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窮地スカイマーク、迫られる“決断” 支援元の本命ANA、国交省との綱引き続く
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140902-00010005-bjournal-bus_all
Business Journal 9月2日(火)6時0分配信
国内航空3位のスイカマークが危機的状況に追い込まれている。大手航空機メーカー・欧州エアバスとの間で超大型機「A380」の購入契約を結んでいたが、7月、購入代金の支払いメドが立たないことから契約解除となった。この結果、スカイマークにはエアバスから巨額の違約金の支払いを請求される可能性が発生しているのだ。一部報道によれば、その金額は最大で約7億ドル(約720億円)にも上るという。一連の事態を受けスカイマークは、関東財務局に提出した2014年4〜6月期の四半期報告書で「事業継続に重要な疑義がある」と明記した。
スカイマークがエアバスと契約を締結したのは2011年2月17日。今年末頃から機体の引き渡しが順次行われることになっていたという。A380は2階建てで525席を擁する超大型機で、エアバスと世界の航空機市場を二分するボーイングも同規模の機体を生産していない。
「購入契約を締結した当時、スカイマークは格安料金で業績を伸ばしてきたが、日本は人口が減少し、経済成長も鈍化している。加えて格安航空会社LCCの参入で、さらに厳しい立場に立たされるのではないかとみられていた。そのような中で海外に活路を見いだすためにA380を購入しようと考えたようだ」(航空業界筋)
当時のスカイマークのニュースリリースによれば、A380のカタログ価格は推定で1機約287.5億円、6機で1725億円になる。「取引はドル建て」(エアバス関係者)のため、支払額は円安ドル高のあおりで、これより2割程度上昇したとみられる。支払いは12年から始まったが、14年3月期には支払負担が経営に重くのしかかり、25億円の営業赤字に転落。15年3月期第1四半期には55億円の赤字となり、違約金の支払い能力さえ疑われる事態となっている。
●独力の経営維持が困難になる懸念も
スカイマークは「現在エアバスと協議を続けている」(同社広報担当者)と説明しているが、エアバス関係者は「支払い遅滞が発生したため数カ月間交渉してきたが、解決策が見つからないので契約を解除した」と語る。
「交渉の末、エアバスはスカイマークに対して大手航空会社の支援を取り付ければ『A380』を引き渡してもいいと条件を出したようだが、スカイマーク側はこれをのめなかった。西久保愼一社長にしてみれば、国内3位の航空会社として独立して経営したいという思いが強く、結局この条件をのめなかったようだ」(前出業界筋)
今後の対応についてスカイマークは「経営ならびに財務基盤の安定化を図るため、エアバスA330型機による輸送力の強化、ならびに不採算路線の休止等の対策を講じております」としているが、エアバスとの契約破棄により資産として計上されている266億円は特別損失に計上されることになり、さらに違約金支払いが発生すれば独力で経営を維持することは困難になる。
スカイマークは航空機などの動産をリース契約により使用しているため、担保になるような資産を保有していない。銀行借り入れがない無借金経営だが、逆に救済してくれるメインバンクもないということになる。13年11月に東証マザーズから東証一部に指定替えし、本来なら大規模な資金調達がしやすくなったはずだが、契約解除報道等の影響により今年ピーク時には465円あった株価が8月には150円近くまで下落。当面、大規模な増資は難しい。
●羽田発着枠を狙う外資
スカイマークは国内34路線で一日176便を発着させているが、このうち羽田空港発着便を8路線74便が占めている。
「羽田発着路線は1路線で年間10〜20億円の収益が上がるといわれる。しかし羽田発着枠はすでに空きがないため、新規で手に入れることはできない。羽田に拠点を持ちたい航空会社にとって、スカイマークは願ってもない買収候補先となっている」(前出関係筋)
8月にはエアアジアがスカイマークへの出資による経営権取得を検討していると一部で報じられたが、エアアジアはこれを全面的に否定している。
「デルタ航空やエアアジアの名前が挙がっている。中でもエアアジアは全日空(ANA)との提携を解消後に楽天、ノエビア、アルペンなどと出資して新会社を設立し、15年夏から日本で再び就航する予定のため、安定的な収益をもたらす羽田発着枠を狙っている。しかし航空法で外資の出資制限がある上に、国交省は羽田へのLCCの新規参入には慎重だ。スカイマーク救済策としてありうるとすれば国内大手の支援だが、日本航空(JAL)は12年の『8.10ペーパー』で事業拡大につながるような出資は国交省から制限されている。結局、ANAしか救済することは難しいのではないだろうか」(同)
●カギ握るANAと国交省
ANAは関西国際空港を拠点とするピーチや成田空港を拠点とするバニラエアなど、LCC事業にも力を入れている。エアバスからも「A320」を30機購入したエアバスにとっては“いいお客様”であるということからも、ANAが支援することになれば、違約金金額の交渉でもスカイマーク側が有利に進めることができる。
しかしANAサイドも慎重な姿勢を崩していない。
「ANAはピーチやバニラエアだけでなく、羽田―千歳を運航しているエアドゥや羽田―福岡のスターフライヤー、羽田―宮崎のスカイネットアジアに出資し、コードシェア(一つの航空便に複数の航空会社の便名を付与して運航すること)している。さらにスカイマークにまで出資して支援すると、ほとんどの国内新興航空会社を影響下に置いているとの批判を呼ぶ恐れがある。また、国交省が現在スカイマークの持つすべての路線の継続を認めるかは不明。そのため、ANAは最後まで国交省の出方を見ているのではないか」(別の業界筋)
国交省関係者は「スカイマークはまだエアバスと違約金支払いについて交渉が続いていると言っており、事態を静観している」という。
しかしスカイマークの資金繰りは、すでにかなり逼迫している可能性がある。15年3月期第1四半期の決算によると、事業費はエアバス「A330-300」の導入に伴う航空機材費、運航乗務員訓練費、整備部品費、航空機燃料費の増加などにより前年同期比229億円増となり、営業損失は55億円の営業赤字に陥っている。
「最近料金改定を発表したが、事実上の大幅な料金引き下げ。とにかく客を集めて手元資金を確保したいのではないだろうか」(前出・業界筋)
スカイマークは今、大きな決断を迫られているといえよう。
松崎隆司/経済ジャーナリスト
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