02. 2014年8月18日 23:47:04
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コラム:世界的金利低下が示唆する円高シフト=佐々木融氏 2014年 08月 18日 19:04 JST 佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 債券為替調査部長[東京 18日] - 先週末15日の欧米市場は長期金利低下に拍車がかかり、ドイツ、フランス、スペインの10年国債利回りは順に0.95%台、1.34%台、2.39%台まで低下し、いずれも史上最低を記録した。 年初からはそれぞれ97ベーシスポイント(bp)、121bp、171bpも低下している。ちなみに、スペイン国債の格付けはトリプルBだが、トリプルAの米国債(ただし、S&PはダブルA)利回りとの差は5bp程度しかない。 ユーロ圏以外でも、スウェーデン、英国、カナダ、ニュージーランド、米国など多くの国で10年国債利回りは約1―2年ぶりの水準まで低下している。こちらは年初からの低下幅は約60bpから100bp程度となっている。 日本でもむろん長期金利は低下し、18日には10年国債利回りは2013年4月以来の0.5%割れとなった。しかし、年初来からの低下幅はわずか24bpである。日本は長期金利の水準がもともと低いから低下余地が小さい。 つまり、世界的に長期金利が低下すると、名目長期金利の低下余地が限定的となっている日本と他国との名目金利差は縮小する。したがって、名目金利差の観点から非常に単純にみれば、世界の長期金利低下は円高要因となりやすい。 <名目長期金利低下の深層> もう少し掘り下げた分析をしてみよう。そもそも、なぜ名目長期金利は世界で低下傾向にあるのだろうか。 名目長期金利は、「(潜在成長率などによって規定される)実質金利」「期待インフレ率」「リスクプレミアム」によって決まるという考え方が一般的である。このうち「リスクプレミアム」については、実際に計測することが困難ということもあり、本稿では一定と仮定する。そうなると、残りは「実質金利」と「期待インフレ率」ということになる。 名目長期金利低下の主因が「期待インフレ率」の低下であるならば、名目長期金利から「期待インフレ率」を引いた「実質金利」は一定となっているはずである。潜在成長率が一定の下で、何らかの理由により期待インフレ率が低下すれば、名目金利は低下する。実際、それが原因なのだろうか。 長期の傾向をみる際、期待インフレ率はデータの制約がある。したがって、代わりに実際のインフレ率(消費者物価指数の前年比)を名目10年国債利回りから引いた値で、日本、米国、ドイツ、英国の4カ国について、実質金利の動きを20―30年間という長期スパンで眺めてみると、各国とも実質金利は低下傾向にあることが分かる。 例えば、米国の実質金利を3年間の平均値でみると、1980年代半ばは7%台が中心だったが、80年代後半には4―5%台まで低下、90年代は3%台を中心とした動きが比較的長く続き、2000年代に入ると2%台、さらに05年以降には1%台まで低下し、12年頃から1%台を下回っている。 つまり、各国の名目長期金利が長期的に水準を切り下げてきたことの背景には、潜在成長率の低下に伴い実質金利が低下していることがあると言えそうである。 <異なる日本と米独英のサイクル> もっとも、実質金利の長期的な低下基調は同じでも、ここ数年間の変動サイクルは日本だけが米独英と比べて異なっている。日本の実質金利が過去5年程度、基本的に低下傾向にある一方で、米独英の実質金利は12―13年に上昇した後、14年に入って反落に転じたものの、過去3年間の平均と比べると、依然として平均より高い水準にある。 こうしたサイクルの違いの原因は、ある程度明確である。日本は10年頃からインフレ率のマイナス幅が縮小し始め、13年にはアベノミクス、日銀による異次元緩和もあって上昇が加速した。この結果、実質金利はこれまでの約5年間で実に7%ポイントも低下した。 一方、米独英は12年初め頃からインフレ率が鈍化し始めた一方、名目金利は13年後半に向けて上昇してしまったため、実質金利が比較的大きく上昇した。そして、その上昇した実質金利を、今年に入って名目金利の低下によって調整しているようにみえる。 <円高圧力を招く実質金利の平均回帰> 実質金利が過去の平均と比べて大幅に低くなっている日本と、平均に比べてやや高めな米独英で、今後実質金利が平均回帰的な動きをみせるとしたら、日本の実質金利は上昇、米独英の実質金利は低下することになる。為替へのインプリケーションは当然、米ドル、ユーロ、英ポンドに対して円高方向となる。 実際、日本も含め、過去のパターンをみると、各国とも実質金利が低下する時は比較的急速で、その後の反発も急であり、それからしばらくは落ち着いた動きが続くというパターンを繰り返している。 もし、こうした過去のパターンが繰り返されるならば、日本の場合は今後、実質金利が急速に反発する局面がやってくることになる。実質金利が急反発するのは、日銀の2%ターゲット達成が困難になるなどしてインフレ期待が急低下するか、何らかの理由により名目金利が急反発するケースが考えられる。 一方で、米独英は実質金利の低下が加速する可能性があるとも考えられる。実質金利が急低下するのは、インフレ期待の急速な高まりか、名目金利のさらなる低下によってだろう。 欧米諸国における最近の名目長期金利の急低下が昨年までの実質金利上昇の調整であるなら、名目長期金利の低下はまだ続く可能性がある。そうだとすると、名目、実質のいずれでみても円高方向への圧力となりそうである。 *佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の債券為替調査部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。 フランスが財政目標未達へ、信用力にネガティブ=ムーディーズ 2014年 08月 18日 20:00 JST [18日 ロイター] - 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、フランス政府が2014年の財政赤字目標を達成できないと予想、同国とユーロ圏の信用力にとってネガティブだとの認識を示した。 ムーディーズは、フランスの財政赤字について、ユーロ圏を取り巻く問題が続いていることを示していると指摘。硬直な製品市場や企業に負担を強いる規制も、フランスの成長見通しを圧迫する要因になっているとした。 6月ユーロ圏貿易収支は168億ユーロの黒字、予想上回る 2014年 08月 18日 20:06 JST [ブリュッセル 18日 ロイター] - 欧州連合(EU)統計局が発表した6月のユーロ圏貿易収支は、季節調整前で168億ユーロの黒字となり、黒字額はロイターの調査による市場予想の150億ユーロを上回った。 前年同月は157億ユーロの黒字だった。 輸出(季節調整前)は前年比3%増加し、輸入は2%増加した。 EUがウクライナ情勢をめぐり7月に決定した対ロシア制裁は8月に発効した。ただ、制裁が発動する以前にウクライナをめぐる緊張はユーロ圏経済に悪影響を及ぼし始めた。 ユーロ圏にとって4番目、EUにとって3番目の貿易相手国のロシアへの輸出は、1─5月にユーロ圏で前年比14%、EUで12%、それぞれ減少した。 ユーロ圏の5大経済大国であるドイツ、フランス、イタリア、スペインとオランダのうち、1─5月に輸出が前年比で伸びたのはドイツとイタリアのみだった。
コラム:米国の自社株買いブームが失速、株価に試練も 2014年 08月 15日 17:05 JST 8月14日、過去数年間に重要な株価下支えの源だった企業の自社株買い入れのペースが減速しており、減速の理由と、それが今後どんな意味を持ってくるのかが問われている。ソウルで昨年1月撮影(2014年 ロイター/Lee Jae-Won) James Saft [14日 ロイター] - 過去数年間に重要な株価下支えの源だった企業の自社株買い入れのペースが減速しており、減速の理由と、それが今後どんな意味を持ってくるのかが問われている。 ソシエテ・ジェネラルのクォンツアナリストが700社を対象に調べたところ、第2・四半期の自社株買いの金額は前期比20%減少し、前年同期も下回った。さらに範囲を広げてS&Pダウ・ジョーンズ指数の構成企業でみると、第2・四半期の自社株買いは第1・四半期より30%も少ない。 第2・四半期のS&P500が前年同期に比べて2割以上も上昇したことを考えると、われわれは明らかに自社株買いの効果が弱まりつつあるのを実感している。株式のバリュエーションに対するある種の居心地良い想定が試されている可能性が高い。 ソシエテ・ジェネラルのアンドルー・ラプソーン氏は「理由は何であれ、米国株の最大の買い手が不在の状態になれば、株価に深刻な影響が及ぶのはほぼ間違いない」と指摘する。 米国企業は3月末までの1年間に5000億ドル以上の自社株買いを実施。大幅な売上高の伸びがない中で、1株当たり利益は顕著に増えた。企業が自社株買いを進める一方で、買い入れた株式を従業員に配分することが多いという事実も相まって、自社株買いに対する批判は強まった。ソシエテ・ジェネラルは、購入した自社株の約25%は、期限が到来した幹部のストック・オプション支給に用いられたと推計する。ただ、この数字はハイテク業界など一部の業界ではさらに高い比率となる。 アップル(AAPL.O: 株価, 企業情報, レポート)、IBMIBM.Mなどのハイテク企業は最も規模の大きい自社株買いを最も積極的に進めている例だが、自社株買い人気は業界全般に広まっており、多くの成熟企業も買い入れを行っている。 流通株式数を減らし、少なくとも業績面の数字を見かけ上は魅力的なものに高めたという2点から、これらの自社株買いが株価をサポートしたことに疑いの余地はない。 <自社株買いとQEの終了> もちろん、買い入れの大部分はフリーキャッシュフローによって賄われたものではない。自社株買いブームは社債発行ブームと時期が重なっており、企業は実質的に株式買い入れのためにレバレッジを活用したといえる。 米国内総生産(GDP)に占める企業の負債総額の割合は景気後退前の55%から現在は65%に上昇した。ただ、この割合はこのところやや低下しており、第2・四半期の企業による社債発行額(除く金融)の前期比伸び率は、第1・四半期の10%超からゼロ%近辺まで落ち込んだ。 可能性の1つとして考えられるのは、米連邦準備理事会(FRB)の緩和策縮小に対して遅れて反応が現れていることだ。FRBが国債や住宅ローン担保証券(MBS)を買い入れる際に、投資家が新たな資産を見つけて保有するよう仕向けることで、量的緩和策は理論上は機能する。多くの投資家は現金を保有し、高い利回りを求めているため、FRBが直接的に社債を購入しなくても、社債発行体にとって望ましい環境が生まれる。 しかし、企業は依然として社債発行が容易な環境だと感じる一方で、一部の社債では国債に対する上乗せ金利であるイールド・スプレッドが過去数カ月間拡大している。最上位格付け企業の社債のスプレッドは相変わらず良好だが、トリプルBの社債のスプレッドはこの1カ月間に10%拡大した。高利回りのジャンク債はさらに状況が悪化しており、投資家が求める上乗せ金利が15%上昇している。 絶対利回りの変化は小さいが、おそらく風向きの変化を示唆しているのだろう。 QEの縮小がこの秋に迫る中でこうしたトレンドは加速するかもしれない。企業の社債発行は減少し、投資家は社債保有の対価を要求するようになるだろう。 こうなれば、株式にとって油断のできない状況が生まれる。自社株買いのためにレバレッジを効かせる道が絶たれれば、企業は増益を維持するために実際に売上高を拡大しなければならなくなる。同時に社債市場がタイト化するなかで、投資家は企業の肥大化したバランスシートに対して一段のリスクプレミアムの上乗せを要求するだろう。 レバレッジはウイスキーに似ている。どんどん飲んでいる間は良い心地だが、飲み終わった後につらい症状が現れることが多い。 コラム:世界的金利低下が示唆する円高シフト=佐々木融氏 コラム:ジャクソンホールは無風か、低金利継続の論拠=岩下真理氏 コラム:ユーロ下落の「地政学的必然」=斉藤洋二氏 コラム:GPIF爆弾の衝撃、円安効果6円は絵空事か=植野大作氏 |