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パナソニック「10兆円計画」、3度目の正直で成長局面入るか?津賀社長の自信の真価
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140813-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 8月13日(水)3時0分配信
パナソニックが7月31日に発表した15年3月期第1四半期(14年4-6月)連結決算は、売上高が前期比1.5%増の1兆8523億円、営業利益が同28.2%増の823億円、最終利益が同64.8%減の379億円だった。
売上高では、プラズマパネルからの撤退でテレビ事業が減収となったものの、中国のエアコン販売回復、トルコの配線器具メーカー・ヴィコの新規連結、カーナビと電池事業の売り上げ拡大などが増収に寄与した。営業利益では、増益分181億円のうち約60%が家電事業の改善によるものだった。プラズマパネル撤退でテレビ事業が2四半期ぶりに営業黒字に転換したほか、中国での在庫増で苦戦していたエアコン事業の採算改善、構造改革による固定費圧縮などが営業増益に寄与した。一方、最終利益では、前期は企業年金制度変更の一時金798億円により過去最高益を記録したが、今回はこうした営業外収益計上要素がなかったため大幅減益となった。
第1四半期の結果がほぼ計画通りだったため、売上高7兆7500億円、営業利益3100億円、最終利益1400億円達成を目指す14年度通期業績予想は据え置いた。
記者発表した河井英明CFO(最高財務責任者)は「構造改革の進捗で経営体質が着実に強靭化している。売り上げ増が利益増に直結する構造になってきた」と、構造改革の成果に胸を張った。
この好業績を受け、株式市場関係者たちの間で再び脚光を浴びているのが、通称「10兆円計画」の成否だ。
●使い果たした「津賀改革」の成果
「創業100周年を迎える18年度に、因縁の売上高10兆円をぜひ達成したい」。津賀一宏社長が胸に秘めていた計画をおもむろに語り出したのは、同社が今年3月に開催した14年度事業方針発表会の席上だった。
津賀社長は過去2回、同社が売上高10兆円に挑戦しては失敗した経緯を踏まえ、3度目の挑戦をする理由を「過去2回挑戦した売上高10兆円に失敗したのは、売れば利益が落ちる事業、伸びる事業、縮む事業などが混在していたからだ。だがこの2年間の構造改革を通じ、売り上げが伸びれば利益が伸びる構造へ変わってきた。また、何をやれば利益が伸び、何をやれば赤字になるのかも明確になってきた」と説明。そして「何度も挑戦してはじき返されてきたが、創業100周年の折り目に、私の手で当社の悲願を達成したい」と意気込んだ。
津賀社長が示した10兆円計画の骨子は、次のようなものだった。
同社はすでに、18年度の数値目標として家電事業2兆円、住宅事業2兆円、車載関連事業2兆円と、主力3事業で6兆円の売り上げ目標を示していた。津賀社長はこれらに「住宅・車載以外の法人向け事業」として、車載以外のデバイスで1兆5000億円、BtoBソリューションで2兆5000億円の売り上げ目標を追加。「これで10兆円を達成できる」との見通しを示したのだ。
業界関係者は津賀社長の口から突如出てきた10兆円計画について「約2年間に及ぶ構造改革で黒字転換を果たした今、事業ベースでの再成長が急務になってきたからだ」と指摘、次のように説明する。
14年3月期の連結決算は売上高7兆7365億円、営業利益3051億円、最終利益1204億円で、津賀社長は自らの手で3期ぶりに黒字回復を果たした。それは売り上げ規模より利益追求に重きを置き、赤字事業を次々と整理してきた成果といえる。49の事業部でスタートした中期計画の1年目にして、光ピックアップやプラズマパネルなど6事業からの撤退を決め、ヘルスケアなど事業売却も進めてきた。
前期比約4000億円の増収に見える売上高は円安効果によるもので、この為替要因を除けば、実際は前期比約4%の減収になっている。つまりl事業規模は構造改革で縮小している。営業利益の増益分約1400億円も子細に見ると、売上高減少による利益低下を固定費圧縮の約1000億円(リストラ分400億円を含む)と、役員報酬や給与の削減など約500億円のリストラで補い、営業利益を押し上げた構図になっている。
その結果、津賀社長が評価する構造改革の成果は14年3月期に使い果たしてしまった。それは15年3月期の通期予想について、売上高7兆7500億円(前期比横ばい)、営業利益3100億円(同2%増)、最終利益1400億円(同16%増)の「実質現状維持」としか示せなかった事実からもうかがえる。
そこで「リストラ頼みではない津賀改革」を投資家に示すため、構造改革後の成長戦略が必要になってきた。「そのために打ち出したのが10兆円計画だ」(業界関係者)という。
●「パナソニック化」で失った「松下の嗅覚」
では10兆円計画の成算は、どの程度あるのだろうか。
電機業界担当の証券アナリストは「達成にはM&Aなど大型投資が欠かせない」と指摘する。構造改革のネタを使い果たした今、なんらかの大型投資をしないと、あと3〜4年で4兆円もの売り上げ積み増しは無理との見方だ。これについては、津賀社長も「売上高を伸ばすためには、従来と異なる非連続な成長が必要。売り上げ拡大に的を絞った施策も今後は積極的に行いたい」と、14年3月期決算発表時の記者会見で述べており、すでに腹案がある様子だ。
また、機関投資家は、住宅・車載以外の法人向け事業やBtoBソリューションで4兆円の売り上げ積み増しを図ろうとの計画に対し「この分野は電機、住宅など関連業界各社も売り上げ拡大を狙ってしのぎを削っている激戦区。法人向け事業は顧客の値下げ圧力も強く、営業利益率は低い。経営陣が主体的に取り組めるリストラとはわけが違う」と、強い懸念を示している。
一方、業界関係者は「営業力が衰えた今のパナソニックに、10兆円計画は絵に描いた餅」と次のように説明する。
パナソニックに社名変更前のかつての松下電器は、技術力や商品力もさることながら、それを駆使して儲ける嗅覚に優れていた。換言すれば「松下の強さとは営業力」にほかならなかった。その会社が巨大化し、組織が官僚化するにつれ、営業が市場調査データなどに頼る「マーケティング営業」になり、「どうすれば儲かるかの嗅覚」を失っていった。この嗅覚喪失が「聖域なき構造改革」に取り組んだ「中村改革」失敗の根本的原因だった。同関係者は「津賀さんは資質のあるトップなので、ぜひ『幹再生の処方箋』を描いてほしい」と注文を付けている。
このまま10兆円計画を遮二無二推し進めるのか、営業力再生で新しい成長を目指すのか、津賀改革の今後に、市場関係者の関心がかつてなく高まっているようだ。
福井晋/フリーライター
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