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破たん後のアルゼンチン(2002年)---〔PHOTO〕gettyimages
繰り返される国家破綻危機
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39994
2014年08月03日(日) ドクターZ 週刊現代 :現代ビジネス
アルゼンチンと聞いて、真っ先にサッカーワールドカップの準優勝を思い出す人は多いだろう。経済学者だったら、100年前は世界有数の富める国だったのに、今では開発途上国に甘んじる珍しい国という印象が浮かんでくる。
『母をたずねて三千里』という名作アニメをご存じだろうか。19世紀末、イタリアに住む少年が母のいるアルゼンチンをはるばる訪ねる物語である。なぜ母がアルゼンチンにいるかといえば、当時裕福だったアルゼンチンに出稼ぎにいっていたから。つまり、当時はヨーロッパの国々よりアルゼンチンのほうが豊かであった。
アルゼンチンの100年間にわたる長期停滞は、経済学研究にとって興味深い対象だ。19世紀には開放経済で経済成長したが、20世紀には閉鎖経済だったので経済停滞したという説が有力だが、いまだに決定的なことはわかっていない。
その経済停滞の間に、民間会社のみならず、政府が何度も破綻しているのがアルゼンチン経済のまた一つの特徴である。
その国家破綻を「デフォルト」という。アルゼンチン国債を購入していた海外投資家は、その影響をモロに被る。政府が潰れて借金が返済できなくなるため、海外投資家にとっては保有しているアルゼンチン国債の元本と利息が約束通りに支払われなくなる。
国家がデフォルトするとどうなるのか。アルゼンチン政府はない袖は振れないと開き直り、民間会社が破綻した際と同様に交渉が行われる。ただし、個々の投資家とアルゼンチン政府が交渉するのではなく、「パリクラブ」といわれる各国政府とアルゼンチン政府との間の交渉になる。その結果、たとえば、元本は9割カット、利息は5年棚上げとかになる。100%でないにしても、借金のかなりの部分は棒引きされるわけだ。
アルゼンチンではこうしたデフォルトと借金棒引きが珍しいことではなく、経済が好調だった19世紀を含めて過去200年間でそうした時期が3分の1ほどある。つまり、3年間に1年はデフォルトと棒引き期間に該当してきた。
最近では、'01年のデフォルトが緊縮財政を引き起こし、その際には約7割という借金の棒引きで決着。アルゼンチン政府は残っている借金についてはこれまで約束通りに支払ってきた。
しかし、この棒引きに反対する一部のアメリカの投資家―アルゼンチンのフェルナンデス大統領は「ハゲタカ集団」と呼んでいる―がアメリカの地方裁判所に訴えて、このほど米最高裁判所はアルゼンチン政府に全額支払えという判決を下した。アルゼンチン政府が全額支払いができなければ再びのデフォルトに陥るとして、世界各国で話題になっているのである。
今回、アルゼンチン政府は、ほかの債権者である日本などに、「ハゲタカ集団」の訴えやそれを認めるアメリカの司法がおかしいと主張。日本の全国紙にも意見広告を出しており、ご覧になった方も多いだろう。
実際、「ハゲタカ集団」の要求をアルゼンチン政府が受け入れれば、7割カットで合意したほかの債権者は割を食って、「ハゲタカ集団」だけが利益を得る。「ハゲタカ集団」も裁判所もアメリカのエゴ丸出しである。
アメリカ以外の国は、アメリカがあまりに理不尽なので、結局どこかでアルゼンチン政府と妥協するだろうとみている。だから、大きな騒ぎにならないだろうと今のところ思っているが、事態の進行には注意しておいたほうがいい。
『週刊現代』2014年8月2日号より
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