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2014年8月25日
金融市場関係者が強い関心をもって臨んだイエレンFRB議長の講演が8月22日に行われた。
米国経済の見方について、これほど見解が割れていることは珍しい。
失業率が6.5%を大幅に下回っているから、従来の尺度で考えれば、FRBは金融引締め政策に着手してもおかしくない状況である。
イエレンFRB議長の前任者であるバーナンキ前議長は昨年5月に、量的金融緩和政策を縮小する方針を示唆して、金融市場を震撼させた。
バーナンキ議長の当時の発言の流れからすると、現在の状況では、すでにFRBによる金利引上げ措置が実行されていてもおかしくはないものと推察される。
本年2月にバーナンキ氏からイエレン氏にFRB議長のバトンが引き継がれたが、FRB議長の交代に前後してFRBの金融引締め措置が始動するのではないかとの憶測さえ持たれていたのである。
ところが、現実には、金融引締めが実行されるタイミングは、本年中はおろか、2015年後半にまでずれ込むとの見方が広がっているのである。
たしかに、物価統計や雇用統計、あるいは賃金関連統計は、米国のインフレ懸念を煽り立てるものにはなっていないから、FRBによる金融緩和政策の維持は説明のつくものにはなっている。
とはいえ、失業率がリーマンショック後のサブプライム金融危機不況で10%水準にまで上昇したことを想い起こせば、まさに隔世の感がある。
この状況下で、金融引締め観測が広がっていない、最大の要因は、イエレンFRB議長の言動にあると言えるのだ。
イエレン氏が強いリーダーシップを発揮して、金融市場の多数派意見が形成されている。
FRB議長の言動がまったく違ったものであったら、金融市場には利上げ観測が蔓延して、大きな波乱がすでに生まれていた可能性もある。
この意味で、イエレン氏の指導力は極めて強力であると評価できるのである。
ただし、その功罪を評価するには早すぎる。
中央銀行家の業績評価には時間がかかる。
短期的に不評を買う中央銀行家が優れた業績を後に与えられることは決して少なくない。
逆に、短期的には金融市場から賞賛を浴びながら、中長期で厳しい批判の対象にされてしまう中央銀行家も少なからず存在してきた。
中央銀行家のなかには、実は、現状でも、FRBの金融政策対応がインフレに対して寛容すぎると批判する者が存在する。
FRBによる金利引上げ措置は2015年初に行われるべきであると公言している中央銀行家が存在するのだ。
このなかで、イエレン氏が講演でどう発言するか。市場は固唾を飲んで見守ったのである。
しかし、結果は、事前の大方保予想通りであった。
事前の予想とは、基本的に金融緩和政策の維持を印象付けるものであることと、しかしながら同時に、いつどのように行動するのかについて「言質(げんち)」を取られぬ発言を示すこと、の二つだった。
イエレン氏の講演内容は、まさに、この二つの予測に沿うものだった。
イエレン氏が強調し続けてきたことは、米国の労働市場が、失業率の水準が示すほどには逼迫していないこと。
インフレの兆候は基本的に確認できないことである。
FRB議長がこれほどまでに強く、労働市場の「緩み」を強調してこなかったなら、金融市場はとっくの昔に金利引上げ警戒モードに移行していただろう。
しかし、FRB議長がことさらに、労働市場の緩みとインフレ警戒の必要性の低さを強調し続けてきたために、金融市場は、この「イエレン説」に基本的には染め抜かれてきたのである。
昨年後半から年末にかけて3%水準に達した米国10年国債利回りは、本年入り後に再低下した。
直近では2.4%水準にまで低下したのである。
イエレン議長は、労働市場の弱さとともに、住宅市場の基調の弱さも強調する。
ところが、実際に住宅価格指数統計などを見ると、住宅価格が再下落に転じているとの確かな実績を確認することができない。
ひょとすると、金融市場はイエレンマジックにかかってしまっているのかも知れない。その真偽は、もう少し時間が経たないと判明しない。
ただ、ひとつの仮説として浮上することがらがある。
それは、イエレン氏が、米国長期金利の大幅上昇を極度に恐れているのではないかということである。
極度に恐れるということは、極度に恐れなければならない、何か特別な事情が存在するのではないかということである。
この点について、イエレン氏は何も明かさない。
しかし、議会証言の質疑応答などにおいて、その片鱗を垣間見せることがある。
米国金融市場には、あまり公言できない「何か」が潜んでいる可能性があるのだ。
その「何か」を見抜く洞察力が求められている。
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