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ストレス検査義務化が法制化、職場うつの抑制になるか?職場改善面や実効性に疑問の声も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140829-00010004-bjournal-bus_all
Business Journal 8月29日(金)6時0分配信
職場でのストレスを主因として、うつ病を発症させるビジネスパーソンが増えている。多くの企業を取材する中で、メンタル不調者が1人もいないと断言されたことはない。調査に基づくことではなく感覚的な見方でしかいえないが、大企業、中堅企業、官公庁など、あらゆる業種で職場うつは蔓延中といえる。
その要因について筆者は5年以上調べてきたが、「断定できない」というのが結論だ。雇用不安や景気情勢など社会的な背景、家庭問題、職場問題など要因は多岐にわたり、それらがさらに細分化され、個々に複合的に絡み合っている。100人いれば100通りの要因がある、といってもいいのではないだろうか。だから、すべてが薬で治せるわけでもないと思うが、複雑な要因が重なる過程では、それらがストレスという状態に変化し、その人の中に蓄積されていく、と考えられる。
そのストレス度合いを検査することで心の病を防ごうとする強制的な取り組みが、2015年度から始まる。従業員50人以上の企業は年に1回、医師、保健師によるストレス検査を受診希望の従業員に対し実施しなければならない。これは6月に閉会した通常国会で成立した「労働安全衛生法の一部を改正する法律」に明記された項目であり、企業にストレス検査の実施を義務付けた。
50人以上の企業が対象となったのは、産業医の選任が必要とされる企業規模だからである。厚生労働省の原案では、すべての企業を対象にしていたが、自民党の厚労部会で結果管理の悪用が懸念され、50人以下の企業は努力義務となった。また、受診対象者も全員から希望者のみとなった。
●検査の実効性に疑問の声も
ストレス検査を義務化する厚労省の目的は、職場を原因とする自殺者数を減らすことである。職場でのストレスがうつ病を招き、それが自殺へとつながるケースが多くあったからだ。12年の1年間で、原因が判明した自殺者約2万人のうち、職場を原因とする自殺者は約2500人だった。また、同省は昨年4月に策定した第12次労働災害防止計画において、4年後にはメンタル対策に取り組む企業を80%以上(現状は47%)とする目標を掲げている。こうした目標を達成するためには、ストレス検査を法制化する必要があると同省は考えたのである。
意識の低い中小企業経営者などに対し法制化でメンタルヘルスに目を向けさせることは、決してマイナスとはいえない。ただ、実効性があるのか、多くの識者が疑問点を指摘する。
例えば医師でもある亀田高志・産業医大ソリューションズ社長は「医学的には、労働者のストレス状況なりメンタルヘルスの状態をスクリーニング(ふるいわけ)するのは容易なことではない」とは指摘する。
また、渡部卓・帝京平成大学教授は次のように強調する。
「メンタル不調者を見つけ、あとは医師に任せることが企業の責任になってしまうのではいけない。職場にある問題点を見つけ、働きやすい職場へと改善することに取り組むこと。その姿勢がなければ、職場でのメンタル不調者は減らない」
今回の法律に罰則規定はないので、対象となる企業がストレス検査を実施しなくても、問題視されるのはコンプライアンスだけ。大手企業はともかくも、中小企業がどこまで取り組めるのか。厚労省安全衛生部は「難しい話ではなく、多額の費用がかかるわけでもない」としているが、「日本にある約380万の中小企業のうち対象となるのは2割程度。その大半は、法律が成立したことも知らない」とメンタルヘルス関連企業の役員は語る。
企業向けにメンタルチェックなどを提供するEAP(従業員支援プログラム)企業や損害保険会社は、来年度から施行されるストレス検査の義務化を追い風として、新サービスの開発、売り込みに取り組む。「意識の低い経営者に、少しでもメンタルヘルスへの費用負担の必要性を感じてもらえるようになる」(大手EAP企業)といい、中小企業の顧客開拓を行う方針だ。
●企業側が恐れる労働訴訟リスクの増大
一方、企業が恐れるのは労働訴訟だ。これまでも過重労働でうつ病になり自殺した社員の家族からの訴えで、億単位の賠償を命じられる判決があった。「ただでさえ、企業は不利な状況であり、さらに法律に明記されているストレス検査義務も果たさなかったら、どんな裁判でも勝てるわけがない」と中堅製造業の労務担当者は話す。
悪意があれば、「自分がうつ病になったのは、何も対応しない会社のせいだ」と訴えることも可能かもしれない。訴訟が怖いからストレス検査を実施するというのでは、職場を原因とするうつ病を減らすという本来の目的を満たすのは困難である。
今回義務化されたストレス検査では、今後、具体的な検査項目が検討されるが、産業医や保健師がどこまでメンタル分野に対応できるのかという課題も残るため、実際の運用においては混乱を招く懸念もあるといえよう。
海部隆太郎/ジャーナリスト
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