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CCIFJ>出版物>雑誌「フランス・ジャポン・エコー」
パトリック・アルテュス「日本を苦しませているのは需要の問題」
出来事 | 2014年8月26日 | JJE
最も優れたフランス人エコノミストのひとりであるナティクシス証券、パトリック・アルチュス氏によると、「アベノミクス」は間違った道を歩んでいるという。同氏が本誌のインタビューに答えた。
安倍晋三首相はこのほど、その「三本の矢」の新材料を公開しました。スタートしてから1年半が経過した「アベノミクス」をどう評価しますか?
安倍首相が掲げる政策の基本的な根拠として、日本が「供給」の問題に苦しんでいるという考え方があります。首相の考えでは、複数の業界の規制を緩和し、女性の雇用機会を改善し、法人税を下げなくてはいけない、そしてこの法人税減税を補うため、消費税を機械的に上げて消費者増税を行わなくてはいけないというのです。私はこの分析は完全に間違っていると考えています。それは大いなる誤解に基づいています。実際には、日本はむしろ深刻な「需要」の問題に苦しんでいるのです。ここ数年、収益の再分配は完全にバランスが崩れてしまっています。この再分配は、企業を利すると同時に、勤労者の収入を犠牲にするかたちで行われています。実質賃金は年平均1パーセント低下している一方で、生産性のほうは年に1パーセント上昇しています。それが、日本の家計の需要を圧し殺してしまったのです。収益の再分配のバランスを回復させ、給与アップの流れを作ることができない限り、この国の根本的問題は何も解決されません。年末には、消費税増税と輸入インフレとが、国民にとって大変な重圧であることが明らかになるでしょう。
安倍晋三は、企業に対して、社員に給料をもっと支払うよう働きかけていますが、効果がありません。企業の財布のひもをゆるめさせるには、どうすべきなのでしょうか?
日本は、なし崩し的に低賃金化が進むのを食い止めるために、最低賃金制度の導入を考えるべきでしょう。需要を抑圧するこうした家計収入の停滞は、他の多くの国でも見られます。他の国々でも、日本と同様、低賃金のパート職員への依存が進み、逆に継続的な無期限契約に保護された労働は退行しています。キャメロン英首相とメルケル独首相は、こうしたデフレを助長する動きに危機感を抱き、率先して最低賃金制度の導入を決めました。日本も、この方法を使わない手はないでしょう。より高給が期待できる産業ならば、その競争力の低下を心配する必要もありません。この最低賃金の恩恵を受けるのは主にサービス業の従業員たちです。
税制上の手段によって、企業に行動を変えさせるよう仕向けることはできないのでしょうか?
もちろん税制を利用することは可能ですが、少々面倒です。それは主に、企業が分配した、または再投資した分の利益よりも、投資されない利益の方により多く課税することです。こうすれば、税務上、社員により多く給料を払うことが、より得になると考えられます。これは実行可能な方法ですが、いくつかの国では、企業はこの方法を迂回する戦略を導入したようです。
アベノミクスのマニュアルによると、円安は、輸出を促進し経済を活性化させるものでしたが、この円安からはどんな結論が得られますか?
日本の輸出の為替相場に対する変動率はきわめて低く、0.1パーセント程度です。つまり、円が10パーセント価値を下げたとしても、輸出の伸びはわずか1パーセントです。これは主に日本の輸出業界の特質に基づいています。メーカー各社は、価格ファクターにほとんど依存しない高付加価値商品の製造を国内に温存しているのです。これらの企業は、ここ数年、それ以外の生産の拠点を海外に移転しています。何よりもまず大多国籍企業によるこうしたリロケーション戦略が、世界貿易の基礎となっているのです。あまり知られていないことですが、今日、世界貿易の70パーセントは多国籍企業内部の取引で成り立っています。円安によって、日本のグループ企業が海外から日本へ戻した利益が膨らんでいるだけなのですが、こうした単なる通貨の幻想が市場を喜ばせているわけです。最も現実的で強烈な影響は何かと言えば、それは輸入の増大であり、それが、家計の実収入にのしかかりつつある最近のインフレを単に助長しているのです。この円安政策は、実は、日本に破滅をもたらすものと言えるでしょう。
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