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量的金融緩和政策は、国債管理政策の一環でしかなく、財政出動と違い総需要を増加させるわけでない。
景気動向が悪いからといって緩和拡大策を実施すれば、近時の日本経済において金融緩和政策が実体経済に働きかける力がないことを満天下に晒してしまう。
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成長率予測、4回連続下振れでも日銀緩和に直結せず?
編集委員 清水功哉
2014/8/15 6:00
4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率が、消費増税前の駆け込み需要の反動減で前期比年率マイナス6.8%となった。この結果、日銀は7月に1.0%へと下方修正したばかりの2014年度成長率見通しを、10月に再び下方修正せざるを得なくなったとの見方が広がっている。仮にそうなれば、今年に入ってから1、4、7、10月と3か月おきの見通し公表のたびに毎回下方修正することになる。4回連続の下振れで、1.5%だった予測値は1%を割り込む。となると気になるのが金融政策への影響だが、実は追加緩和に直結するとは限らないのだ。どういうことか。
日銀が10月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)公表時に成長率見通しの下方修正を余儀なくされるという見方の根拠はこのようなものだ。「4〜6月期のGDP統計を踏まえると、14年度の成長率を1%とする日銀見通しの達成には、残り3四半期の各期で前期比1%程度のプラス成長が必要になり、ハードルが高い」(六車治美・三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア・マーケットエコノミスト)
■13年10月段階の予測値との落差大きく
六車氏が挙げた条件は、7〜9月期に限ればクリアできる可能性がある。4〜6月の反動もあるだろうからだ。しかし、その後も同程度の勢いを維持するのは難しそう。実際14年度の成長率について、民間エコノミストの予測値は平均0.6%台。日銀は民間より強気なのでそこまで下げることはないにしても、13年10月段階の見通し(1.5%)との落差は大きくなりそう。いったい何が誤算だったのか。
「最大の誤算は、円安が進んだのに輸出が増えなかったこと」というのが日銀の説明だ。例えば、輸出数量の目安となる実質輸出は今年に入り4〜6月まで2期連続で前期比マイナスを記録した。
輸出が増えなかった理由として日銀が挙げる要素は、一時的要因、循環的要因、構造的要因の3つに分けられる。
一時的な要因の代表格は今年初めの米国の寒波の影響であり、循環的な要因は新興国などの経済のもたつきだ。構造的な要因と指摘されるものとしては、円高対応のための日本企業の海外生産拡大のほか、世界経済の回復パターンの変化がある。世界的に設備投資の回復の遅れが目立ち、日本が得意とする資本財の輸出の足を引っ張っているという。これらのうち、一時的、循環的な要因は遠からず解消するとしても、構造的な問題は解決に時間がかかる可能性がある。
■物価左右する内需は想定外の強さ
では「増えない輸出」による成長率の下振れが追加緩和に直結するかというと、必ずしもそうではないのだ。輸出(外需)が想定外の弱さを示しているのとは反対に、個人消費など内需は想定外の強さを見せてきたと日銀は受け止めているからだ。例えば、日本経済は13年7〜9月、10〜12月、14年1〜3月と3期続けて外需(純輸出)のGDP成長率に対する寄与度がマイナスになっているなかで景気回復を続けた。
そして、この内需の強さこそが、金融政策運営のカギをにぎる物価動向を左右する重要な要素だと日銀は考えている。黒田東彦総裁は8日の記者会見でこう語った。「(今の日本では)内需中心の景気回復が起きている。内需中心ということは、非製造業、サービス産業の需要が増える。非製造業は労働集約的な産業が多いので、労働需給はかなり逼迫してきている」
黒田総裁がいわんとしていることを単純化すれば、こういうことだろう。仮に外需が弱いことで成長率が想定より下がっても、労働集約的な非製造業やサービス業への需要(内需)が増えている限り、労働市場を中心とする需給逼迫が起きやすいので、物価への上昇圧力はあまり弱まらない――。
確かに、過去1年余り、「内需主導」の成長のもとで日本の物価は多くの民間エコノミストの予想を上回る上昇軌道に乗ってきた。13年4月の量的・質的緩和策(通称、異次元緩和)開始前にマイナスだった消費者物価指数変動率(生鮮食品の価格動向と消費増税の影響を除く)は、今やプラス1%台前半だ。
黒田総裁はこんなことも語った。「成長率は、想定よりも足元少し弱めになってきているが、今後の見通しについて、0.5%前後あるいはそれ以下といわれている現在の潜在成長率を下回る可能性は、あまりないと思う」。14年度の成長率見通しが0%台後半へと下方修正されても、それは潜在成長率を下回る水準ではない。とすれば物価に上げ圧力がかかり続けるはずであり、従来の物価シナリオは崩れないので、金融緩和の理由にならないではないか。黒田氏はそう言いたいのだろう。
いうまでもなく、日銀の金融政策は一定の成長率実現のために運営されているのではない。あくまで2%という物価上昇率目標の達成を目指した政策なのだから、成長率が下振れしても物価に悪影響が及ばない限り、追加緩和は必要にならないというわけである。
■より丁寧な説明を
日銀が成長率予測を下方修正しても、必ずしも追加緩和に直結しないというのは以上の理屈に基づくが、疑問もある。内需が引っ張る成長によって物価が上がりやすい状態が続いていくとしても、外需のもたつきが続き成長の足を引っ張るなら、需給ギャップ改善のペースになにがしかのマイナス効果が及び、物価にも影響を与えるのではないか。
「昨年4月に量的・質的金融緩和を導入した時から、(成長率見通しは下方修正しても)物価上昇率の見通しはほとんど変わっていないし、どちらかといえばむしろ上がっているかもしれない」(黒田総裁)。日銀は10月の見通し公表時にもこのスタンスを続け、「強気」の物価見通しを維持する可能性があるが、もしそうするなら、より丁寧な理由説明を求める声も出そうだ。
http://www.nikkei.com/markets/features/27.aspx?g=DGXLMSFK14H1O_14082014000000&n_cid=DSTPCS007
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