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[けいざい解読]アジア、巨大人口の重荷 脱貧困 産業育成カギ
大接戦の末にジョコ・ウィドド氏が勝利を収めた7月のインドネシア大統領選挙で、人口抑制策が争点の一つだったことはあまり知られていない。背景には巨大な人口が豊かさにつながらないジレンマがある。40億の人口を抱えるアジアに共通する悩みだ。
インドネシアの人口は約2億5千万人。東南アジア諸国連合(ASEAN)の4割を占め、世界でも4位の人口大国だ。日本企業の進出が相次ぐ理由は、巨大な人口が支える内需の潜在力への期待がある。だが同国は人口増加をうまく活用できていないようにみえる。
「人口ボーナス」という言葉がある。働く世代である15〜64歳の人口が子供や高齢者の数を大幅に上回る状態を指す。潤沢な労働力が原動力となり、所得増を通じて内需が盛り上がる時期だ。第2次世界大戦後の日本の高度成長を支えた要因の一つが人口ボーナスだ。
インドネシアのボーナス期は1970年代に始まり、2030年ごろまで続く見通しだ。だが足元の経済をつぶさにみると、ボーナスをうまく享受できていない現状が浮かぶ。90年代初頭に2%台だった失業率は足元で6%台と高水準。総人口に占める貧困層の割合は11%を上回る。
「少しでも値段を上げると売れなくなる」。日系商社の担当者は打ち明ける。同国では男性用整髪剤が人気だが、地方都市で売れるのは小さな袋に詰めた小分けの商品だ。一般の消費者には丸ごと買う余裕はない。同国の名目国内総生産(GDP)はこの5年で約8割増えたが、多くの庶民の家計は苦しいままだ。
最大の問題は雇用を支える産業が思うように育っていないことだ。13年2月の失業者に占める高卒以上の割合は46%。04年の42%から上昇した。同国は30年超に及んだスハルト政権時代に製造業が成長したが、民主化後は製造業の比重が低下している。安定した雇用を提供する製造業が育たず、国際市況に左右される鉱業への依存が続く。
この構図は人口1億人のフィリピンにも共通する。13年の実質GDP成長率は7.2%と東南アジアで最高の水準だが、足元の失業率は7%と高いままだ。アジア開発銀行(ADB)は「不完全雇用も含めると3割に近い」と分析する。地方では工場などが少なく、人口の3割近くが1日1ドル以下で暮らす貧困層だ。
13年の二輪車販売台数は前年比7%増と3年ぶりにプラスに転じたが、過去最高だった10年には届かない。成長の原動力は海外で働く1千万人の出稼ぎ労働者からの送金だ。働く場所が乏しいため、中間所得層になり得る人材の多くが外国にとどまる。国内で稼ぎ、国内で消費するサイクルが生まれていない。
東南アジア主要国の名目1人当たりGDP首位はシンガポール、2位がマレーシア。いずれも人口が少ない国だ。逆に人口大国インドネシア、フィリピンは最下位グループだ。家計の収入が伸びずに人口だけが増えれば、貧困層だけが拡大する結果を招きかねない。
巨大な人口が重荷となるのか。それとも経済成長の原動力となるのか。規制改革などを通じて産業を育て、一人ひとりが豊かになる以外の道はない。アジアに突きつけられた課題だ。
(シンガポール=吉田渉)
[日経新聞8月24日朝刊P.3]
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