01. 2014年8月27日 08:50:02
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>日本の景気は今や崩壊寸前崩壊したとしても戦後よりは遥かにマシだ http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41527 「無能な経営者はどんどん廃業を」 地方経済を救う苦くて強力な特効薬とは 生き延びたければコツコツと真面目に効率化するしかない 2014年08月27日(Wed) 鶴岡 弘之 中小企業の取材で全国を回っていると、地方経済の衰退ぶりを痛感させられる。厳しい環境の中で業績を伸ばしている中小企業も存在する。しかし、残念ながらそういう企業はごく一部である。地方全体として見ると、人口減少、高齢化という巨大な波には抗いようがないようにも感じられる。 『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(冨山和彦著、PHP新書、842円、税込み) そんな中で、地方再生に焦点を当てた政策提言の書、『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)が発行された。著者は、企業再生のスペシャリストとして知られる経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO、冨山和彦氏だ。
冨山氏によれば、これからの日本の成長はローカル経済圏にかかっているという。日本の会社の大半は、実はグローバル経済圏とは無縁である。だから日本の成長を論じるのなら、全国各地の小さな市場で勝負している中小企業に目を向けるべきなのだ。 冨山氏はさらに発想の転換を促す。これまで様々な地域振興策や経済活性化の方法が叫ばれてきた。その際、「弱者」である中小企業は基本的に守られるべき存在だった。しかし、冨山氏は、滅んで然るべき企業に救いの手を差し伸べる必要はないと言い切る。「生産性の低い企業には穏やかに退出してもらい、事業と雇用を域内の生産性の高い企業に滑らかに集約すべきだ」と言う。 これは、いかにも冷酷で厳しい処置のように思える。だが実際に地方経済の惨状を理解すると、実は非常に現実的で、理に適った主張であることが分かる。 ただし、業績が低迷していても、なんとか打開策を講じてビジネスを継続したいと思っている中小企業は多い。そういう企業はどうすればいいのだろうか。冨山氏に話を聞いた。 生産性の低い会社に存在価値はない ──地方の中小企業の現状をどのように見ていますか。 冨山和彦氏(以下、敬称略) おおざっぱに言うと、地方企業の平均的な経営レベルってかなり低いんですよ。残念ながら経営してないに等しい会社がごまんとある。 ──地方には特に多いということですか。 冨山 ローカル経済圏では本当の意味での競争がないのでそういうことが起きてしまう。例えば、どうしようもないバス会社があるとします。車はボロいわ、運転は乱暴だわ、時間通り来ないわ、というような。でも、その地域に住んでいる人はそれしか選べないから取り替えられない。だから地方ではダメな会社が生き残りやすいんですよ。 冨山 和彦(とやま・かずひこ)氏 経営共創基盤(IGPI)CEO。東京大学法学部卒。ボストン コンサルティング グループ入社後、コーポレイトディレクション社設立に参画(後に社長)。産業再生機構設立時にCOOに就任。解散後、IGPI設立。オムロン社外取締役、ぴあ社外取締役、みちのりホールディングス取締役、経済同友会副代表幹事などを務める。 ──地方都市のコンパクトシティ化は前から言われていますね。地方の中小企業も集約した方がいいということですが、なぜ、生産性の低い会社が生き残っていてはいけないのですか。 冨山 生産性の低い会社は賃金も安い。賃金が安いということは害悪ですよ。賃金が安くて、赤字で税金も払ってないわけでしょ。そんな会社は存在する必要ないですよ。 今までは人手が余ってましたから、国や自治体がそういう会社でもなんとか延命させてあげて、雇用の受け皿をつくっていた。でもこの先数十年はずっと人手不足ですから、もう延命政策の意味はない。社会全体で労働生産性を上げることを考えないと賃金も上がっていかないし、医療とか介護、地域公共交通など、いろいろな社会システムが人手不足で崩壊することは明白です。 ──「穏やかな退出」を促す方法の1つとして、「サービス産業の最低賃金を上げる」べきだと書かれています。給料が払えない会社はどんどんつぶれていきますね。救済する必要はないということですか。 冨山 全然ない。人件費倒産なんてどんどんすればいい。今は人手不足なんだから誰も困らないですよ。困るのは無能な経営者だけ。 無能な経営者の会社には廃業してもらった方がいいんです。その分、優秀な会社の経営者が元気になりますから。経済社会において優秀な経営者というのはいちばんの希少資源なんです。その希少資源を有効に使おうと思ったら、会社の数を減らした方がいい。その方が結局は生き残った会社の生産性が高くなる。生産性が高くなれば賃金も上がります。 製造業ではとっくの昔にやっている ──いろいろな会社をご覧になってきて、優秀な経営者とそうでない人の違いはどこにあるとお考えですか。 冨山 最大の違いは、きちんと見える化して経営しているかどうかでしょうね。ダメな会社は区分経理すらもまともにできていない。いまどき10万円もあれば会計ソフトを買って簡単に財務会計ができます。そんなこともできないんじゃ、もうお引き取り願った方がいいと思いますよ。 ──冨山さんは地方公共交通の運営会社(みちのりホールディングス)を立ち上げて、東北の5つのバス会社の再生を行いました。いちばん最初に着手したのは、やはり見える化ですか 冨山 そうです。それまでは、路線別や便別の収支を正確に把握することをまったくやっていなかった。 ──具体的にどういうことを行ったのですか。 冨山 例えば、路線別の収支をリアルタイムで把握するためにICカードを導入する。また、バスというのは同じ路線を走っても運転手によって燃費のばらつきがあります。そこで、タコメーターをつけてアクセルの踏み方を全部測る。さらには、運転手によって事故率が違うので、ドライブレコーダーをつけて全部録画して何が違うのかを比較する。そういうことをコツコツとやるわけです。 見える化して、無駄なコストを抑える。儲かってないことはやめて、儲かることに力を入れる。当たり前のことをやった結果、5つの会社とも赤字だったのが黒字になっています。いま、日本のすべてのバス会社の中でトップクラスの生産性だと思います。 ──そこまで徹底的に見える化すべきなのですね。 冨山 でも、それくらいのことは製造業ではとっくの昔にやっているんですよ。なにを今さらという話です。ローカル経済圏は製造業に比べて市場経済の圧力が働きにくいし、規制に守られている産業が多い。だから非効率な事業者が残ってしまう。グローバル経済圏で本当にシビアな競争を勝ち抜いてきた企業群と比べると、はっきり言ってお粗末きわまりないんですよ。 ──想像以上に前近代的と言っていい。 冨山 100社を超える中小企業の再生に携わりましたけど、そういう意味での期待が裏切られたことはほとんどないですね。 多くの経営者は「自分たちはちゃんとやっている」と言うんだけど、ちゃんとやってないんですよ。例えば給料を払うにしてもちゃんとした人事評価の仕組みがない。これじゃはっきり言って、能力的に経営者としては厳しい。そんな人が50歳、60歳になってから習慣って変えられないでしょ。 ──社長に直接「会社を畳んだ方がいいですよ」と言うこともあるんですか。 冨山 言いますよ。「息子さんは経営者の器じゃないから継がせない方がいいですよ」と言うこともあります。無理に頑張って生き延びさせると悲劇が起きます。それよりも会社が傾く前に親の代で事業を売却した方がいい。息子さんも幸せだし、従業員も経営手腕のある会社に移った方が幸せです。その方がみんな幸せですよ。 ──なんとか会社を変えたいと思う2代目もいるでしょう。危機感のある若い社長はどうすればいいですか。 冨山 まず簿記会計を勉強しろということですね。そして、経営管理のいろいろな手法を徹底的に学ぶ。人任せにしないで自分で分析をすることです。 世界ではなく地元でいちばんを目指せ ──これから地方で人口がどんどん減っていく中で、一部の優良企業への集約が起きても、地方全体としての経済の拡大は見込めないのではありませんか。つまり、地域外からお金を引っ張ってくる仕組みが必要なのでは。 冨山 そんなことはありません。生産性が上がって賃金が上がれば、1人当たりの消費が増えます。地域内でどんどん自己循環して経済は活性化します。アメリカを見てください。この20年でアメリカの経済を伸ばしたのは輸出産業じゃなくて内需ですよ。 ──地方のサービス業が世界を目指す必要はないとも書かれていますね。 冨山 全然ない。だって、地方の旅館が世界一を目指す必要はありませんよね。フランスやイタリアのホテルと競合しているわけじゃないんだから。その地域でオンリーワン、ナンバーワンであればいい。 地方のサービス業は、地元でいちばんを目指す方が現実的です。サッカーがそこそこうまい子がいきなりワールドカップに出ようと思ってもナンセンス。まずは地元で優勝しろよという話です。ローカル経済圏のビジネスは、そのレベルで十分に黒字になります。 日本の雇用の80%はグローバル経済圏とは無縁なんです。ローカル経済圏で、小売り、卸しとか物流、介護、公共交通機関などのサービス業に携わって働いているわけです。この8割の世界の低生産性にメスを入れずに「世界を相手に頑張りましょう」というのは順番が逆ですよ。 ──まずは、足元を見つめろということですね。 冨山 自分が活動している経済圏の実体をよく見つめるところからスタートすべきです。ちゃんと足元を見つめて、コツコツと真面目に効率を上げて、生産性を上げて、賃金を上げる。これが絶対的な基本です。それができてから、全国を相手に商売しようとか、世界に出ていこうとか考えればいいんです。 |