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保険会社が言わないホントの保険の話
老後医療費、「貯蓄より保険」の損得勘定を疑う
保険コンサルタント 後田亨
2014/8/25 7:00
「老後は年金の範囲内で生活し、貯蓄には手を付けないつもりです。日帰り入院にも備えられる、お薦めの医療保険を教えてください」。定年を前にした方からこんな相談を受けました。私は日帰りで済む入院ならそれほど大きな負担にはならないため、保険より手持ちの資金で対応した方がいいのではとアドバイスしましたが、この方は「貯蓄が減るのは不安だから」と譲りません。
こうした考えの方は少なくありませんし、「老後の蓄えを取り崩したくない気持ちは現役世代には分からないだろう」とも言われます。私もその心配が理解できないわけではありません。とはいえリタイア世代が、病気や入院の不安を医療保険で解決しようとするのが得策とも思えないのです。
保険の意義は「めったに起きないけれども、いざ直面したら手持ちの資金では対応できないような不測の事態に少額のお金で備える」ことにあります。働き盛りの現役世代が死亡したり、仕事に大きな影響が出る病気にかかったりするリスクが代表例でしょう。これに対し高齢になるほど病気や入院が増えることは予測できますから、保険料も高く設定されます。そういう意味でも現役のときから貯蓄で備えておくことは重要です。
保険というのは契約者から集めた保険料から保険会社の経費を引いたお金を保障に充てる仕組みですから、加入してすぐに保険金が支払われるようなケースを除けば、還元率は基本的にマイナスになります。つまり保険に入ることは、確実に自己資金を減らすことにつながるのです。
自分の懐は痛めたくないから医療保険に加入したいという人が多いのは、いざというときに貯蓄から支払う入院・治療費と、給料や年金から天引きまたは口座から引き落とされていく保険料とは「別もの」だととらえる心理によるものでしょう。しかし、結局はどちらも自分の資金が減ることには変わりありません。
また入院給付金は治療や手術をした後に受け取ることもあり、ありがたみを感じやすい錯覚に陥ります。しかしこれも、支払ってきた保険料のなかから契約に基づいた保障額が返ってきたにすぎないことは、2013年12月4日「ありがたいですか? 『おりる』保険金と税還付」などで指摘してきた通りです。
保険料は確実に発生するのに対し、給付金や保険金はいつどれだけ支払われるか分からないものです。保険というのはコストや確率の面で加入者が損するものなのだという割り切りは、老後の備え方を冷静に考えるうえで欠かせない視点でしょう。
冒頭で触れた「日帰りで済む入院なら」に関連する話として、入院日数が短くなっている傾向も頭に入れておきたいところです。つまり医療保険からの給付も大きな額になりにくいわけです。さらに健康保険の高額療養費制度で、70歳以上の医療費の自己負担限度額は70歳未満より抑えられています。「保険に入らないと貯蓄が減ってしまう」と過度に心配する必要はないはずです。
60歳の人が一生涯、入院1日あたり1万円が支払われる医療保険に加入するといくらかかるのでしょうか。低価格商品がそろっている保険会社の商品で、65歳までに保険料を払い込む場合でも総額220万円超に達します。決して安い買い物でも、いざ入院したときに貯蓄から負担するより「有利」でもない金額だと私は思っています。
後田亨(うしろだ・とおる) 1959年生まれ。95年に日本生命に転職。2012年から保険相談室代表、一般社団法人バトン代表理事(13年に両者を統合し、バトン「保険相談室」代表理事)として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。07年に出版した「生命保険の『罠』」(講談社+α新書)で保険のカラクリを告白、業界に波紋を広げる。ほかに「“おすすめ”生命保険には入るな!」(ダイヤモンド社)、「がん保険を疑え!」(ダイヤモンド社)、「保険会社が知られたくない生保の話」(日本経済新聞出版社)など。
公式サイト(1)http://www.seihosoudan.com/
公式サイト(2)http://www.yokohama-baton.com/
http://www.nikkei.com/money/household/hokenhonto.aspx?g=DGXMZO7599373022082014000000
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