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金投資と金相場ニュースBlog 〜黄金の日日〜
http://onthegoldenhill.blog.fc2.com/blog-entry-584.html
このところ日本の経済指標は悪い数字が続いています。
5月の機械受注統計は二ヶ月連続減の19.5%減と過去最大のマイナス幅でした。
6月の鉱工業生産指数速報値は96.7%で前月より3.3%下がりました。東日本大震災があった11年3月以来の下げ幅です。
円安による輸入インフレの影響もあり、6月の実質賃金は3.8%減です。
第二四半期のGDPの民間予測は平均で前期比年率7.4%減となっています。
日本の右翼保守系の人たちはこぞって景気低迷の原因をもっぱら消費増税のせにしていますが、そんな単純なものではありません。アメリカの金融関係者などが、景気失速の原因をすべて天候(OR欧州・新興国とか他国)のせいにしているのと大差ありません。
むしろ、経済、外交、国防などほぼ全ての政策判断を間違っている安倍政権で、唯一正しい判断といえるのが消費増税でした。
成長路線が不可能な状況の今の日本で、財政を持続させるために最低でも必要な消費税率は20%です。他の先進国との相対比較からしても日本の消費税率はひくすぎます。内外の資本家を利するだけの法人減税は必要性ありませんが、消費増税は資産所得への累進課税強化とともに不可避でしょう。
このように景気を低迷させている安倍政権の経済政策を、同じ右翼保守系のWSJが批判しています。
その要点は以下のとおりです。
・日本の経済的苦悩の根本的な原因は金融問題ではない
・円相場は通貨バスケットに対して2012年10月以降22%下落したが、その間、実質的な輸出量(円建ての輸出額ではない)は変わっていない。日本が輸出競争力を失った主因は円高ではない。
・米国の実質的な輸入量は2007年以来15%ほど増加しているが、その間の日本の実質的な輸出量は25%ほど減少している。韓国・中国などのライバル国が日本から市場シェアを奪っている。
・安倍がエコノミストやコメンテーターの意見を取り入れてインフレに固執した結果、より切迫した問題への取り組みが阻まれてきた
・輸入物価が上昇し、日本の一般世帯の購買力は損なわれた。高齢者の引退生活を支える貯蓄の実質的な価値も目減りしてきた。
【社説】インフレや円安に依存しすぎたアベノミクス
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304126704580056420381095704
WSJが指摘するように、円安にもかかわらず、輸出量が増えていないことが最近話題になっています。
貿易統計によると、10年を100とした輸出数量指数は6月に91.0で、前年同月に比べて1.7%下がっています。なお、輸出額でも前年同月比2.0%減と2カ月続けて前年を下回っています。
1〜6月の輸出量が10年平均より多いのは米国向けだけで、アジア向けは83.8、このうち中国向けは77.9と2割以上減っています。
その唯一拡大している米国輸出ですが、WSJが指摘するようにその輸入シェアは大きく低下しています。そのシェアを奪っているのが韓国や中国です。
Where and What Is U.S. Trading Internationally?
http://blogs.wsj.com/economics/2011/02/11/where-and-what-is-us-trading-overseas/
もっとも、中国の輸出といっても、その多くは中国に進出した先進国企業の工場からだったりします。また、日本国内の工場から輸入した部品などの半製品を中国が完成品として組み立てて、それを世界中の最終消費地に輸出していたりします。そういう点を加味した付加価値貿易の統計からすれば日本の実質的貿易シェアはまだまだ高いといえます。
ところが、安倍政権になってからこの中国とのもちつもたれつの関係が崩れ始めています。安倍外交の影響で中国への輸出が激減しています。
安倍政権は通貨安政策で輸出を増やそうとしました。
為替相場が自国通貨安になれば、輸出する製品の現地価格を下げることができ、価格面で優位に立つため輸出は増えやすいという従来の常識に沿ったものです。ところが、最終製品どころか、部品ですらこの見方が通用しなくなってきています。
例えば、ASEAN向けの自動車部品輸出量は、6月に前年同月に比べて22.3%減り、昨年5月から14カ月続けて前年割れです。円安が定着してきたころから、輸出が減り続けています。
保守右翼系のリフレ派のエコノミストや市場関係者はJカーブ効果によってタイムラグはあるが輸出量は増えるといっていましたが、いっこうに増える兆しがありません。
彼らは賃金も時間差を伴って増加すると予想していますが、同じように論理的にも実証的にも根拠が弱く、単なる願望にすぎないと思われます。彼らは、市場の期待や予想は、そうそうやすやすとは誘導することはできないという事実を受けとめる必要があります。選挙のようには簡単に大衆を煽動できるというわけにはいきません。
バイ バイ アベノミクス
http://onthegoldenhill.blog.fc2.com/blog-entry-551.html
主要国のなかでは相対的に日本の輸出量は増えているという点を指摘して、輸出数量増加への一定の円安効果があるという見解もありますが、前年同期比でみると大きく落ち込んだ反動のノイズにすぎない可能性が高く因果関係は薄いと思います。
財務省の山崎達雄国際局長(現財務官)は、「円安が日本の輸出を直接拡大させる状況にはもはやない」と発言しています。
また、米ニューヨーク連銀のエコノミストらが「エネルギー価格の上昇を背景に日本メーカーが海外現地価格を引き下げることができないため、円安にもかかわらず輸出が伸びていない」とのリポートをまとめています。
そもそも外貨建て輸出価格切り下げが行われても、グローバル化による価格競争、品質競争激化によって簡単に輸出量は増えないと思われます。
元財務官の渡辺博史・国際協力銀行(JBIC)総裁は5月以降、記者懇談会で、「日本企業の競争力が落ちており外需は伸びない」と繰り返しており、直近でも「韓国ウォン高で韓国向け部品・中間財の輸出が減少、円安による輸出増とどちら大きいか判断は難しい」(7月22日)との見解を示しています。
輸出が増えない理由について、日銀は、ASEANの回復が若干もたついたことを理由のひとつとしてあげています。
しかし、日本からASEANへ輸出量の減少が続いている間、中国からASEANへの輸出はFTAの影響もあって急増しています。
完成品で競争力を失った日本メーカーが輸出量を増やすためには中国との改善が必至です。
中国が海外に輸出する完成品用の資本財、中間財、半完成品、部品の輸出の増加が必要です。
また、部品等だけでなく、中国の富裕層をターゲットとした日本ブランドの高付加価値の完成品の輸出の増加も重要となってきます。
アメリカや欧州の消費者市場はピークアウトしていますから、今後は中国、インド等の新興国やラテンアメリカやアフリカなどの発展途上国の消費者市場が大切になります。
中国はラテンアメリカやアフリカに対して日本とは比べられないほどの資金援助をして、資本主義最後のフロンティアである発展途上国の消費市場を独占しつつあります。今更、安倍が外遊して少しぐらい金をばらまいても焼け石に水程度でしょう。
既に貿易額で大きな差が開いています。例えば、2013年の対ブラジルの貿易額で見ると、日本は150億ドルだったのに対して中国は833億ドルに達しています。
ジェフリー・サックスなどがあれだけ発展途上国への資金援助増加の必要性をうったえてきたのにもかかわらず、アメリカや日本はこれまでそのGDP規模からすると相対的に微々たる資金援助しかしてきませんでした。そのかわりに援助を増やしてきたのが中国です。
日本はアメリカにそそのかされていることもあり、大局観を見失って、中国との関係をないがしろにしています。
資源のない国土で日本人が豊かな生活をするためには、安く資源を海外から入手してそれを加工して海外に高く売る必要があります。
資源を安く入手するためには通貨の為替価値を高く保つ必要があります。目先の刹那の利益のために簡単に通貨安政策をとることは持続的かつ安定的な経済活動を阻害します。それでは今の生活水準をキープすることができなくなります。
そして、それを加工して高く売るためには、買い手、すなわち市場が必要です。
今後アメリカの消費市場は衰退します。既に日本の最大の輸出相手国はアメリカではなく中国になっています。
一方、中国は、中間所得層の増加でその消費者市場が今後、さらに拡大していきます。人口ボーナスもまだしばらくは続きますし、都市化もまだ半分しか進んでいないからです。
ボストン・コンサルティングの試算では2020年に中国の消費支出は6.2兆ドルに達するとされています。インドと合わせると10兆ドルを超え、これは現在の3倍です。このボーナス・ステージの争奪戦に、日本は安倍外交によって大きく取り残されています。
本来なら日本は中国消費市場の争奪戦に関して、他国に対して優位な位置にいました。
地理的に近いだけではありません。中国市場での日本のブランド力はかなり強力です。中国国民は、日本がアメリカに対してもっていたコンプレックスと裏返しの憧れみたいなものを持っているからです。
しかし、そのブランド力が安倍外交によるイメージダウンで低下しています。自動車やモバイル商品など人前で使うモノで日本製品を使うことは反日感情のない中国人でもひと目が気になります。また、自動車なども安心して路駐できません。
中国市場を失うことはライバルであるドイツ、韓国、アメリカ、そして中国の国内企業を利するだけになります。実際、石原慎太郎の個人的感情で始まった尖閣問題でこれらの国は中国市場での日本のシェアを奪い漁夫の利を得ています。石原慎太郎が国に与えた経済的損失は計り知れません。その黒幕にはもちろんアメリカがいます。それを陰謀論といって片付けるのは単なる思考停止でしょう。
右派が支持するアベノミクスによる円安通貨政策とか金融政策でのデフレ脱却などは間違っている以前にそもそも本質的な問題ではありません。
日本経済にとって最重要課題は、中国との関係改善です。これ以外に道はありません。
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