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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第89回 「いわゆる国の借金」問題
http://wjn.jp/article/detail/6038101/
週刊実話 2014年9月4日 特大号
8月10日の日本経済新聞は「国の借金最大、6月末1039兆円に」という見出しで、
〈(前略)国の借金は昨年6月末に1000兆円を超え、推計では借金の総額は'14年度末には1143兆円に到達する。今年7月1日時点の総務省の人口推計(1億2710万人)をもとに単純計算すると、国民1人当たりの借金は約818万円。(後略)〉
という記事を掲載した。毎度お馴染みの、「いわゆる国の借金」問題の時期が到来したのである。
本書連載第1回から繰り返し書いているが、上記の「いわゆる国の借金」問題に関する報道は、最初から最後まで全て嘘である。
まずは、「国の借金」という言葉が間違っている。国の借金と聞くと、日本国民は「日本国の借金」とイメージしてしまう。というより、そう思わせるために「国の借金」という言葉が使われているのだ。
とはいえ、財務省の言う「国の借金=国債、財融債、国庫短期証券(政府短期証券)」は、日本国の借金ではない。
正しい意味における「日本国の借金」は、我が国の対外負債になるが、2013年末時点で500兆円である。もっとも、我が国は対外資産が820兆円に達している。
外国に貸しているお金が820兆円。外国から借りているお金が500兆円というわけで、日本は外国に対し320兆円の純資産(対外純資産)状態にある。
そして、この320兆円という対外純資産は「世界最大」だ。日本国は「国家」として見た場合、世界一のお金持ち国家なのである。
「世界一のお金持ち国家」において、「政府」が借りているのが財務省(やマスコミ)の言う「国の借金」だ。英語では「government debt」と言う。直訳すると「政府の負債」になる。
日本銀行の統計でも「政府の負債」。これが財務省に言わせると「国の借金」となる。なぜか、言葉が変わるのだ。
ここまで書いて気が付いたが、上記の「いわゆる国の借金」プロパガンダ(特定の思想・世論・意識・行動へ誘導する意図を持った宣伝行為)は、「いわゆる従軍慰安婦」問題にそっくりだ。
大東亜戦争期、戦場に慰安婦はいたが「従軍慰安婦」などいなかった。何しろ、従軍慰安婦とは、戦後の造語なのだ。慰安婦に「従軍」を付けることで、日本軍が慰安婦を「強制連行した」という「嘘」を広めることに成功したのが、「いわゆる従軍慰安婦」プロパガンダである。
同様に、「国の借金」の場合も、政府の負債について「日本国民の借金」であるという嘘を国民の頭に植え付けることに成功している。新聞が「国民1人当たりの借金は約818万円」などと書くわけだから、尚更である。
実際には、「いわゆる国の借金」とは、政府の負債であり、国民は債務者ではなく「債権者」になる。日本国民の金融資産(預金、保険、年金など)が政府に貸し付けられ、運用されているのだ。
それにもかかわらず、国民は「いわゆる国の借金」という言葉に騙され、債務者としての罪悪感を持たされてしまう。結果、財務省の増税路線や緊縮政策に逆らえないどころか、むしろ積極的に賛成してしまうという不気味な状況が、すでに20年近くも継続している。
まさに、いわゆる従軍慰安婦問題と構造が同じなのである。
現在、日本国債の所有者(日本政府にお金を貸している債権者)は国内の金融機関が中心で、しかも100%日本円建てだ。もっとも、例えば日本の国内銀行にしても、自己資金を政府に貸し付けているわけではない。先述の通り、我々の預金が政府に「また貸し」されている。
すなわち、日本政府の負債の「債権者」は日本国民だ。
また、日本政府は国債を子会社である日本銀行に買い取らせることで、借金の返済負担や利払負担が消滅してしまう。
独自通貨国で、中央銀行が国債を買い取ると「政府の負債」が実質的に消滅してしまう国において、財政破綻などあり得ない。実際、現在は日本銀行が1年に70兆円規模の国債を買い取り、政府の実質的な負債が減少している。
などと書くと、「いわゆる従軍慰安婦問題」同様に、「そんなことをすると、インフレになる!」
と、問題のすり替えが行われるわけだ。
「いわゆる従軍慰安婦」問題は、元々の「日本軍による慰安婦の強制連行」から、「広義の強制性の有無」や「女性としての尊厳の問題」へと、問題がすり替えられていった。
「いわゆる国の借金」問題も、政府のデフォルト(債務不履行)という財政破綻の可能性から、インフレ率の問題にすり替えられるわけだ。
政府の財政破綻など起きえないことが国民に知れ渡ると、今度は、
「ハイパーインフレーション(インフレ率1万3000%)で破綻する」
などと、別の方面から国民を煽ってくる。
日銀が年に70兆円もの新しい通貨を発行したにもかかわらず、インフレ率が低迷し続けるほどの「供給能力」を保有する国が、ハイパーインフレーションとやらになるはずがない。
もっとも、この手のプロパガンダに国民が騙される限り、「いわゆる国の借金」の問題は終わらず、政府は間違った経済政策を打ち続けることになるだろう。具体的には、
「増税と政府の支出削減という緊縮財政が継続し、国民が貧困化する」
「デフレ深刻化で名目GDPが縮小し、税収が減り、財政が悪化する」
「インフラ老朽化への対応すら十分にできず、防災という安全保障が弱体化する」
「防衛支出までもが切り詰められ、仮想敵国(現在は中国)に対する安全保障が弱体化する」
「土木、建設、医療、介護といった業界の賃金を上げられず、人手不足となり、外国移民の受け入れが推進される」
「社会保障支出を減らすというお題目で、混合診療が拡大し、国民の医療安全保障が弱体化する」
などになる。
「いわゆる国の借金」問題のウソを打破し、政治家が動かなければ、日本経済の諸問題のほとんどは解決しない。
まずはこの「事実」を、国民が知る必要があるのである。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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