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深刻化する出生率低下の実態 主要因は未婚率の上昇、求められる異次元の対策(Business Journal)
http://www.asyura2.com/14/hasan89/msg/827.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 8 月 20 日 08:06:05: igsppGRN/E9PQ
 

           国土交通省(2014年)「国土のグランドデザイン2050」より


深刻化する出生率低下の実態 主要因は未婚率の上昇、求められる異次元の対策
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140820-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 8月20日(水)3時0分配信


 東アジアの「超少子化」が止まらない。一人の女性が一生に産む子供の平均数を「合計特殊出生率」というが、2011年における日本の出生率は1.39、シンガポールは1.24、韓国は1.23、台湾は1.16、香港は1.09、マカオは0.92、上海は0.89だ。この中では、日本の出生率はまだ高く、12年の出生率は1.41に若干上昇したが、それでも人口減少のインパクトは大きい。

 例えば、国土交通省が今年7月に公表した「国土のグランドデザイン2050〜対流促進型国土の形成〜」によれば、50年の人口が10年と比較して半分以下となる地点(全国を「1平方キロメートル毎の地点」で見る)が、現在の居住地域の6割以上を占めるという。そして、冒頭の「図表:人口が半分以下となる地点数」のとおり、人口が半分以下となる6割以上の地点のうち約2割が無居住化すると予測している。また、図表の下段「市区町村の人口規模別」にみると、人口規模が小さい地域ほど人口減少率が高い。現在の人口が1万人未満の市区町村は、人口が約半分に減少する。

 このような予測から、いかに人口減少の問題が深刻であるかが把握できよう。そのため危機感から最近は、少子化対策を拡充し、出生率を引き上げる提言が相次いでいる。例えば、今年5月中旬、政府の経済財政諮問会議の下にある「選択する未来」委員会は「合計特殊出生率を2.07に上昇させ、50年後に人口約1億人を維持する」旨の数値目標を提言した。

 しかし、このような数値目標には批判も多い。それは、女性に出産を押し付ける印象を与えかねず、1994年のカイロ国際人口開発会議で日本を含む約180カ国が採択した行動計画にも反するためだろう。同計画では、女性の権利として、「リプロダクティブ・ライツ」(全てのカップルと個人が自分たちの子供の数などを自由かつ責任をもって決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利)を確認している。

 このため、政府の別の有識者会議である「少子化危機突破タスクフォース」が今年5月下旬にまとめた提言では、出生率などの数値目標は断念し、GDP比で現在約1%の少子化対策予算を2倍の2%に引き上げるよう求めた。欧州で出生率に数値目標を設けている国はないという指摘もあるが、現在のような危機的状況で、数値目標のない少子化対策は国民からその本気度を疑われる可能性がある。

●出生率低下の主要因は未婚率の上昇

 大雑把に表現すると、「出生率=(1−未婚率)×夫婦の出生数」という関係が成立する。夫婦の出生数は1970年の2.2から2010年の1.96までほぼ2で推移してきたが、30-34歳の未婚率は1970年の男性12%・女性7%から2010年で男性35%・女性25%まで急上昇してきた。つまり、出生率低下の主な要因は未婚率の上昇(晩婚化を含む)にあり、出生率増には未婚率を引き下げる政策が中心となろう。

 だが、2010年の平均理想子供数は2.4人であり、未婚率が現状のままでも、少子化対策で夫婦の出生数を理想子供数に近づけられれば、出生率は1.6程度まで回復する。

 その上、未婚率低下を促進できれば、出生率はさらに上昇する。少子化対策は未来への投資という視点をもち、待機児童ゼロや保育ママ・児童手当の拡充等のみでなく、少子化対策を企画立案する議会や審議会・企業等での女性のクォータ制導入や長時間労働の減少を含め、政権交代で継続性が疑われることのないかたちで異次元の少子化対策が望まれる。

小黒一正/法政大学准教授


 

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コメント
 
01. さっちゃん56 2014年8月20日 22:03:41 : NmV8UWdbqj6pY : 3pJga9FvRw
日本の結婚制度は、届け出だけで結婚・離婚でき、離婚後扶養も法定されておらず、制度としては、同棲婚と訳されているフランスのPACSなどと同程度の制度にすぎません。
 女性の社会進出の進むNYですら、離婚した妻に対する離婚後扶養が法定されています。
 イタリア、フランス、ドイツ、スイス、アメリカ、オーストラリアなどの国々では、離婚した妻対する離婚後扶養が法定されています。
 そうじゃないと、妊娠・出産でキャリアを中断したり、キャリアダウンした女性が高率に貧困化するからだと思います。
 実際、日本の母子家庭の貧困率は57%程度です。
 経済発展によっても少子化が改善していないのは、日本、韓国、カナダで、離婚後扶養が法定されていない模様。
http://www8.cao.go.jp/shoushi/cyousa/cyousa22/kokusai/pdf-zentai/s3-1.pdf
第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部 主任研究員 松田 茂樹
結婚制度の違いから、日韓は既婚が多く、アメリカ、フランス、スウェーデンは同棲が多い。
わが国の合計特殊出生率が低い理由は、未婚率の絶対的な水準が高いことや結婚・同棲経験者がもうけた子ども数が少ないことからもたらされているわけではなく、日本の若年層の結婚・同棲の開始が遅れていることにあるといえる。わが国の少子化対策の方向性は、皆婚社会を目指すことではなく、希望する者が若い時期に結婚することができるように支えていくことであるといえる。わが国の若年層の家族形成を阻む要因は、彼らの経済基盤が弱いことである。経済基盤の弱い者がカップル形成を特に送りにくいのがわが国である。
結婚が教会での挙式を伴うのに対して、PACS(連帯市民協約) は裁判所に書類を提出するのみで関係が成立し、離婚する場合は双方の合意があったとしても裁判を行うことが必要になるが、PACS を解消するには書類を提出するのみでよいなど手続きが簡略化されている。PACS を結んだカップルは、課税など一部は異なるものの、概ね結婚に準じる法的保護を受けることができる。
日本の場合、結婚をする場合は婚姻届を自治体に提出するのみでよく、必ずしも宗教施設における挙式を要件とせず、協議離婚であれば書類を自治体に提出するのみであるため、手続き的にはPACS・サムボと大きな差はない。日本の結婚は、PACS・サムボと同程度の手続きによって、フルの法的保護を提供するものになっている。

02. 2014年8月20日 22:10:00 : puoMwOD4aM
中国を始めとした冒頭列挙の各国の共通項は、何れも「資本主義化」という点にある。

「資本主義=人口減少=国家滅亡」ということが正に実証されている。

ロバートフェルドマンとか言う自称棄民(日本帰化する気も無く、米国民にも成り切れナイ選民宗教)は、世界資本独占化(NWO)=世界亡国化工作員だが、人口減少の日本へは、母国で就職できナイ中国民の優秀な大卒を"移民として雇い入れればいい”などとホザイテいるが、中国とて資本主義化のせいで急激な人口減少を招いているのに、こいつは公共の電波で「中国などどうなってもいいから、日本に移民として入れろ」と同義の意味を発言したのである。

同じ人口減少している中国の優秀な人材を日本に移民として入れたとしても、優秀なら人件費は高いのであり、もし安いのなら不当差別として、真っ先にアムネスティやらヒューマンライツウオッチやらが、人権侵害として告発しなければならナイし、そもそも中国という国にとって人材=財産流失であり、それは”中国国家破滅推奨”を高らかに宣言している大バカ者のフェルドマン。

フェルドマン←こいつは人の迷惑を全く考えることが出来ナイ「利己餓鬼=鬼畜」であり、正に人類大虐殺を平然と行う”ハザールの子”そのものである。

移民の能力がもし日本人と同等なら、今の日本人の非正規労働者を高給にすればよいだけの話。

移民の受け入れは、ほんの一瞬のごまかし政策であり、移民が定住し二世以後になるにつれ、必ず大きな問題禍根を半永久的に残すことになる。そうアメリカ、英欧の様に差別、格差、階層化、独占腐敗等を日本に固着させることになる=亡国化となる。

出生率の低下の原因は、資本主義化によって実労働者の「生産=分配」が全く機能しナイ点=搾取構造にある。実態が、「生産>分配」なのは、バブル崩壊以後「労働分配率が上がった」ことにもキチンと現れている。

つまり=バブル以前までの儲けを企業、銀行が搾取し過ぎていた事の証明。=バブル崩壊後、実態は景気悪化の一途だったが急激に給料を下げることが出来ナイから、=だから労働分配率が急に上がったのだ。そしてそれも一因として倒産が激増し、失業率が上がり、以後「失われた10年→20年→30年」となり、本来労働者が受け取るはずの給料を、実に1970年代から騙し取られ続けた結果正に、人口が減少し続け今に至っている。

これは構造、システム、制度の問題であり、それがつまり「資本主義が人口減少を招く」ことをみごとに実証している。

「生産=労働=収入」=「就業、採用(血縁、学歴、コネ)」=「生産権」だが、生産権は私有資本者にしかその権利はナイ。

ベンチャー融資があるなどとホザク者はデマ工作員。無資本無担保者など鼻くそ扱いで追い払われ、国債や公共事業には嬉々として安泰融資をする=それが日本の実態ベンチャー。

米は軍事暴力で米国債を道具として中国日本にカネ実費を出させ、そのカネを湯水のように使い世界から新規事業をかっぱらって行くという米特有の「かっぱらいシステム」がある故、あたかもベンチャー融資が存在するかの様に錯覚するバカがいるが、あれは単なるドロボー独占事業に過ぎナイ。

最早は道は見えている。我々は着実にそれを構築し始めている。その現実、アイデアや思想そのものをこの世から消し去ることは、誰にも出来ナイ。その時、人口減少や人口爆発などの問題は、その根本原理故、物理的に解決されている。我々は着実にそれを進めている。


03. taked4700 2014年8月21日 22:23:26 : 9XFNe/BiX575U : 7o40hPKxEs
>2011年における日本の出生率は1.39、シンガポールは1.24、韓国は1.23、台湾は1.16、香港は1.09、マカオは0.92、上海は0.89だ。

シンガポール、台湾や香港、マカオは中国語圏であり、移民を中国本国から受け入れることで少子化問題は解消できる。まあ、中国本土も少子化が進んでいるが、高齢化はまだあまり進んでいないので、柔軟性がかなりある。

日本がどうしようもないのは、少子高齢化と財政赤字で実質的な生活基盤が無くなっているのに、生活はかなり豪かなままで、石油や食糧など、豪華さを支える物資は海外からの輸入に頼っていることだ。

少子高齢化など、はっきり言って数十年前から分かっていたこと。今頃騒ぎ出すこと自体が、いかに将来を甘く見ていたかを示すもの。

今後の社会を支える労働力も、資金もなく、車を動かすガソリンも電気を作る燃料も、食糧さえ海外に頼ったままでいることの危険性を多分、ほとんどの方はまだ実感していない。実感しなくて済んできたこと自体が異常であり、そういった異常さを作ってきたカラクリを理解しないと、一気に破綻へ追いやられてしまうだけで、そこからの回復さえできないだろう。


04. 2014年8月23日 18:39:56 : bMPcJNf0qY
若年層、子育て世代等を含む多世代居住による地域コミュニティの形成に向けた世代間住み替えの円滑化に関する調査研究
◆概要資料 (報道発表資料)

◆要旨

 我が国では、少子高齢・人口減少社会の到来に伴い、高齢世代、子育て世代への対応は重要かつ喫緊の課題となっていますが、高齢世代と子育て世代の居住ニーズと住宅ストックとの間には依然として大きなミスマッチが存在しています。また、大都市近郊の一部地域では住民が一斉に高齢化する問題も顕在化しており、地域コミュニティをいかに維持するかも社会問題となっています。
 こうした課題の解消を通じ持続可能で活力ある地域づくりを実現していくためには、一つの街に多世代が共存し高齢化に伴う地域力衰退を予防する「多世代共存社会」や良質なストックの多世代にわたる有効活用を通じて民間需要の潜在力を引き出す「ストック循環型社会」の構築について検討し、実現に向けた方途を提示していくことが必要だと考えられます。
 本調査研究では、「人々の住み替え行動」や「中古住宅流通の阻害要因」に着眼点を置き、各種調査(文献調査、インターネットによるアンケート調査、ヒアリング及びインタビュー調査)を実施し、調査結果を分析することにより、「多世代共存社会」に向けた人々の住み替え誘導や「ストック循環型社会」に向けた中古住宅流通の促進に関して検討しました。
 
◆詳細

本文(PDF:1.70MB)
◆キーワード

多世代共存社会、ストック循環型社会、住み替え、中古住宅流通

◆発行

国土交通政策研究第117号/平成26年8月

◆在庫

<印刷・製本中>
◆事後評価

内部評価シート(PDF:105KB)
有識者評価シート(PDF: 72KB)
http://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/kkk117.html


 
調査研究の背景
○ 我が国では、少子高齢・人口減少社会の到来に伴い、高齢世代、子育て世代へ
の対応は重要かつ喫緊の課題となっていますが、高齢世代と子育て世代の居
住ニーズと住宅ストックとの間には依然として大きなミスマッチが存在していま
す。また、大都市近郊の一部地域では住民が一斉に高齢化する問題も顕在化
しており、地域コミュニティをいかに維持するかも社会問題となっています。
○ こうした課題の解消を通じ持続可能で活力ある地域づくりを実現していくために
は、一つの街に多世代が共存し高齢化に伴う地域力衰退を予防する「多世代共
存社会」や良質なストックの多世代にわたる有効活用を通じて民間需要の潜在
力を引き出す「ストック循環型社会」の構築について検討し、実現に向けた方途
を提 要 考 す。 示していくことが必要だと考えられます。
○ 本調査研究では、「人々の住み替え行動」や「中古住宅流通の阻害要因」に着眼
点を置き 各種調査(文献調査 イ タ ネ よる ケ 調査 グ 点を置き、各種調査(文献調査、インターネットによるアンケート調査、ヒアリング
及びインタビュー調査)を実施し、調査結果を分析することにより、「多世代共存
社会」に向けた人々の住み替え誘導や「ストック循環型社会」に向けた中古住宅
流通の促進に関して検討しました。
1調査研究の概要
(1) アンケート調査
○ インターネットを通じた多数へのアンケート調査による全体的
傾向の把握
○ 住み替えが検討される際に重視される項目の検証
○ 住 替 検討開始前後 変 住み替えの検討開始前後での変化
(2) 需要側(居住者)へのヒアリング調査
○ 住み替えを行う主体である居住者の実経験の聴取
○ アンケート調査結果との比較
(3) 供給側(不動産流通業者)へのヒアリング調査
○ 媒介や情報提供を行う不動産流通業者の認識の聴取
○ アンケート調査結果との比較
2
全体像 : アンケート調査の仕様
■ 平成25年1月23日〜2月1日にインターネットを通じて実施。
■ プレ調査で集まった45,057サンプルを分類し、@「能動的住み替え」層、A「受動的住み替え」層、B「本
気度高い検討」層の3類型から2,000サンプルを本調査の対象として抽出。
サ プ 全体像 サンプルの全体像 サ プ 分類


個別事情 : 需要側(居住者)の声
■ 全体像のアンケート調査の際の7つの項目に基づいて主な意見を抜粋。「妥協」が難しいと考えられる@住
宅自身の性能又は住宅に付随する制約に関するもの(4項目)と、住宅周辺・まちに関するもの(3項目)のうち
住み替え検討開始の前後で重要度が顕著に変わ ていた 住み替え検討開始の前後で重要度が顕著に変わっていたA生活しやすい立地条件に着眼。
■ 世帯構成の変化に伴う間取りのニーズの変化がきっかけとして多く、金銭的事情は動かしにくい制約条件と
して機能。
■ 居住地選択の段階で生活しやすい立地条件を重視する声が、需要側の個別事情でも挙げられた。
○ 親の死亡(相続)や介護施設入所、子どもの独立という
世帯構成の変化を契機に住み替えを検討した。《実践、
住宅自身の性能・住宅に付随する制約
○ 子どもが独立しここに住む必要も無いと思い始めると、
駅徒歩19分が苦痛となった。都心に近いところへ引っ
「生活しやすい立地条件」
検討》
○ 身体が優れない父母がいなくなった後、今の広い家に
自分だけでは住み続けられない。《検討》
越したい。《検討》
○ 平坦な土地という条件の下、予算的に購入可能な物件
を都心から郊外へ広げる形で探した。《実践》
○ 子どもの誕生・成長により手狭となった。《実践》
○ 被害は無かったが震災で揺れたため、免震住宅への住
み替えを考えた。《検討》
○ 徒歩圏で買い物ができる現住地は便利。《検討3名》
○ 配偶者の職場へ1時間以内という条件の下、予算的に
購入可能な物件を広範囲で探した。《実践》
○ 現住居の売却見積価額が希望より大幅に安い。《検討
3名》
○ 子どもの通学のため、現住地から遠くは考えていない。
《検討》

個別事情 : 供給側(不動産流通業者)の声
■ 価格や間取りが持つ影響力はやはり大きい。特に価格は絶対的な力を持つとの見解。一方、築年数につい
ては見解が分かれており、今回の10社に対するヒアリングだけでは結論は出せない。
■ 一方で、子育て環境、通勤・通学、買い物といった「生活しやすい立地条件」が個別取引の場でも重視され
ていることを供給側も認識。
○ 成約しやすさについて、立地もあるが、最終的には価
格で決まる 安ければ売れ 値下げすれば絶対売れ
住宅自身の性能・住宅に付随する制約
○ 子育て世帯は戸建、子ども独立後の夫婦は駅近マン
ションという動きがある 《媒介大手》
「生活しやすい立地条件」
格で決まる。安ければ売れ、値下げすれば絶対売れ
る。《媒介大手、媒介中小》
○ 子ども独立後の夫婦にとって戸建は広すぎるので、売
却か賃貸をした上でマンションや老人ホームに移る動き
ションという動きがある。《媒介大手》
○ 庭のある戸建、良好な環境・落ち着いた雰囲気の郊外
でのびのびと子育てをしたいという希望がある。マンショ
却か賃貸をした上でマンションや老人ホ ムに移る動き ンでは階下や隣戸への音の問題が気になるという消極
が見られる。《媒介大手》
○ 築年数が古い戸建は一般客には売れない。「古屋付き
土地」という形で、除却費の分マイナス評価となる。《媒
ンでは階下や隣戸への音の問題が気になるという消極
的な事情も存在する。《媒介中小、情報サービス》
○ 勤務先より学区が重要。現在通学中の学区、評判が良
土地」という形で、除却費の分マイナス評価となる。《媒 い学校の学区等。《情報サービス》
介大手》
○ 新耐震をクリアすれば築年数はそれほど変わらない。
築浅に越したことはないが。《情報サービス》
い学校の学区等。《情報サ ビス》
○ 通勤、商業の集積等で沿線を選び、その沿線に住みた
いという希望が多い。《媒介大手》
築浅に越した とはないが。《情報サ ビス》 ○ 駅徒歩10分以内と利便性を重視する人も多い 予算
○ 最近は、地盤、海抜、防犯等が気にされることもある。
《情報サービス》
○ 駅徒歩10分以内と利便性を重視する人も多い。予算
的に無理な場合は、急行が止まらない隣の駅から徒歩
10分以内という条件で選ばれる。《媒介大手》

多世代共存社会に向けた人々の住み替えの誘導に関する検討
(1) 実際に住み替えを検討する過程においては、「住宅の広さや間取
り」や「住宅ローンや家賃等の住居費負担」と並んで、「生活しやすい
立地条件」という利便性が重視されている。
(2) 「生活しやすい立地条件」は、住み替えの検討開始前後で重要性
が大きく向上しており、実需の顕れとも考えられる。
(3) 「生活しやすい立地条件」を整えることが、人々を呼び寄せるため
の重要な要因の1つとなる。具体的には、通勤・通学、買い物、子
育て、日常的な医療サービスの享受に係る利便性が挙げられる。
(4) このことは、住宅そのもの以外に着眼した、「住まいの周辺環境」か
らのアプロ チ・ らのアプローチ・施策も有効である可能性を示唆している。


05. 2014年8月23日 18:42:19 : bMPcJNf0qY


http://www.smtb.jp/others/report/economy/29.pdf
2014.9 29
調査月報
時論
バブル、インフレ、「日本病」への懸念とその対処・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
経済の動き
2014・2015年度の内外経済見通し
〜自律的景気回復の持続性をどう見るか〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
地域別に見る日本輸出の増減要因・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
相続で多発する家計資産の地域間移動〜加速する大都市圏への資産集中〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 時論 〜バブル、インフレ、「日本病」への懸念とその対処

バブル、インフレ、「日本病」への懸念とその対処
わが国の長期金利(10年国債利回り)は、ついに一時0.5%を下回る水準にまで低下した。一方、消費
者物価上昇率は、生鮮食品や消費税率引き上げ分を除いたコア部分で見ると、為替円安の物価押し上
げ効果の一巡もあって、プラス幅はやや縮小気味ではあるが、1%台前半を維持している。
今後についても、労働力や資材の需給逼迫とインフレ期待の高まりを映じて、「2 年で 2%」という日銀
の物価上昇目標には届かなくとも、比較的底堅く推移すると見られる。かくして、景気や物価との関係で
見て、長期金利の異常な低さは一層際立ってきており、その持続性への疑問が高まりつつある。
長期金利の上昇は不可避と見るのが自然であろうが、物価上昇が「2%ワンタッチ」ではなく「安定的な
2%上昇」となるにはまだ時間を要する。当分の間は現在の異次元緩和策が維持され、市場もそれを織り
込んでいるので、大幅なリバウンドは考えにくい。
「安定的な 2%上昇」が視野に入ってきた場合には、市場の先走りによる長期金利の急上昇→利払い
費急増による財政危機→日本国債の格下げ→保有国債の評価損発生による銀行の資産劣化→貸し渋
りによる信用収縮→急速な景気悪化−といった「負の連鎖」は回避しなければならない。このため日銀は
国債買いオペを続け、現在の「出口戦略を語るのは時期尚早」という“リアルタイムガイダンス”に代わり、
金利に関するフォワードガイダンスを強化し、長期金利の急上昇を食い止めようとするだろう。
さらに、「安定的な 2%上昇」が実現した場合でも、上記の「負の連鎖」への警戒は怠れないため、日銀
の出口政策(超緩和→緩和→引き締めへの政策スタンスのシフト)は小出しかつ時間をかけて行われる
だろう。と言うより、それしか選択肢はないだろう。長期国債の売却はもちろん、国債の買いオペ額を急速
に減らすことは長期金利急騰を招きかねないため、慎重に行われるだろう。満期償還による自然減を待
つとなると 6〜7 年の期間は要する。
200 兆円に迫るであろう超過準備の前では、政策金利の引き上げは簡単ではないだろう。超過準備付
利金利の引き上げや大量の手形売却オペに走ると、日銀には巨額の利払い費が発生して経常赤字に
陥り、現在 4000〜5000 億円の国庫納付金はゼロとなり、財政収入に穴をあける。財政ばかりか中央銀行
まで赤字となった国を、市場はどう評価するかというリスクも付きまとう。
結果として、政策金利の引き上げを複数の手段で何とかなし遂げ、長期金利の上昇を許容するとして
も、ごく小幅なものに止まるのではないか。
この間、長期金利急騰のリスクをミニマイズする必須要件たる財政再建は、消費税率引き上げや景気
回復によって税収は増えるものの、道半ばに止まると見るのが現実的であろう。社会保障関連費削減の
困難さに加えて、2020 年度プライマリーバランス黒字化の前提である 2%成長の実現が供給制約の表面
化によって怪しくなっており、供給制約を突破するための成長戦略も、その実現性や効果発現に要する
時間を勘案すると当てにできないためである。
以上のように考えると、向こう 3〜4 年については、政策金利はゼロ水準から明らかに離れるほどには
1三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 時論 〜バブル、インフレ、「日本病」への懸念とその対処
ならず、長期金利は乱高下する局面を伴いつつ、さすがに水準を切り上げていくものの、景気・物価・財
政の実態に見合わない低水準が長期間持続するという事態が想定される。
異次元緩和策の出口が見つけられない状況、国債買いオペの続行やフォワードガイダンス、口先介
入等で長期金利上昇を抑えつける、あるいは市場をなだめ続ける「金融抑圧」的状況が現出するというこ
とでもある。
むろん、これは持続可能性があるものではない。持続しなくなる時(それは「負の連鎖」が始まる時でも
ある)は市場の期待が一気に「もはや持続しない」に変わる時であろう。それが何をきっかけに起こるのか
現時点では見通し難いが、「負の連鎖」を引き起こさないためには、少なくとも日本経済は次のような懸念
を乗り越える必要がある。
第一は、バブル懸念である。景気実態から離れた低い長期金利や金融緩和の長期化はバブル発生
の定番である。バブルはいずれは崩壊し、その際には巨額の財政支出が求められるため、日本の財政
ひいては日本国債に対する信認が一気に失墜する懸念がある。
第二は、インフレ懸念である。「物価上昇 2%」目標は来春までは無理としても、潜在成長率の低下に
よって需給ギャップがすでにゼロ近辺であることを考えると、2〜3 年後にはクリアする可能性が高まって
きた。その際、景気や物価に適切なブレーキがかけられないと、インフレ率が 2%を超えて加速し、長期
金利の上昇圧力は急速に高まる恐れがある。
第三は、スタグフレーション的な「日本病」に陥る懸念である。潜在成長率が上向かず、供給制約に起
因した緩やかながらも悪いインフレが常態化する一方、税・社会保障負担は増加し続け、国民の生活水
準がジワジワ低下する状況である。今でもやや過大と思えるアベノミクス第三の矢、さらには日本経済そ
のものや財政の再建可能性に対する期待が剥落しかねない。
これらの懸念は懸念で終わらせなければならない。そのためには、政府には財政再建や成長戦略の
着実な実行が求められるのはもちろん、金融機関には、@緩和的な金融環境の下でも、投融資行動に
おいて過度なリスクテイクに走らない、Aグローバル戦略の推進、ニューフロンティアの開拓、事業再編
や M&A、アライアンスの組成など、企業の様々な成長戦略の遂行を、リスクをシェアしつつ後押し、日本
経済の潜在成長率底上げに資する−という攻守両面に渡る取り組みが必要であろう。
(調査部長 金木 利公:Kaneki_Toshikimi@smtb.jp)
※本資料は作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を
目的としたものではありません。
2三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 2014・2015 年度の内外経済見通し
2014・2015 年度の内外経済見通し
〜自律的景気回復の持続性をどう見るか〜


<要旨>
日本の 2014 年 4-6 月期経済成長率は前期比年率▲6.8%と、消費税率引き上げ前の
駆け込み需要を超える大幅なマイナス成長になった。しかし国内の自律的景気回復を支
える要因としての企業収益は、企業自身の体質強化などによって高水準を維持しており、
その下で設備投資と家計所得の増加が続く。2014 年度は国内需要主導での景気回復
持続が見込めよう。
ただし、この回復が 2015 年度まで持続するには伸び悩む輸出の回復が必要となる。ロ
シア・ウクライナ情勢悪化がユーロ圏のロシア向け輸出を大幅に減らす悪影響が既に出
始めたことは懸念材料であり、この影響が長引いて日本からの輸出回復が 2015 年度に
入っても実現しなかった場合、国内景気の回復も息切れする可能性が高くなる。


1.駆け込み需要を上回る減少率となった 2014 年 4-6 月期 GDP 成長率
2014 年 4-6 月期の GDP 成長率は前期比年率▲6.8%と、駆け込み需要が最も大きく出た 1-3
月期の同+6.1%を上回る大幅マイナス成長となった(図表1)。需要項目別の動きを見ると、個人
消費をはじめとして民間住宅投資、設備投資でも大幅な反動減が表れており、4-6 月期の国内民
間需要全体の GDP に対する寄与は▲11.5%ポイントと、リーマン・ショック発生後の 2009 年 1-3
月期における▲12.5%ポイントに迫るマイナス寄与となった。輸入が前期比年率▲20.5%と大幅
に減ったことで外需の寄与こそ+4.4%ポイントとプラスになったが、輸出が前期比▲1.8%とマイナ
スであったため、外需環境も良好とは言い難い。
図表1 日本の GDP 成長率と需要項目別の寄与度
(前期比年率、%)
2013年
4-6月期
7-9月期 10-12月期
2014年
1-3月期
伸び率 伸び率 伸び率 伸び率 伸び率 寄与度
G D P 3.4 1.4 ▲ 0.2 6.1 ▲ 6.8 ▲ 6.8
個人消費 3.0 0.8 1.5 8.4 ▲ 18.7 ▲ 12.4
民間住宅 8.7 20.3 10.1 8.2 ▲ 35.3 ▲ 1.4
設備投資 5.7 2.5 5.5 34.6 ▲ 9.7 ▲ 1.5
民間在庫(年率兆円) ▲ 3.4 ▲ 3.2 ▲ 3.5 ▲ 5.9 ▲ 1.5 + 3.9
政府支出 1.8 0.7 0.8 ▲ 0.4 1.5 + 0.3
公共投資 25.2 31.6 5.8 ▲ 9.8 ▲ 2.0 ▲ 0.1
財・サービス輸出 12.7 ▲ 2.8 1.2 28.6 ▲ 1.8 ▲ 0.3
財・サービス輸入 9.6 7.3 15.7 28.0 ▲ 20.5 + 4.7
(資料)内閣府「国民経済計算速報」
内需寄与度
▲11.3%ポイント
  うち民需▲11.5P
   公需+0.2P
外需寄与度
+4.4%ポイント
4-6月期
3三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 2014・2015 年度の内外経済見通し
2.2015 年度までの内外経済見通し
(1)国内企業収益の頑健性
駆け込み需要の反動減が発生した後の国内景気の方向性を見る上で、最も重要なポイントは
「国内における自律的回復が続くかどうか」であると考える。「自律的回復」とは、家計所得増加が
消費を増やし、企業収益増加が設備投資につながり、それが更なる家計所得と企業収益の増加
をもたらす動きである。これが続いていれば、需要が下方シフトした後も、景気が上向くという方向
性は維持されると考えることができる。この観点から、家計所得と設備投資増加ペースを大きく左
右する企業収益環境を見ておく必要があろう。
日銀短観(2014 年 6 月)の 2014 年度売上・利益計画(大企業)は 1.8%増収で▲4.6%の減益
となっており、既往円安による原材料コスト上昇と人件費増加が企業収益を押えている可能性が
指摘できる。しかし、前年比減益を見込んでもその水準は過去数年を上回っていることに加えて、
足許では製造業部門の投入価格上昇率が鈍化しつつあり、産出価格も前年比で上昇しているた
め、製造業部門の製品一単位あたりの採算が顕著に悪化しているわけではない(図表2,3)。
更に、労働分配率と損益分岐点の水準はかなり下がっていることから、国内企業はある程度の
コスト増や人件費増に対する耐性を備えていると判断できよう(図表4、5)。国内企業が人件費や
設備投資を急激に絞らざるを得なくなるほど、企業収益が圧迫されるとは考えにくい。
図表2 日銀短観(大企業)の経常利益計画
図表5 国内企業の損益分岐点比率
図表3 製造業部門の産出価格・投入価格推移
図表4 国内企業の労働分配率
31.2
34.9 35.1
19.2 18.2
26.6
24.2
25.8
34.8
33.2
0
10
20
30
40
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
(兆円)
(資料)日銀短観
計画
-4.0
-3.0
-2.0
-1.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
2012 2013 2014
差分(A-B)
産出価格伸び率(A)
投入価格伸び率(B)
(%)
(年) (資料)日本銀行
(年)
80
85
90
95
100
105
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
全産業
製造業
非製造業
(資料)財務省「法人企業統計季報」
(3期移動平均値、%)
(年)
55
60
65
70
75
80
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
全産業 製造業 非製造業
(資料)財務省「法人企業統計季報」
(注)労働分配率=(人件費)÷ (人件費+支払利息+減価償却費+経常利益)
(季節調整済3期移動平均値、%)
((年)
4三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 2014・2015 年度の内外経済見通し
(2)個人消費の現状と見通し
個人消費を左右する家計所得環境の動きを見ると、足許ではなお回復が続いており、同じ流れ
がこの先も続くと見込んでいる。2014 年6月の失業率は 3.7%と 4,5 月の 3.5%からは上昇したもの
のなお3%台であり、同月の有効求人倍率は 1.10 倍と 1992 年以来の水準に回復している。そし
て日銀短観の雇用判断DIが 2014 年 4 月以降も明らかな人手不足超になっており、労働分配率も
ここ数年で最も低い水準にある(図表6)。国内企業は全体としてなお従業員を増やす意向を持ち、
収益と人件費のバランスから見て、その余力も持っていると考えられる。
かかる環境下で、一人当たり平均賃金のうち基本給の伸びはまだプラス圏内で安定したとは言
えないものの、パート社員以外の労働者伸び率が徐々に高まるといった平均賃金上昇に向けた
動きが出てきている(図表7、8)。この先家計所得は増加し、7-9 月期以降の実質消費は上向くこ
とで消費と所得の間の好循環は失われないと予想する。2015年 10 月の消費税率引き上げの際に
も、駆け込み需要とその反動減、および税率引き上げによる実質消費の下方シフトは起こるものの、
図表6 労働分配率と雇用判断DI
図表7 一人当たり賃金内訳 図表8 一般・パート労働者数伸び率
▲1.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6
2013 2014
パートタイム労働者数伸び率
一般労働者数伸び率
(前年同月比、%)
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6
2013 2014
ボーナス他
残業手当
基本給
給与総額
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」
(前年同月比、%)
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」
-15
-10
-5
0
5
10
15
20
25
30
60.0
62.5
65.0
67.5
70.0
72.5
2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014
労働分配率
雇用判断DI(目盛右)
(季節調整値、%)
(資料)財務省「法人企業統計季報」、日銀短観
(注)労働分配率=(人件費)÷ (人件費+支払利息+減価償却費+経常利益)
(過剰−不足)
(年)
5三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 2014・2015 年度の内外経済見通し
増勢そのものは維持されると想定する。年度平均で見ると、2014 年度は反動減によって ▲
2.0%と大幅なマイナスになった後、2015 年度は+0.7%とプラスに戻るだろう。
(3)設備投資の現状と見通し
設備投資は 4-6 月期に前期比年率▲9.7%と減少に転じたが、そのマイナス幅は 1-3 月期の同
+34.6%よりも小さく、駆け込み需要の反動減を考慮しても設備投資の増加基調は維持されてい
ると判断できる。
設備投資が増加してきた理由として第一に挙げられるのが、輸出との関連が弱い非製造業の
回復ペースが過去よりも速いことである。今回の景気回復は、これまでのような輸出主導の回復で
はなく、円高修正や株価上昇を背景とした個人消費回復などが牽引役となっていた。そのため、
今回の非製造業設備投資は不動産業や建設業、運輸業を中心として過去 2 回よりも速いペース
で回復している(図表9A)。
輸出回復が遅れる中で製造業の設備投資も増えているのは、2013 年以降の個人消費中心と
する国内需要が強かったことに加えて、景気と業績の回復が 1 年半以上続く中で、リーマン・ショッ
ク以降抑え続けてきた更新投資をここにきて実行に移し始めたことが大きいと見ている
1。能力増
強ではなく、維持更新のための投資のウェイトが高まっているが故に、輸出が増えない中でも製造
業の設備投資が増加したということである。日銀短観における 2014 年度設備投資計画(大企業)
が前年比+7.4%と、6 月時点の計画としては過去平均(2005 年度以降で+4.3%)を上回る高い
伸び率になったことを踏まえると、輸出回復が遅れたとしても 2014 年度内の設備投資は増勢を維
持できると見る(次頁図表 10)。
1 日本政策投資銀行の調査によると、製造業設備投資計画のうち維持更新投資が占める割合は上昇
し続けており、2014 年度は 27.3%と過去 10 年で最も高くなった。
60
80
100
120
140
-4 -3 -2 -1 谷 1 2 3 4 5 6
02/1Q前後
09/1Q前後
12/4Q前後
(景気の谷=100)
(景気の谷からの期間、四半期)
60
80
100
120
140
-4 -3 -2 -1 谷 1 2 3 4 5 6
02/1Q前後
09/1Q前後
12/4Q前後
(景気の谷=100)
(景気の谷からの期間、四半期)
(資料)財務省「法人企業統計季報」
図表9 景気の谷前後の設備投資額の推移
@製造業 A非製造業
6三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 2014・2015 年度の内外経済見通し
製造業の設備投資が維持更新から能力増強投資にまで広がり、持続的な設備投資の伸びが
実現するのは、輸出の回復が明確になる 2015 年度になろう。但し輸出の増加ペースは、生産拠
点の海外移転などのために、過去と比べると海外景気が回復しても過去ほどには伸びず、結果と
して製造業の設備投資増加ペースも緩やかなものとなる。年度平均で見た実質設備投資伸び率
は、2014 年度の+4.5%から 2015 年度には+1.7%に鈍化するだろう。
(4)海外経済・日本の輸出環境の現状と見通し
日本の輸出数量は、今なお明確には回復していない(図表 11)。主要経済圏の製造業 PMI 指
数を見ると、米国の回復が最も顕著である他、中国も 50 を超えて推移している。日本の輸出シェ
アが最も高い米中での景気回復が進んでいるにもかかわらず、日本からの輸出が回復していない
要因としては、@世界景気の回復ペース、特にアジア新興国景気の回復ペースが鈍いことに加え
て、A日本の輸出企業が円安下でも輸出価格を引き下げなかったこと、そしてB情報通信機械や
自動車製造業を中心とする海外への生産拠点移管という構造要因−が考えられる。
図表 11 海外製造業 PMI 指数と日本からの実質輸出
-5
0
5
10
3月 6月 9月 12月 翌3月 翌6月
2014年度
2013年度
2005年度以降平均
(前年度比、%)
(資料)日銀短観 (調査時点)
2014年度計画
+7.4%
図表 10 日銀短観(大企業)の設備投資計画
90
95
100
105
110
40
45
50
55
60
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7
2013 2014
米国
ユーロ圏
中国
(資料)Bloomberg
(ポイント)
日本からの実質輸出(目盛右)
(2010年=100)
7三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 2014・2015 年度の内外経済見通し
この先、短期的に日本の輸出を左右する要因として重要なのは@の要因、すなわち米国景気
の回復がアジアを含む他地域の景気を牽引できるかどうかである。製造業 PMI 指数の動きを見る
限り、今のところは米国の回復が他地域を牽引する姿になっているが、50 を上回りながらも低下し
つつあるユーロ圏の状況、具体的にはウクライナ・ロシア情勢悪化という地政学的リスクが懸念材
料である。この影響は既に顕在化しており、例えばドイツから EU 圏外向けの輸出伸び率を見ると、
直近 2014 年 4-6 月期においては米国向けがプラス寄与になったものの、ロシア・ウクライナ向け輸
出のマイナス寄与が上回り、EU 圏外向け輸出全体でマイナスに陥った(図表 12)。
2014 年 4-6月期の実質経済成長率が前期比▲0.2%とマイナスになったドイツの景気減速が長
引けば、当然にユーロ圏全体の景気を押し下げる。そしてこの影響が拡大すれば、米国家計・企
業のマインドに対する下押し圧力になり得る。今のところ、堅調に推移している米国景気を失速さ
せるほどのインパクトが出る可能性は低いと考えており、2015 年度以降は地政学的リスクの悪影響
が軽減されることで欧米景気も回復に向かい、日本からの輸出も増加ペースを高めていくと想定
するが、状況によっては世界経済に対する下押し圧力が長期間残る恐れもある。ロシア以外にも、
イスラエルやイラクの情勢も悪化している。現時点では落ち着いた動きを保っているエネルギー価
格の高騰につながりかねないなど、地政学的リスクはこの先の新興国含めた世界経済の下振れリ
スク要因として、警戒感を持って見ておくべきであろう。
3.消費者物価の見通し
2014 年 6 月の消費者物価上昇率(生鮮食品除く総合、以下「CPI コア上昇率」)は前年同月比
+3.3%、消費税率引き上げの影響を除くベースでは同+1.3%となった(次頁図表 13)。円安によ
る物価上昇率押し上げ効果の剥落によって4月の+1.5%から徐々に鈍化しており、上昇率鈍化
は 2014 年末頃に+1%程度になるまで続こう。その後は、労働需給逼迫による賃金上昇がサービ
ス中心とする物価を徐々に押し上げる他、家計所得環境の改善期間が長くなるにつれて消費者
の期待物価上昇率も押し上げられていく(所得増加によって値上げを受け入れるようになる)ことか
ら、2015 年に入ってからの CPI コア上昇率は再び高まり始めよう。ただし、家計所得全体の増加ペ
図表 12 ドイツからの EU 圏外向け輸出金額伸び率推移
▲ 3.0
▲ 2.0
▲ 1.0
0.0
1.0
2.0
3.0
T U V W T U
2013 2014
対その他地域
対露・ウクライナ寄与度
対米寄与度
EU圏外向け計
(資料)Eurostat
(前年同期比、%)
8三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 2014・2015 年度の内外経済見通し
ースが加速するほどの状況には至らないため、物価上昇ペースも急激なものにはならず、CPI コア
上昇率の拡大ペースは 2015 年度末で+1.5%前後に留まると見る。日銀が目標とする「消費者物
価上昇率+2%で安定」という状態が 2015 年度内に実現する可能性は低い。
4.金融市場の現状と見通し

(1)長短金利・金融政策
2015 年度までの日銀物価目標達成が難しいことが見通せるようになった段階で日銀が取る対
応として、最もシンプルなものは資産買入額の増額という量的緩和の強化であろう。この他にも、
大量の国債購入続けることで金融緩和の出口におけるリスクが高まるのを防ぐ観点から、「2年
(2015 年度)」という達成時期の目標を外したり、2%という物価目標に幅を持たせたりすることによ
って追加緩和を避け、資産買入ペースを緩めるなど、様々な選択肢が考えられる。ただいずれに
しても、2%未満の物価上昇率下で大幅に金融政策のスタンスを変える可能性は低く、無担保コ
ールレートは現状と同じ 0.1%を下回ったまま推移すると予想する。
10 年国債利回りは、海外長期金利の影響を受けて6月頃から低下しており、8 月下旬では
0.5%前後で推移している(図表 14)。地政学的リスクの高まりを受けて国際金融市場における「質
への逃避」の動きが残ることや、世界景気に対する悪影響が懸念されることから、2014 年内は上昇
図表 13 国内消費者物価上昇率(生鮮食品除く総合)の推移
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1.0
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8
(資料)Bloomberg
2013 2014
(%)
図表 14 日本の 10 年国債利回りの推移
-1.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6
2013 2014
石油・エネルギー
生鮮除く食料
除く特殊要因
生鮮食品を除く総合
消費税率引き上げの影響除くベース
(前年同月比、%)
(資料)総務省「消費者物価指数」
9三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 2014・2015 年度の内外経済見通し
しにくい状況が続くだろう。2015 年度以降は海外経済回復と米国金利上昇の影響で日本の長期
金利も上昇するが、日本での利上げが視野に入らない状況の下で上昇幅は抑えられ、2015 年度
末でも 1%前後に留まると予想する。
(2)為替レート
@円ドルレート
円ドルレートは、米国連邦準備理事会(FRB)による量的緩和策(QE)の規模縮小が決定された
2013 年末は1ドル=105 円前後だったが、その後寒波による一時的な米国景気減速や、イエレン
FRB 議長が利上げに対して慎重なスタンスを示唆する発言を行ったことで円高に戻り、5 月以降は
同 102 円前後で推移している(図表 15)。この先 2014 年内は、地政学的リスクが意識されて質へ
の逃避の動きが残るため、現状とほぼ同じ 1 ドル=100 円台前半で推移し、2015 年以降円安が進
むと予想する。具体的水準としては 2014 年度末に1ドル=102〜105 円前後、2015 年度末は同
104〜108 円を見込む。
A円ユーロレート
ユーロレートは、対ドルで 5 月に 1 ユーロ=1.40 ドル近くまで上昇したのをピークとして、6 月上
旬の欧州中央銀行による包括緩和を経て下落基調にあり、8 月下旬では同 1.32 ドル前後となって
いる。対円でも 5 月頃に 1 ユーロ=140 円を上回っていたところから、8 月には同 130 円台後半ま
で下落している。
ウクライナ・ロシア情勢の実体経済に対する悪影響が、ユーロ圏からロシア向け輸出の大幅減と
いう形で出始めたことに加えて(前掲図表 12)、2014 年 7 月で消費者物価上昇率が前年比+
0.4%まで鈍化するなどディスインフレ基調が顕著で、ECB による追加緩和の可能性が残ることか
た、ユーロレートは対ドルで下落基調となり、対円では1ユーロ=130 円台中心に推移すると予想
する。
120
125
130
135
140
145
90
95
100
105
110
115
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8
(資料)Bloomberg
(円/ドル)
円ドルレート(目盛左)
円ユーロレート(目盛右)
(円/ユーロ)
2013 2014
図表 15 円ドルレート・円ユーロレートの推移
10三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 2014・2015 年度の内外経済見通し
5.経済見通しのまとめと下振れリスク要因
以上、2015 年度までの経済見通しをまとめると、2014 年度内は国内家計所得と個人消費、企
業収益と設備投資が増加する自律的回復の動きが続くことで、輸出回復が遅れる中でも景気回
復基調は維持され、年度平均の成長率は+0.6%と低いながらもプラスを確保しよう。2015 年度以
降は地政学的リスクが払拭されていき、世界経済が米国主導で回復するとともに日本からの輸出
も上向く。この動きを反映して設備投資をはじめとする国内需要の増加基調も維持され、2015 年
度平均の成長率は+1.1%まで高まるというのがメインシナリオである。企業収益体質がかなり強く
なっている現状に鑑みれば、この標準的なシナリオにおける企業収益は、2015 年度まで増益を確
保できると見込まれる。
このシナリオから外れるリスク要因としては、海外経済動向、特に地政学的リスクの高まりによる
悪影響が懸念される。既にユーロ圏の輸出に影響を及ぼし始めたウクライナ・ロシア情勢が深刻
化した場合、ユーロ圏の実体経済が更に悪化するに留まらず、現在堅調な米国景気にも下押し
圧力となる。更に、欧州政府債務問題の再燃などで国際金融市場のセンチメントが悪化すると、
市場のリスク回避姿勢が強まることで広範囲で株価が下がり、新興国の中には、急激な資金流出
に見舞われるところも出よう。
かかる海外経済・金融情勢の悪化が現実のものとなれば、日本には円高圧力となって輸出企
業の収益・設備投資を押し下げ、製造業の設備投資を早期に頭打ちにさせる。また円高に伴う株
安が家計と企業のマインドを悪化させ、個人消費と非製造業の設備投資の足をも引っ張る他、円
高と需要減少が物価を押し下げ、日本が再びデフレに戻る懸念を高めるだろう。2014 年度は内需
主導の回復を続ける余力が残っているものの、2015 年度の景気は地政学的リスク中心とする海外
景気の振れに左右されやすい状況になると見ている。
(経済調査チーム 花田 普:Hanada_Hiroshi2@smtb.jp)
※本資料は作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を
目的としたものではありません。
11三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 2014・2015 年度の内外経済見通し
実額 前年度比% 実額 前年度比%
<実質・2000年基準>
国 内 総 支 出 532.3 0.6 538.4 1.1 -0.4 1.3 0.6 -0.1
0.4 0.8 1.8 0.5
民 間 最 終 消 費 309.8 -2.0 312.0 0.7 -3.3 1.1 0.7 -1.1
-1.9 -2.2 1.8 -0.3
民 間 住 宅 投 資 13.8 -7.4 13.8 -0.1 -9.9 0.0 2.5 -4.9
-4.9 -9.7 2.2 -2.4
民 間 設 備 投 資 73.5 4.5 74.6 1.4 1.5 1.1 1.0 -0.2
7.1 2.4 2.0 0.9
民間在庫品増加(実額) -1.9 寄与度 0.5 -2.3 寄与度 -0.1 -2.0 -1.8 -2.7 -1.9
政 府 最 終 消 費 103.1 0.7 104.1 1.0 0.4 0.4 0.6 0.4
0.6 0.8 1.0 1.0
公的固定資本形成 23.6 1.0 23.7 0.2 -1.3 1.5 -0.7 0.4
2.2 0.2 0.9 -0.3
財貨・サービス輸出 89.4 5.0 92.9 3.8 2.9 1.0 2.0 2.7
6.1 4.0 2.9 4.8
財貨・サービス輸入 78.3 0.4 80.2 2.4 -3.3 -0.1 2.2 0.5
4.4 -3.3 2.1 2.7
内 需 寄 与 度 -0.2 民需 -0.3 1.0 民需 0.8
外 需 寄 与 度 0.8 公需 0.2 0.2 公需 0.2
<名 目>
国 内 総 支 出 493.6 2.5 501.8 1.7 1.1 1.7 0.3 1.1
2.3 2.8 1.9 1.4
GDPデフレーター 92.7 2.0 93.2 0.5 1.9 2.0 0.1 0.9
企業物価 *(10年=100) 106.8 4.4 108.9 1.9 4.3 4.4 1.3 2.5
輸出物価 *(10年=100) 109.0 0.8 111.7 2.5 1.1 0.4 2.2 2.8
輸入物価 *(10年=100) 127.5 2.0 132.3 3.7 3.0 1.1 3.1 4.3
消費者物価 *(10年=100) 103.5 3.2 105.4 1.8 3.3 3.0 1.0 2.6
鉱工業生産 *(10年=100) 99.9 1.0 105.1 5.2 1.9 0.1 6.9 3.5
失 業 率 (%) 3.5 -0.3 3.4 -0.2 3.6 3.5 3.4 3.3
雇 用 者 数 *(万人) 5,595 0.6 5,614 0.3 0.6 0.5 0.4 0.3
1人当雇用者報酬伸び率*(%) 0.3 − 0.5 − 0.4 0.2 0.5 0.5
新設住宅着工戸数(万戸) 91.1 -7.8 88.7 -2.7 88.8 91.5 95.5 81.7
貿 易 収 支 (10億円) -9,352 − -9,427 − -4,394 -4,958 -4,906 -4,520
輸 出 *(10億円) 73,635 5.5 78,252 6.3 5.6 5.4 5.8 6.8
輸 入 *(10億円) 82,987 2.8 87,679 5.7 6.8 -0.8 6.4 4.9
第一次所得収支 (10億円) 16,296 − 16,886 − 8,474 7,821 8,752 8,134
経 常 収 支 (10億円) 4,574 − 5,978 − 2,472 2,102 3,123 2,855
マネーサプライ *(M2、兆円) 879.5 3.0 899.9 2.3 3.2 2.8 2.4 2.3
円/ドルレート (円、期中平均) 102.4 − 105.0 − 102.1 102.8 104.3 105.8
輸入原油価格(ドル/バレル) 109.6 − 111.8 − 109.8 109.5 111.3 112.3
米国実質GDP(10億ドル) 16038.3 2.1 16538.8 3.1 0.8 3.3 3.0 3.1
(注)GDP項目の実額の単位は兆円、半期別成長率は上段が季調済前期比、下段は前年同期比。内外需寄与度はGDP前期比に対するもの。
*印は前年同期比、消費者物価は生鮮食品を除くベース。半期の住宅着工戸数は季調済年率。
米国は暦年ベース、半期別成長率は年率換算。 (期間平均値)
2014/4-6 7-9 10-12 2015/1-3 4-6 7-9 10-12 2016/1-3
コールレート(無担保・翌日) 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
10年国債利回り 0.60 0.56 0.60 0.68 0.74 0.81 0.89 0.96
円ドルレート 102.1 102.0 102.4 103.1 103.9 104.6 105.4 106.1
→予測
2015上 2015下
総括表 2014・2015年度の内外経済見通し
(作成日:2014年8月22日)
2014上 2014下
2014年度 2015年度
12三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 地域別に見る日本輸出の増減要因
地域別に見る日本輸出の増減要因

<要旨>
足許の日本の輸出の減速は、生産拠点の移管による米国向け自動車輸出の減少と、
製油所閉鎖によるアジア向け石油製品輸出の減少の影響が大きい。中国や EU 向けの
輸出が底堅い背景に、米国の景気回復による輸出の誘発効果があると見られるが、日
本の中間財輸出のシェア低下によって誘発効果にも低下圧力がかかっている。
この先、米国の景気回復によって輸出が増加していくとしても、2014 年に入ってからの
国内の生産能力低下の影響は大きく、今年中の輸出は前年比で大幅に増加することは
ないだろう。


1. 日本輸出の伸び悩み

日本の輸出は、米国の回復による増加が期待されていたが、2014 年に入っても伸び悩みが続
いている。地域別に見ると、米国向けと中国を除くアジア向けが不安定に推移している一方で、
EU 向けや中国向けは比較的堅調に推移しているように見える(図表1)。経済状況としては、米国
が復調する中で、EU の回復は弱いため(図表2)、日本の輸出状況は各地域の景気の違いを反
映しているわけではない。そこで、本稿では、各地域向け輸出を品目別に見て変動要因を探り、こ
の先の輸出の動きを考察していく。
図表1 実質輸出内訳 図表2 実質 GDP の推移
-6.0
-4.0
-2.0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
1 2 3 4 5 6 7
米国
EU
アジア
(除く中国)
中国
その他
総額
(前年比、%)
(資料)財務省「貿易統計」、内閣府「企業物価指数」
2014
-1.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
T U V W T U
2013 2014
米国
EU
(前年比、%)
(資料)U.S. Bureau of Economic Analysis、Eurostat
13三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 地域別に見る日本輸出の増減要因
(1)米国向け輸出
米国向け輸出を品目別に見ると、足許では自動車関連のマイナス寄与が大きい(図表3)。米国
の自動車販売は今年の 3 月以降前年比プラスで推移しているため、輸出の減速は生産拠点が日
本から海外に移管された影響だと考えられる。もっとも、米国経済の回復を背景に、自動車関連を
除いた米国向け輸出は、資本財・部品を中心に増加基調にある(図表4)
自動車の輸出台数と生産能力指数1の推移を見ると、生産能力が低下した影響で自動車輸出
が減少しているように見える(図表5)。自動車メーカーの動向を個別に見ると 2013 年から北米向
けを中心に海外へ生産拠点を移管する動きが加速しており、足許の米国向け自動車輸出の減少
に影響していると考えられる(図表6)。例えば、今年2月からフィットの生産をメキシコ工場へ移管
したホンダの米国向け輸出台数は、1-6 月の累計で前年比▲85.7%の 6,647 台まで減少している。
自動車輸出台数は、2013 年 11 月までは堅調で、12 月以降に生産拠点の移管に伴って大きく減
少していることから、自動車輸出台数は今年の 11 月までは前年比マイナスになる可能性が高い。
(2)EU 向け輸出
1製造工業の生産能力を、操業日数や設備、労働力に一定の基準を設け、これらの条件が標準的な状態
で生産可能な最大生産量を能力として定義し、これを指数化したもの。
図表5 米国向け自動車輸出台数と生産能力指数
図表3 米国向け実質輸出内訳
図表6 自動車生産拠点の移管動向
図表4 米国向け実質資本財・部品輸出の推移
-8
-6
-4
-2
0
2
4
6
8
10
12
14
1 2 3 4 5 6 7
その他
資本財・部品
情報関連
消費財
自動車関連
中間財
総額
(前年比、%)
(資料)財務省「貿易統計」、内閣府「企業物価指数」
2014
92
93
94
95
96
97
98
99
100
101
102
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1 2 3 4 5 6
自動車輸出台数 生産能力指数(右軸)
(季調値、万台) (2010年=100)
(資料)経済産業省、日本自動車工業会
2013 2014
-4.0
-2.0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7
(前年比、%)
(資料)財務省「貿易統計」、日本銀行「企業物価指数」
2013 2014
(注)後方3カ月移動平均の前年比。
社名 時期 移管先 車種
北米 ハイランダー
カナダ レクサス(SUV)
2013年5月 フランス ヤリス
2015年 米国 レクサス(ES)
2014年 ムラーノ
2015年 ローグ
ホンダ 2014年2月 メキシコ フィット
マツダ 2014年1月 メキシコ
アクセラ
(マツダ3)
(資料)2014年7月末時点の各種報道より作成
日産
トヨタ
2013年
米国
14三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 地域別に見る日本輸出の増減要因
日本の EU 向け輸出を見ると、前年比プラスで推移しており、内訳を見ても消費財以外は堅調
に推移している(図表7)。2014 年 4-6 月期の EU28 カ国の実質 GDP 成長率が前年比+1.1%と
伸び悩む中で、日本の輸出の伸びが大きいことは意外に思える。足許で特にプラスの寄与が大き
い自動車関連の増加については、昨年の EU 圏の景気底打ちによる購入意欲の増加に加えて、
EU の CO2 排出規制強化によるハイブリッド電気自動車(HEV)市場の拡大が背景にあると考えら
れる(図表8)。EU では日米に比べて HEV の普及が遅れているが、今後も普及が進むとすれば
HEV 市場で競争力を持つ日本メーカーの販売・輸出に追い風となるだろう。


(3)アジア向け輸出
アジア向け実質輸出は7月に前年比プラスに転じたが、政局の混乱が続くタイ(前年比▲
9.8%)や6月に異常気象があったインド(同▲9.1%)への輸出価額は大きく減少している。品目別
に見たアジア向け輸出の特徴として、5 月と 6 月はその他の部分が大きくマイナスに寄与していた
(図表9)。その他の中の品目としては、鉱物性燃料のマイナス寄与度が大きく、7月にも ASEAN
向け輸出価額に対して▲0.8%ポイントマイナスに寄与している。
図表9 アジア向け実質輸出内訳
図表7 EU 向け実質輸出内訳 図表8 HEV 登録台数と登録台数の伸び率(2013 年)
図表 10 石油製品輸出と生産能力指数
-2
0
2
4
6
8
10
12
14
16
1 2 3 4 5 6 7
その他
資本財・部品
情報関連
消費財
自動車関連
中間財
総額
(前年比、%)
(資料)財務省「貿易統計」、内閣府「企業物価指数」
2014
-6
-4
-2
0
2
4
6
8
10
1 2 3 4 5 6 7
その他
資本財・部品
情報関連
消費財
自動車関連
中間財
総額
(資料)財務省「貿易統計」、内閣府「企業物価指数」
(前年比、%)
2014
75
80
85
90
95
100
0
50
100
150
200
250
300
350
1 2 3 4 5 6 7 8 9101112 1 2 3 4 5 6
ガソリン
重油
軽油
灯油
ジェット燃料
生産能力指
数(右軸)
(万KL)
(資料)資源エネルギー庁
2013 2014
(2010年=100)
-15
0
15
30
45
60
75
90
105
-5
0
5
10
15
20
25
30
35
EU 米国 日本
伸び率 登録台数(右軸)
(前年比、%) (万台)
(注)EUはドイツ、英国、フランス、オランダの合計。
日本はトヨタ、ホンダの合計。
(資料)各国統計、各社HPより作成
15三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 地域別に見る日本輸出の増減要因
そこで、石油製品輸出量の増減を見ると、足許では軽油輸出の減少が大きい(前頁図表10)。
軽油はアジアにおける需要増に対応して近年輸出が増加していた品目であり、特に2013年には
円安の進展等を背景に輸出が大きく増加していた。しかし、「エネルギー供給構造高度化法」
2に
対応するために、国内の石油元売り各社が今年3月末までに製油所の精製能力を約1割削減した。
そのため、国内の需給が引き締まり、アジアを中心とする海外への輸出が減少したと考えられる。
生産能力の削減が輸出減少に影響しているとすると、2015年3月までの石油製品輸出は前年比
マイナスになる可能性が高い。
2.米国の景気回復が輸出に与える影響
上述のように日本から米国への直接の輸出は増えていないが、米国の輸入自体は増加基調に
ある(図表 11)。米国の輸入を地域別に見ると、増加が大きいのは中国と EU である。特に中国から
の輸入は、2013 年 5 月以降、寒波の影響で輸入が落ち込んだ 2014 年 2 月を除いて一貫して増
加している。中国の米国向けの輸出が増えているのであれば、日本の中国向けの中間財等の輸
出が誘発されると考えられる。そこで、日本の実質輸出を見ると、中国向けや EU 向けは底堅く推
移しているため(前掲図表1)、米国の景気回復が一部貢献していると思われる。ASEAN も米国向
け輸出を増やしているが、米国向け輸出におけるシェアが小さいため、日本から ASEAN への輸出
を誘発する効果は小さい。












日本の中国向け輸出の品目別内訳を見ても、消費財は不安定に増減する一方で、中間財は
底堅く推移していることから、中国の内需が不安定な中で外需が下支えしている構図が窺える(次
頁図表 12)。但し、米国の景気回復による日本の中国向け輸出への誘発効果は、米国の景気が
加速する分大きくなるとは言えない。日本の中国への中間財輸出のシェアは低下を続けており、
中国が中間財を国内で調達する向きもあるため、輸出の誘発効果には低下圧力がかかっている
(次頁図表 13)。
2 電気やガス、石油事業者といったエネルギー供給事業者に対して、非化石エネルギーの利用と、化石エ
ネルギー原料の有効利用を促進するための法律。
図表 11 米国の輸入内訳
-8.0
-6.0
-4.0
-2.0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6
その他
日本
韓国+台湾
ASEAN
EU
中国
合計
(前年比、%)
(資料)米国商務省
2013 2014
16三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 地域別に見る日本輸出の増減要因













3.まとめ〜この先の見通し
一概に輸出の伸び悩みと言っても、輸出する地域によって変動の仕方や要因は異なっている。
足許の日本の輸出の減速は、生産拠点の移管による米国向け自動車輸出の減少と、製油所閉
鎖によるアジア向け石油製品輸出の減少の影響が大きい。
この先の輸出は、7月に実質輸出が前年比プラスに転じたように、米国の景気回復によって基
調としては緩やかに増加すると思われる。日本の米国向け輸出は自動車関連を除くと増加基調で
あり、中国や EU の米国向け輸出の増加によって輸出の誘発効果も生じる。但し、2014 年に入っ
てからの国内の生産能力低下の影響は大きく、今年中の輸出は前年比で大幅に増加することは
ないだろう。
(経済調査チーム 登地 孝行:Toji_Takayuki@smtb.jp)
※本資料は作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を
目的としたものではありません。
図表 12 中国向け実質輸出内訳 図表 13 中国向け中間財輸出の推移
-25
-20
-15
-10
-5
0
5
10
15
20
25
1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7
その他
資本財・部品
情報関連
消費財
自動車関連
中間財
総額
(前年比、%)
(資料)財務省「貿易統計」、内閣府「企業物価指数」
2013 2014
0
5
10
15
20
25
0
2,000
4,000
6,000
8,000
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
日本
世界(日本除く)
日本のシェア(右軸)
(億ドル) (%)
(資料)経済産業研究所「RIETI-TID2012」
(年)
17三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 相続で多発する家計資産の地域間移動
相続で多発する家計資産の地域間移動
〜加速する大都市圏への資産集中〜

<要旨>
日本では今後、相続の発生が急ピッチで増加していく。「地方に住む親と大都市圏に住
む子供」という組み合わせが多いため、相続の発生が増えれば、家計資産の地方から大
都市圏への移動が加速する。試算では、相続に伴い家計金融資産の 5 割以上が首都圏
と近畿圏に集中する見込みであり、金融機関の店舗戦略、事業展開にも影響を与えるこ
とになりそうだ。
1. 大相続時代の到来で家計資産の地域間移動が多発
日本の高齢化・人口減少も本格化しつつあり、後期高齢者(75 歳以上)人口ならびに死亡数の
急増局面を迎えている。
年間死亡数は、現在の 130 万人から 2030 年前後には 160 万人程度まで膨らみ、その後も数年
間は少しずつ増え続ける(図表 1)。これに伴い、相続の発生も急ピッチで増加し、しばらくは高水
準で推移すると見込まれる。大相続時代の到来である。
相続市場の規模は、「資産保有者の死亡」という不確定要素が絡んでいるため予測しづらいが、
1 世帯当たりの金融資産残高や世帯主年齢別・家族類型別世帯数などから試算すると、今後 20
〜25 年の間に相続されることになるであろう家計金融資産の額はおよそ 650 兆円と見込まれる。
図表1 高齢者人口と死亡数の推移(予測)
(資料)国立社会保障人口問題研究所「日本の将来推計人口」 より三井住友信託銀行調査部作成。
100
120
140
160
180
200
0
500
1000
1500
2000
2500
2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040
(万人) (万人)
(年)
死亡数(右軸)
65〜74歳人口
75歳以上人口
18三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 相続で多発する家計資産の地域間移動
さて、相続が発生すると、家計が保有する資産は親世代から子世代へと引き継がれるが1、親子
が異なる地域に居住する場合には、家計資産は世代間のみならず地域間でも移動することにな
る。
日本では、高度成長期の集団就職以来、就業機会の地域格差などを背景とした地方から三大
都市圏への人口流入が続いており、これから相続人となる人たちのかなりの部分が、こうした大都
市圏に流入してきた子世代によって占められる。
例えば、1960 年代後半の 5 年間には 586 万人が、70 年代前半の 5 年間には 561 万人が地方
から大都市圏へと転入してきた。その後人数は徐々に減るが、80 年代前半でも 389 万人が転入し
ている(図表 2)。
現在 40 代後半から 60 代後半となった彼ら約 2,000 万人が、「この先、地方に住む親の資産を
大都市圏で相続する人」の母集団と言える
2。2,000 万人は当初の転入者数合計なので、ここから
死亡者や転出者、あるいは既に相続を受けた者などを除外する必要があるが、それでも相当な人
数であることは間違いない。
相続の発生が増加していくのに伴い、家計資産の地域間移動―とりわけ地方から大都市圏へ
の移動―が大量発生することになろう。
図表 2 非大都市圏から大都市圏への転入者数
(注 1)現在の年齢は転入時点の平均年齢を 18 歳として計算。
(注 2)大都市圏は、東京圏=埼玉、千葉、東京、神奈川、名古屋圏=岐阜、愛知、三重、
大阪圏=京都、大阪、兵庫、奈良。非大都市圏はそれ以外。
(資料)国立社会保障人口問題研究所「人口統計資料集」より三井住友信託銀行調査部作成。
1 一次相続で配偶者が相続人となった場合でも、いずれ二次相続で子世代に資産が引き継がれると考え
る。
2 2010 年の被相続人の死亡時年齢をみると「80 歳以上」が 65.6%を占めていることから(財務省調べ)、当
面の相続人の中心は 50 代後半以上と想定される。
586 561
419 389
0
100
200
300
400
500
600
700
1960年代後半 1970年代前半 1970年代後半 1980年代前半
(万人)
(転入時期)
現在48歳
〜52歳
現在53歳
〜57歳
現在63歳
〜67歳
現在58歳
〜62歳
19三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 相続で多発する家計資産の地域間移動
2. 相続で家計資産の 1/4 が流出する県も
今後 20〜25 年程度の間に発生が見込まれる相続について、「相続によって地域外に流出する
家計資産の比率 3
」を算出したところ、47 都道府県中 30 県で 2 割を超えた(図表 3 では資産流出
率 25%以上の と同 20%以上 25%未満の )。試算には、都道府県別の親子同居
世帯比率 及び 別居世帯における別居地域内訳データを用いている。
中でも資産流出率が高いのは、東北地方の太平洋側や北関東、四国にある 7 県で、親が死亡
して相続が発生すると、家計資産の 25%以上が地域外に流出してしまう可能性がある(図表 3
の )。東北と北関東の各県では、親子が同居する世帯の比率はさほど低くないものの別居
の子が他の地域(主として首都圏)に出て行っているケースが多いため、四国の各県では、親子の
同居率が低いうえ別居の子が他地域(東京、大阪、中国地方などに分散)に出て行くケースも相
対的に多いためである。
図 表 3 相 続 発 生 時 の家 計 資 産 流 出 率 ランクマップ
3 別居地域内訳の統計が県別ではなく地域別データになっているため、「県外流出」ではなく「地域外流
出」。地域区分は国立社会保障人口問題研究所「人口移動調査」に基づいたもので、図表 4 に記載。
資産流出率25%以上
資産流出率20%以上25%未満
資産流出率15%以上20%未満
資産流出率10%以上15%未満
資産流出率10%未満
(資料)総務省「国勢調査」、国立社会保障人口問題研究所「人口移動調査」より、
三井住友信託銀行調査部作成。
20三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 相続で多発する家計資産の地域間移動
逆に、相続発生時の家計資産の域外流出が圧倒的に少ないのは首都圏の 4都県である(前頁
図表 3 の )。親子同居世帯比率は低いが、別居していても親子ともに首都圏内に居住して
いるケースが多いことなどがその理由で、流出率は 8%前後に留まる。
首都圏 4 都県に続き相続による資産流出が少ないのは、北海道及び近畿圏、中京圏内の 6 府
県であり、流出率は 10〜15%となっている(図表 3 の )。
近年、人口減少や地域経済の停滞などを受け、地域金融機関の再編が現実味を帯びているが、
少なくとも「相続による預金流出懸念」という観点から見れば、同じ地域金融機関でも基盤を置くエ
リアによって状況には温度差がありそうだ。
相対的に危機感が高いのは東北、北関東、四国の各金融機関、低いのは三大都市圏や北海
道を拠点とする金融機関と言えるのではないか。
3. 群を抜く首都圏の資産吸収力
続いて、相続の発生に伴いどの地域からどの地域へ、どれぐらいの家計資産が移動するのかを
考えた。ここでは、家計資産の中でも、相続で確実に移動し、かつ移動が把握しやすい「家計金
融資産」について、金額ベースで試算した。結果が図表 4 である。
北海道を例にとると、道内の家計が保有する金融資産総額は 26.9 兆円であり、相続が発生す
ると、このうち 23.5 兆円は北海道内に留まるが、0.4 兆円は東北地域に、0.3 兆円は北関東地域に、
2.1 兆円は東京圏に流出する。域外に流出する家計金融資産は合計 3.4 兆円である。
逆に、相続の発生により域外から北海道内に流入してくる家計金融資産は 2.0 兆円である。北
海道の家計金融資産は、今後 20〜25 年の間に発生する相続を通じ 1.4 兆円の出超となる。
図表 4 相続発生に伴う家計金融資産の地域間移動額
(資料)総務省「国勢調査」、同「全国消費実態調査」、国立社会保障人口問題研究所「人口移動調査」より三井住友信託銀行調査部試算。
(兆円)
北海道 東北 北関東 東京圏
中部・
北陸
中京圏 大阪圏
京阪
周辺
中国 四国
九州・
沖縄
外国
地域外
合計
北海道 26.9 23.5 0.4 0.3 2.1 0.1 0.0 0.5 0.1 0.0 0.0 0.0 0.1 3.4
東北
青森、岩手、宮城、秋田、
山形、福島
38.4 0.6 28.4 0.1 7.1 0.8 0.5 0.4 0.1 0.0 0.0 0.0 0.4 10.0
北関東 茨城、栃木、群馬 38.7 0.1 0.5 29.0 7.7 0.3 0.3 0.1 0.1 0.1 0.0 0.4 0.3 9.7
東京圏 埼玉、千葉、東京、神奈川 255.4 0.7 1.9 3.1 234.6 3.7 1.5 3.0 0.3 0.7 0.6 2.7 2.5 20.8
中部・
北陸
新潟、富山、石川、福井、
山梨、長野、静岡
70.8 0.3 0.6 0.8 9.9 54.5 1.9 1.4 0.1 0.2 0.1 0.2 0.6 16.3
中京圏 岐阜、愛知、三重 76.5 0.1 0.1 0.2 4.9 1.1 66.3 2.0 0.1 0.1 0.0 0.6 1.0 10.2
大阪圏 京都、大阪、兵庫 102.1 0.0 0.3 0.0 7.3 0.9 0.9 88.6 2.0 0.9 0.1 0.3 0.9 13.6
京阪
周辺
滋賀、奈良、和歌山 24.0 0.0 0.0 0.1 0.8 0.4 0.2 3.0 18.7 0.1 0.2 0.5 0.1 5.3
中国
鳥取、島根、岡山、広島、
山口
47.5 0.0 0.2 0.2 3.8 0.5 0.3 3.3 0.3 37.5 0.5 0.8 0.1 10.0
四国 徳島、香川、愛媛、高知 23.9 0.0 0.0 0.0 1.7 0.4 0.6 1.7 0.3 0.8 18.0 0.3 0.1 5.9
九州・
沖縄
福岡、佐賀、長崎、熊本、
大分、宮崎、鹿児島、沖縄
61.8 0.1 0.3 0.3 6.1 0.4 1.4 2.4 0.2 0.8 0.0 49.5 0.3 12.3
地域外合計 - 2.0 4.4 5.2 51.4 8.6 7.6 17.7 3.6 3.8 1.5 5.8 6.4 117.6
家計保有
金融資産
総額
資産移動先





21三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 相続で多発する家計資産の地域間移動
全国 11 の地域の金融資産の出入りを比べると、他地域からの資産流入額が最大かつ突出して
いるのは首都圏(東京圏)であり、相続を通じて合計 51.4 兆円の家計金融資産を他地域から吸収
する。京阪周辺を除く全地域にとっての「最大の資産移動先」となっており、特に、東北や北関東、
中部・北陸、大阪圏からは 7 兆円〜10 兆円という大量の金融資産が流入する見込みである。
首都圏からは、相続を通じた資産の流出も多く、中部・北陸地方や北関東を主要流出先として
総額 20.8 兆円が出て行くことになるが、前述のとおり流入額が 51.4 兆円と極めて大きいため、相
続による家計金融資産の移動はトータルでは 30.6 兆円の大幅入超となる。言い換えれば、首都
圏には、相続発生に伴う 30 兆円の家計金融資産増加ポテンシャルがあるということである。
他方、北関東では、相続を通じた資産の流入が 5.2 兆円、流出が 9.7 兆円、トータルでは 4.5
兆円の出超が見込まれる。同じ関東エリアでも、北部と南部では、相続発生に伴う家計金融資産
の増減について明暗が分かれそうだ。
資産の流出入ともに 2 番目に多いのは大阪圏だが、金額的には流入が 17.7 兆円、流出が 13.6
兆円と首都圏と比べかなり小粒である。資産の出所、すなわち親の居住地は、中国地方や京阪周
辺地域がメインで、流出先は京阪周辺地域が中心である。
相続を通じた家計金融資産の移動が流入超過となるのは、首都圏(30.6 兆円)と大阪圏(4.1 兆
円)のみである。中京圏が 2.6 兆円の出超となっているのはやや意外だが、これは、親子同居世帯
比率は東京や大阪より高いものの、親子が別居している場合に子供が中京圏以外に居住してい
るケースが多く、相続発生時の資産の域外流出額が 10.2 兆円と予想以上に大きいことによる。


4. 首都圏と近畿圏に家計金融資産の 5 割以上が集中
日本全体では、相続に伴う家計金融資産の地域間移動は総額 117.6 兆円(前頁図表 4 の右
下)に達する。人の出入りを抜きにしても、120 兆円近くの家計金融資産が地域をまたいで行き交
うわけであり、相続は家計金融資産の地域分布に変化を生じさせる大きな要因になると言えよう。
図表 4 に示したような流出入の結果、首都圏の家計金融資産残高は 255 兆円から 286 兆円へ
と 1 割強増加、大阪圏でも 102 兆円から 106 兆円へと 4%程度増加する(次頁図表 5 の@)。
一方、この 2 つのエリア以外では、相続の発生で家計金融資産残高は減少する。東北や四国
では15〜20%の大幅減少(図表5 のA)、北関東、中部・北陸、中国、九州・沖縄でも 10%強の減
少が見込まれる(図表 5 のB)。
現在と相続発生後の家計金融資産の地域分布を、首都圏・近畿圏・中京圏の三大都市圏4 及
び その他の地域というくくりでみると、首都圏の比率が 33.5%から 37.3%へと大きく上昇、近畿圏
4 首都圏=東京、神奈川、千葉、埼玉、近畿圏=大阪、京都、兵庫、奈良(図表 4 の「大阪圏」+奈良)、中
京圏=愛知、静岡、岐阜、三重(図表 4 の「中京圏」+静岡)。
22三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 相続で多発する家計資産の地域間移動
比率がわずかに上昇、中京圏及びその他地域の比率が減少した形になるとみられる(図表 6)。
現在は家計金融資産の 3 割強が首都圏に集中しているが、相続発生に伴い資産が地域間移
動した後には、この比率が 4 割に近づき、近畿圏も合わせると、日本の家計金融資産の 5 割以上
を保有することになる。
図表 5 地域別にみた相続発生に伴う家計金融資産残高の変化

(注)地域区分は図表 4 に同じ。
(資料)総務省「国勢調査」、同「全国消費実態調査」、国立社会保障人口問題研究所「人口移動調査」
より三井住友信託銀行調査部試算。
図表 6 相続発生に伴う家計金融資産の地域別分布変化
(注)首都圏=東京、神奈川、千葉、埼玉、近畿圏=大阪、京都、兵庫、奈良、中京圏=愛知、
静岡、岐阜、三重。
地域区分が図表 4、5 と異なるため、一定の前提を置いて若干の数値補正を行っている。
(資料)総務省「国勢調査」、同「全国消費実態調査」、国立社会保障人口問題研究所「人口移動調査」
より三井住友信託銀行調査部試算。
37.3
33.5
14.8
14.6
11.6
13.0
36.2
38.9
0 20 40 60 80 100
相続発生後
現 在
(%)
首都圏
近畿圏
中京圏
その他
52.1%
48.1%
現在 相続発生後 変化率
(兆円) (兆円) (%)
北海道 26.9 25.5 ▲ 5.2
東北 38.4 32.8 ▲ 14.8 A
北関東 38.7 34.2 ▲ 11.7 B
東京圏 255.4 286.0 12.0 @
中部・北陸 70.8 63.1 ▲ 10.9 B
中京圏 76.5 73.9 ▲ 3.4
大阪圏 102.1 106.3 4.1 @
京阪周辺 24.0 22.2 ▲ 7.2
中国 47.5 41.3 ▲ 13.1 B
四国 23.9 19.5 ▲ 18.6 A
九州・沖縄 61.8 55.3 ▲ 10.5 B
23三井住友信託銀行 調査月報 2014 年 9 月号 経済の動き 〜 相続で多発する家計資産の地域間移動
5. 「世代をつなぐ」サービスが期待される金融機関

以上みてきたように、今後日本において相続−特に隔地間相続−の発生が増加すること、
これにより大都市圏への家計金融資産の集中が進むことは明白である。
家計資産の大量流出が見込まれる地方の地域金融機関の中には、存続をかけた対応を迫ら
れるところも出てきそうだ。また、都市圏の地域金融機関やメガバンク等の全国型金融機関にとっ
ても、店舗配置や事業施策を考えるうえで無視できない要素となろう。
相続人の立場に立って考えると、円滑な隔地間相続をサポートする仕組みづくりも今後の
金融機関の大きな課題ではないか。
相続には様々な問題がつきまとい、スムーズに行くケースばかりではない。「地域をまたいだ」相
続ではなおさらのことであり、「隔地間相続手続きフロー」の事前整備などよる相続顧客の負担軽
減が求められる。各金融機関は相続資産の獲得という点においては競合関係にあるが、地域を越
えた金融機関どうしの連携も、場合によっては必要かもしれない。
連携に関しては、前掲図表 4 の個々の地域間の金融資産移動額を参考にすれば、首都圏の
金融機関と東北、北関東、中部北陸、近畿圏、九州の金融機関、近畿圏の金融機関と中国地方
の金融機関といった組み合わせにニーズがありそうだ。
相続発生前の段階においても、世代間をつなぐ商品・サービスの積極的な提供が期待される。
相続税の課税強化を来年1月に控えていることもあり、住宅取得資金贈与や教育資金贈与信託と
いった生前の世代間資産移転ツールや遺言信託等に対する顧客の関心は従来以上に高まって
いる。
こうした既存の商品・サービス以外に、例えば、大都市圏に住む子供が地方に住む親の安否を
気遣うケースが少なくないことに対応し、子世代を顧客とする大都市圏金融機関が資産運用商
品・ノウハウを提供するかわりに、親世代を顧客とする地方の地域金融機関が見守りサービスを引
き受けるといった連携も可能かもしれない。
店舗立地などのハード面ももちろん重要だが、このような顧客の利便性とニーズを第一に考えた
世代間をつなぐサービスの提供や他社との連携努力こそが、「顧客をひきつける」「顧客から選ば
れる」金融機関づくりにつながり、結果として、人口減少・大都市圏への資金流出という逆風の下
で地域金融機関に存続への道を開くのではないか。
(経済調査チーム 青木 美香:Aoki_Mika@smtb.jp)
※本資料は作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を
目的としたものではありません。
24

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