01. 2014年9月08日 10:47:44
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資本関係も重要だろうが本業を疎かにしないことだな http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41639 株価が下がれば大手銀行が困る―経費をどう賄うか 2014年09月08日(Mon) Longine(ロンジン) 本記事はLongine(ロンジン)発行の2014年8月15日付アナリストレポートを転載したものです。 執筆 笹島 勝人 本資料のご利用については、必ず記事末の重要事項(ディスクレーマー)をお読みください。当該情報に基づく損害について株式会社日本ビジネスプレスは一切の責任を負いません。 投資家に伝えたい3つのポイント ●大手銀行のQ1(2014年4-6月期)の減益には、営業経費増加がありました。海外が一因ですが、国内もベアや公共料金値上げなどで増加が続くと削減は難しそうです。 ●業務が多様な大手銀行は、資金利益だけで営業経費を賄いきれません。市場部門は異次元緩和で儲けにくいので、投資信託販売や証券子会社そして株式関係損益、つまり株式市場が一段と業績を左右しそうです。 ●PBRやPERは低いままですが、潜在成長力とROEの伸び悩みが、影を落としているようです。 大手銀行グループのQ1(2014年4-6月期)決算を振り返る 2週間以上が経ちますが、Q1決算を振り返ってみます。三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)、三井住友フィナンシャルグループ(8316)、みずほフィナンシャルグループ(8411)、りそなホールディングス(8308)、三井住友トラスト・ホールディングス(8309)、の5つの大手銀行グループの当期純利益は前年比20%減となりました。さらに、業務純益(連結粗利益−営業経費)も同16%減と2桁減益となりました。債券売買など市場部門の大幅減、株式市場停滞による投資信託販売や証券子会社からの手数料収入の伸び悩み、などが要因です。ただ、決算自体は大きな話題になりませんでした。2015年3月期会社予想の当期純利益は期初から同14%の減益見通しだったこともあり、達成率は29%と最低限の1/4はクリアしました。主な減益要因も想定されたものだったからでしょう。 営業経費が同6%増、金額では市場部門に次ぐ業務純益の減益要因 とはいえ決算をもう一度見直すと、見落としがちな減益要因がありました。営業経費の増加です。前年比を率でみると6%増と目立ちませんが、金額的には893億円増と、市場部門の1,040億円減に次ぐ大きなインパクトになります。一部の説明によれば、海外ビジネスの強化に伴う増加とあります。確かに、貸出の増加は海外がけん引役となっていますし、三菱UFJではタイのアユタヤ銀行の買収も要因とあります。また現在、こう着状態にあるとはいえ、為替も1年前と比べると円安であり、海外分を円換算すれば経費を押し上げることになります。大手銀行の海外事業の重視と拡大の姿勢は一段と強まっているので、再びかなり円高にならない限り、海外関連の経費が減るというのは難しいと言えるでしょう。 営業経費は固定費的、増えた後の削減はかなり難しい 一度増えた営業経費が、再び減少することが容易ではないことは国内も同じです。銀行の営業経費は、収入との連動性が低い固定費が大半だからです。開示が全社揃っていませんが、人件費の増加がみられます。アベノミクスに沿った賃金増、象徴は基本給の引き上げ、つまり銀行界でもベースアップに踏み切ったことも一因として考えられます。さらに人件費は、下方硬直性が一段と増したといえます。ベースアップだけでなく、契約社員を正社員として雇用し直す動きも広がっているからです。さらに人件費以上に大きい物件費は、ITや店舗関連がメインなので、電力料金を筆頭に公共料金の値上げや消費税率の引き上げが直撃します。かといってITは常に更新が必要ですし、拠点数や営業時間の縮小に踏み切れば顧客イメージなどで逆効果が心配です。物価上昇も顕著となっており、営業経費は今後も増加が避けられないと考えます。 資金利益つまり安定収益源で営業経費を賄いきれず さらに、固定費的な営業経費を安定収益源でカバーできると、利益の安定感が高まります。しかし、再び大手銀行グループ全体のQ1をみると、貸出や債券・株式など利息収入から預金などの調達費用を差し引いた資金利益は前年比3%増ですが、営業経費全体だけでなく前年比の差から増加分も賄え切れていないことがわかります(図表1)。資金利益による営業経費のカバー率は86%です。 他に目を転じて、地方銀行はどうでしょうか。横浜銀行(8332)、千葉銀行(8331)、静岡銀行(8355)の上位3行をみると、上位地方銀行は資金利益の減少は少し問題ですが、営業経費を大きく上回っていることがわかります(図表2)。また、同カバー率は158%です。よくも悪くも、地方銀行の業績と株価が、大手銀行に比べて安定している一因と言えます。 株式市場関連にかかっている大手銀行の業績 大手銀行グループは、傘下には規模の大きな証券子会社などを抱えるなど、多角化戦略を進めてきたので、営業経費が資金利益を上回っていることに違和感はありません。ただこの状況から、大手銀行が業務純益を拡大するは、資金利益以外の他部門で頑張ることが、課されたノルマということが見えてきます。しかし他部門と言っても、それほど多くありません。市場部門の収益は、債券市場が異次元緩和によるこう着で儲けにくくなり、一段と縮小する可能性があります。残る望みは投資信託販売や証券子会社からの手数料、つまり役務取引等利益、言い換えれば株式市場関連の収益ということになります。業務純益以下、当期純利益を左右する株式関係損益も含まれます。最近の株式市場の停滞と相まって、業績に伸び悩み感と不安定さが漂う一因でしょう。 低いバリュエーションに、依然として割安感を見出しにくい 資金利益の柱である貸出収益の面では、海外事業は拡大が続いても、比重の大きい国内貸出の利ザヤ悪化を十分補うことは難しそうです。確かに国内貸出は前年比増加が続いていますが、低収益資産の増加ともいえるので、好材料と妄信するわけにはいきません。日本株の回復=手数料収入の拡大、といった図式も怪しくなってきました。投資信託販売では回転売買的な収益至上主義のような販売が問題視されつつあります。金融庁が7月に発表した「金融モニタリングレポート」では、モデルケースとして2003年3月末から2年ごとの時点で最も人気の投資信託に乗り換えた場合、10年間で投資した資産が3%減少、といった非常に興味深い試算が示されました。最後に図表3をみると、国際的に日本の大手銀行のPBRやPERは低いままですが、業績の成長力とROEの低迷が引き続き影を落としており、割安感は見出しにくい感じです。 出所:SPEEDAをもとに筆者作成
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