01. 2014年8月25日 13:18:24
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焦点:米FRB内で声明変更の機運高まる、利上げに向け下準備 2014年 08月 25日 10:22 JST [ジャクソンホール(米ワイオミング州) 24日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の内部で、早ければ来月にも米経済が改善していることを一段と明確に示し、約10年ぶりとなる利上げに向けた下地をつくろうとする機運が高まっている。一部FRB当局者らによると、景気の底堅さを示す兆候や、長期間にわたり金利を低水準で維持するリスクに関する懸念の高まりを受け、連邦公開市場委員会(FOMC)声明の書き換えをめぐる議論の準備が整ったという。 9月16─17日のFOMCで利上げ期待を抑えるために使われていた文言を変更・削除するかどうかは現時点で不透明だが、10月にそうなることはほぼ間違いなさそうだ。 中立派として知られるアトランタ地区連銀のロックハート総裁はインタビューで、「文言の一部変更は検討されており、向こう数回の会合で検討されるべきだ」と指摘。一握りの当局者は迅速な変更を求めているが、総裁は9月に変更するのは「まだ早い」との認識を示した。 同総裁は、たとえ数カ所でも声明を削除もしくは変更するのは潜在的な危険が伴うと指摘。FRBがコミュニケーションで失敗すれば、世界的に金融市場のショックを引き起こし、最悪の場合は景気回復を後退させかねないと付け加えた。 声明で意見が分かれているのは、10月に資産買い入れプログラムを終了させた後も事実上のゼロ金利を「相当な期間(considerable time)」維持するとしている文言だ。 また、労働市場には「著しい(significant)」緩みが残っているとする文言に対してもFRB内部で反対の声が出ている。 フィラデルフィア地区連銀のプロッサー総裁はロイターに対し、「私は、こうした文言によりわれわれが良くない箱に閉じ込められていると考えている」と指摘。7月下旬のFOMC声明に出ている「相当な期間(considerable time)」という文言に反対した上で、タカ派の当局者と同様に、時間軸にとらわれない「非常にシンプルな、指標次第の」ガイダンスが望ましいと述べた。 <タカ派の圧力強まる> 市場の反応とは別に、FRBのイエレン議長は米景気に影響を及ぼしかねない世界の経済情勢とも向き合わなければならなくなる。 ジャクソンホール会合では、英国や欧州、日本の中央銀行当局者がそれぞれ、自国や地域の景気回復ペースが予想よりも緩慢だと説明した。 現状では、投資家や主要なFRB当局者は来年央まで利上げはないとみている。 しかし、文言の修正は6年間に及ぶ事実上のゼロ金利の終了に向けたスタートとなりそうだ。一段と正常な金融政策ヘ回帰することに対し、市場の準備を促す必要もある。 イエレン議長は22日の講演で、早めに政策を引き締める可能性を普段にも増して強調した。内部のタカ派からの圧力が強まっていることを背景に、声明の変更が計画されていることを示唆した形だ。 FRBの元副議長で、現在はプリンストン大学教授を務めるアラン・ブラインダー氏は「少数の例外はあるものの、指標の大半は人々の見方をややタカ派にしている」と指摘。「全体の見方が移動しているため中間点も移動しており、イエレン議長の見方も移動している」と述べた。 7月29─30日分のFOMC議事要旨では、何人かの参加者は、労働市場の緩み(スラック)の度合いや利上げ時期の見通しに関する表現を含め、声明の一部文言に同意しなかったことが分かった。こうした不同意の意見は強まる一方だとみられる。 イエレン議長は22日の講演で、近いうちに声明のトーンを変更する必要がある可能性を認めた。「経済がわれわれの目標に近付く中、FOMCの重点は、残る緩みの度合いに関する課題に自然と移るだろう」と指摘。「そして、どういった環境下で異例の緩和(政策)をわれわれが引き戻し始めるのかをめぐる課題」に移るだろうと述べた。 (Jonathan Spicer記者、Michael Flaherty記者、Howard Schneider記者 翻訳:川上健一 編集:佐々木美和)
アングル:FRBの従来と異なる労働指標重視、亀裂の原因に 2014年 08月 25日 09:21 JST [ジャクソンホール(米ワイオミング州) 22日 ロイター] - 様々な労働統計を駆使して金融政策を運営する米連邦準備理事会(FRB)中核メンバーの手法に一部の地区連銀総裁が反発を強めている。 イエレンFRB議長は22日、ワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジウムで講演し、景気後退後の労働市場の動きを詳しく分析。賃金の伸び悩み、パートタイム労働者の多さ、求職活動をあきらめた労働者の存在などを指摘したうえで、結論として、正確な測定は難しいものの、国内経済には依然としてかなりのスラック(需給の緩み)があり、景気の先行きが明確になるまで利上げを急ぐべきではないとの考えを示した。 ただ、他の様々な経済指標は力強く改善しており、連銀内では、多種多様な労働統計に着目することで、かえって経済の全体像がつかみにくくなるとの懸念が浮上している。 ブラード・セントルイス地区連銀総裁とプロッサー・フィラデルフィア地区連銀総裁は、様々な労働指標を重視するイエレン議長やフィッシャー副議長の手法を批判。雇用の伸びと失業率だけで十分信頼できるデータが得られると主張している。 ブラード総裁は、ロイターとのインタビューで「(従来とは異なる)他の指標を取り入れることは、これまでの金融政策の伝統に合わないように思える。非農業部門就業者と失業率がおそらく最善の指標だ」とし、「他の(労働)統計は、歴史的に見て、将来の予測の精度が高くない」との見方を示した。 ブラード総裁によると、特に労働参加率に注目が集まっているが、これまでFRB内で労働参加率が注視されることは少なかったという。 プロッサー総裁も22日のイエレン議長の講演について、金融政策では解決できない労働市場の問題を取り上げていると指摘。「FRBは雇用問題に焦点を絞るあまり、非常に困難な問題にがんじがらめになってしまっている」とし「金融政策を用いて、経済的要因によるパートタイム就業者の数を減らすことができると論じている文献も理論も存在しない」 両総裁はタカ派として知られ、FRBの中核メンバーをたびたび批判しているが、金融政策の決定では、FRB理事5人を含む中道寄りのメンバーの発言力が強いとみられている。 ブラード総裁は、労働統計をめぐって内部対立が起きているわけではないとしながらも、この問題について「健全な討論」が行われていることを認めた。 通常、中銀では注目する指標についてあらかじめ同意が得られており、そのうえで金融政策の運営方針を議論するが、FRBの場合は、どの指標に注目するかで意見が割れていることになる。 コラム:イエレン議長が講演で示した「多面的不確実性」 2014年 08月 25日 10:19 JST James Saft [22日 ロイター] - 米国の大統領だったハリー・トルーマンは「片腕の」経済学者を連れてきてほしいと懇願した。彼の経済アドバイザーたちがいつも「一方で(on the one hand)かくかく、他方で(on the oter hand)しかじか」と言うのにうんざりしていたからだ。 22日のジャクソンホール会議で米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が行った講演は、まるでトルーマンの悪夢から抜け出してきたような内容で、米経済の状況に関して非常に多くの代替的な説明をしており、議長の姿は「千の手」を持つ古代インドの女神をほうふつさせる。 この講演を考える上での1つの方法は、世界全体、特に現代の経済は単純に「タカ派」ないし「ハト派」の二者択一に帰結させてしまうにはあまりに複雑で茫漠としていることを、正しく認めたのだと判断することだろう。 もう1つの方法もあるが、上記と矛盾することはない。つまり今後情勢がもっとはっきりしてくるまで何も大きなことは起こらないのだと認識することだ。そして議長の講演からすると、情勢は近々には明確化しないかもしれない。これは早期利上げがないと予想するに等しいが、FRBの中でなぜ利上げしないかをめぐる議論を白熱化させることにもなるだろう。 確かに、議長の講演は煮え切らなかった。パンテオン・マクロエコノミクスのイアン・シェファードソン氏が指摘するように、議長の発言中には「可能性がある(could)」が21回、「しかし(but)」が20回、「であろう(would)」が11回、「もしも(if)」が13回、「かもしれない(might)」が7回も登場した。 以下に示す重要な発言部分自体も、不確実性と何の約束もしないという姿勢の集大成といえる。その発言とは「労働市場にどの程度のスラック(緩み)が残存するかを判断することも、 FRBの二大責務と一致する雇用水準をめぐりかなりの不透明性が存在するため、ニュアンスを読み取ることが一段と必要になっている 」というものだ。 議長はこの不確実性を「多くの側面(hand)」とともに提示している。一方で失業率は低下し続け、他方では労働者はパートタイマーにとどまっているか、労働人口の外にいるか、職探しをあきらめている。また別の一方で、労働市場の構造変化が深刻な景気後退によってもたらされたかもしれないが、賃金は横ばいが続き、生産性よりも伸びが小さい面がある。そしてわたしの勘定で5つ目となる側面は、こうした状況が「ペントアップ賃金デフレ」に起因している可能性だ。ほかにも人口動態の問題や、技能の低い労働賃金への影響、長期失業者をめぐる側面もある。 これらの側面が描き出すのは、決して明瞭とはいえない光景ではあるが、事実上のゼロ金利を解除するには事態がはっきりしてくるまで待たなければならない可能性が大きいことを浮かび上がらせている。 <ルール化の拒絶> イエレン議長の講演から簡単に導き出せる結論は、議長がFRBの政策運営をルール化せよという要求を強く拒絶しているということだ。スタンフォード大学のジョン・テイラー教授を中心としたグループは、金融政策運営のルールを法制化し、マネーサプライなどの特定指標をFRBに選ばせて、あらかじめどのような政策を行うかを定義させようとしている。 だが現在のように様々な事態が想定できる中で、これらすべてをカバーするようなルールを策定することなど、果たして可能なのだろうか。 例えば、比較的新しい概念で、景気後退期に名目賃金をなかなか下げられなかったことの後遺症であるペントアップ賃金デフレについて考えてみよう。つまり、賃下げが限定されていた分だけ、景気が回復しても企業に対する賃金引き上げ圧力は弱い。ゆっくりと賃金が上がった後に、賃金上昇ペースが加速すると考えられるかもしれない。現在緩やかに上がっていて、そのうち加速し始めるといったことでは、政策担当者が賃金から的確なシグナルを得るのは理論的にはより難しくなる。賃金上昇ペースが幾分遅れを取り戻すのを容認してから利上げするという理論が形成されるかもしれず、それは興味深い可能性ではあるものの、これと競合するいくつかのケースも同じぐらい現実味を持つ。 金融市場は、イエレン議長の講演を全体としてややタカ派的と受け止めた。議長がタカ派的な側面の議論についてより進んで言及したように見えたからだ。確かに議長は、恐らくは現在想定しているよりも早めに利上げする必要性を示すことに積極的になっている。だが、現実にそうなると見込むというのはまた別の話になる。 これは根本的に正直なポジションだが、市場が織り込むのは困難でもある。今後新しい材料を示すデータやイエレン議長からの新たな発言がない限り、市場の期待は今回の講演前とほとんど変わらない地点にとどまるとわたしは予想している。 恐らくは来年中に利上げがあるだろうが、その前に議長が示した数多くの不確実性を取り除けるようになることが先決だ。 米FRB、来年前半から半ばの利上げ開始を本格議論=連銀総裁 2014年 08月 25日 09:25 JST [ジャクソンホール(米ワイオミング州) 23日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のロックハート総裁は23日、米ワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジウムでロイターとのインタビューに応じ、来年前半から半ばの利上げ開始を連邦準備理事会(FRB)内で本格的に議論していると述べた。
早ければ来月にも、連邦公開市場委員会(FOMC)声明を修正する可能性があるとの見方も示した。 総裁は「指標が改善しており、基本的な金利政策の変更を見込み始めるのが妥当だ。したがって(利上げ開始時期を)2015年初めにするのか、2015年半ばにするのか、それ以降にするのかを議論することは非常に妥当だ」とし「議論は本格的なものだ」と述べた。 総裁は、経済成長率が3%前後で推移しており、引き続き来年半ばの利上げを予想しているとも述べた。 FOMC声明については、変更は「まだ早すぎる」と感じていると発言。声明は労働資源の「活用不足が著しい」とし、量的緩和の終了後も「相当な期間」低金利の維持が必要だとしている。 総裁は「指標は良好だが、まだ暫定的な結論しか得られない」とし、インフレ目標2%と雇用最大化は「段階的に(達成されることに)なる」と述べた。 ただ「文言の一部修正は議論の対象になっている。今後のFOMCで議論されるはずだ」との認識も示した。 総裁はFRB内で中間派とみられている。今年のFOMCで投票権はない。 総裁は、パートタイム労働者などを網羅した広義の失業率(U6)の動向を注視しているとも発言。FRB内の議論が激しくなってきているが、軸足が利上げ前倒しに移っているとは感じられないとも述べた。
賃上げ持続へ「協調」必要、物価目標が賃金決定の目安に=日銀総裁 2014年 08月 25日 09:28 JST [東京 24日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は23日、米ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた経済シンポジウムで講演し、今後も賃金上昇が継続するには賃上げの「協調メカニズム」を構築することが必要との認識を示した。日銀が掲げる2%の物価安定目標は賃金決定のメルクマール(目安)になり得る、と語った。 日銀が24日、ホームページで内容を公表した。 総裁は日本の労働市場について、足元で完全失業率が3.7%と3%台半ばと推計されている「構造的失業率」とほぼ同じ水準まで低下しているものの、「今なお解決すべき重要な課題が残存している」と語った。 長く続いてきたデフレ経済のもとでは、企業の投資意欲が低下し、「節約のパラドックス」を通じて経済が縮小均衡に陥ったと説明。企業が賃金抑制に伴う利潤を内部資金として蓄積することによって総需要が低迷、再び賃金抑制を迫られるという「典型的な合成の誤謬」による悪循環が長期固定化してしまったと述べた。 こうした状態から抜け出し、賃上げを実現するには「将来に対する明るい展望を経営者と労働者が共有することが必要」と強調。具体的には、日本経済を緩やかなインフレのもとで持続的な成長が実現する経済に変貌させることが重要とし、日銀が昨年4月に導入した「量的・質的金融緩和」(QQE)によって「労働市場にも明るい日が差しつつある」と評価した。 もっとも、現状は「デフレ下で変質した労働市場から、なお脱し切れたとはいえない」とし、例としてパート比率の上昇などをあげた。それでも、「ごく最近の動き」としてフルタイム労働者の増加率が上昇していることを「良い兆候」とし、「企業の成長見通しが改善し始めたことを示唆している」と期待感を表明した。 また、デフレ経済の長期化で、賃上げのフレームワークとしての役割を果たしてきた「春闘」のメカニズムが機能しにくくなったと主張。今年の春闘では、政府からの賃上げ要請もあり、企業が久しぶりのベースアップ(ベア)に踏み切る動きが広がったが、「今後とも賃金が適正なペースで上昇していくためには、賃金を引き上げるための協調メカニズムを構築することが必要」との認識を示した。 そのうえで、日銀が掲げている物価目標は「そうしたメカニズムの中で、企業が賃金を決定する際のメルクマールとなり得る」と指摘。日銀が予想物価上昇率を2%にアンカーすることで、それが労使交渉や企業・家計行動の前提になる可能性を指摘した。 総裁は少子高齢化の進行による労働供給制約の問題にも言及。女性や高齢者の活用のほか、「外国人材の活用についても検討する価値は大きい」と述べるとともに、省労働力的な設備投資や研究開発に力を入れることも、「将来の労働力不足を軽減することにつながる」と語った。 日銀の金融緩和、当面継続が必要となる可能性=黒田総裁 2014年 08月 25日 09:30 JST [ジャクソンホール(米ワイオミング州) 23日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は23日、米ワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジウムでパネルディスカッションに参加し、デフレ脱却のため、積極的な金融緩和を当面継続する必要があるかもしれないとの認識を示した。 総裁は、金融緩和の効果が出ているとしながらも、人々の予想インフレ率はまだ1%前後で、物価安定目標の2%に達していないと指摘。「まだしばらく時間がかかるかもしれない」との認識を示した。 総裁は、2%の物価安定目標が達成されるまで、長期金利は上昇しない可能性が高いとも発言。目標が達成されれば、インフレ率2%が賃金交渉の目安になる可能性があると述べた。 市場が「突然のショック」に見舞われないよう、量的緩和政策を管理していくとも述べた。 雇用情勢については「大幅な改善」がみられるとする一方、サービス産業でパート労働者の比率が依然として高いなどの問題が残されていると指摘。労働力の減少に対応するため、女性や高齢者が働きやすい職場づくりが必要とも述べた。 JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] ユーロ圏に忍び寄る日本流の「失われた10年」 2014年08月25日(Mon) Financial Times (2014年8月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) ユーロが対ドル最高値、1ユーロ=1.3920ドルを記録 ユーロ圏は今年、意味のある回復を遂げると予想されてきたが・・・〔AFPBB News〕 ノーベル賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏が先日ドイツで、同国とその近隣諸国は「失われた10年」を経験するだろかと聞かれた時、その答えは明快だった。 「欧州は日本と同じ道をたどっているか、ということか? そうだ」。スティグリッツ氏はリンダウで開催された、ノーベル賞受賞者と経済学を専攻する学生たちの会合でこう述べた。「欧州の一部の国で起きていることを表現する唯一の言葉は恐慌だ」 ユーロ圏の回復が第2四半期に止まってしまったことを示す悲惨な国内総生産(GDP)統計や、7月にわずか0.4%と、4年半ぶりの低水準をつけたインフレ(消費者物価上昇率、前年同月比)は、世界第2位の経済圏に降りかかっている問題をはっきりと思い出させる材料だった。 低インフレと成長の欠如が新たな危機を招く恐れ ユーロ圏が今年意味のある回復を示すという期待は色あせており、地政学的な緊張の高まりが今後数カ月間にわたって状況を悪化させるのではないかという懸念に取って代わられている。 直近の数字の先を見ても、全体像はもっと暗い。ユーロ圏のソブリン債務危機と銀行危機の最悪の状態は過ぎ去ったという期待とは裏腹に、ユーロ圏経済は依然として、2008年秋のリーマン・ブラザーズの破綻以前より規模が小さい。 ユーロ圏の一部の国で債務負担が気掛かりなほど高いため、低インフレと成長の欠如が新たな危機を招く恐れがある。そのため、インフレ率が当局の目標を大きく下回る中で、欧州中央銀行(ECB)に対して直ちに広範な資産買い取りに着手するよう求める声が激しさを増している。 ECBは、少なくとも年末までは量的緩和(QE)に着手せず、代わりに、ユーロ圏の銀行に対する最大1兆ユーロの低利融資をはじめ、6月に発表した一連の対策の効果を見極めたいとの意向をほのめかしてきた。さらにECBは、10月に結果が公表される、ユーロ圏の最大手銀行に対する健全性審査が投資家の信頼を高める助けになると考えている。 ECBの政策理事会としては、イングランド銀行や米連邦準備理事会(FRB)が利上げを考え始めているとの兆候によってユーロが下落し、通貨安が輸出を押し上げ、インフレ率を高めることも期待している。 大規模な量的緩和、もう時機を逸してしまった恐れも だが、待つことには危険が伴う。 ルウェリン・コンサルティングのジョン・ルウェリン氏は言う。「ECBによるQEはほとんど避け難いように見える。だが、恐らくQEは巨額でなくてはならないだろう。そして、低成長の見通しがすでに織り込まれ、デフレの不安が高まり、買い取る金融商品が限られている中でECBがQEをずっと先送りしてきた結果、もう好機を逃してしまったかもしれない」 BNPパリバのエコノミスト、ケン・ワトレット氏は、「インフレ率が非常に低水準にとどまり、絶えずゼロに近づくことが長く容認されればされるほど、デフレに対する備えは小さくなる。インフレ期待がはるかに不安的なものに急に変わることもあり得る。どちらの点でも、日本の経験は警鐘だ」と話す。 ECBのマリオ・ドラギ総裁は22日、カンザスシティ連銀のジャックソンホール・シンポジウムで講演する予定になっていた。だが、総裁はすでに、ユーロ圏の景気回復の運命は各国政府の手に委ねられていると主張している。各国の政治家が商慣行を改革することを約束しない限り、追加的な金融刺激策はほとんど役に立たない、とドラギ氏は今月述べた。 ドイツの景気低迷は、多くの人に一時的なものと見なされているが、エコノミストらは、ユーロ圏第2位と第3位の経済大国であるフランスとイタリアの問題はもっと根深いと考えている。今年は両国とも成長しておらず、各国の指導者たちが財政赤字の目標の緩和を求めていることから、この先数週間はブリュッセルで張りつめた時間が流れる可能性が高そうだ。 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は20日にリンダウで、成長を達成するとともに支出を削減することは可能だと話しており、ドイツ政府がこうした国々の取り組みに抵抗することをにおわせている。 米英よりも日本に似てきたユーロ圏 アナリストたちは、非妥協的な政治的態度やリーダーシップの欠如が信頼を損ねていると話す。 「政策立案者や多くのエコノミストは、先行きの期待が持つ強力な自己成就的性格を忘れている」とルウェリン氏は言う。「企業が需要の伸びをほとんど、あるいは全く予想しなければ、新たな設備には投資しない。需要は弱いままで、それによって景気見通しが現実になり、結果として景気が低迷する」 また、GDPとインフレの直近の数字は、通貨同盟の構造に欠陥があるとの主張を再燃させた。米国も英国も完全には強さを回復していないが、両国経済は危機以前のピークを上回っている。 ユーロ圏は、これらの国々に似るよりもむしろ、デフレと成長の停滞を振り払う10年間の苦闘に耐えてきた日本のようになり始めている。 だが、失業率が5.5%を下回って推移してきた日本と異なり、ユーロ圏の失業率は11.6%だ。成長が実現したとしても、今後数カ月間の成長は失業率を低下させるには弱すぎる状態が続くことは間違いなさそうだ。 「欧州には非常に有能な人たちがおり、うまく機能していない国が次々に出てくるとすれば、それはシステム上の問題でしかあり得ない。基本的な問題は、ユーロ圏が最適な通貨圏ではないということだ」とスティグリッツ氏は言う。「欠陥のある構造を欠陥のある政策と結びつけたことが破壊的な影響をもたらしきた」 By Claire Jones http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41564 オーストラリア、鉱業景気の減速で都市構想が危機 2014年08月25日(Mon) Financial Times (2014年8月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 西オーストラリアの僻地のピルバラ地域。世界最大の鉄鉱石積出港の隣にある埃っぽい工業団地は、これほど景気が悪かったことがない。 「町では賃貸料があまりに高くなったため、好景気が終わると、あらゆる場所で商売が次々倒れ始めた」。ポートヘドランドのおんぼろビル「ジェムズ」のオーナー、ジョー・ウッドワード氏はこう言う。ここは最近までポートヘドランドで唯一の合法的売春宿だったが、今では南京錠がかかった門に立ち退き通知が張られている。「ここではもう、何も売れませんよ」 ジェムズの廃業をはじめ、オーストラリアの鉱業投資ブームが終わってから店仕舞いした多くのピルバラのビジネスは、オーストラリアがその旗艦プロジェクトの1つを実現するのに苦労することを示唆している。 家族が住む持続可能な都市を建設する旗艦プロジェクトに黄色信号 ポートヘドランドと、隣接するカラサは、10年間にわたる鉱業ブームの最中に急成長した。中国の鉄鋼需要を満たすために必要な鉄鉱石鉱山や鉄道、港を開発・建設するために、大勢の労働者がピルバラに押し寄せたからだ。急成長する町は、重要な国家構想の試験台として選ばれた。資源産業の景気の波に左右されやすい僻地に、2035年までに人口5万人の持続可能な都市を2つ建設するプロジェクトだ。 BHPビリトン、従業員6000人削減へ ピルバラ地域にある鉄鉱石鉱山〔AFPBB News〕 西オーストラリアの「ピルバラ・シティーズ」計画は2010年、鉄鉱石ブームと沖合いの天然ガス発見で沸いた好景気のピーク時に打ち出された。人口が各1万5000人程度の埃っぽい鉱山都市を家族を引きつける生活圏に変えるために、新しい病院や道路、住宅に数十億ドルの資金がつぎ込まれた。 しかし今、鉱業関連の建設の落ち込みと最近の鉄鉱石価格の下落が旗艦プロジェクトの将来を脅かすとの不安が高まっている。 代わりの勤め先がない状況は今後も続くだろう。電力や輸送、水道の料金が高いことから、企業はなかなか僻地の都市に拠点を構えない。また、そうしたインフラは存在するものの、いずれも地域で活動する鉱業大手3社――BHPビリトン、リオ・ティント、フォーテスキュー・メタルズ――によって建設されたもので、各社はそのインフラを用心深く抱え込んでいる。 BHPとリオはピルバラ地域で数千キロの線路を所有・管理しており、他の鉱業企業が線路に対するアクセス開放を求めて起こした訴訟を成功裏に退けてきた。鉱業大手3社は皆、採石場の操業にかかる電力を賄うために自前の発電所を建設した。 ブームの後に来るのは複数産業への進化かゴーストタウン化か? 西オーストラリアにあるカーティン大学の研究員、ジェマ・グリーン氏は「歴史は、この典型的な採掘・成長段階の次に来るのが、多様だが相互に関連した複数産業への進化か、ゴーストタウンと回転草への衰退のどちらかであることを示している」と言う。 グリーン氏が共同執筆した報告書「ピルバラ2050」は、西オーストラリア州には少なくとも87のゴーストタウンがあると指摘している。その大半が元鉱山都市だ。ポートヘドランドとカラサが同じような運命をたどらないようにするためには、地域は鉄鉱石と天然ガス以外に多角化し、観光や農業といった産業を受け入れなければならないと、報告書は警告している。 ピルバラに労働者を呼び寄せ、定住してもらうことは、決して容易ではなかった。ピルバラはパースから飛行機で2時間半かかる僻地で、気候が厳しく、夏の気温が40度を超える。お粗末な生活環境と高い宿泊施設が、労働者が町外れの仮設キャンプ場やトレイラーパークに住む「フライ・イン、フライ・アウト」文化を生んだ。 「人は今、鉱業会社を指差して、『こんなに多くの人をキャンプ場に住まわせている』と言うけれど、5〜6年前には、それ以外の選択肢がなかったんですよ」。不動産会社ファースト・ナショナルのオーナー、モラグ・ロウ氏はこう言う。 同氏によると、何十年にも及ぶ政治的な怠慢とインフラ投資の欠如、それに地元政府が当初開発用の土地開放に消極的だったことが、危うくブームの恩恵を無駄にするところだったという。 ピルバラ・シティーズ計画の公共投資と鉱業大手による民間投資が影響を及ぼし始めている。競技場が1つ建設され、画廊が1つオープンし、医師を町に呼び込むためにポートヘドランドに高級住宅が建設された。 公園やカフェの整備も進めているが・・・ 「我々は公園やカフェなど、家族がここへ来て住みたくなるような『都市建設』型のアメニティとサービスに集中的に取り組んでいる」。ポートヘドランドのケリー・ハウレット市長はこう話す。「人口5万人というのは現実的な目標だ。毎週ざっと1000人の人が西オーストラリア州に移住している。全員がパースへ行けるわけじゃない」 だが、地元の住民は、冷え込む景気がこれを危うくしていると警鐘を鳴らす。カラサでは賃料が半分に落ち込み、カラサとポートヘドランドの双方で記録的な数の不動産が売りに出されている。一部の新興住宅地は空っぽのままだ。 カラサで立ち上げたピルバラ・エコー紙を最近廃刊したアラン・リチャードソン氏は、状況は困難だとし、「鉱業と関係のない小さな事業主に聞けば、どれだけ厳しい状況か分かりますよ」と言う。 構想実現への政治的コミットメントに疑問符 酔って線路で寝込んだ豪男性、列車通過も無事 西オーストラリア州を走る鉄鉱石運搬列車〔AFPBB News〕 グリーン氏は、公的に管理されるエネルギー網を築き、鉱業大手の鉄道に電気を通して動かせば、鉱業会社を含むあらゆる企業の操業コストが減ると言う。 「現時点では、ピルバラで事業を始めたい企業があれば自前の発電機を作らねばならず、それには大金がかかる。だが、もし鉱業大手が建設した既存インフラをプールして共有できれば、地域にとって情勢が大きく変わるだろう」 しかし、ピルバラに埋蔵されている鉄鉱石から毎年何百億ドルもの利益を稼ぐ鉱業大手は、そんなことをすれば事業が混乱を来たすと言う。 景気が悪化する中で、ピルバラ・シティーズ構想を実現する政治的コミットメントが十分あるかどうか疑う人も出てきている。 By Jamie Smyth http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41558 |