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田原総一朗:ローカル企業は社員のプライドを取り戻せ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140827-00000001-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 8月27日(水)0時28分配信
経営共創基盤の代表取締役CEOで経営コンサルタントの冨山和彦さんを「激論!クロスファイア」(BS朝日、8月23日放映)にお招きして、日本経済の今やるべきことをうかがった。その内容がおもしろかったので紹介したい。
■グローバル企業とローカル企業
日本経済を語るとき多くの人が「大企業と中小企業」に分けて考える。しかし、「大企業か中小企業かではない。グローバル企業かローカル企業か、だ」と冨山さんは言う。
グローバル企業はトヨタ自動車や日産自動車、パナソニックなど世界中に進出して現地生産し、世界のマーケットを相手に事業を展開している。これに対してローカル企業とは、たとえばデパートやスーパー、コンビニエンスストア、ホテルや旅館などのサービス業、公共交通(鉄道・バス・タクシー)などだ。意外なのは、金融機関も実はローカル企業に含まれるという。
グローバル企業とローカル企業を比較して見ると、国内総生産(GDP)に占める割合はグローバル企業が3割なのに対し、ローカル企業が7割。雇用面では、グローバル企業が2割、ローカル企業が8割と圧倒的に多い。そして企業数を見ると、グローバル企業は全体の数%に過ぎないという。
つまり、日本経済を本格的に回復させるためには、ローカル企業の改革を急ぐ必要があるというのだ。
■顧客に繰り返し足を運んでもらうにはどうすべきか
冨山さんはさらにこう言う。グローバル企業は、たとえばオリンピックやサッカーのワールドカップのように世界で競わなければならないが、ローカル企業はせいぜい国体レベル、つまり国内で競えばよい。そこにカリスマ経営者は必要ない――。
では、ローカル企業がよくなるにはどうすればよいか。
コンビニエンスストアを展開するローソンは、海外展開を始めたとはいえ、主力は国内であり、ローカル企業と言ってもいいだろう。ローソン会長の新浪剛史さんが社長になったころ、私はこう聞いたことがある。「以前ローソンはテレビコマーシャルをたくさん打っていたが、最近はやらなくなった。なぜですか」
新浪さんの答えはこうだった。「ローソンの名前が知られていないうちはテレビコマーシャルが必要だが、だんだん存在が知られるようになるとその必要はなくなる。次に問題になるのは、1度来てくださったお客様に2度、3度と繰り返し来ていただくこと。それにはお客様のニーズや好み、クセをつかんでそれに合ったサービスを提供することが重要。そのためには、ローソンの従業員がプライドを持ってくれないと困る」
三菱商事から移った新浪さんの目には、ローソンの従業員がプライドを持つのはなかなか難しいことだと思えた。そこで、彼らにプライドを持ってもらうために考えたのが「日本一の商品」を作ることだったという。
■日本一のおにぎりで従業員にプライドを持ってもらう
目を付けたのはおにぎりだ。セブン-イレブンのおにぎりがおいしいと言われていたので、それよりおいしいおにぎりをつくる目標を立てた。新浪さんは「がんばってセブンイレブンを抜き、日本一のおにぎりをつくった。それで従業員たちはプライドを持つようになった」と言う。
プライドを持つと、モチベーションが上がり、やる気も出る。いろんなアイデアを考えるようになり、お客様のニーズや好みに合ったサービスを提供できるようになる。会社を変えていくには、従業員にいかにプライドを持ってもらうかが重要なのだ。
リピーターを増やすにはどうしたらよいか。長崎のハウステンボスもそれが大きな課題だった。ハウステンボスは長崎のローカル企業であり、1992年の開業以来、18年連続で赤字。再建を引き受けたエイチ・アイ・エス(HIS)会長の澤田秀雄さんは1年半で黒字に転換した。
ハウステンボスはオランダにちなんでチューリップで人気を呼んでいた。しかし、お客様は1度は来てくれるが、それで終わり。お客様を呼び込むために全国広告を打っていたが、それも間違いだった。繰り返し来てくれるのは、はやり地域のお客様だ。「九州のハウステンボス」として、九州のお客様に繰り返し来てもらうにはどうすればよいか。
それまで花はチューリップだけが売りだったが、これを春夏秋冬に分け、いつ行ってみても季節の花が楽しめるように見事に変えた。ホテルも「健康づくりのためのホテル」に変え、さまざま工夫を凝らしたという。
■「お客様の立場」になり、つねに新しいものを提供する
セブン-イレブン・ジャパンの会長CEO、鈴木敏文さんに最近お会いしたときの話もおもしろかった。セブン-イレブンの1店舗あたり1日の売り上げは65万円である。これはコンビニ業界では1位で、ローソンの55万円、ファミリーマートの53万円を大きく引き離している。なぜか。
鈴木さんはお客様に「おやっ」と思わせることが大切だと言う。新しいものを何かつねに展開する。ただ、新しいものはすぐに古びてしまう。いつも新しいと思わせるためには工夫が必要になる。
たとえば、おでん。セブン-イレブンのおでんは評判いい。だしはカツオからとっている。一般には獲ったカツオを冷凍して港へ運び、そこから各地の市場に出すが、凍らせたカツオからとるだしはどうしても味が落ちてしまうそうだ。そこでセブン-イレブンは漁場に近いところにおでんの工場をつくった。カツオを凍らせずに持って来ることができるから、新鮮なだしがつくれるのだという。
「コンビニはお客様にとっては手軽なものだが、品質は極めて高いものでないと買ってくれない。今や飽食の時代。おなかがいっぱいのお客様にどう売るかが勝負」と鈴木さんは言う。
鈴木さんは毎日、昼にセブン-イレブンのお弁当を食べるそうだ。自分が弁当に飽きたらお客様も飽きているに違い位ないと考え、すぐに改善の指示を出す。「お客様のために」という生産者の視点は間違いで、「お客様の立場になる」ことを毎日実行しているという。
■ローカル企業が元気なれば日本経済は再生する
ローカル企業、特に中小企業をめぐる大きな問題は、これまで政府や国がいかに中小企業を存続させるかを考え、そしてマスメディアも中小企業を助けよと言ってきたことだ。回復不可能なほど業績が悪化した中小企業でも生き延びている。
だが、日本経済全体の活性化を考えれば、これは正しいとは言えない。企業の体力があるうちに事業を転換し、新しいことに挑戦したほうがよい。つまり、企業の新陳代謝を促すことが大切なのである。
それには金融機関の役割が重要になる。銀行はお金を貸すばかりで、しかも中小企業の経営者の個人財産まで担保にとって融資する。もし倒産すれば経営者は首を繰るか、夜逃げしなければならないほど追い込まれる。
冨山さんは、金融機関自身が改革を行い、リスクを負うべきだと言う。コンサルタント業務を強化して中小企業の経営に深くかかわる。そして、その企業に先がないと判断したら、まだ経営者にやる気があるうちに新陳代謝を行う。
ローカル企業が元気になれば日本経済は再生する――。冨山さんのこの指摘はとても重要である。
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