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コラム:ドル105円の扉開く「ゲームチェンジャー」=内田稔氏(ロイター)
http://www.asyura2.com/14/hasan89/msg/838.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 8 月 21 日 00:11:05: igsppGRN/E9PQ
 

 8月20日、三菱東京UFJ銀行チーフアナリストの内田稔氏は、世界的な長期金利低下にゲームチェンジが起こるとすれば米中経済が震源であり、日本からみた対外金利差の縮小でドル円は105円を上抜けする可能性があると指摘。提供写真(2014年 ロイター)


コラム:ドル105円の扉開く「ゲームチェンジャー」=内田稔氏
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0GK0FI20140820
2014年 08月 20日 16:19 JST


内田稔 三菱東京UFJ銀行 チーフアナリスト

[東京 20日] - 米国の長期金利が低下しており、10年債が一時2.3%付近と1年2カ月ぶりの低水準を記録した。また、他の先進国でも同じく長期金利が低下しており、ドイツでは10年債が1%を割り込み史上最低を更新し、日本でも1年4カ月ぶりに0.5%を下回った。

円金利には下げ余地が乏しいため、こうした世界的な金利低下は日本からみた対外金利差の縮小を通じ、円高要因となりやすい。しかし、以下2点の理由から、この波及経路によるドル円の下落は限定的となりそうだ。

まず、足元では日米間の長期金利差とドル円相場との相関が、著しく低下している。例えば、2013年以降の週次データを用いて、日米の名目長期金利差からドル円を推計すると、8月15日時点は1ドル=99円台となる。

標準誤差も考慮すれば97円台前半に差しかかっても不思議ではないが、当日の下値は101円台半ばだった。為替相場はおそらく2年債など短期ゾーンの金利差を重視していると考えられる。8月に入って、その短期の金利差も縮小しているが、それでも日本の貿易赤字や活発な対外直接投資といった円売りのフローも手伝い、ドル円は底堅く推移しそうだ。

また、一段と米国の長期金利が低下していくとも考えにくい。なぜなら、米国の長期金利が2.5%を割り込んでいた11年から13年半ばまでと比べ、現在の米国は状況が大きく異なるためだ。

例えば、当時の米国は10年11月の量的緩和策第2弾の発動でも景気がさほど浮揚せず、12年の量的緩和策第3弾へと移行した時期だが、現在の米国はその量的緩和を脱しつつある。利上げ開始時期やその後のペースに対する見方は割れているが、正常化をうかがう段階である点に疑念の余地は乏しい。

加えて、当時は折からのユーロ圏の債務危機が先鋭化し、米国債といった高格付けの国債が選好された面もあった。現在、ユーロ圏では景況感こそ冴えないが、債務危機への強い警戒は和らいだ。イタリアやスペイン国債にも、見直し買いが入ったほどだ。

<旬なテーマ「長期金利低下」の賞味期限>

とはいえ、ドル円が浮上するためには、少なくとも金利差の縮小に歯止めがかかる必要がある。そもそも米国の長期金利を、期待潜在成長率、期待インフレ率、財政に対するリスクプレミアムとに分けて考えると、まず今年に入り、クレジットデフォルトスワップ(CDS)市場における米国債への保証料率が低下している。このため、長期金利低下を促した可能性はあるが、両者の相関は過去それほど高くない。主たる金利低下の説明要因とはなりにくいだろう。

また、米国のブレークイーブンインフレ率をみる限り、過去に比べて著しく期待インフレ率が低下したわけでもない。このため、長期金利低下の主因として、米国の期待潜在成長率の低下観測が挙げられる。

実際、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者による政策金利の最終的な到達水準の見通しも、加重平均値は過去1年で低下した。ただ、その低下幅は23ベーシスポイント(bp)。仮に政策金利の発射台が低くなり、長期金利の水準が調整を迫られるにしても、ここまでの低下は行き過ぎだろう。

加えて、米国の主要な株価指数は史上最高値圏で推移している。長期金利の低下が株高を演出している面もあるとはいえ、それでも潜在成長率の低下懸念と堅調な株式相場というのは不釣り合いだ。

結局、足元で進む長期金利の低下は、潜在成長率の低下や地政学リスク、FOMC主要メンバーのハト派スタンス、ユーロ圏で台頭する金融緩和の長期化観測などを口実とした市場参加者にとっての「旬なテーマ」との側面が強いとみている。何かのきっかけでテーマが変わるとゲームチェンジ、すなわち長期金利が下げ止まる可能性が高いのではないか。

<米中経済次第で流れは一気に変化か>

こうしたゲームチェンジが起こる原因は、やはり米・中といった2大経済大国の動向となるだろう。まずは、米国の経済情勢や金融政策に対する見方が変わるときだ。

具体的には、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が6月に一時的なノイズと受け流した消費者物価の上昇がノイズではないとの見方に変わるとき、イエレン議長が低インフレや労働市場の弛みの表れと指摘する賃金の動向に変化が生じるとき、正・副議長などから正常化に前向きなヒントが示されるときなどだ。

ただ、当面の間、こうしたことが起きる可能性はまだ低いだろう。イエレン議長は、賃金が多少上がった程度では、金融緩和重視の姿勢を覆すとは考えにくい。このため、物価や賃金を示す経済指標の変化が積み上がるまで、まだ時間を要するだろう。

一方、第2の経済大国、中国の経済動向に強い関心が必要だ。例えば、米国と英国、ドイツの長期金利を単純に平均すると中国の実質国内総生産(GDP)の伸びや製造業購買担当者景気指数(PMI)との相関が高い。中国の成長ペースの鈍化が、先進国の長期金利低下の一因である可能性もありそうだ。ところが、その中国では前年比でみた第2・四半期の実質GDPの伸びが政府目標である7.5%成長を回復し、成長鈍化には一服感もみられる。

製造業PMIは、第3・四半期に入ってからも改善が続いている。中国経済をめぐっては、不動産市況の悪化といった懸念材料も少なくないが、小規模ながらもこれまでの景気対策が奏功し、成長鈍化に歯止めがかかる可能性がある。

さらに、景況感などを考慮した当局の意向も働く人民元の対ドル相場も、こうした変化と時期をほぼ同じくして6月を底に反発している。中国経済の底入れの兆しを市場が読み取るとき、ゲームチェンジとなる可能性は低くない。

値動きが小幅であったり、上値の重いことが注目されがちなドル円相場だが、米国の長期金利低下の度合いに比べれば、下値の堅さも顕著だ。まだしばらく時間を要するかもしれないが、ゲームチェンジによって対外金利差の縮小に歯止めがかかるとき、ドル円は105円台を上抜けし、新たな局面を迎えると予想している。

*内田稔氏は、三菱東京UFJ銀行の市場企画部グローバルマーケットリサーチチーフアナリスト。1993年、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、国内外での外国為替のトレーディングやセールスを経て、2007年よりリサーチ。2013年J-money誌第23回東京外国為替市場調査ファンダメンタルズ分析部門では個人ランキング1位。


 

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コメント
 
01. 2014年8月21日 00:21:19 : Tq1mNeKWtM
ゲームチェンジじゃなくてゲームオーバーじゃないの?

02. 2014年8月21日 03:04:43 : bfiJIUelwU
今年の10月、米中央銀行の資産購入による量的緩和は終了。この影響が完全に表面化するのは来年の春。

この期間、景気は力強く成長しないが、大きくも後退しないであろう。

バブルは資産価格の下落で始まることはみなさんご存じであろう。

景気が天井に到達してしまったことを察することで、投資家はいやでもある行動に出なければならなくなる。

それは利益確定という行為である。

景気が下降気味になるなら、賃金も上昇せず、現金の価値は目減りしない。資産の現金化という利益確定がもっぱらの投資業務になってゆくのだ。

これが真のバブル崩壊というやつだ。しかも、こうなったときに資産価格を買い支える主役は戦線離脱している。

自作自演の主役こそバブルを膨らました極悪の中央銀行だ。


03. 2014年8月21日 09:31:09 : 3EMgCxnjJI
しかしどうしてこの手の連中はみな子供みたいな顔をしとるのかね。

04. 2014年8月21日 11:22:03 : MGRnshXmKA
情報BOX:FOMC議事要旨の抜粋
2014年 08月 21日 08:54 JST
[20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は20日、7月29─30日分の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公表した。

抜粋は以下の通り。

FOMCの参加者が雇用の最大化と2%のインフレ率という目標に向け、達成されたものと今後見込まれるものという点で進ちょく度合いを協議し、そうした進展に関するFOMC見解をよりはっきりと伝えるよう、声明文を充実させることを検討した。

労働市場について、失業率や、労働力の活用状況など様々な指標がこの数カ月でこれまでの予想よりも一層改善したとの認識で多くの参加者が一致した。

これらの参加者は、単に失業率だけで表される労働市場の状況に関する表現を、様々な指標の評価に基づいて労働力の未活用度合いを示す表現に置き換えることが適切だと判断した。

これら参加者の討議では、一部が労働力の未活用度合いをより幅広く表現することへの懸念を表明した。

特に、労働市場の緩みの度合いは簡潔に表現することは困難で、労働市場の状況が改善し続ける中で、声明文の調整が難しくなってくるのではないかとの懸念が示された。

さらに、労働市場の改善にもかかわらず、文言が加わることで、労働力の未活用への懸念が強まったと誤解される可能性があることも問題視された。

結論として、失業率が一段と低下する中で労働市場の状況は改善したとの見解を示す一方、労働力の未活用度合いが大きいことを様々な労働市場の指標が示唆しているとも言及することでFOMCは合意した。

しかし、特に予想を上回るペースで労働市場に進展が見受けられれれば、労働力の未活用を特徴づける状況が遠からず変化する可能性があることを多くの参加者が指摘した。

インフレ率については、FOMCの長期目標に幾分近づいたとの認識を示し、インフレ率が根強く2%を下回る確率が幾分か低下したという判断を伝えるため、声明文を更新することで参加者が合意した。


 

ダウとS&Pが3日続伸、FOMC議事要旨受け
2014年 08月 21日 07:14 JST
[ニューヨーク 20日 ロイター] - 20日の米国株式市場は、ダウ工業株30種とS&P総合500種が3日続伸。S&Pは、終値としては7月終盤につけた過去最高値に迫った。同日発表された7月29─30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨は、連邦準備理事会(FRB)が引き続き緩和政策を維持することを示唆した。

ダウ工業株30種.DJIは59.54ドル(0.35%)高の1万6979.13ドル。

ナスダック総合指数.IXICは1.03ポイント(0.02%)安の4526.48。

S&P総合500種.SPXは4.91ポイント(0.25%)高の1986.51。

ホームセンターのロウズ(LOW.N)は、5─7月期決算が予想を上回る増収増益となったことで 1.6%上昇。カジュアル衣料専門店のアメリカン・イーグル・アウトフィッターズ(AEO.N)も5─7月期の売上高・利益が予想より好調だったことから、12%上がった。

ディスカウントストアのターゲット(TGT.N)は5─7月期が予想以上の減益で、通年の利益見通しを引き下げたが、株価は序盤の軟調から盛り返して1.8%高となった。

通年の業績見通し撤回を発表したレンタカーのハーツ・グローバル・ホールディングス(HTZ.N)は3.9%下落した。

前日に好決算を発表したホームセンターのホーム・デポは2.9%上昇した。

日中取引終了後にコンピューターのヒューレット・パッカードが発表した5─7月期決算は、アナリスト予想に反して増収となったが、株価は時間外取引で0.7%下げた。

この日の市場全体の動きについて、フェニモア・アセット・マネジメントの株式アナリスト、ドルー・ウィルソン氏は「FRBに左右されたのは間違いない。当初は堅調でFOMC議事要旨公表前にやや逃げ腰になり、それから明らかに大きな安心感が広がったしるしが見えた」と話した。

FOMC議事要旨を消化したことで、市場の次の関心は21日から始まるカンザスシティー地区連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)に向かっている。FRBのイエレン議長は22日に予定されるジャクソンホール会議中の講演で、経済指標が総じて前向きになっていると認めつつも、労働市場にあるスラック(需給の緩み)に引き続き懸念を示すとみられている。

BATSグローバル・マーケッツのデータによると、米取引所の合算出来高は約45億株で、過去5日平均の52億株を下回った。

(カッコ内は前営業日比)

ダウ工業株30種(ドル).DJI

     終値(非公式)    16979.13(+59.54)

前営業日終値    16919.59(+ 80.85)

ナスダック総合.IXIC

     終値(非公式)    4526.48(‐1.03)

前営業日終値    4527.51(+19.20)

S&P総合500種.SPX

     終値(非公式)    1986.51(+4.91)

前営業日終値    1981.60(+ 9.86)

*内容を追加しました。


 

 
 


コラム:ジャクソンホールは無風か、低金利継続の論拠=岩下真理氏
2014年 08月 18日 15:30 JST 記事を印刷する | ブックマーク | 1ページに表示 [-] 文字サイズ [+]

 8月18日、SMBCフレンド証券・チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏は、22日のイエレンFRB議長の講演では、利上げ時期に関する新たなメッセージが出る可能性は低いと予想。提供写真(2014年 ロイター)
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為替フォーラム
アングル:輸出は力強さ取り戻せず、「日本抜き」の構造変化の影
コラム:ドル105円の扉開く「ゲームチェンジャー」=内田稔氏
焦点:米シティの日本の個人部門売却、買い手不在の懸念
焦点:株価PKOは今後本格化も、カギはGPIF改革の時間軸
岩下真理 SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト

[東京 18日] - 毎年8月下旬に、夏の終わりの風物詩、カンザスシティー地区連銀主催の経済シンポジウムが米ワイオミング州ジャクソンホールで開催される。

1978年以降、風光明媚なロッキー山脈の避暑地で、世界経済が直面する重要な問題をテーマに議論が繰り広げられてきた。この会合は、岩田一政・元日銀副総裁が著書「デフレとの闘い」で何度も触れるほど、中央銀行間の重要な情報交換の場と位置付けられている。比較的小さな会場の座席は100席強で、参加メンバーの内訳は中央銀行関係者、経済学者、マスコミなどで3分しているようだ。

この会合が、市場の脚光を浴びるようになったのは2010年以降。4年前の8月27日に当時のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が講演で「経済見通しが悪化した場合、追加緩和を実施する用意がある」と語り、具体的に3つの緩和策の案まで示唆したからだ。

その後の市場では量的緩和第二弾(QE2)への期待が高まり、債券は堅調推移、株式は戻り歩調を辿った。その一方で為替市場では8月から9月にかけて円高(ドル安)が進行した。日銀は8月30日に臨時会合で追加緩和決定に追い込まれ、9月15日には日本政府が6年半ぶりに為替介入を実施と、大変な夏を過ごしたのである。実際にQE2は11月2日に決定され、振り返ればバーナンキ当時議長のジャクソンホールでの講演は2カ月余り前の地ならしであった。

今年も、このシンポジウムが21―23日に開催される。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録によれば、資産購入を10月に終え、最後は150億ドル削減で終了することで概ね合意したことが明らかになった。

10月28・29日開催のFOMCまで残り2カ月強となる現在、2010年を思い出せば非常に重要なタイミングであるのは確かだ。しかし、今年の討論テーマは「労働市場のダイナミックスの再評価」。これまで「労働の質」に対するこだわりの強さを示してきたイエレンFRB議長だけに、このテーマでは従来通り、利上げを急いでいない姿勢を示す可能性のほうが高いだろう。よって、22日の講演では、利上げ時期に関する新たなメッセージが出てくる可能性は低いと筆者はみている。

<イエレン議長に強力なハト派の援軍>

今週のイエレンFRB議長講演を前に、連銀内のハト派からの援軍が先週複数現れた。最大の援軍は、11日のフィッシャーFRB副議長の講演である。

冒頭から、世界の景気回復について「期待外れ」と述べ、世界的な期待成長率の低下を指摘。また、米国の需要サイドの3つの向かい風として、1)住宅部門の低迷、2)財政緊縮、3)欧州経済の弱さを挙げた。

一番目に関連して、昨年半ばのモーゲージ金利の急上昇が住宅市場の回復に水を差したことを明記している。長期金利の急上昇は回避したい強い意向が読み取れる。さらには長期的な供給サイドの3つの抑制要因として、1)人口動態による労働供給力の弱さ、2)資本投下率の低さ、3)生産性上昇率の弱さにも言及した。この米国での潜在成長率低下の可能性の考え方は、フィッシャー副議長の門下生であるサマーズ元米財務長官の「長期停滞論」に通じるものだ。

そして、金融政策については、景気の循環要因と構造要因を区別することは難しい状況下、「フレキシブル・インフレーション・ターゲット(柔軟な物価目標政策)」の枠組みのもとで、慎重な対応が必要であるとの認識が示された。これまで筆者は、雇用重視のイエレン議長に比べて、フィッシャー副議長は金融市場の安定を重視する傾向があるとみていたが、今回の講演では極めてハト派であることが確認できた。

さらなる援軍は、14日発表のシカゴ地区連銀の報告書である。その内容は「現在の労働市場が金融危機に見舞われる前の2005―07年と同等の水準にあると仮定すると、今年6月の実質賃金の上昇率は0.5―1.0%ポイント高かったと試算」。労働市場のスラック(需給の緩み)により、賃金の伸びが抑制されたというものである。

シカゴ連銀と言えば、2012年12月の失業率の数値基準(6.5%)導入時、その理論的アイデアの生みの親だったエバンズ総裁がいるところである。また、エバンズ総裁は来年のFOMC投票メンバーであり、イエレン議長のサポート役となりそうだ。

以上、フィッシャー副議長講演、シカゴ連銀報告書を踏まえれば、今回のFRBの対応は過去の利上げ局面とは大きく異なるものとなる(すなわち利上げ時期は後ずれし、利上げペースは慎重な足取りとなる)可能性を念頭に置くべきだろう。

<賃金の伸び悩みは先進国病>

ところで、賃金の伸び悩みは、米国だけの問題ではない。先進国病と言っても良い状況だ。

英中銀(BOE)が13日発表した四半期インフレ報告では、今年10―12月期の賃金上昇率の見通しを5月時点の2.5%から1.25%へ大幅に下方修正。「現在の緩みの度合いに関する増大した不確実性を考慮し、(金融政策)委員会はコスト、特に賃金の今後の見通しを注視する重要性を指摘した」と記され、市場では利上げ時期の後ずれと受け止められた。

それでも現在の英国が米国と大きく異なる点は、住宅市場の過熱(住宅価格の大幅上昇)が懸念されていることだ。BOEは住宅と賃金の両にらみの姿勢に転じたが、FRBより先に利上げを開始するとの見方を変える必要はない。

他方、日本でも消費増税後にみられる消費動向の弱さの背景として、実質賃金の伸び悩みを指摘する声が大きくなってきた。13日発表の日本4―6月期実質GDPは前期比年率マイナス6.8%とほぼ市場予想通りの大きな落ち込みとなったが、個人消費は前期比マイナス5.0%と減少幅がやや大きかった。

駆け込み需要が前回97年増税時よりも大きかった耐久財は予想通り大きな落ち込み。それだけでなく、食料品の含まれる非耐久消費財やサービスの支出が97年増税時よりも弱くなった背景には、価格転嫁がスムーズに進み、マイナスの所得効果が現れたことがあったと言えよう。

雇用者報酬が名目では前年比プラス1.3%でも、実質では同マイナス2.2%と消費増税の影響で大きく落ち込んだことも要因の1つと説明される。それでも、足元で雇用・所得環境の改善は続いており、大雨の影響はあっても個人消費の腰折れは想定しづらい。

4―6月期実質GDPの数字を受けて、日銀が10月展望リポート発表時に、2014年度の成長率見通しの数字(大勢見通し中央値)を7月時点のプラス1.0%から、若干の下方修正をすることはやむなしだろう。筆者予想はプラス0.5%(7―9月期は前期比年率プラス3.9%)だ。その一方で物価見通しは、発表時点では全国9月分消費者物価指数(CPI)までしか評価することができず、従来の数字のまま据え置きが見込まれる。

筆者はGDPの下方修正だけなら、日銀は追加緩和の検討には至らないと予想する。その代わり、輸出が勢いを取り戻さない状況下でも、企業収益の増加基調のもと設備投資は回復する姿を、従来と異なる前向きな循環メカニズムとして日銀は説明する必要があるだろう。

<債券市場はチキンレースへ>

そのような状況下、先週の債券市場では、14日に欧州経済の下振れ懸念を背景に、ドイツ10年債が初めて1.0%割れとなり、米10年債は2.3%台、15日に日本10年債も1年4カ月ぶりに0.5%割れとなった。

日米欧の金融政策の方向性を整理すると、米国は利上げを急いでおらず、今後も慎重姿勢を続ける可能性がある。それに対して、欧州ではディスインフレに対応する用意がある。日本では何かあれば躊躇(ちゅうちょ)なく調整すると、追加緩和に期待を残す姿勢を示している。そのため、市場では欧日への追加緩和催促相場に陥りやすい。

欧州の場合、9月4日の欧州中銀(ECB)理事会で、景気物価見通しを下方修正しても、新たな策を講じなければ、早期の追加緩和期待は後退するだろう。結局、10月の欧州金融機関のストレステストの結果や9月と12月に実施予定の新型長期供給オペ(TLTRO)の効果待ちとなるはすだ。一方の日本では、10月31日の日銀展望リポート発表までは、一部の追加緩和観測はくすぶり続けるだろう。

以上により、夏の終わりの債券市場は、FRBの慎重姿勢を確認しながらのチキンレースとなりそうだ。金利低下の起点が欧州であったことから、目先は9月4日のECB理事会待ち。日本の9月は国債償還が多い月のため、9月上旬まではデュレーション長期化の流れが残りやすい時期だ。短くとも9月上旬までは、金利の下限トライの動きは続くことが見込まれる。

その後は、9月16・17日のFOMC待ちとなるだろう。いずれにせよ、日米欧の金利は上昇しにくく、低金利は長期化するとの見方が定着しそうだ。

*岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。


05. 2014年8月22日 12:53:46 : GpYSA1qr2Y
03〉こう言う分析ってゲームみたいなものだからじゃないですか?

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