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USJと大阪市、壮絶な法廷バトル 市から借りる土地めぐり泥沼化、橋下市長は面会拒否
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140813-00010002-bjournal-ent
Business Journal 8月13日(水)3時0分配信
テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)が絶好調だという。7月31日付毎日新聞記事『<USJ>入場者数、7月では過去最多に ハリポタ好調』によれば、USJの運営会社は31日、7月の入場者数が87万人程度の見込みとなり、7月としては2001年の開業以来、最多になると発表した。
多くの入場者のお目当ては、7月15日にオープンした新エリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」。『ハリー・ポッター』(J・K・ローリング)は、全世界でシリーズ累計4億部以上の売り上げを誇る児童文学の傑作で、映画シリーズも大ヒットした。「ウィザーディング〜」は、その世界を再現したもので、投資額は約450億円に上る。
この新エリアの企画者、森岡毅チーフ・マーケティング・オフィサーは、「新エリアの滑り出しは順調だ」と話している。新エリア開業後は特に遠方からの客が多く、前年の2倍以上に達した。従来は3〜4割だった関西圏以外からの客は6割に達し、比率が逆転。外国人旅行客も大幅に増えている。売上高も7月としては過去最高。グッズの売り上げも好調で、品薄のため個数制限をする日もあるという。
●橋下大阪市長「USJと信頼関係ない」
しかし、USJが所在する大阪が、もろ手をあげて喜んでいるわけでもなさそうだ。
橋下徹大阪市長は7月7日、市と大阪府が大阪湾の人工島「夢洲」を誘致候補地としているカジノを中心とする統合型リゾート(IR)事業に関し、USJが参入の意欲を示していることに対し、「僕はUSJの経営者と信頼関係はない。任期中はUSJと信頼関係を築けない。だから、ほかの業者にやってもらいたい」と語り、参入に否定的な考えを示したという(7月7日付朝日新聞デジタル記事『橋下市長、USJのカジノ参入を拒否 「信頼関係ない」』)。
いったいなぜか。実は、USJの土地の60%は大阪市から借りているのだが、この土地代をめぐり、現在、大阪市とUFJの間で裁判となっているのだ(残りの40%は民間企業複数社)。
「これまで大阪市は月388円/平米(以下同)で貸していましたが、その他の土地は民間企業から平均516円で借りている。大阪市の土地も民間地権者の並みの賃料(516円)に増額するように要求。この増額をのめば、3億1000万円ほど賃料が増えることになると、拒否したUSJとの間で10年に大阪簡易裁判所で調停を行いましたが不成立。11年1月に増額確認の裁判となった次第です」(経済ジャーナリスト)
USJ側は「国際集客都市を目指す中核施設としての役割」を担い、観光客年間800万人、雇用創出数千人を生み出すなど大阪経済の活性化に多大な貢献をしている。そもそも、最大限のサポートを約束し、誘致をしたのは大阪市ではないかなどと反論していた。
当時、大阪市側は平松邦夫市長だったが、橋下徹大阪府知事(11年11月より大阪市長)率いる「大阪維新の会」の主張する「大阪府と大阪市を統合・再編する大阪都構想」の勢いが強まっており、財政赤字の削減を迫られていたために、それまでは誘致以来、友好関係だったUSJに対しても、シビアな要求をするようになったのだ。ちなみにUSJは大阪市が22%を出資する第三セクターだったが、09年5月の経営陣買収(MBO)に応じて株式を売却している。
●大阪市とUSJの確執
その後どうなったのか。裁判記録を追ってみると、USJと大阪市が「信頼関係を築けない」壮絶なバトルが見えてきた。
まず、確認したいことは、現在のUSJは大阪市とは土地の貸借関係があるにすぎないということだ。かつては経営にも関わっていた大阪市だが、今は完全に手を引いている。USJを運営するユー・エス・ジェイの主要株主、クレインホールディングスの親会社は世界最大級の投資銀行・ゴールドマンサックス。そして、ユー・エス・ジェイの現在の社長であるグレン・ガンペルは弁護士資格を持つプロの交渉人、タフネゴシエーターとされている人物だということだ。単なるテーマパークの運営というわけでもなさそうなビジネスライクさが感じられる。
確かに、USJ側も巧みだ。民間地権者とは価格交渉の末に平均516円の賃料にしており、誘致の主体となった大阪市とは前提条件がまったく異なると反論した上に、大阪市側の「388円を516円に」という増額確認に対し、11年時点では新規賃料は相場が下がっており、逆に「388円を372円に」すべきという減額確認訴訟を反訴したのだ。また、12年には和解へのきっかけとなる市長・社長面談を持ちかける手も使っているが、前年に就任したばかりの橋下市長は面談を拒否している。
裁判自体は、2人の不動産鑑定士がそれぞれ妥当額を「520円」「442円」と鑑定し、その根拠の疑義をめぐる応酬が続いている。
●大阪市が再度提訴
さらに興味深いのは、今年に入って、再び大阪市側がUSJ側に対し、増額確認訴訟を起こしていることだ。主要な貸借地に関しては「3年ごとに賃料を見直す」という合意の下、13年4月以降は「516円が581円に」上がったとして、さらなる増額請求を行ったのだ。
これにUSJ側は猛反発している。「訴訟の最終局面にかかわらず」、現在争っている516円を前提として581円への増額請求をするのは、「訴訟物の同一性を理由とする民訴法142条違反」ではないか。また民事調停法24条の2の要請する調停前置主義を無視したことに対し、裁判所にこの手続きの進行停止を求めている。
一方、大阪市側は「双方の主張が4年間にわたり厳しく対立している状況」で、「本件について、調停に付されても調停成立の見込みがまったくないことは明らかであるので」と例外的ケースであることを強調する。
交渉は、より高いハードルを出して譲歩を引き出す――橋下流の交渉術が、ここでも発揮されているというべきだろうか。今後はUSJ側のガンペル社長がどういった手を出すのかが注目されるところだ。最近、USJの福岡や沖縄への進出話も浮上してきているが、切り札の1つなのかもしれない。
これだけでも下手なアトラクションよりも断然面白いタフネゴシエーター同士のバトルなのだが、さらに興味深いのは大阪市が貸しているUSJのエリアは、その多くが駐車場と「ウィザーディング〜」が位置していることだ。
つまり賃料係争中の土地の上にホグワーツ城やホグズミード村があるのだ。200分待ち(8月上旬時点)ともなっているハリー・ポッターのアトラクションに並ぶ際には、こういったことにも思いを馳せてみるのはどうだろうか。
松井克明/CFP
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