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竹中平蔵:消費増税の反動減は予想以上に深刻
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140829-00000001-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 8月29日(金)14時11分配信
4月の消費増税による影響は、想定より大きくて深刻だった。5月の家計消費を見ると、マイナス7%という大きな落ち込みとなっている。その結果、第2四半期(4〜6月期)の国内総生産(GDP)は実質でマイナス6.8%(年率換算)になった。
■東日本大震災のときに匹敵する落ち込み
この家計調査「マイナス7%」というのは、過去33年間で2番目に悪い数字である。最も悪かったのは、東日本大震災後の2011年5月だった。
つまり、消費増税による個人消費への影響は、東日本大震災に匹敵するほど深刻なものになってしまったということだ。
では、どうしてここまで消費が低迷したのだろうか。経済財政白書も含め、一般に経済成長率の推移は「山高ければ谷深し」というのが政府の解釈となっている。
消費増税直前の3月は駆け込み需要により消費の「山」が非常に高くなった。4月以降はその反動で「谷」が深くなり、消費が停滞したというわけである。それでも「想定の範囲内」というのが政府の見解だ。
しかし、今回の「山」が非常に高かったという解釈には疑問が残る。1997年4月の消費増税のときと比べて、駆け込み需要がとくに多かったという事実はないからだ。「山」はあまり変わらないのに、今回は「谷」だけが深くなっているのはおかしい。
■巧妙に埋め込まれた“自動発火装置”
これにはいくつかの要因が考えられるが、ここでは消費増税のやり方に問題があったということだけ指摘しておきたい。
89年4月の消費税導入(3%)や、97年の消費増税(5%)のときは、事前に減税措置が講じられていたのに対し、今回はそうした減税措置がなかった。それどころか、社会保険料の引き上げなども重なったため、トータルとして国民の負担はかなり重くなってしまった。
デフレマインドが完全には払拭されていない状況で、デフレマインドへの配慮が十分にはなされないままに消費増税が行われてしまった。そこに大きな問題があると言える。
結果的に、今回の消費増税は短期的に見て、アベノミクスの最大の妨害要因となってしまっている。さらに厳しい言い方をすれば、民主党政権が巧妙に埋め込んだ“自動発火装置”と見なすこともできるだろう。
この自動発火装置が4月に作動し、このままいけば来年10月に再び作動する。日本の家計や銀行、企業のバランスシートがそれほど痛んでいないので金融危機のような事態になることは考えにくいが、自動発火装置が2度も作動すれば、消費が相当落ち込んでいくことは間違いない。
■消費税率10%への引き上げを食い止めるのは難しい
それでは、今後どうしていけばいいのだろうか。デフレ克服と経済成長を最優先に掲げるアベノミクスの立場からすれば、来年10月に消費税率を10%に引き上げるのは本当はやりたくないのが正直なところだろう。
しかし、現実に消費税率引き上げをやらずに済む選択肢はあるかと言えば、それを見つけるのはかなり難しい。今のままいけば消費税率引き上げは“自動的”に行われることになる。
もし、消費税率引き上げを食い止めたければ、新たな法律を作って成立させる必要がある。そのためには、集団的自衛権行使容認と同じくらいの政治的資本(ポリティカル・キャピタル)を消耗させることになるだろう。
そうした政治判断の可能性を安倍政権が持っているかといえば、「ない」というのが私の見方だ。結局、巧妙に埋め込まれた自動発火装置は、スケジュール通りに作動していくことになる。
現実的な話としては、来年10月の消費税率引き上げを踏まえたうえで、経済シナリオを考えていくしかない。
■3つのシナリオのうち最悪なのはどれか
そこで考えられる3つのシナリオを整理しておきたい。
第1のシナリオは、最もあり得るシナリオだが、最も良くないシナリオである。消費税率を引き上げ、その悪影響を打ち消すため、かなり大きな補正予算が組まれるという展開だ。現に、霞が関全体がすでに補正予算ありきで動き始めている。
この補正予算ありきの動きと、アベノミクスを地方に行き渡らせるという「地方創生」の動きが悪い形で組み合わさると、増税をしてバラマキをするという最悪の結果をもたらす。非効率な「大きな政府」をつくるという悪い姿が待ち受けることになる。
第2のシナリオは、消費税率引き上げと同時に、思い切った経済改革を断行するというものだ。経済改革によって長期の期待成長率が高まれば、消費の落ち込みをある程度少なくすることができる。このシナリオは比較的望ましい展開だが、経済改革の成果が出るまでに時間がかかるので、短期的なショックはやはり免れない。
そこで出てくるのが第3のシナリオだ。日本銀行がもう一段の金融緩和を実施するというものである。若干の金融緩和によって、消費税率引き上げによる短期的なショックを相殺していく。
黒田東彦日銀総裁は、経済成長のための経済改革を加速させる必要があると再三述べている。裏を返すと、政府がしっかりとした改革を行うならば、日銀も「第2の金融緩和」を行う用意がないわけではない、ということだろう。
以上の3つのシナリオのうち、最も可能性が高いのは第1のシナリオだが、この選択は何としても避けなければならない。第2のシナリオと第3のシナリオを組み合わせてやっていくことを真剣に考えるべきだ。
■9月3日の内閣改造、政策のための布陣かどうかが焦点
今年度の経済成長率は、当初の政府見通しでは1.4%だった。今夏にその見直しが行われ、最新の見通しは2%となっている。
ところが民間機関の見通しは厳しい。とても1%には及ばず、0.5%くらいになるとの見通しが大勢を占めている。
アベノミクスによって全体的には良い方向に向かっている日本経済だが、消費増税により、短期的には苦しい局面を迎えている。この局面を打開するためにも、9月3日に行われる内閣改造は大きな意味を持つ。
第1のシナリオに流れることなく、第2のシナリオと第3のシナリオを断行できる布陣になるのかどうか。また、政局ではなく、政策のための内閣改造であり、政策実現に向けて明確なメッセージを伝えることができるのかどうか。こうした観点から内閣改造を見ていくことが重要である。
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