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強まる景気の逆風、「政治的資本」の有効活用の時[日経新聞]
編集委員 滝田洋一
2014/8/31 6:00
景気の向かい風が強まっている。このまま腰折れすれば、金融市場で失望感が広がる。ひとつ救いなのは、安倍晋三政権が「政治的資本」を回復しつつある点だ。この資本をどう使うのか、秋の正念場だ。
9月3日の内閣改造で、石破茂自民党幹事長が閣僚就任の見通しとなった。新設の安全保障法制担当相就任を蹴った石破氏が無役となったとしたら、政権は大きな火種を抱えるところだった。
その事態を防げたことは、景気が微妙な局面にあるだけに、結構なことだ。政権が安全保障問題に忙殺され、経済運営がお留守になることを懸念している――。判で押したようにそう語る市場関係者は多かった。
実際には11月に北京で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場で、日中首脳会談が実現する。そんな見方が強まっている。福田康夫元首相の訪中はその露払いともみられるが、中国側が首脳会談へのハードルを下げているのも見逃せない。
目先、中国側が軟化したとすれば、理由はふたつある。まず偶発紛争のリスク。人民解放軍の現場の暴走で、意図せざる紛争に巻き込まれる事態への懸念があろう。
8月に李源潮国家副主席と会った超党派訪中団のメンバーによると、李氏は東シナ海での偶発的な衝突を未然に防ぐための「海上連絡メカニズム」を早期構築しようと強調した。「メカ二ズムには空の問題も含む」とも念を押したという。
次に経済的な理由としては、対中直接投資の減少が見逃せない。2012年秋の尖閣摩擦を機に日本の直接投資は激減した。しかもここへきて、米欧からの投資にもブレーキがかかっている。経済の実利を考えても、ひとまず爪を隠した方が得策と、中国は判断したのだろう。
日中が友好関係に戻ることは考えにくい。それでも、一触即発の事態が和らいだとすれば、安倍政権は行動の自由を高めたことになる。集団的自衛権の行使容認に批判的な国内勢力が、よりどころを失うからだ。
政権としてはその分、経済運営に力を入れることができる。7月の鉱工業生産や消費支出など、直近の指標をみても、景気の足取りはさえない。そうした事態は消費税引き上げ後の反動とばかり言っていられなくなりつつある。
賃金など所得の上昇が消費増税や物価上昇に追いつけない。「家計は恒常所得が落ちると考え、必需品の消費を抑えている」と、宮前耕也・SMBC日興証券シニアエコノミスト。
アベノミクスは、デフレ脱却をテコに消費と投資の好循環を狙っていた。待ってましたとばかり、そのもくろみが外れだしたと、指摘し始める向きも目立ち始めた。
今は景気の腰を折らずに済むかどうかの正念場。アベノミクスに賭けてきた市場参加者は、政権が景気の逆風に手をこまぬくとは考えていない。市場が早めの政策対応を催促する局面が始まろうとしている。
http://www.nikkei.com/markets/column/globaloutlook.aspx?g=DGXLASDF29H0S_29082014I00000
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景気に「まさか」の下振れ 政策の出番、いま一度[日経新聞]
2014/8/31 0:07
よく言われるように、景気には3つの坂がある。上り坂、下り坂、そして「まさか」である。
景気指標の実績と市場の事前予想を比べてみよう。実績が予想を上回ることもあれば、下回る場合もある。過去3カ月の指標は上振れと下振れのどちらが多かったか。
その比率を米シティグループが、景気の体感温度を測る物差し(経済サプライズ指数)に用いている。指標の実績がすべて予想を下回る場合をマイナス100%として、足元の日本はマイナス80%近辺まで落ちている。
見通しに比べて、消費税引き上げ後の景気は「まさか」の下振れを起こしている。夏風邪の引き始めのような悪寒というべきだろう。
今春の賃金交渉で久しぶりに給与は上がったものの、消費増税と物価上昇に追いつけず、家計の正味の実入りつまり実質所得が減ってしまった。消費不振の理由を一言でいえばそうなる。しかも気象庁が「平成26年8月豪雨」と名付けた夏の天候不順が輪をかけた。
7〜9月期の景気は、12月に消費税再引き上げを判断する安倍晋三政権の関所。景気がこのまま失速すれば、2015年10月に予定している増税を1年程度延期することも選択肢となろう。
その際には当て込んだ税収が減るので、基礎的財政赤字の名目国内総生産(GDP)比を、15年度は10年度の半分にするとの国際公約が果たせなくなってしまう。15年度からの法人減税の財源を、どう手当てするかという難問も生じる。
7〜9月期が持ち直すにせよ力強さに欠けるなら、財政面から景気にカンフル剤を打ちつつ、再増税の環境を整えることも考えられる。
ただ公共投資には人手不足と建設資材の高騰の壁が立ちはだかる。下手な景気対策が失望を招きかねないことを、甘利明経済再生担当相は承知している。民間のビジネスを促し、日本経済の潜在成長率を高めるという狙いを、ハッキリさせておくことが欠かせない。
逆風ばかりではない。幸い米国のゼロ金利解除を織り込み、ドル先高観は根強い。日銀が金融の追加緩和に踏み切ることで、もう少し円安になるかもしれない。
輸出採算の好転で企業業績が押し上げられるようなら、国内でも設備投資が後押しされるだろう。もともと雇用は好転しているのだから、企業がため込んでいたおカネを使うことによって、賃金に上向きの力が働くことも期待できる。
米連邦準備理事会(FRB)がとった量的緩和の第2弾(QE2)という先例をみよう。QE2の正式決定は10年11月。だが時のバーナンキ議長は、同年8月末に世界の金融当局者の集まる米ジャクソンホールのシンポジウムで、追加緩和を示唆し露払いした。
当時の米国は指標の上振れ、下振れを示すシティの指数が6月中旬からマイナスに転じ、8月下旬にはマイナス60%台まで落ち込んでいた。FRB議長は景気下振れを意識しているとの姿勢を示し、経営者や投資家に寄り添ってみせた。あうんの呼吸である。
今の政権は腰を据えた成長戦略をとろうとしているが、成果が出るまで時間がかかる。その間に山もあれば谷もある。「まさか」には官民の対応のズレは禁物だ。
(編集委員 滝田洋一)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO76409950Q4A830C1NN1000/
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