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中国のバブルはいつ崩壊してもおかしくない(Imaginechina/アフロ)
「中国バブル崩壊」はいつ起きるのか 青島の融資詐欺事件でわかった、深刻な構造問題
http://toyokeizai.net/articles/-/44810
2014年08月13日 中村 繁夫 :アドバンストマテリアルジャパン代表取締役社長 東洋経済
さて、前回は2回にわたって中国とベトナムとの関係を書いてきた。(記事はこちら→「中国に負けないベトナムから何を学ぶか」「中国も白旗?ベトナムの『じらし戦法』。
http://toyokeizai.net/articles/-/42786
今回は、やはり読者の皆さんが興味のある中国経済について、私が行っているレアメタルビジネスの周辺から、気になっていることを挙げてみたい。ズバリ、中国バブルは崩壊するのか、崩壊するとしたらそれは何がきっかけで起こるのか、といったことだ。
一つのきっかけになりそうだったのが、今春の銅価格の急落だった。3月のコラムでも書いた通り(「銅価格急落で懸念される、中国バブルの崩壊」だが、もう一度簡単に振り返ってみよう。
■今春の銅暴落で意識された、中国バブル崩壊
今年の3月7日、銅の価格が一気に10%も下落、世界の取引関係者を震撼させたのはまだ記憶に新しい。すなわち、世界の中心であるLME(ロンドン金属取引所)で、銅価格が1トン7200ドルのレベルから10%も暴落した事件だ。
ここから、「中国のバブル崩壊がついに始まった」という不安が、世界の一部に広がった。経緯は「上海超日太陽能科技」という企業が、中国初のデフォルト(債務不履行)を起こしたことだ。これで一部の市場関係者は「中国のバブルが弾ける」とパニックになり、LME市場が反応したのだ。
中国当局がどう動くかが大きな注目を集めたが、3月13日の全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)閉幕後、李克強首相はこの事件に関連して「今後は国家として破産企業を救済しない」とも取れるコメントを残した。要は、当局がこのときの「銅の暴落」を容認することで、市場は中国経済が岐路に立っていることを認識して、市場に織り込み始めたとみるべきだ。つまり、いくら「一党独裁の強大な国家権力でも、バブルの崩壊を止めることはできない」とのサインを、世界が認識したのだ。
この後、今度は4月以降になって、中国向けの銅や鉄鉱石の輸入にブレーキがかかるなか、山東省の青島港で、銅やアルミが担保として二重に設定されていた「不正融資問題」が発覚した。もちろん、LME市場では、この不正担保による中国の事件を悲観的に見た。銅は中国では、さまざまな取引の担保としても使われている。
そのため、当初は銅市場だけではなく、中国の金融問題が深刻な状況に陥るのでないかとも考えた。ところが、大方の予想に反して、その後の銅市場は、1トン当たり6500ドルの底値から7000ドルレベルまで順調に?回復してきている。今回はこの不可解な中国だから、起こるべくして起こった不正融資詐欺事件に踏み込みつつ、今後の相場の行く末を占ってみたい。
■青島の「融資詐欺事件」の根っこにあるもの
青島港で起きた、銅やアルミの二重担保の詐欺事件は日本では考えられない不祥事だ。だが、中国では時々起こりえる手口なのである。どういうことか。中国の輸入業者の中には、取引をする際、銀行から一定の期間、低利融資を受けている場合があるが、(この場合、不正に偽造した倉庫や船会社からの預かり証を利用することが多い)、取引先への支払いを実行する時までに途中何があっても、最終的にカネを金融機関に返済をすれば、「別に問題は起こらない」と安易に考えている輩が少なくない、ということだ。
こういう業者は何をするか。少し専門的な用語を使えば、銀行からの信用状の発行を受けながら、取引先への支払いを後払いにして、銅やアルミの「輸入玉」を青島港の保税区に保管し、偽造した「預かり証」をベースに、何度も低利融資をしてもらう。この作業を繰り返すのである。いわば「打ち出の小槌」を振れば、いくらでも低金利融資による資金を生み出すことができるというわけだ。
そして、理財商品や短期で値上がりが期待できる不動産などの利益の高い金融商品で運営すれば信用状の期限までの資金運用はいくらでも可能だという仕掛けである。ぶっちゃけた話、信用状の期限を3か月に設定すればその間の借入金を理財商品などで有利に運用してチャリンチャリンと儲けが入ってくる、美味い話である。
一方、金を貸した銀行側からすると、一応担保を預かっていることになるので、2%前後(米ドル)の低金利で貸し付けても不安はない。この2%前後で借りた運用資金を「年利10%程度の理財商品」で運用して、差額の8%が利益になるという単純な儲け話なのだ。
■高をくくっている業者
業者に言わせれば、「詐欺になる要素」の部分は、「預かり証を偽造しただけ」で、もし、公安当局の調査で捕まっても、経済犯罪としては大した罪にならないと高をくくっている。だから、同様の犯罪はいくらでも起こるわけだ。早い話が、捕まりそうになったら3か月以内に借入金を返済して、偽造した預かり証を破棄すれば手仕舞いができる、という寸法である。
この事件の背景には、「バブルによるカネ余りが起きているのだが、今は不動産が高止まりするどころか、下落し始め、誰も資金の借り手がいない。だから金融機関も、すべて判っていて貸し付けている」という見方もあるのだ。実体面では、すでに不動産は下落しているから、今後は不良資産になりそうな不動産を売って、商品相場の方で資金を運用した方が、よほど安全だと見る金融筋もいるということだ。それゆえ、偽担保とわかっていても、「数カ月だけでも借りてくれるなら問題はない」と安易に考えているのが、現場での一つの感覚である。
事件が注目された6月以降になると、さすがに多くの金融筋も「二重担保のリスク」に「気がついた」(実際は前からわかっていたが、ようやくわかったという形にした)ので、当然融資は差止めにした。一方、含み益を貯め込んでいる「確信犯」の連中にとっては、別に困ったことではない。公安当局に賄賂を渡しながら、問題を軟着陸もしくは先送りさせたというのが、消息通の見方である。
もちろん、さすがにメンツもかかっているため、中国の銀行監査当局は、真剣にこの事件を問題視した。彼らは4月以降の銀行融資の調査に入ったが、商品担保融資の中心は欧米大手銀行であり、調査に協力すると云いながら実態面では融資残高などをディスクローズしたという情報は聞いていない。
中国経済の先行きが不透明な中で、中国発のデフォルト(債務不履行)が本格的な取り付け騒ぎにならないようにソフトランディングを目指している金融当局にとっても、面子問題にもなりかねないから痛し痒しである。
だから、筆者はこの3か月ほどで多重担保の預かり証問題は大方、消滅したと見ている。中国政府としても地方政府で発生したデフォルト(債務不履行)は9省で今年3月末までの返済期限が到来した借金のうち大半を借り換えなどで先送りしたようだ。
6月末の中国の審計署(会計検査院)の調査によると、偽装された金取引の担保に944億元(152億ドル)の銀行融資を受けていた実態の報告書が最近出された。当局は、特に問題となっている青島港の金属担保融資の詐欺容疑を重く捉えており、全国的に取り締りの強化が加速している。
中国の銅の消費量は今や世界の4割を占めている。そのボリュームの多さがこうしたマネーゲームを支えていたわけだが、今や中国経済が急速に冷え込む中で、不正担保で元とドルの為替差を利用したマネーゲームは、終焉を迎えつつある。
■マネーゲームは続かない
資源輸入が急減しているだけではない。今や各地の銅在庫がアセアンのLME倉庫に移されつつある。そして、多重担保の事件の余波で調査がさらに厳しくなったことから、融資獲得が困難になり、業者は保税倉庫に眠っている銅在庫を放出し始めた。
一方、鉄鋼の余剰在庫も、依然かなりの数量にのぼるといわれている。現在の鉄鋼生産能力は日本の鉄鋼生産量の約10倍ともいわれるが、生産過剰量は3億トンに上るとの情報もある。つまり、日本の鉄鋼生産量が約1億トンであるから、その3倍もの余剰在庫があるのだから、異常な事態といわざるを得ない。あふれ出た在庫がアジア全域の鉄鋼市場を攪乱していることから、世界経済に及ぼす影響は深刻度を増している。
金属資源の価値も、最終的には需要と供給のバランスで決定されるのは当然のことだ。だが、資源国である中国は、国内秩序を整備せずに自由経済を地方政府に押し付けているので、一見、数字上は一過性の経済発展を遂げているようにみえる。
だが、結局、経済の歪みやたわみが社会全体に蓄積して、自らの経済発展すらも台無しにしているという見方もできる。非鉄相場にしても、鉄鋼相場にしても、巨龍中国の動向に一喜一憂する状況が簡単に解消されることはない。だが、大きな流れではダウントレンドであることは間違いないので、今後の相場は、十二分の注意が必要だ。
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