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ベネッセ流出事件、原田社長の経営改革に追い風?高まる求心力、躊躇なく組織に大なた
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140806-00010001-bjournal-bus_all#!bwHIiM
Business Journal 8月6日(水)3時0分配信
今年に入り、大手日本企業の経営トップに外資系企業で実績を残してきた経営者が就任するケースが目立ってきています。記憶に新しいのが、元アップルコンピュータ(現アップルジャパン)社長や日本マクドナルドホールディングス(HD)会長(現職)を歴任し、6月にベネッセホールディングス会長兼社長へ就任した原田泳幸氏の例です。
原田氏はベネッセに着任した直後の7月、会員の個人情報大量流出事件発覚という経営危機に直面。若手経営者なら買ってでもするべき「修羅場くぐり」が原田氏に襲いかかりました。
しかし筆者は、この事件をきっかけとして原田氏はベネッセで強固なリーダーシップを確立すると見ています。転任経営者としてはむしろ「災い転じて好機と成す」を果たすのではないでしょうか。
●原田社長の下で強まる結束
そう考えられる理由としては、まずベネッセにとって未曾有の大危機が到来したわけですから、新社長の下での結束へのベクトルが大いに強まります。軍事紛争を抱えた時、その国の大統領への信認度が大きく高まるのと同じです。今回の事件がなければどれだけの時間とエネルギーを要したかわからないほどの求心力が、原田氏に集結したはずです。
次に、事故の責任を取って2人の経営幹部が辞表を出しました。原田氏自身は本事件が起こった後の就任ということで無傷で済むでしょう。逆に言えば、自分以外の幹部はすべて責任追及できる事態となり、幹部の出処進退について全権を把握したわけです。そしてそれをいつ行使しても誰にもとがめられず、反論されない、こんなに強い立場の経営者は通常、創業オーナー社長しかいません。
原田氏は思うように組織の再編成に大なたを振るえる、むしろ改革を断行することを求められる事態となったわけです。筆者自身、いくつもの会社に新社長として就任してきましたが、外部から登用された経営者が現在原田氏の置かれているような立場を確保するためには、とてつもないエネルギーを要しました。図らずも原田氏は、そのような立場に「立たされた」のです。
さらに、今年度から来年度にかけてベネッセの業績が悪化したとしても、今回の事故の影響度が必ず加味されます。業績責任の追及が減免されるような新社長というのは、通常ではあまり存在しません。
今回の事件をきっかけとしてベネッセが倒産するような事態は想定できないでしょう。とすれば事態が収束した暁には、原田氏は危機を乗り切った経営者としてベネッセ内で盤石の基盤を築くことができます。
●アップル社長として辣腕
実は今年の年初、筆者が主宰する「経営者ブートキャンプ」で特別講義の依頼を原田氏にしていました。昨年8月に原田氏は日本マクドナルドHD傘下の事業会社、日本マクドナルド社長を退任していたため、時間的に余裕ができたのではないかと拝察したからです。その後、原田氏はベネッセに招聘されることが発表され、当面「99%のエネルギーはベネッセに費やす」と公言。その依頼は無期延期となってしまいました。
原田氏はいうまでもなく、アップルコンピュータ社長から日本マクドナルドの社長へ華麗な転身を遂げ、「from Mac to Mac」といわれた名経営者です。アップルにはマーケティング部長として入社し(1990年)、97年に社長に就任しています。
原田氏がアップル社長時代に辣腕を振るったのは、数百社に上っていた取引先を数社の代理店に集約させたこと、そしてiPodとiPadの拡販に成功したことが挙げられます。両方の施策とも、原田氏がマーケティング畑の経験により着目して実践したものです。筆者もマーケティング畑出身の経営者だったのでよく理解できるのですが、限られた人数の社員で多数の顧客(アカウント)と直接取引しようとすると無理が出るものです。
●マクドナルドの営業利益を10倍に
そんな原田氏のマクドナルドへの転身は04年のことでした。IT業界からファーストフード業界へ、「from Digital to Stomach」という大転身でした。両社はまったく異なる業態・業種ということで世間的にはその転身を危惧する見方も多かったのですが、原田氏はマクドナルドの業績を大きく伸張させてしまいました。
原田氏の就任までマクドナルドの既存店売り上げは7年連続でマイナスでしたが、着任から8年連続の増収を達成し、11年度の営業利益は281億円に達したのです。その額は、原田氏着任直前の03年度の約10倍にも上りました。
既存店売り上げが増収を続けた裏側には、70%あった直営店比率をこの期間に30%にまで下げるという戦略的な着手と実践がありました。そしていずれにせよ、改革に対して強力なリーダーシップを発揮したことは間違いありません。原田氏自身が「自分は雇われ社長としては世界でも有数」(「月刊BOSS」<経営塾/2014年5月号>より)と自負を公言しています。
そんな原田氏が、今度は一転して創業2代目福武總一郎氏が大株主に名を連ねる、実質的なオーナー企業であるベネッセのトップに転身しました。原田氏のスカウトを果たした福武氏は、会長職から最高顧問へ退きましたが、次回は、原田氏がベネッセ再建を進めていく上で想定される懸念点を考察します。
山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
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