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老人ホーム大手のサニーライフ、元幹部が提訴 社長の独断による解雇常態化が露呈
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140805-00010004-bjournal-bus_all#!bvDq3a
Business Journal 8月5日(火)3時0分配信
テレビやラジオのCMで有名な大手有料老人ホーム・サニーライフを運営する川島コーポレーション。同社の元社員が、理不尽に解雇されたと訴えている裁判があり、先日、会社が社員に解決金1000万円を支払うという条件で和解に至った。この裁判の過程では、同社の社長による独裁体質が浮き彫りになった。
裁判資料によれば、原告の日野人志氏(仮名)は、東京都内の私立大学を卒業後、地方銀行、大手国内証券、外資大手証券などを経て川島コーポレーションに入社し、2004年夏から約1年、本社の君津市で営業本部長として勤務をしていたが、自宅から遠いことを理由に退職。その後、小売量販店大手グループなどを経て、12年8月に再び川島コーポレーションに入社し、東京都中央区銀座にあるサニーライフ東京事務所に幹部社員として勤務した。肩書は統括副本部長、仕事内容は人事労務管理担当、年俸は800万円だった。
ちなみに川島コーポレーションは、川島輝雄社長が一代で築き上げた企業。専務取締役は川島正代、常務取締役は川島大倫、監査役は川島裕子と、役員は親族で固めている。その下に、親族以外で唯一の取締役、宮尾三郎氏がいて、現場を仕切っている。
日野氏が取り仕切る人事部では、数カ月の間に9人いる事務員のうち5人も辞めた。まず、大卒新人の男性A氏(仮名)が入社して間もなく、川島社長から「A氏の仕事ぶりが悪いので辞めさせるように」と日野氏に指示があり、日野氏はA氏を呼び出して辞めさせた。30代の男性B氏(仮名)は、社労士の資格を持つ優秀な人物だったが、容姿が社長の気に入らなかったようで、「2週間以内にクビにしろ」との指示を受け、日野氏はB氏を辞めさせた。
女性C氏(仮名)は、正しいと思ったことは必ず主張するタイプで、ある上司と口論になり、怒鳴りつけられて泣いて以降、その上司と険悪な関係になった。またC氏は、体の前で両手を重ねて話す癖があり、川島社長とその姿勢で話していたところ、川島社長は「上品すぎて気に入らない」とC氏を退職に追い込むように別の部下に指示し、辞めさせたという。
●経営陣との関係が悪化し、急遽解雇
このように次々と社長の一存で社員を解雇する企業風土の中で、日野氏はもっぱら切る側に回っていた。しかし、12年11月の人事会議の席で異変が起きた。日野氏と、日野氏の直属の部下である青山氏(仮名)らが、社員の冬のボーナスの評価項目の簡略化を提案。すると、従前の評価方法を考え出したのが宮尾取締役だったためか、宮尾取締役が怒り出し、会議が停滞した。結局、日野氏らの提案は採用されたが、それを機に宮尾取締役から日野氏への風当たりが急に激しくなった。
数日後、川島社長から「青山をクビにしろ」と日野氏に指示があったが、その際に日野氏は「それはもう少し待ってください」と青山氏をかばった。しかし別の日、青山氏は宮尾取締役らに呼び出され、畑違いの他部署への異動を打診された。日野氏も宮尾取締役に呼び出され、「サニーライフ柏やサニーライフ平塚御殿での収益が上がらないのは、人事がヘルパーを集めないからだ。すぐに改善しろ。2度目のチャンスはないぞ」と宣告された。
川島コーポレーションには、「イエローカード」「レッドカード」というシステムがあり、イエローカードを宣告された後、次に失敗があると即時解雇となる。そのため、日野氏は「それは、イエローカードの意味ですか?」と聞いたところ、宮尾取締役は「そうだ」と回答した。
翌日、日野氏は集めるべきヘルパーの人数と期間を確認したところ、1〜2カ月で100人程度とのことだった。短期間で100人の大量採用は事実上不可能であり、宮尾取締役が自分を退職させようとしていると日野氏は認識した。
その2日後、日野氏は千葉県君津市の本社で行われる会議に向かうため、バスに乗っている時に、青山氏に励ましのメールを送った。その翌日、日野氏は宮尾取締役らに呼び出され、青山氏へ送ったメールが転職をそそのかすものだったとして、日野氏が会社への忠誠義務に違反していると指摘。そして「自発的に退職しなければ解雇通知を出す。ただちに会社から立ち去れ」と事実上の解雇を宣告した。
後日、日野氏が解雇理由の説明を求めたところ、日野氏が勤務時間中に求職活動をした上で、他の従業員にも退職、転職を勧めていた、というものだった。
●会社を提訴、1000万円で和解
こうして有無を言わさず解雇された日野氏は13年6月17日、会社を相手取り、社員としての地位確認および慰謝料220万円などを求め、東京地方裁判所に提訴した。
この訴えに対し会社側は、日野氏が年俸800万円で、3000人いるサニーライフの介護職や事務職の給与に比べ3倍の破格待遇の幹部社員だったことから、まったく異なった解雇法理が働くと主張。本件解雇が権利濫用に当たると判断する場合には、前提として原告が被告経営者に対して十分な信頼感を与えていたことが、絶対に必要である。しかし、実際にはその信頼感がなくなったから解雇したのであって、合理的な理由があると説明した。また、社長の気分次第で社員は解雇されるという日野氏の主張を否定しつつも、イエローカードおよびレッドカードの存在は認めた。
審理が進み、判決を目前に控えた今年2月17日、急転直下で和解が成立して事件は終息した。和解内容は、(1)会社都合により日野氏が退職したことを確認する、(2)会社は本件解決金として1000万円を支払う、(3)双方は今後互いに誹謗中傷しないことを約束する、というものだった。
会社に非がなければ、このような和解内容はあり得ないので、強制解雇の実態について、「客観的に見て、原告の主張どおりだったと考えざるを得ないが、その点についての会社側の見解を教えてほしい」と川島コーポレーション本社に対して質問したところ、期日までに回答はなかった。
高齢化が進み、老人ホームのニーズが高まる中、多くの老人ホームを経営する川島コーポレーションの企業体質は無視できないところだ。
佐々木奎一/ジャーナリスト
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