04. 2014年8月15日 23:20:53
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<Vol 314:年金は、将来も大丈夫なのか(2)>テーマの領域:政府の『年金の財政検証』を読み解く 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・ バックナンバーはHPで: http://www.cool-knowledge.com/ (過去の有料版も、抜粋し載せています) 著者への感想等 ⇒ yoshida@cool-knowledge.com 無料版の登録/解除: http://www.mag2.com/m/0000048497.html 有料版の登録/解除: http://www.mag2.com/m/P0000018.html 著者:Systems Research Ltd. Consultant 吉田繁治 43021部 おはようございます、吉田繁治です。『年金の財政検証を読み解 く』の2回目です。 年金について書く理由は3つです。 (1)まず、もらっている人以外は、金額もその概要も、ほどんど 知らないことです。公的年金の受給はすでに3867万人で、総額52兆 円、1人当たり平均では134万円(月額11万円)です。 65歳以上の世帯で、22万円です。5200万世帯の総所得(約280兆 円)の19%を占めるくらい、大ききくなっています。不肖、私も、 今回調べてやっと分かったのです。 1年に100万人分(1.1兆円)くらい、支給額が増え続けます。36兆 円の公的医療費と同じ額の増え方です。 (2)2番目に、公的年金の、将来の、支給可能な額については、ほ とんど論がないことです。年金は払えなくなる、65歳〜ではなく70 歳以上の支給になるとは言う。しかし、肝心な年金額への想定がな い。 (3)3番目は、今回の『年金の財政検証』とともに、政府は、「今 後の経済成長と、公的年金額を関係づける方針」を秘かに準備して いるのではないかということです。 現在は、新規国債(42兆円)を全部日銀が買い受け、政府に資金供 給しています。しかし、これは、いつまでもは続けられない。従っ て、財政支出を、減らさねばならない。 財政支出を減らすことは、最大の財政支出になった年金と医療費に 対する補助金の削減のことです。このためか、『年金の財政検証』 で、今後のGDPの成長率と、年金支給額を関係づけています。 本来は、マズメデイアが、『年金の財政検証』を論評せねばならな い。しかし、どこも一向に行わない。そこで、行ってみたのです。 お忘れになっていると思いますので、まず、前号で書いた基本的な ところを、振り返ります。わが国の、公的な年金制度は「3階建 て」と言われます。 (注)テーマは有料版の6月号で書いたものですが、内容は書き換 えています。本稿が分かりやすいと思いますので、有料版をご購読 の方も、ぜひ、お読みください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol 314:年金は、将来も大丈夫なのか(2)> 2014年8月15日 【本号の目次】 1. 3階建ての年金制度を知ろう 2.政府は、年金の支払いが将来とも可能か 3. 年齢3区分での将来人口 4.あまり知られていない年金世代の家計 5.年金の受給者数:これも知られていません 【次号の目次予定】 6.1人 5万5000円の国民年金しかない、自営業 7. GDPの8つのケースを想定した政府(とてもわかりにくい) 8.2026年まで、12年間の経済成長の想定(A〜Hの8段階) 9.物価上昇と、年金の運用利回りが、政府財政に生む矛盾 10.生活への対策は、金融資産での自助 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1. 3階建ての年金制度を知ろう ▼1階部分:全国民に共通な、基礎年金 一階は、20歳以上60歳まで加入義務がある、基礎年金部分です。自 営業の人の国民年金です。保険料は1ヶ月あたり1万5250円。 40年間、欠かさずかけたときの満額の支給は、65歳以降で、年間77 万2800円(1ヶ月6万4400円/1人)です。 現在の平均的な受給額は、これより1少ない5.4万円/月です。保険 金納付で、欠けた期間がある人も混じっているからです。 夫婦が国民年金だけのときは、双方が40年間掛けた満額なら2倍(1 54万5600円)です。掛けていない期間があると、その分が、減額さ れます。 ▼2階部分;厚生年金 この基礎年金に上乗せされる2階部分が、法人に勤務している人が 対象の厚生年金です。保険料は、標準月額報酬の17.12%です。個 人は8.56%を給料から天引きされ、会社も8.56%を払っています。 標準月額報酬は、給料がいくら高くても、月間62万円(30級)が上 限とされます。このとき、掛け金は10万6144円(個人+会社)です。 最高額の保険金を、生涯平均で納めた場合、厚生年金の支給額は30 万円(基礎年金部分を含む)くらいで、これが最高額です。サラ リーマンの場合、38歳の頃の報酬が、ほぼ、生涯の平均報酬になり ます。 厚生年金の1人での、平均的な受給額は、15万2000円くらいです(2 013年)。基礎年金(1人5.5万円平均)に、10万円くらい上乗せさ れているのが、2階部分の厚生年金です。 夫がサラリーマンで妻が専業主婦だった場合、妻にも自動的に、国 民年金(平均5.5万円)がついています。このため、ほぼ専業主婦 だった世帯が65歳以上になったとき受け取る、平均の年金額は、 [基礎年金5.5万円×2人+夫の厚生年金部分10万円≒21万円]です。 自営の人は、これはありません。ただし過去に厚生年金を掛けてい る期間があったときは、その期間分の厚生年金が付加されます。 ▼3階部分:公務員共済年金と企業年金 公務員は、定年後の再就職やアルバイトが難しいという理由で、支 給額は、同じ所得の厚生年金の、ほぼ20%増しが、共済年金として 支給されています。 実際の平均は、国家公務員共済年金が22万4000円、地方公務員共済 が23万2000円、私学共済が21万8000円くらいです。 民間企業で企業年金の制度があるところは、この分が厚生年金に上 乗せされます。 ■2.政府は、年金の支払いが将来とも可能か 問題は、以上の年金額の、将来の支給が、将来の予想GDPと、政府 の財政から見て、可能なのかということです。 ▼人々の思い 年金を受け取っていない世代(65歳以下)は、多くの人が、「国が 支払い続けるのはムリ」と言う人が多い。 あるとき、50代半ばの人と、年金の話になったとき「自分たちは、 現在の額は、絶対、受け取れないだろう」と言っていました。しか し、自分が、実際に受け取る年になると、平気で、年金はないとは 言えないでしょう。 人は10年以上くらい先のことから、イメージできなくなります。5 年先くらいまでが現実的で、10年先は霧の中、20年先のことになる と、見当がつかないというのが、当方の実感です。 もし金額が同じで受け取れるなら、それまでのインフレで、年金の 実質額、つまり商品購買力での金額はたぶん50%にはなっているだ ろうとも言います。なるほど、これが現実的な線かも知れません。 実質額=年金の名目額÷{(1+物価上昇率)×年数}です。 50代にとって、年金を受け取るのは、10年先です。 40代は20年、30代にとっては30年先です。 10年先までは、何とかGDPは予想できるかもしれません。 しかし、20年や30年先は、誰にとっても、見当がつかない。 見当がつかないことを、政府は、なぜか、約束しています。 【財政赤字】 政府財政は、毎年40〜45兆円(GDPの8〜8.5%)の赤字で、その分 の国債を増発し続け、今は日銀が、年70兆円も買っています。国債 の引き受けに限界が来て、金利が高騰し、財政は破産しているかも しれません。 【財政危機の南欧の事例は、2割カットだった】 2011年から国債が暴落し金利が上がる財政危機に陥り、国債発行額 を制限せざるを得なくなった南欧(ギリシア、スペイン、ポルトガ ル)では、政府にお金がないため、年金と医療費等が、20%くらい カットされています。南欧のようになるかもしれません。(注)確 率は高い。 40代、30代の人たちは、ほとんどの人が、「自分たちはもらえない だろう」と考えている感じです。30代前半の人からは(近親者です が・・・)、「自分たちが受け取れない年金を、なぜ、天引きされ て、払わなければならないのか?」と、抗議にめいた質問を受けま した。 ▼作ってしまった制度の問題 わが国の年金制度は「確定給付型」です。年金の掛け金と所得税を 払う現役世代が、65歳以上の年金を支えるという世代間の所得移転 です。(注)年金には、自分が掛けた分を受け取る「確定拠出型」 もあります。政府は、これを採用しなかったのです。 わが国の確定給給付型は、年金をもらう65歳以上の人口が少ないと き、うまく行きます。 しかし2010年以降の日本では、戦後ベビー・ブーマー、つまり1947 年から51年生まれの1000万人(5年間×200万人)が、つぎつぎに、 65歳を超えています。今年、2014年は、まさに、分岐点です。 (注)この意味から、本稿を書いています。 ■3. 年齢3区分での将来人口 将来の人口は、以下であり、人口の未来は、ほぼ確定しています。 年齢3区分でみます。
生産年齢 年金世代 15歳未満 15-64歳 65歳以上 総人口 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 2014年 1607万人 7780万人 3308万人 1億2695万人 (13%) (61%) (26%) 2020年 1457万人 7341万人 3612万人 1億2410万人 (12%) (59%) (29%) 2025年 1324万人 7085万人 3657万人 1億2066万人 (11%) (59%) (30%) 2030年 1204万人 6773万人 3685万人 1億1661万人 (10%) (58%) (32%) 2040年 1073万人 5787万人 3868万人 1億727万人 (10%) (54%) (36%) 2050年 939万人 5001万人 3768万人 9708万人 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 (国立人口問題研究の推計より作成↓) http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/h1_1.html
年金世代であり、医療費も急に増える65歳以上の人口は、2014年が 3308万(構成比26%)人です。生産年齢人口(15歳〜64歳)7780万 人の43%です。生産年齢人口の2.5人で、65歳以上の1人を支えてい ます。 東京オリンピックの2020年には、ほぼ現役世代2人が1名を支えるこ とになります。支える人は毎年減り、年金世代は3868万人(現役世 代の67%:2040年)に向かって増えます。 2040年には、現役世代の1.5人で年金世代1人を支える勘定になりま す。そのときは、総人口が1億人くらいに減っています。 2040年は、 20歳の人は46歳、 30歳の人が56歳、 40歳の人は66歳です。 39歳の人が、年金を受け取る65歳になっています。 まぁ、ムリだろう・・・というのがわかるのが、年齢3区分での将 来人口です。ところが、わが国の年金は20年先、30年先を政府が約 束し、年金支給額を決める確定給付型です。 ■4.あまり知られていない年金世代の家計 夫が65歳以上で無職(定年退職)、妻が60歳以上の世帯の平均収支 は、以下です(2011年:総務省:家計調査報告『家計収支』)。 ▼月額の収入 ・社会保険給付 20万7000円(夫と妻の年金の月額平均) ・その他収入 1万6000円 ・預金の取り崩し 4万3000円 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 合計収入 26万5000円 26万5000円の収入ですが、 ・年金分が20万7000円分で、 ・預金の取り崩しが4万3000円です。 ▼将来のために必要な預金額はいくらか 預金の取り崩し額は、年間で52万円です。 65歳のあとが25年なら、毎月4万3000円を崩すと、1290万円の預金 が必要です。退職金の平均額が、これに当たるでしょうか。 (1)月に10万円を崩して、32万円の家計なら・・・ 1ヶ月に、平均の4万3000円より多い10万円の預金を崩すなら、[10 万円×12ヶ月×25年間=3000万円]の預金が必要です。 (2)現役の時期並みの、月間40万円の支出を退職後も続けたい高 齢世帯は、1ヶ月20万円の預金取り崩しになります。 総額で[20万円×12ヶ月×25年=6000万円]の預金が必要です。 (注)リバース・モーゲージの制度を使い、持ち家を担保に、月間 15万円くらい借りるなら、[15万円×12ヶ月×25年=4500万円]の 住宅資産が必要になるでしょう。 リバース・モーゲージは、「逆住宅ローン」であり、受け取る金額 分の住宅を売ることになります。 【平均的な、年金世帯(夫婦2人)の支出】 ・食費 5万8000円 ・教養娯楽 2万7000円 ・交通通信 2万2000円 ・住居費 1万7000円 ・水道光熱費 1万9000円 ・保健医療 1万6000円 ・その他 7万6000円 ・非消費支出 3万円 (税と健康保険料) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 月額 26.5万円の総支出です。 以上が、現在65歳以上で完全退職した2人での、平均の生計です。 預金の取り崩しを除く収入は、現役時代の平均(40万円/月:38才 世帯)の、ほぼ50%になっています。 ■5.年金の受給者数:これも知られていません 公的年金の受給者総数は、男女65歳以上で、3867万人です(2013 年)。年金の受給者は、今後も、1年に100万人(2.6%)増え続け ます。 公的年金の総額(53.9兆円:2013年度実績)の増加は、1年に3〜4 %くらいでしょう。 現役で年金保険を払っている人は、6736万人です。保険料は34.3兆 円ですから、国庫から、1年に19.6兆円補填(ほてん)されていま す。 なお、この年金の積み立て残額は、154.5兆円(国民年金+厚生年 金)です(2013年3月)。 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei01/ 以下、次号(完結編)で・・・ |