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消費税増税後の勤労者収入と消費
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20140808/ecn1408080830002-n1.htm
2014.08.08
重大案件に関わって名を惜しむ研究者というものは、人生のすべてを賭けてまで見解を述べるものだと、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井芳樹副センター長の自殺を聞いて、強い衝撃を受けた。と同時に、高橋洋一嘉悦大学教授が「ポチ」と呼ぶ御用経済学者たちと比べたくなった。今年4月から消費税増税に踏み切っても景気は心配ないとし、財務官僚にすり寄るポチたちとはだれか。
昨年8月末に、「有識者」たちによる消費税増税の是非を問う政府の「集中点検会合」が開かれた。企業経営者や消費者団体代表なども意見を陳述したが、最も安倍晋三首相による最終判断に影響したのは経済学者、エコノミストによる見解である。当時の報道によると、数人の学者、エコノミストが景気への悪影響やデフレ圧力の高まりを懸念して増税に慎重、または反対論を唱えた。
ロイター通信によれば、これに対し、伊藤隆敏・東京大学教授は消費増税に伴う景気の落ち込みは「軽微」とし、「増税とデフレ脱却は両立する」と反論。「消費増税に伴う景気後退リスクと、見送りによって財政の信認を損なうリスクをてんびんにかければ、後者が重い」(武田洋子・三菱総合研究所チーフエコノミスト)、「政府は少しでも先送りしていると思われることをすべきでない」(吉川洋・東京大学教授)などと、景気よりも「市場の信認」を優先して予定通りの増税を主張した。増税=税の増収=財政再建という論理である。
本田悦朗静岡県立大学教授は財政再建や市場の信認のためには「消費増税よりも、名目国内総生産(GDP)を上げることが重要だ」と正論を述べた。税収が経済成長率の3〜4倍で伸びる「弾性値」を重視したわけだが、土居丈朗慶大教授が弾性値は1・1程度という財務官僚の側に立って反論した。実際の弾性値は2007年当時の内閣府の試算でも4%以上という分析があるし、13年度までの数年間の実績値も3〜4%と出ている。
増税に伴う景気への影響はどうか。グラフにある通り、4月以降の勤労者の家計の消費支出は前年同期に比べて5月まで激減、6月に少し持ち直したかのように見えるが、実収入は大幅に減ったままだし、7月以降もマイナスの水準が続くのは確実だ。増税後の落ち込みは「想定内」で、夏場以降に消費は持ち直すという御用学者や日経新聞の楽観論が実現するのはもはや奇跡に近い。
企業在庫はすでに増え始めている。生産は今後減り、雇用にも悪影響が出てこよう。景気の悪化は消費税以外の所得税や法人税などの税収を大きく減らすので、消費税の増収分は帳消しになるどころか、財政収支悪化につながるという、1997年度増税後の二の舞いになりかねない。市場の信頼どころではなくなる。
御用学者たちよ、納税者が負担した税金を通じて補助される研究者として、少しは恥を知ったらどうかね。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
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