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黄金の日日
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中国の外貨準備額は世界最大で、今年第1四半期には1300億ドル増えて過去最大の3兆9000億ドルに達しました。
これについて李克強首相は「率直に言って、外貨準備はわれわれにとって重荷になっている。なぜならこうした準備金はベースマネーへと転じ、インフレに影響を及ぼす恐れがあるからだ」と発言しています。
中国人民銀行(中央銀行)が介入を通じて購入した膨大な外貨は、人民銀が金融調節で資金吸収に動かないとベースマネーとなって物価を押し上げることになります。
この外貨はほとんどがドルです。
アメリカの莫大な貿易赤字と中国の莫大な貿易黒字の不均衡は構造的なもので、解消は不可能です。
この人民銀行が吸い上げたジャブジャブのドルが外貨準備を膨張させています。為替介入で買い上げたドルもあります。
中国はこの外貨準備の運用に苦労しています。
アメリカは付加価値のある財やサービスで比較的優位にあるものをほとんど生み出していません。アメリカ産の軍事品、バイオ、ITに人々の生活水準を高めるような効用はたいして期待できません。
中国がドルを使ってアメリカから買いたいものは限られています。
そのため、投資に使うしかありません。アメリカの不動産や有価証券です。
もっとも、ドル建て資産だけに外貨準備を集中させるとドル建て資産が暴落したときに大損失をうけます。
アメリカ当局の、ゼロ金利政策や量的緩和によって、ドル建て資産の価値はバブル崩壊によって大幅下落するリスクが高まっています。もちろん、量的緩和の副作用によって、ドル暴落、高インフレによるドルの購買力低下の潜在リスクも高まっています。
そのため、ドルを、他の通貨、銅などのコモディティ、他通貨建て資産(有価証券、不動産、資源権益)、そして金などに分散を進めてきました。
しかし、この分散には限界があります。
中国の外貨準備はその規模があまりに巨大なために、それを受け入れるだけの流動性のキャパのある市場は限られます。
中国が相対的に規模の小さい市場に買いをいれるとその市場の価格は暴騰します。そうなると中国もその資産を積み増すために、高い平均コストを支払うことになります。
また、中国がドルの売却を急ぐと、米国債が暴落して、まだ売却できていない残りの外貨に大きな損失が生じます。米国債とドルが暴落して、アメリカの経済は破壊されれば、アメリカへの輸出に大きな影響がでて自国経済も大きなダメージを受けます。
中国は、輸出・投資モデルから内需・消費モデルに転換を図っていますが、都市化のインフラ整備には時間がかかります。都市化はまだ半分しか済んでいません。
都市化が一段落するまでは、中国としては、アメリカに金を貸し付けて贅沢三昧の消費をしてもらう必要があります。
結局、中国の膨大な外貨準備を受け入れるだけのキャパがあるのは米国債しかないのです。
そのため、FRBが政策金利を上げても、長期金利は上がらないと思います。
長期金利は下げ続けるので、今の短期的なドル高、円安、ユーロ安、金安は長続きしません。短期投機筋は、すぐに反対売買をするので一時的なモメンタムはつくれても中長期のトレンドはつくれません。
それでも、中国が、市場に大きな波風をたてず、また、アメリカから警戒されずに、外貨準備を多様化する方法があります。それはドルの金への転換です。それも民間に金を買わせることです。中国に流れ込む、先進国のホットマネーを民間の金購入で吸収することができればインフレを抑えられる効果も期待できます。
中国はドルを金への転換は、目立たないようにゆっくりと行なっています。
中国は、それまで長いこと600トンで維持されてきた公的金保有量を突如2009年に1054トンにまで増加させたことを発表しました。その後は一切公表していません。発表すれば金が暴騰して、アメリカとの関係も悪化するのでタイミングが問題となります。アメリカに対する外交カードにもなります。
中国の金の公的保有は、中央銀行だけでなく、SAFEや鉱山会社、銀行などに分散することで全体象をみえなくしています。中国の場合、鉱山会社や銀行も実質的には公有ですので事実上の公的保有といえます。
中国の四大銀行が公称の公的保有を上回る1445トン金を準備していると報道されています。ロシアも金の公的保有を増やしていますが、その公的保有を上回る金を民間の銀行が準備しているといいます。経済制裁をみこしてのことでしょう。
中国人民銀行(中央銀行)の易綱副総裁は、以前、「中国政府が行き過ぎた金購入を行えば、金価格は急上昇し、中国の消費者に打撃を与えることになるだろう。市場が小さ過ぎるため、金に投じることができるのは外貨準備の1−2%程度にすぎない。外貨準備や投資の1つの選択肢として、常に金を念頭に置いている」。年間500−600トン以上の輸入が可能だが、金相場の安定についても考慮する」と語っています。
当局が直接どんどん金の保有を増やして、IMFに貨幣用金としてそれを報告するとアメリカとの軋轢を産みますし、それに提灯をつけた世界中の人が金を買うことになって金は高騰してしまいます。
それでは、金が高値になって中国の一般消費者が買うことができません。
中国の金地金の個人の所有が解禁になったのはわずか10年前ですし、中国の消費者の購買力はついたのもごく最近のことです。そのため、欧米に比べて、中国の個人はまだまだ金を持っていません。
それでも、中国の消費者は右肩上がりに、実質所得と可処分所得が増えていますし、高い貯蓄率があるので金をこれから買い増すことが期待できます。これから増やすところで政府が買い上げてはそれを害することになります。
中国では、インド同様、結婚式には金が必需品という文化が根付いています。
日本の金の宝飾品としての需要は硬度があって傷がつきにくい18K(純度75%)のものが中心ですが、中国の宝飾品の需要は純金24K(純度99.9%)のものがほとんどです。これはいざとなったときに重さ単位ですぐ換金することができるためです。
中国の金の宝飾品需要は、宝飾品需要として側面だけでなく投資としての意味があります。
またその投資も利潤追求というより価値保存の貯蓄の意味合いが強いと思います。
中国ではインフレ率が高いのにもかかわらず、国の金融抑圧によって預金金利が低く抑えられています。そのため、実質金利がマイナスで現金の預金は価値が目減りしていきます。
中国は資本主義化によって、包括的な社会保障セーフティネットの整備が進んでいません。そのため、実質金利がマイナスでも国民は貯蓄せざるをえません。そこで実質金利がマイナスにならない金が価値貯蔵の手段として選好されています。不動産は換金がむずかしく、株は価格変動リスクが高いから敬遠されているのもあります。銀行の支店が地方に少ないということもあります。日中戦争と内戦の長い歴史でハイパーインフレの苦い記憶があるのも金が伝統的に好まれる理由です。以上のことはインドにも当てはまります。
ハドソン研究所の首席研究員である日高義樹氏によると、大雑把な推定としては、米国と欧州に10万トンのゴールドが貯蔵されていると言われているそうですが、そのうちの70%、すなわち7万トンのゴールドをすでに中国が集め終わっているといいます。これは消息筋の話であるといいます
中国はなぜゴールドの保有量を増やしているのか
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38950338.html
それでも、中国の一般大衆の金保有はほとんど進んでいない状態だと思います。
中国消費者の金購買があるかぎり、金の中長期的な上昇は確約されています。
唯一の懸念は、中国の信用プチバブル崩壊のリスクです。
バブル崩壊で景気が落ち込めば、個人の金購入の勢いも落ちるかもしれません。
もっとも、多少の景気が悪化することがあっても中国は日本やアメリカと違ってまだまだ財政に余裕があるので、強力な金融緩和によってこのバブル崩壊の影響を抑えようとするでしょう。それは日本やアメリカが辿ってきたのと同じ道です。
その場合、先進国とちがってまだまだ需要の強い中国ではインフレが加速するリスクがあります。
このインフレを抑えこむために、中国では人民元高を容認せざるをえません。
人民元高によって、金価格は安くなって、更に金需要が高まると思います。バブル崩壊によって不動産や株はますます敬遠されて、リスクヘッジの金需要が増すというのもありあます。
もっとも、この場合、為替介入が減ることでじょじょにドル買いが減っていきます。
そうなると中国の米国債買いが減り、いよいよリスクプレミアムにより米国債の金利の上昇がはじまると思います。
そのときは、米国債の金利が上昇しても、金価格は今と違って逆に正相関で買われることになると思います。
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