05. 2014年8月26日 14:26:48
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JBpress>日本再生>日本経済の幻想と真実 [日本経済の幻想と真実] 上がる物価、下がる賃金 「デフレ脱却」で労働者は貧しくなる 2014年08月26日(Tue) 池田 信夫 2013年初め、安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」がデビューしたとき、株式市場や外国為替市場は大きく反応した。これによって日本経済が活性化し、デフレを脱却すれば賃金も上がって「好循環」が起こるはずだった。 それから1年半余り経ち、2014年上半期の貿易赤字は約7.6兆円と史上最大を記録し、2014年4〜6月期の実質成長率は年率マイナス6.8%と、東日本大震災以来の落ち込みを見せた。人手不足なのに、6月の実質賃金は前年比マイナス3.2%だ。いったい日本経済に何が起こっているのだろうか? 黒田総裁は原因と結果を逆に見ている 日本銀行の黒田東彦総裁は、今年のジャクソンホール講演で、この現象を次のように説明している。 2000年代、デフレ圧力が強まる中、企業の販売価格が低迷しました。売り上げが伸びない以上、収益を確保するための主たる手段は、人件費をはじめとする経費の削減になりました。人件費の抑制は、まず、雇用の非正規化という形で行われました。 つまり「デフレが賃下げの原因だ」というのだが、これは本当だろうか。図1は1990年以降の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)と名目賃金指数を完全失業率と比べたものだ。 図1 物価・賃金と失業率(右軸、%)、出所:総務省・厚労省 90年代の初めから失業率が上がり始めたが、名目賃金も物価も上がっていた。ところが金融危機で失業率が急増した1998年から賃金が下落に転じ、ここから1年遅れてCPIがゆるやかに下がり始め、デフレになった。失業率は2002年をピークにして下がり、最近は4%以下で推移している。
この図からも明らかなように、賃下げがデフレの原因であって、その逆ではない。賃下げは時間的にデフレに先行し、変化率も物価のほぼ2倍だ。これは賃金コストが価格の半分を占めるからだ。その逆に、物価が1%下がったとき賃金を2%下げるという労使交渉はあり得ない。 このように2000年代に賃金が下がり続けたことが、日本だけデフレになる一方、失業率が低い原因である。日本の企業では、雇用を守るために企業収益と賃金の比率が一定に保たれ、賃金が業績に応じて上下する一方、失業率はあまり上がらない。 だから「インフレにすれば賃金が上がるはずだ」という黒田氏の話は、因果関係を逆に見ている。結果を変えても原因は変わらないので、「デフレ脱却」しても名目賃金は上がらない。それが今、起こっていることだ。 なぜ失業率が下がったのに賃金が上がらないのか しかし失業率が下がったら労働需給がタイトになり、賃金が上がるはずだ。ところが人手不足で居酒屋や牛丼屋が閉店しても、実質賃金は上がらない。図2でも明らかなように、「異次元緩和」が始まってから、物価は上がったが、名目賃金はあまり上がらず、その結果、実質賃金が大幅に下がった。 図2 コアCPI上昇率と名目賃金上昇率(年率、%)、出所:総務省・厚労省 この原因は、日本の労働市場のゆがみにある。日本では正社員を動かしにくいので、足りない人手は非正社員で補うため、平均賃金は上がらない。また建設・外食などの有効求人倍率は2倍以上なのに、事務職は0.3倍ぐらいしかない。正社員のホワイトカラーが余る一方で、3Kと呼ばれるきつい仕事は時給を上げても人が集まらないのだ。
黒田総裁になってから円安が進み、エネルギー価格が上がったため、図2のように物価だけが上がった。彼は「デフレ・賃下げ」を、もっと悲惨な「インフレ・賃下げ」にしてしまったのだ。 黒田氏は「今後とも賃金が適正なペースで上昇していくためには、賃金を引き上げるための協調メカニズムを構築することが必要です」と苦しい弁明をしているが、春闘という賃金カルテルが機能しなくなった今、他社との協調のために賃上げするお人好しの経営者はいない。今年の春闘では、閣僚が企業に「賃上げ要請」までしたが、賃上げは実現しなかった。 その原因は簡単である。企業収益が上がっていないからだ。経営者が見るのは実質賃金だから、デフレだろうとインフレだろうと、儲からない企業が賃上げするはずがない。日経平均株価に入っているような大企業は円安の恩恵を受けるが、数の上では圧倒的多数の中小企業はコスト高で収益が悪化している。 デフレの正体はグローバル化だった この背景には、グローバル化による交易条件(国際競争力)の悪化がある。以前のコラムでも書いたように、日本の交易条件はこの5年で30%下がった。新興国の旺盛な需要でエネルギーや農産物など1次産品の輸入価格が上がる一方、競争の激化で電機製品などの輸出価格が下がったからだ。 携帯電話のような国際商品は部品がグローバルに調達できるので、コストの差は組み立て工程の人件費ぐらいしかない。賃金を労働生産性で割った単位労働コストは、まだ日本が中国の2倍ぐらいなので、それがなくなるまで製造業の賃下げは続くだろう。 おまけに日本の場合は、人口減少によって経済が縮小してゆく。製造業が新たに工場を造るとき、コストが安く市場として成長する新興国に造るのは当然だ。円安になっても、海外に建てた工場は日本に戻さない。一時は海外生産した製品を輸入して輸出していたメーカーも、海外で作って海外で売るようになった。これが輸出の増えない原因だ。 こうしてグローバルな(生産性の高い)製造業から雇用がなくなると、国際競争のない(賃金の低い)サービス業に労働者が移動しなければならない。これは苦痛を伴う変化である。 日本との競争に負けたアメリカの製造業は、80年代から30年ぐらいかかって製造業からサービス業への転換を実現したが、その間にメディアン(中央値)の労働者の賃金はほとんど上がっていない。高賃金の自動車産業で解雇された労働者が、その半分以下の賃金のスーパーマーケットに再就職して、賃金を下げたのだ。 日本では、同じ賃下げを非正社員の増加で実現した。これも愉快なことではないが、「ブラック企業」を叩いてみても雇用は増えない。むしろコストの上がった店が閉店され、困るのは非正社員だ。 ここから先は、日銀にはどうにもならない。国際競争力を高めるには、正社員の過剰保護をやめて労働市場を自由化し、生産性に見合った賃金を払うように改めるしかない。それは日本の長期雇用・年功序列などの雇用慣行の問題なので、「解雇規制の緩和」だけでは実現しない。 逆に言うと、制度を変えなくても雇用の流動化は可能だ。外資は日本の制度の中で自由な労働移動を可能にしている。その意味では、資本市場を開放して外資を入れることが、日本が変わるきっかけになるかもしれない。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41580
ジャクソンホール会議、議論は雇用懸念に終始 2014年08月26日(Tue) Financial Times (2014年8月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 米カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム(通称ジャクソンホール会議)の昼食会で、欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は米連邦準備理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長の隣に座った。そして講演のため立ち上がると、自分のスピーチはイエレン議長のそれに似ていると指摘することから話を始めた。 欧州の失業は構造的(それゆえ恒久的)だが、米国の失業は景気循環的(そのため、経済回復とともに解消する)というのが既成概念だが、現実はもっと込み入っているというのがECBとFRBのメッセージだ、とドラギ氏は語った。 先進国の労働市場を巡る不確実性 「状況は複雑なんだ!」。今年のジャクソンホール会議からのメッセージはこれに尽きたと言ってもいいだろう。グランドティトン国立公園の壮大な景色を背景に開かれたジャクソンホール会議のテーマは労働市場であり、議論は高失業率が何年も続いた後の先進国の労働市場を巡る不確実性を反映していた。 高い失業率――現在米国で6.1%――は、パートタイムの雇用者数など、労働者にとっての他の変化を不明瞭にしてきた。完全雇用の割合に関する曖昧さは、各国中央銀行が金利を動かすべき時期を見極めるのを困難にしている。 イエレンFRB議長はたくさんの疑問を投げかけたが、答えはほとんど出さなかった。景気後退を理由に何人の労働者が退職を前倒ししたか? 中位技能職の減少は、パートタイムの仕事の永続的な増加を意味したのか? 現在賃金を抑制しているのは、企業の積もり積もった賃金削減願望だったのか? 経済が完全雇用からどれだけかけ離れているか知ることは、金利の引き上げ時期を決定するうえで極めて重要だ。 「この(雇用)ギャップの大きさについての判断は、労働市場の構造の継続的な変化によって難しくなっている」とイエレン議長は語った。 イングランド銀行のベン・ブロードベント副総裁は、生産性の伸びの落ち込みのせいで経済が最大の生産高に近いかどうかを判断しづらくなっている英国にとって、雇用の力学を理解することは極めて重要だと述べた。「何が供給で何が需要かを見極めるには、労働市場に関するデータも参照する必要がある」 会議ではさまざまな分析が提起され、その大半は方向性が異なっていたが、労働市場に焦点が当てられたことは、金融政策との直接的な結びつきが少ないことを意味した。過去のジャクソンホール会議の報告書の中にはFRBの議論において画期的な節目となったものもあるが、今年は明白な候補は見当たらなかった。 米国労働市場の「流動性」低下に警鐘も 米国の学者のスティーブン・デービス、ジョン・ハルティワンガー両氏は、グレートリセッション(2000年代後半からの大不況)が始まるだいぶ前から米国の労働市場の「流動性」――労働者と仕事の回転率――が大きく低下してきたことを立証した。 FRBに最も直接関連する論文では、米国の学者のティル・フォン・ヴァクター氏がデータを駆使し、正式に長期失業者として記録されている人だけでなく、長期間にわたり就労していない人全般を観察した。彼の結論は、この「長期非雇用」という観点では、グレートリセッションは1981年などの他の景気後退と大差ないように見える、ということだった。 もう1つの教訓を与えてくれたのは、日銀の黒田東彦総裁だった。黒田氏は、企業は「物価下落を背景に、コスト削減のため賃金を削減する必要があった」と述べ、賃金が再び上昇するようにするためには何らかの正式な制度が必要かもしれないと示唆した。 By Robin Harding in Jackson Hole http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41573
民間部門を震撼させるアルゼンチン大統領の「怖い」施策 2014年08月26日(Tue) Financial Times (2014年8月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) アルゼンチン大統領、脳内出血で1か月休養 8日に手術へ 強気の姿勢を崩さないクリスティナ・フェルナンデス大統領〔AFPBB News〕 アルゼンチンのクリスティナ・フェルナンデス大統領は20日、ブエノスアイレス証券取引所で演説し、アルゼンチンの金融システムは「世界で最も盤石なものの1つ」だと自画自賛した。 会場でこれを聞いた企業経営者の中には、信じられないという気持ちを押し隠すのに一生懸命だった人もいた。 その前日、気分の変動が激しく今にも泣き出しそうだったこの指導者は、1つの計画を緊張した面持ちで発表していた。 アルゼンチンはいわゆるホールドアウト(ゴネる人の意)債権者への支払いをニューヨークで行うよう米国の裁判所から命じられたものの、これに従わなかったために13年ぶり2度目のデフォルト(債務不履行)に追いやられたが、フェルナンデス氏はこの命令を回避するプランを打ち出したのだ。 デフォルトからの脱却に向けた計画、早くも実現可能性に疑問符 エコノミストらはこれについて、フェルナンデス氏が緊張するのも無理はないと評している。そして、債務の返済に国営銀行を利用することと、外国法に基づくアルゼンチン国債をアルゼンチンの国内法に準拠する新しい債券と交換するよう債権者に促すことを柱とするこの計画は、前回の2001年のデフォルト以降続いている国際金融市場での同国の孤立を長引かせ、経済をさらに深刻な景気後退に陥らせるだけだと警告している。 この計画は実行可能なのかという疑問の声も多い。ホールドアウト債権者のリストに名を連ねるヘッジファンド、アウレリウス・キャピタル・マネジメントは、この計画をもってアルゼンチンの指導者層は「アウトロー(無法者)」になることを選んだとコメントした。 またニューヨーク連邦地裁のトーマス・グリーサ判事は21日、この計画は「違法」だと述べた。ただ、法廷侮辱罪の宣告は「当面」見送るとした。 グリーサ判事は過日、ホールドアウト債権者にも同時に支払いを行うのでなければバンク・オブ・ニューヨーク・メロンによる債券保有者への利息の送金を認めないとの判断を示した。これにより引き起こされた今回のデフォルト以降、フェルナンデス氏はますます妥協を拒む戦略を採りつつあるとの懸念が強まっている。 アルゼンチン在勤のある外国人エグゼクティブは、「大統領は正統派であることをやめ、徹底した急進派になりつつある」と語っている。アルゼンチンは、中央銀行の外貨準備が記録的な低水準に落ち込んだことから外国の資金を再度流入させる必要に直面し、外国の債権者との関係正常化にこの1年間取り組んできたが、状況が変わったというわけだ。 今回のデフォルトによってそうした取り組みは頓挫したように見えるが、アルゼンチンは確かに、2012年に接収した国内資産についてスペインの石油大手レプソルに50億ドルの補償を行うことに同意したり、長らく滞っていたパリクラブ(主要債権国会議)への100億ドルの返済にも同意したりしていた。 大統領にとっては政治的に都合のいい「けんか腰」の姿勢 この企業幹部は、民間部門に対する一連の「怖い」施策に不満を抱いている。例えば、破産申請を行ってアルゼンチン国内の事業所を閉鎖した米国企業に対し、アルゼンチンは制裁を科そうとしているという。フェルナンデス氏はこの破産を、国民の間に不安感を広めようとする「ハゲタカファンド」の支援を受けた試みだと主張しているそうだ。 企業は、議会で審議中のいわゆる「供給」法にも腹を立てている。経営者らに言わせれば、この法律は「退行的」かつ「憲法違反」だ。同法を使えば、政府は企業間の取引に介入して価格や利益をコントロールできるようになるという。 このため、2008年にあったフェルナンデス氏と農業セクターとの衝突に匹敵する規模の対立を恐れる向きも一部にはある。 ただ、ブエノスアイレスで世論調査会社を経営するウゴ・アイメ氏は、こういうけんか腰な雰囲気がフェルナンデス氏には合っていると指摘する。「ハゲタカファンド」であれ国内の富裕な特権階級であれ、不人気な敵から国益を守る守護者を気取ることができるから、というのがその理由だ。 「この政権は、常に誰かと対決している状況が非常に心地よいと感じている」とアイメ氏は見ている。特に、誰かと対決していれば、フェルナンデス氏の最も強硬派の支持者たちからの支持を強めることができるという。 そして、フェルナンデス氏が議会で強硬派の支持を頼りにする場面は、今後増えていく。来年の大統領選挙に向けた戦いが熱を帯びるだけでなく、同氏の政治運動の長期的な継続や同氏の任期満了後における政治的遺産の保護も問題になってくるからだ。 深刻化する国内の経済問題 政治アナリストのカルロス・ヘルマノ氏によれば、フェルナンデス氏はこの争い(特にホールドアウト債権者との争い)を、国内経済の難問から人々の目をそらすためにも利用している。 アルゼンチンのインフレ率は世界トップクラスの高水準にあり、外貨準備の大幅な不足もあいまって景気後退がさらに深刻化している。エコノミストの間では、年内に2度目の通貨切り下げが実施されるとの予想が多い。1度目の切り下げが行われた今年1月には、闇市場におけるアルゼンチンペソの非公式レートは1ドル=10ペソ前後だったが、今週には14ペソという記録的な安値に落ち込んでいる。 また今回のデフォルトの後に、資本逃避を防ぐ利上げではなく景気刺激を目指した利下げが実行された時には、中央銀行の自主性を懸念する声が強まった。 外貨不足であるにもかかわらず、牛肉の輸出がインフレ対策を理由に21日に停止されたことも、アルゼンチン政府の非正統的な経済運営に対する疑念をさらに強める結果となった。 大統領は今は笑っているが・・・ 「政府の経済モデルはもうボロボロだ・・・政府は、借金が返せないことをとても心配しているが、一般の人々がこの問題を論じないように、ホールドアウト債権者を舞台の中央に据えようとしているのだ」。ヘルマノ氏はそう語り、ホールドアウト債権者への対応でフェルナンデス氏の支持率は高まったが、これがずっと続くことはないと付け加えた。 「彼女は、今は笑っているかもしれないが、最後は涙で終わることになるだろう」とヘルマノ氏は話している。 By Benedict Mander http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41574
JBpress>海外>アジア [アジア] 日韓関係も「政冷経冷」 超円高修正、世界景気の影響に外交関係悪化が追い討ち 2014年08月26日(Tue) 玉置 直司 毎日のようにソウル中心部の明洞(ミョンドン)あたりをうろうろしているが、めっきり日本人の存在感が薄くなった。訪問者数だけでなく、経済関係も縮小しているのだ。
明洞は向かいにロッテホテルやロッテ百貨店、ウエスティン朝鮮ホテル、さらにソウル市庁もあり、ソウルでも最大の観光スポットだ。 2年ほど前までは、あちこちで大声で話す日本人観光客を見かけた。ところが、最近は、圧倒的な数の中国人ばかりが目立つ。近くに百貨店や大型免税店があるためか、大型観光バスでどんどん乗り付け、午後になると歩くのも困難なほどだ。日本人は、その間をちょこちょこと歩いているという感じになった。 消える日本語の看板、まるで「中国人街」の様相に 明洞の化粧品、みやげ物店も、日本語に代わって中国語の表示がドカンとある。 ただでさえ急増している中国人だが、2014年の統計を見ると、韓国を訪問する日本人は減少しており、その差はますます広がっているのだ。 2014年の1月から6月まで、韓国を訪問する日本人数はずっと前年同月実績を下回った。1〜6月の訪問者数は116万3200人で前年同期比13.1%減だった。7月の日本人訪問者数も17%減。1〜7月の累計でも、13.7%減の133万6000人だった。 これに対して中国人の激増ぶりは衰えを見せない。1〜7月の韓国への訪問者数は、前年同期比45.8%増の336万2000人に達した。 この期間に韓国を訪問した全外国人の45.8%が中国人だった。 韓国を訪問する外国人数は、日本より一歩先の2012年に1000万人を突破した。このままのペースで進むと、2015年にも中国人の訪問者数だけで1000万人を超える可能性がある。 中国人観光客が無査証(ノービザ)で訪問できる済州島の一部やソウル中心部は、もう中国人街なのか、という錯覚に陥るほどだ。 わずか2年前の2012年まで、韓国を訪問する外国人の最大シェアを握っていたのは日本人だった。そんなことが想像もできないほどの「日本人の存在感低下」だ。 一方で、日本を訪問する韓国人の数も2014年になってずっと減り続けた。1月こそ、前年同月比9%増の25万5000人になったが、2月から5カ月連続して前年同月比割れとなった。
1〜6月の累計の訪問者数は、前年同期比3.3%減の127万6000人だった。 ほかの統計をあたってみたら、訪問者数だけではなかった。 2014年に入って、日韓間の貿易額もほぼ一貫して減り続けているのだ。 韓国から日本への輸出額は、2014年1月に前年同月比20.1%減の28億1000万ドルとなったが、それ以降も、3月と4月を除いてマイナスが続いている。 日本の対韓輸出が2ケタの減少、直接投資も減少 逆に、日本からの輸出額はもっと大きな落ち込みだ。1月には前年同月比20.1%減の40億2000万ドルだったが、2月以降もマイナスが続いている。 1〜6月の累計で見ると、韓国から日本への輸出は161億9000万ドルで前年同期比5.4%減。一方で、日本から韓国への輸出額は、同12.2%減の267億8000万ドルだった。 日韓間の貿易は、ずっと韓国の大幅な赤字だった。日本からの輸出がより減少したことで、1〜6月の「韓国の対日赤字額」も105億9000万ドルと最近にない水準になった。 それだけではない。 日本から韓国への直接投資も減少している。 日本から韓国への直接投資金額は、2013年には前年比40.8%減の26億9000万ドルになった。2014年になっても減少が続いている。1〜6月の直接投資金額は、11億4882万ドルで、前年に比べて2億ドルほど減少している。 なぜこんなことになっているのか。 1つは、超円高の修正だろう。日本人の訪問者、特に観光客が目に見えて減り始めたのは、超円高の修正で、韓国旅行が「割高」になったことの影響が大きい。 日本人客が多い大手ホテルの幹部は、「毎年何度か宿泊していただいたお客様の訪問ががくんと減った。調べたら、やはり、『高くなった』という理由が多いようだった」という。 日本向けの輸出が減少していることも、超円高修正、ウォン高の影響があるはずだ。 もう1つは、世界景気の先行きが不透明で、韓国での投資など経済活動が活発でないことが言える。 韓国での企業活動が活発でないと、日本からの設備や部品、材料の輸入が鈍るのだ。 だが、果たしてそれだけなのか。 日韓の「外交梗塞」が経済にじわり影響 韓国の大手経済紙「毎日経済新聞」は8月14日付の1面トップと3面全部を使って「韓日外交梗塞(こうそく)・・・打撃を受ける経済」という記事を掲載した。 「韓国と日本が経済的に遠くなっている。歴史問題などを巡って政治的に冷たい関係になっているが経済的にも冷え込んでいる」などと報じた。 同紙は、日本でも韓国製のスマートフォンやラーメンなどの販売も影響が出ていると報じた。この中で、日本駐在の韓国企業支店長の「日韓関係が良かった時には韓国の食品に対する高感度が高かったが、関係が悪化してからは韓国製品の底辺を広げる契機がなくなった」というコメントを紹介している。 「日韓の政治的な関係が悪化しても、経済関係は大丈夫」。つい数年前まで、日本と韓国の企業人の間では、こんな声が強かった。 だが、「ここ2〜3年間の関係悪化は、じわじわと経済分野にも影響を与えている」(韓国在住の日本企業幹部)という声をよく聞くようになった。 では、経済関係はこのままさらに冷え込むのか。 ある韓国紙デスクは「経済分野に限らず、日韓関係がこのままで良いと考える声は韓国でも少ない」と述べた上で、「韓国側に関係改善に向けた兆候も出ている」と話す。 朴槿恵大統領、日韓国交正常化50周年に向けて関係改善に意欲? このデスクは「朴槿恵(パク・クネ)大統領が、最近、来年が日韓国交正常化50周年であることに何度か言及した。関係改善への意欲の表れだ」と期待する。 韓国メディアによると、8月22日に次期駐日大使の信任状を受けるために青瓦台(大統領府)を訪れた柳興洙(ユ・フンス)氏に対して、朴槿恵大統領は「来年は日韓国交正常化50周年の年であり、(日本に)行ってうまくやって下さい」と語ったと報じた。 つい最近発表になった7月の韓国人の日本への訪問者数は25万600人で前年同月比2%増となった。 日本の観光業界関係者は「セウォル号事故の影響で海外旅行自粛の風潮があったが、ようやく動き出した。8月以降もさらに増えるはずだ」と予測する。 日本企業の新規投資意欲も、一気に衰えたという雰囲気も感じられない。 もちろん、「経済関係が徐々に遠くなっているのは単に日韓関係のせいだけではない」との指摘もある。 外交関係でも、政治と経済は密接な関係にある。政治関係が冷え込めば経済にも影響が出る。一方で、経済が冷え込めば、政治関係を改善させようという動きも出てくる。 日韓首脳会談が実現するのかなど政治的な関係に注目が高いが、実は経済面での関係がどうなるのかも、大いに気なる。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41560 |