐久財の売り上げもパッとしない」とこぼしている。

加えて、14面では「サーベイ 〜人手不足『そう思わない』57%〜」との見出しで、この結果が「意外だった」しながらも、「個人の心理が明るくなっているかというと、いまひとつのようだ」とみている。

実際に、国内景気はさえない。たとえば、厚生労働省の毎月勤労統計調査(速報値)によると、7月の現金給与総額の平均は36万9846円と前年同月に比べて2.6%増えた。しかし、物価変動分を考慮した実質水準でみると、現金給与総額は前年同月比1.4%減と13か月連続のマイナスだ。

賃金上昇のペースは、消費増税の転嫁分を含めた物価の上昇に追いついておらず、日経も「持続的に賃金が上がって企業の生産活動が活発化、それがまた賃金上昇につながるという好循環はまだ先だ」(9月8日付14面)と報じている。

いずれにしても、これまで消費増税とそれに伴う駆け込み需要の反動減について、日経は「影響は和らぎつつある」「景気は夏以降に回復する」などと強気に、前向きに報じてきた。それをようやく、消費回復が「鈍い」ことを認めざるを得なくなったようにみえる。

第一生命経済研究所経済調査部のエコノミスト、藤代宏一氏は、「(日経の『もたつく景気回復』の報道は)明らかにトーンが変わりましたね」と、話している。

■「期待」が消費者をつなぐ?

2014年9月8日、内閣府は4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率を、前期比年率6.8%減から7.1%減へ下方修正した。8月に速報値を発表した後に、運輸や金融業を中心に設備投資のマイナスが想定よりも大きかったことがわかったためという。

また、8月の景気ウオッチャー調査(街角景気)では、足もとの景気実感を示す現状判断指数が前月比3.9ポイント低下の47.4と4か月ぶりに悪化した。

これらをみると、とても景気が回復基調にあるとは思えない。

日本経済新聞は9月7日付1面の「景気回復もたつく」でも、見出しとは裏腹に、「消費増税後の落ち込みは一時的で『景気は穏やかながら回復する』との見方が多い」と強調。さらには、家電量販店のケーズホールディングスの加藤修一会長の言葉を借りて、「『企業業績の改善と給与増でこれから景気は良くなる』と先行きに期待を寄せる」と、景気回復への「期待感」を前面の押し出し、報じた。

「景気ウオッチャー調査」などをみれば、景気回復は実感できないが、日経の報道をみると、なんとなくでも景気が回復しているように感じる。とはいえ、消費者の多くは、「景気がいいのか悪いのか、わからない」というのが本音かもしれない。

前出の第一生命経済研究所の藤代宏一氏は、「エコノミストの予想より、増税の影響が強いことは間違いありません。ただ、反発力は弱いものの、じんわりと(景気は)持ち直しているのも事実です。たとえば、中小企業DIなどの指標をみると、企業が予定していた設備投資をやめたり、消費者が必要以上に財布のひもを締めようしたりするほど、苦しんでいるとはいえません」と話す。

先行きへの期待感だけが、かろうじて消費者をつないでいるということらしい。


 

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コメント
 
01. 2014年9月09日 22:13:05 : 3EMgCxnjJI
このバカ。投資計画を撤回したり、個人消費が半減したりしないかぎり景気回復だと言うのか。

02. 2014年9月09日 23:35:05 : J3VSwtRkgk
増税後の数カ月で
何万人の人が自殺したのかな?

とうとう、テレビで人身事故による
交通機関の遅れについての速報、流さなく成ったよね
事実を伝えられないほど状況は酷いんだろうね


03. 2014年9月10日 03:17:05 : jXbiWWJBCA
シティ、ヴァージンが消える意味

「しぼむ選択肢」という由々しき事態

2014年9月10日(水)  小平 和良


 8月下旬、米シティグループが日本の個人向け業務を売却することが明らかになった。

 米シティグループが日本国内の個人向け銀行業務を売却する方針を固めたことが19日、明らかになった。すでに3メガバンクなど邦銀9行程度に営業譲渡を打診した。低金利が続く日本では個人向け業務の収益を確保するのが難しいため、撤退を視野に入れている。法人業務は継続するが、進出から100年を超す老舗外資が日本戦略を抜本的に見直すことになる。
(8月20日付日本経済新聞朝刊)
 9月12日には売却先を決める第1次入札を実施するという。シティは1902年(明治35年)、横浜に日本で初めての支店を開いた。日経新聞も書いているとおり、老舗の外国銀行だ。1997年には日本法人を設立し、日本の銀行免許を持つシティバンク銀行として営業してきた。日本で初めて24時間365日取引できるATMを設置するなど、国内の大手銀行にはない独自のサービスを手がけ、各行横並びで顧客満足の意識が低かった当時の銀行界では異色の存在として光っていた。

 筆者も、海外のATMで現地通貨を引き出せるのを魅力に感じて、シティバンク銀行の口座を開いたクチだ。

ヴァージンはロンドン‐成田線から撤退

 シティ撤退のニュースに驚いていたところに、もう1つ外資撤退のニュースが飛び込んできた。

 英ヴァージン・アトランティック航空のロンドン‐成田線の廃止だ。

 英ヴァージン・アトランティック航空は、来年2月にロンドンのヒースロー空港と成田空港を結ぶ路線を廃止することを決めた。ヴァージンは採算改善のために航路の見直しを進めており、成田便などを廃止して収益性の高い北米向け路線を拡充する方針だ。ヴァージンはロンドン―成田間で、毎日往復1便ずつを運航している。2015年2月1日の成田発ロンドン行きを最後に、運航をやめる。
(9月4日付日本経済新聞夕刊)
 よく知られているとおり、ヴァージンは独自のサービスを武器に航空業界に風穴を開けてきた存在だ。同社が他の航空界社に先駆けて手がけたサービスが、その後、航空業界の標準となった例もある。そのヴァージンの撤退により、成田‐ロンドンの直行便を運航するのは、英ブリティッシュエアウェイズのみとなる。

 時を同じくして明らかになったシティとヴァージンの日本撤退は何を意味するだろうか。外国の企業が以前ほど日本市場に魅力を感じなくなったという見方は、他のメディアなども指摘している。銀行業界では2008年のリーマンショックの後に、英HSBCや英スタンダード・チャータード銀行も個人向け業務から撤退している。人口減が始まり低成長が続く日本から新興国などにリソースを振り向けるのは世界で事業を展開する企業の経営判断として当然とも言える。

 不安を感じるのは、これが外国企業に限った話なのかということだ。

 今、航空業界で注目されているのがスカイマークの先行きだ。エアバスの大型航空機「A380」の購入トラブルで苦境に立つスカイマークは最終的に大手航空会社の傘下に入るのではとの観測も出ている。今回の苦境は経営の判断ミスという側面もあり、自ら撤退というケースとは異なる。しかし、仮に大手の傘下に入れば、全日本空輸と日本航空という日本を代表する2大キャリアとは異なる第三の選択肢の1つが消えることになりかねない。選択肢が減るという点では、シティやヴァージンのケースと同様だ。

 加えて、国の規制緩和よって登場した新興航空会社が結局、1つもうまくいかなかったという汚点を残すことにもなる。

既存の金融機関を揺るがすアリババの「余額宝」

 シティの銀行業、ヴァージン、スカイマークの航空業はともに国の規制が厳しい業種である。三社に共通するのは、時に様々な規制や既存勢力と戦いながら消費者に新たなサービスを提供してきたという点だろう。だが、シティバンク銀行やヴァージン、スカイマークのような、これまでと異なるサービスを提供する企業が魅力を感じない、もしくは成立しない市場になっているとしたらどうだろう。

 筆者が現在生活している中国では、アイデアをそのまま形にしてみましたと言わんばかりのサービスが次々と生まれ、時に既存勢力を脅かす存在になることがある。例えば、アリババ集団が販売している投資商品「余額宝(ユーウーバオ)」などはその典型ではないだろうか。

 余額宝は銀行の定期預金を遥かに上回る利回りながら、いつでも出し入れができるという利便性が受けて、瞬く間に資産残高を増やした。販売開始から1年で資産残高は9兆円を超えたと伝えられている。その急拡大ぶりは既存の金融機関を揺るがす存在になっている。

 中国人の商魂のたくましさという観点もあるし、ニューヨーク証券取引所上場へカウントダウンに入ったアリババ集団をはじめとする中国のIT(情報技術)企業の勢いの凄まじさという観点もあるとは思う。ただ、やはり短期間でこれだけの金額を集めてしまう中国市場の大きさが様々な挑戦を可能にしているのではないだろうか。

 一方、人口減と高齢化が進む日本が、リスクを取って参入する価値のない市場になりつつあるとしたら大きな問題だ。消費者にとっては、多様なサービスから自分の好みに合うものを選ぶ選択肢が減ることを意味する。企業にとってみれば過当競争から逃れられることは心地良いかもしれないが、競争からイノベーションが生まれる状況がなくなるのは長期的にはマイナスだろう。シティ、ヴァージンの撤退には、単に「外資が日本を捨てる」という以上の意味があるように感じている。

このコラムについて
記者の眼

日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140909/270997/?ST=print


日本は老化し衰退する国という現実


04. 2014年9月10日 12:17:55 : jXbiWWJBCA
コラム:アベノミクスに転換迫る「不都合な真実」=河野龍太郎氏
2014年 09月 9日 18:02 JST
河野龍太郎 BNPパリバ証券 経済調査本部長

[東京 9日] - マクロ安定化政策を方向転換すべき時期が到来していると、筆者はかねてより指摘してきた。日本経済のスラック(弛み)がほぼ解消され、追加財政と金融緩和(それに伴う円安)のメリットはほとんどなくなり、デメリットが大きくなっているからである。

円安による景気刺激効果を重視する人が多いが、円安が進んでも国内生産能力の低下から実質輸出が増えない一方で、円安による輸入物価上昇が家計の実質所得を損なっている。消費増税後の個人消費の戻りが弱いのは、増税の後遺症だけでなく、円安も影響している。

円安が進めば、実質輸出が増えなくても、輸出企業の業績が改善し株価が上昇するため、効果は大きいという意見もある。しかし、円安が生産増やそれに伴う雇用者報酬の改善につながっていない以上、輸出企業の業績改善は家計部門の実質購買力を犠牲にしているだけである。

交易条件の悪化を通じた海外への所得移転まで考えると、一国全体ではデメリットの方が大きい。円安で株価が上昇しているのなら、株価は日本経済の一部を反映しているだけで、一国全体の姿を映す鏡にはなっていないということである。

円安のデメリットが大きいということは、実質円安を助長している日銀の異次元緩和についても、弊害が急速に大きくなっているということだ。また、財政政策に関して言えば、金融政策以上に大きな弊害が現れている。継続的な追加財政によって、建設労働者不足や資材価格高騰が深刻化し、公共事業の執行が遅れているだけでなく、クラウディングアウト(押し出し)効果で民間建設投資を抑制している。多くの人の常識に反するが、むしろ公共事業を抑制することが、民間投資を促す状況である。もはや円安は望ましくなく、日銀もテーパリング(異次元緩和の段階的縮小)を検討すべき時期であり、財政については抑制すべき時期に来ている。

アベノミクス開始後、これまで高めの成長が可能だったのは、経済にスラックが残っていたためである。しかし、前述の通りスラックはほぼ解消されたため、ここからはトレンドを大きく超える成長の継続は難しい。

スラックが解消された後に見えてくるのは、日本経済の実力であり、潜在成長率の低さである。筆者の分析では、2010―12年度の潜在成長率は0.3%まで低下している。心配されるのは、供給能力の限界を認めず、低成長は総需要が弱いからだと考え、さらなる円安、追加緩和、追加財政で対応しようとすることである。繰り返すが、低成長の原因が供給制約にあるため、それらの政策はいずれも逆効果となる。

潜在成長率の引き上げが急務だが、労働力は減少が始まってすでに15年以上の時間が経過し、民間純資本ストックも09年度以降、全く増えていない。簡単に潜在成長率が高まっていくような状況にはない。

政府は2%の潜在成長率の目標を掲げているが、無謀と言わざるを得ない。今後の純資本ストックや国民純貯蓄の動向を考えると、潜在成長率はそう遠くない段階で、マイナスの領域に入る可能性がある。

<国民純貯蓄を食い潰す社会保障費>

この点について、もう少し詳しく見ていこう。10―12年度の潜在成長率は0.3%まで低下したと述べたが、寄与度を分解すると、労働投入がマイナス0.4ポイント、資本投入が0.1ポイント、全要素生産性(TFP)が0.6ポイントとなる。今後も労働投入が年率0.8ポイント程度で減少することを考えると(寄与度はマイナス0.6ポイントまで悪化)、資本投入とTFPを高めていかなければ、0.3%の潜在成長率を維持することは難しい。

国内生産能力の低下から実質輸出が増えていないことなどから判断すると、13年度以降も、民間純資本ストックはほとんど増えなかったと見られる。粗投資は確かに増えたが、資本減耗や除却を考慮すると、民間純投資は概ねゼロで、民間純資本ストックは横ばいだったということである。

もちろん、純資本ストックが増えない場合でも、TFPが大きく上昇すれば、潜在成長率を維持することは可能だろう。それゆえ、成長戦略は重要である。TFPが上昇してくれば、それに伴って資本収益率が高まっていくため、いずれ民間純投資もプラスに転じ、民間純資本ストックも増加してくる。ただ、重要な点だが、日本経済にスラックがなくなってきたということは、民間純投資についても、供給制約が影響してくるということだ。

前述した通り、公共投資の増加で建設投資のクラウディングアウトが起こっているが、それだけでなく、完全雇用の中で一国の純貯蓄が民間純投資の制約条件となってくる。スラックがある中では純投資が増えれば純貯蓄も増えるが、完全雇用に達すると純貯蓄が純投資の上限となるのである。さらに、その純貯蓄(国民純貯蓄)はすでに社会保障費の膨張で食われ、ほとんど枯渇している。

我々は、将来、より豊かな生活を営むために、毎期の所得の全てを消費せず、一部を貯蓄に回している。その貯蓄を基に投資が行われ生産能力が高まるから、より高い所得の獲得が可能となる。国民純貯蓄は一国全体のネットの貯蓄であり、それは国内純投資か経常収支(=純輸出)のいずれかを通じて、蓄積されていく。

国民純貯蓄が国内純投資(=民間純投資+政府純投資)で吸収される場合は、国内の生産能力の増強をもたらす民間純資本ストックや公的純資本ストックの増加につながる。純輸出で吸収される場合は、対外純資産の増加につながる。しかし、国民純貯蓄は09年度以降、ほぼゼロまで低下している。つまり、一国全体の資本蓄積そのものが止まっているのである。

<潜在成長率のマイナス転落は時間の問題>

問題は、今後、国民純貯蓄がさらに低下し、そのこと自体が、民間純投資の制約となることだ(議論が複雑になるのを避けるため、以下では政府純投資や公的純資本ストックを割愛するが、結論は変わらない)。これまでは、民間純投資が低迷を続け、経済が完全雇用に達していなかったため、国民純貯蓄が低下しても、資本市場で需給がひっ迫することはなかった(それゆえ金利も上昇しなかった)。しかし、もし民間純投資が横ばいか、回復に転じると、マイナスの領域に低下する国民純貯蓄が大きな制約になってくる。

そもそも、なぜ国民純貯蓄が低下を続けているのか。政府と民間の純貯蓄を見ると、民間純貯蓄はなお高水準で維持されている。しかし、拡大した政府赤字がそれを吸収し、09年度以降、国民純貯蓄はゼロ近傍まで低下している。

言うまでもなく、政府赤字がこれほど膨らんだのは、社会保障給付が膨張したためである。仮に民間純貯蓄が現在の水準を保つとしても、社会保障給付の膨張で政府赤字が膨らむため、早晩、国民純貯蓄はマイナスの領域に陥る。つまり、資本蓄積が停止するだけでなく、一国全体で資本の取り崩しが始まる。

もちろん、国民純貯蓄がマイナスでも、理論上、民間純投資をプラスに保つことは可能である。その場合、「国民純貯蓄=国内純投資+純輸出」の恒等式から明らかなように、純輸出はマイナスとなる。つまり、海外からのファイナンスによって、民間純投資がプラスを維持するということである。ただし、海外から資金を引き付けるには、市場金利は十分に上昇しなければならない。その時、利払い費の膨張で、公的債務の持続可能性が保たれるかという大きな問題が生じる。

社会保障費の膨張によって国民純貯蓄がマイナスとなる中で、民間純資本ストックを維持し、潜在成長率を高める、あるいは維持するというのは、公的債務の持続可能性との両立という点からするとかなり難しいのかもしれない。

ここで、現実に起こっていることを整理しておこう。社会保障費の膨張で国民純貯蓄がゼロまで低下する中で、民間純投資がマイナスとなり、純輸出が小幅なプラスを維持している。つまり、収益性の低い民間純資本ストックを取り崩す形で資金が捻出され、海外での資本蓄積が維持されている。社会保障費の膨張で国民純貯蓄は枯渇したが、民間純投資がマイナスまで低下したから、市場金利は落ち着いていたのである。潜在成長率の低下という犠牲があったからこそ、財政危機が避けられているともいえる。

それでは、この先、国民純貯蓄がマイナスの領域に入ることの意味は何か。そのとき、どんなことが起こっているのか。まず、将来の所得増につながるはずの民間純貯蓄が、社会保障給付によって費消されているが、それだけで足りず、民間純資本ストック、対外純資産の取り崩しも始まる。

現在は、社会保障給付の約5割が年金給付であるため、支払われた年金の一部は消費されず、高齢者の貯蓄という形で、金融機関を通じ、国債ファイナンスに回っている。しかし、高齢化が進展すれば、貯蓄の取り崩しが始まる。さらに、医療、介護などの現物給付が多数を占めてくると、それらの消費のために民間純資本ストックや対外純資産が取り崩される。ストックがさらに減少するのだから、潜在成長率がマイナスの領域に入るのは時間の問題だろう。

なお、貯蓄投資バランスの分析から明らかな通り、社会保障費の膨張による潜在成長率の低下問題は、増税では解決できない。増税を行っても、社会保障費の総額が変わらなければ、民間純貯蓄が政府に移転するだけで、国民純貯蓄が低下する状況は変わらないからである。

したがって、社会保障給付が赤字国債でファイナンスされようが、増税でファイナンスされようが、民間純資本ストックの取り崩しは進む。いずれも、民間純貯蓄は資本蓄積ではなく、社会保障給付サービスの消費に充てられる。増税によって財政危機はひとまず回避可能かもしれないが、資本の取り崩しが続けられる以上、潜在成長率がマイナスの領域に入るのは避けられない。つまり、社会保障費の膨張を止めなければ、民間純資本ストックなど富の取り崩しが進み、潜在成長率がマイナスとなるのは不可避である。

<資本市場の劇的な変化はいつ起こるか>

では、資本市場で劇的な変化が起こるのは、どのタイミングだろうか。筆者の分析では、それは必ずしも経常収支が大幅な赤字となるタイミングではなく、民間純資本ストックの減少が続くことを背景に、潜在成長率が明確なマイナスの領域に入ったタイミングとなる。

経常収支が大幅な赤字となるタイミングと考える人が多いが、それは国民純貯蓄の減少が続く中で、社会保障の膨張による政府赤字を海外ファイナンスに頼らなければならないケースである。確かにそうした状況では市場金利に上昇圧力がかかる。

ただ、国民純貯蓄が減少を続けても、民間純投資も同じペースで減少を続ければ、経常収支赤字はあまり膨らまないかもしれない。その場合、これまでと同じように、民間純資本ストックの減少が続き、潜在成長率も低迷するから、市場金利も安定が続く。とはいえ、税収は経済規模に依存するから、潜在成長率が明確なマイナスになってくると、将来の税収では現在の公的債務は返済できないことが明らかになる。

つまり、マネタイゼーション以外に手立てがないことが、資本市場で広く認識されるようになり、そのタイミングで劇的な期待の変化が生じる。金利急騰による財政危機が回避可能かどうかは、日銀の行動次第ということになる。事実上の金融抑圧がすでに始まっているともいえるが、それがより強化されることになるのだろう。

以上、論じたように、社会保障費の膨張を止めることが潜在成長率を維持する上で極めて重要だが、そのことに多くの人は気が付いていない。いや、薄々は気が付いているのだが、シルバー民主主義の下では社会保障費を削減することが極めて困難であるため、不都合な真実に目をつぶっているのかもしれない。

仮に、成長戦略が成功すれば、民間純貯蓄は多少は改善するが、社会保障費の膨張で吸収され、国民純貯蓄が大きな制約となって民間純投資の増加を抑制することに変わりはない。民間純資本ストックの増加が限られるため、潜在成長率の改善はやはり限られる。潜在成長率の改善には、社会保障費の削減が不可欠である。

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0H00N420140909


05. 2014年9月10日 20:11:33 : S0ZJM3PqEg
希望的 観測ばかり 並べ立て
嘘は分厚い 化粧で覆い

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