藤巻健史「先進技術だけで食べていくことはできない」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140818-00000002-sasahi-bus_all
週刊朝日 　2014年8月22日号

“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、日本の中小企業が世界と戦うためには政府が先導し円安を進める必要があるとこう語る。

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　ハワイに行ってきた。弟ユキオの病状が重くて、1月にキャンセルしたプライベートの仕事をこれ以上引き延ばすわけにはいかなかったからだ。ただこの半年間、めちゃくちゃに忙しかったので、ハワイでは仕事のペースは極力スローにし、ボケッとする時間も作り、神経を弛緩させるように努力した。そうしないと長生きできないと思ったからだ。

　ある日の夕方はハワイ島のマウナケア山頂付近にある国立天文台すばる望遠鏡の見学に出かけた。（参議院文教科学委員会に属していたとはいえプライベートですから公費の外遊ではありません。もちろんすべて私費です。あしからず）

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　帰国直後、マウナケア山のすばる望遠鏡のそばに新天文台の建設が正式に決まったというニュースが飛び込んできた。5カ国共同のプロジェクトなのだが、望遠鏡に用いる世界最大の主鏡（口径30メートル）は分割鏡を組み合わせて作る。その製作は日本が担当しているとのことだ。日本の鏡の研磨技術レベルの高さの証明でもあり、科学立国・日本の象徴だ。誇らしくもあり、うれしいニュースでもある。

　しかし、この日、NHKの朝のニュースで流された映像には、宇都宮の分割鏡製造工場で働いている人は数人しか映っていなかった。よく識者から「成熟国家の日本はこのような先進技術で食べていくべきだ」との発言を聞くが、先進技術のみでは1億2千万人を養ってはいけないだろう。やはり、新興国と競合する産業にも頑張ってもらわざるを得ない。

　この点には、同意される識者も多いらしく中小企業への応援歌がしばしば聞こえてくる。日本の昨年の貿易収支が8.8兆円と大きな赤字なのに対し、ドイツは黒字なのだが、7月12日付の日本経済新聞1面に掲載された記事「革新力」では、「（ドイツは）中小企業群が頑張っているから」と分析されている。記事中では、一橋大学の楠木建教授が「（だから日本も）大企業の踏ん張りと同様、競争力のある中小企業がいくつも必要」と述べていた。

　ただ、その環境づくりは政府の仕事だ。円安が不可欠である。一時、隆盛を極めた日本の半導体産業が見るも無残な姿になったのも円高のせいなのだ。

　ドイツの中小企業の最大商圏はヨーロッパだ。ドイツと同じ通貨（ユーロ）を多くの国が使用しているから、自国通貨高による競争力の低下はありえない。多少の値段差は技術力の高さで勝負できる。

　一方、多くの日本の中小企業はドルを中心とする外貨建ての輸出である。円が2倍と強くなれば輸入国にとって日本製品は2倍高い価格となる。技術力の差ではカバーしきれない。

　4月28日の決算委員会で、私は「私が大学を卒業した1974年と比べて、どこかの国の通貨に対して円が弱くなっているか？」と聞いた。財務省の答えでは、IMFの統計が取れる144カ国中、スイス・フランに対してのみだそうだ。日本は、この40年間、恐ろしい勢いで円を切り上げてきたのだ。輸入国にとっては日本製品のものすごい値上げだ。

　これでは世界との競争に勝てるわけがない。自国窮乏化政策だ。政治の無策！　その代表例である。

コメント
01. 2014年8月18日 09:50:14 : kFUL3rcfFY 先進技術だけで食っていくことができないといっても、 製造業も先進技術なしに魅力的な商品開発は出来ない。 じゃあ円安にして農業輸出にするかといっても、これまた LED野菜だの、ハウス野菜だの、「ハイテク農業」が幅を利かす。 一度進んでしまった時計はもう元に戻らない。 この負の輪廻というかドグマに陥ってる事に気付かないと、 気が付いても、円刷って日銀で引き受けて円安誘導するとか 簡単な話ではない。
02. 2014年8月18日 10:31:11 : qvmRKGzb4Y うちは鰻屋です。5年前1200円だった定食が今は3800円です。それでも店を閉め無いで 営業しています。ハイテクではありませんが食っていけます。 シリコンバレーにもホットドッグ屋が有ります。ハイテクでは無いがまだ潰れて無いで す。
03. 2014年8月18日 11:19:32 : oB1CBdTqbA >02 炭で焼いてんの？ 糞暑い中エアコンかけずに焼いてるんの？ 日本人とはくそ真面目だから手を抜かない。 そして技巧に走る。 先端技術が儲かるからではなくて 必然的にそうなる習性や方向性があって、今から日本から先端技術を止めて 枯れたローテクだけで食っていくのは、円高状態で食っていくことよりも 難しいことだろう。
04. 2014年8月18日 15:42:59 : bfiJIUelwU 無理やり中央銀行まで操縦して円レートを変動させなくてもよいだろう。円安のインフレでも、円高のデフレでもやることはコストダウン。自然の流れでコストダウンできるほうが幸せじゃないかな。
05. 2014年8月18日 16:11:46 : O1GIjctQSc >藤巻健史氏は、日本の中小企業が世界と戦うためには政府が先導し円安を進める必要 外貨資産や円売ポジションをたくさん持っている日本人なら、当然、その方が、都合が良いだろうなｗ
06. ピッコ 2014年8月18日 17:54:22 : ldyqn.PAmBFfI : Lw15p2w3sM ＞私は「私が大学を卒業した1974年と比べて、どこかの国の通貨に対して円が弱くなっているか？」と聞いた。財務省の答えでは、IMFの統計が取れる144カ国中、スイス・フランに対してのみだそうだ。日本は、この40年間、恐ろしい勢いで円を切り上げてきたのだ。輸入国にとっては日本製品のものすごい値上げだ。これでは世界との競争に勝てるわけがない。自国窮乏化政策だ。政治の無策！　その代表例である。 それで日本は実際に”窮乏化”したのか？　もちろん”否”である。　日本は巨額の対外資産を保有する世界有数の先進国となり、長寿国となった。　“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、カネにどん欲な多くの内外の金融業界の人間と同じように、黒田日銀による”異次元金融緩和バズーカ第二弾の打ち上げ”を舌なめずりしながら今か今かと待っているのだ。　そこで一儲けすれば、そのあと円安による原材料高騰で苦しむ日本の中小企業がどうなろうと知ったことではないのだ。
07. 2014年8月18日 19:10:53 : TGZjS8iB2r アベノミクスで円高是正は進んだものの今だに円は実質実効為替レートで世界一高い水準にあり、もう少し円高是正が進めば競争力はさらに回復することは自明で、それは衰退する日本国の寿命を伸ばすことに寄与することは確かだ。
08. 2014年8月18日 22:55:20 : FGyGJ1TwO2 為替レートで何とかしようなんて日本だけで出来ることではない、無理に円安誘導すれば日本の国富を棄損するようなやり方しかないだろう。 為替レートの不利を埋めるのは付加価値生産の増大しか無い、安売り競争では無く製品の付加価値増加で勝負するしかない、その点でガラパゴス携帯は良いモデルじゃないのか。
09. 2014年8月19日 14:11:16 : vOsv1MUTSM 珍しく藤巻健史がまともなことを言っている。どういう風の吹き回しだ。 コメント欄の円高シバキ上げ売国白川一派の残党が気持ち悪い。
10. 2014年8月23日 13:54:59 : JOgasdxfvw 為替は自由化して市場に任せればよいのです。 政府の規制は全廃して企業に自由気ままにさせればよいのです、政府官僚は無能で今や産業育成能力はないのだから。 結果不況になってもそれは我々の自業自得です。 実際には好況になるでしょう、政府には頼れない、自分のことは自分で守れとなれば糞力を発揮します、それが庶民というものです。 上から目線の評論家を追放しましょう。

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