07. 2014年9月03日 05:46:24
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「サラリーマン家庭は購買力が落ち、貧乏に」「「糸へん」小耳早耳」 欧米の200ドルジーンズ市場が暗転!? 求められる“ユニクロ価格プラスアルファ”の商品 2014年9月3日(水) 南 充浩 最近、ジーンズのことを書いていなかった。というのも、理由は簡単で、あまり状況が変わっていないからだ。一部に見直し機運が出てきたとはいえ、ジーンズ全体の商況はそれほど好転していない。筆者が耳にしている範囲では、ユニクロのセルビッジジーンズが売れているということ以外、それほど変化がない。 若い層はジーンズをそれほど愛好していないが、スキニージーンズだけはそれなりに動いている。ひどく大雑把にまとめるとこういう状況にある。今やジーンズの愛好者は、30代半ば以上の男女で、年配層の支持が厚ければ厚いほど、若い層はさらにジーンズに距離を置くのではないかと思える。 今春もユニクロをはじめ、SPAブランド、セレクトショップなどがジーンズを大々的に打ち出したが、それほどの売れ行きにはならなかった。今秋冬は、ブリーチ加工ジーンズやリペア加工・クラッシュ加工ジーンズに注目が集まっていると業界では言われているが、筆者は疑問を感じる。 なぜなら、再修理を施したようなリペア加工や、わざと破ったままにするクラッシュ加工は、これまでも店頭に定期的に並んでおり、目新しさはないからだ。ブリーチ加工も同じで、消費者の目には、すごく斬新だとは映らないだろう。結局、また業界からの期待だけで終わるのではないか。 14年ぶりに復活したハイウエストパンツとは事情が異なる。14年間店頭ではほとんど見かけなくなったハイウエストパンツ(ジーンズを含む)は、10代・20代の若い層にとっては「今まで見たこともないほど新鮮」に映る。実際のところ、彼らが物心ついてからは見かけたことがないからだ。しかし、数年ごとに繰り返し店頭に並んでいるリペア加工・クラッシュ加工・ブリーチ加工ジーンズにはそこまでの目新しさはない。また、洗い加工の新しい表現方法も見つかってはいない。 ところで、業界紙などの論調を読んでいると、欧米ではちょっとジーンズ市場に動きがあるように感じる。それも悪い意味での動きが。 8月29日付の繊研新聞によると、米国ではプレミアムジーンズ市場が悪化しているという。これまで「200ドルジーンズ」市場として日本の業界関係者からは有望視されていた市場である。200ドルだから、1ドル=100円とすると店頭販売価格が2万円のジーンズブランド群である。 この市場が堅調だから、国内のジーンズブランドやそれに携わる行政は欧米市場への輸出を目論んできたわけだ。しかし、200ドルジーンズ市場が暗転したなら、現地での店頭販売価格が200ドルをはるかに越えることになる国内ジーンズブランドが輸出で成功する可能性はほとんどゼロに等しくなる。 繊研新聞のインターネット版「繊研プラス」から記事を引用する。 米ラスベガスのカジュアル合同展では、プレミアムジーンズのブランド再構築が目立った。再構築の方向性は「ライフスタイルブランド化」「低価格化」「開発力の強化」の3つ。5ポケットジーンズが販売低調な中で、プレミアムジーンズの生き方が分かれてきた。 米ジーンズ関係者によると、5ポケットジーンズで売れているのは「AGアドリアーノ・ゴールドシュミット」「ラグ&ボーン」ぐらいだと言う。トレンドもまさに底。リラックス・スポーツテイストのストレッチ系やニット素材が強く、レディスの消費は価格志向が続いており、「ジーンズに2万円出すなら他に買うものを探す」といった環境にある。 とのことである。この状況は今の日本とほぼ同じだと感じられる。 また、ニューヨークやアメリカ市場の動向について定評があるマックスリーコーポレーションのブログでも ヤング層のジーンズ離れが深刻化している中、唯一、スキニージーンズは引き続き売れているが、かなり雲行きが怪しくなってきた。 とあるし、続けて「苦戦を強いられる、プレミアムデニムのブランドでも」という一節があり、プレミアムジーンズブランド群の苦戦は隠しようもなくなっているのではないだろうか。それにしても、アメリカ市場も日本と同じ現象が起きているということをこの2つの記事は示している。 特に、「ジーンズに2万円出すなら他に買うものを探す」という一節は、日米ともに共通した消費者の意識だろう。そもそも炭鉱の作業着として開発されたジーンズというアイテムに、「なぜ2万円も払う必要があるのか」という消費者の疑問は突拍子もないものではない。いささか極端な比較になるかもしれないが、現在、3000円ほどで販売されているワーキングユニフォームが、今後、どれほどファッション化したからといって、何十年か後に2万円で購入したいという消費者が多く存在するようになるとは思えない。 それでも3年ほど前までは米国200ドルジーンズ市場は堅調だった。価格志向が指摘されたのは日本の方がずっと早かったのだから、ある意味で日本の消費者は欧米よりも先行しているといえる。ジーンズに関していえば、米国の消費者が日本に追いついたと見えて仕方がない。 しかし、国内ジーンズ業界にとって唯一の心の支えだった米国200ドルジーンズ市場が崩れたとなると、今後、さらに価格対応商品を開発する必要があるのではないだろうか。何も2900円や3900円の商品を強化せよということではない。3900円のユニクロのジーンズ以外を求めている声は中高年層には多くある。 しかし、いきなり1万円を越える商品を購入するのは、感覚的には抵抗があるのも事実である。ユニクロの価格プラスアルファで購入できる6000円弱〜9000円台の商品が求められているのではないだろうか。そして、それを欧米市場へ輸出すれば、150ドル内外で販売することが可能である。 純国産で9000円台のジーンズも可能 製造段階での多層構造を極力排除すれば、1メートル700円台の国産デニム生地を使用し、国内縫製工場で縫い、国内洗い加工場で洗った純国産ジーンズを9000円台で店頭販売することは可能になると考えている。現在の衣料品業界の問題点は流通段階での多層構造ではなく、製造段階での多層構造にある。 SPAブランドが隆盛を極めた今、何層にも別れていた問屋はほぼ淘汰された。現在残っている問屋は、それが業界にとって不可欠な機能であるからだ。流通段階はずいぶんとスリム化している。しかし、製造段階は多層構造が温存されたままだ。もしかしたら以前よりも多層化しているかもしれない。 紡績、染色、生地メーカー、整理加工場、洗い加工場というそれぞれの工程の中に、コーディネーターやらアドバイザーやらブローカーやらが複数介在している。それは各工程企業がアパレルやSPAに直接営業するノウハウや習慣を持っていなかったから、それらが求められたという背景があるのだが、これが何人も介在している場合がある。その都度マージンが発生するわけだから、商品が店頭に届くころには製造原価は高騰することになる。国産商品の価格が高いのは、こういうことも原因の1つになっている。 また、OEM/ODM企業が何重にも介在している場合もある。通常、自社でデザインができる場合はOEM企業に、デザインできない場合はODM企業に依頼して商品が出来上がる。しかし、現在の業界では「OEMのOEM」とか、「OEMのOEMのOEM」とか、「ODMのOEM」とか、という複雑な製造工程を経ることが珍しくなくなっている。そしてその都度、マージンが上乗せされるのは言うまでもない。そしてこれはジーンズだけの構図ではなく、ほぼすべてのアイテムに共通していることも付け加えておきたい。 これらを極力シンプル化するだけでも、製造原価を何割かは抑えることができる。今、国内のアパレルメーカーに求められていることは、製造工程を「匠の世界」的に神秘化することで付加価値を得て、一層の高額化を図ることではないだろう。それでは着物業界と同じ衰退の道をたどることになる。 製造段階の多層構造を可能な限りシンプル化し、値ごろ感のある商品を製造することが求められているのではないか。 このコラムについて 「糸へん」小耳早耳 普段、私たちが何気なく身に着けている衣服の数々。これらを作る世界では何が起きているのか。業界に精通した筆者がファストファッションから国内産地の実情まで、アパレルや繊維といったいわゆる「糸へん」産業にまつわる最新動向を鮮やかに切り取る。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140901/270636/?ST=print |