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米株急落、グリーンスパンの予言が的中なのか
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20140802-00037917/
2014年8月2日 7時7分 久保田 博幸 | 金融アナリスト
7月31日の米国株式市場でダウ平均は317ドル安と大幅に下落した。ナスダックも93ポイントの下落となり、S&P500種も39ポイント下落した。特に何かしらの売り材料が出たわけではない。いくつかの要因が重なり合っての下落であったと思われるが、この下落を予言した人物がいた。元FRB議長でマエストロとも呼ばれたアラン・グリーンスパンである。
グリーンスパン氏は30日に、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「株式市場はかなりの長期にわたって相当急激に回復しており、著しい調整をいずれ迎えることを想定しておく必要がある」と述べた上で、「それがどの時点になるのかは分からない」と説明したそうである。
この発言そのものが31日の株価の急落に影響を与えた可能性も否定はできないが、グリーンスパン氏の見方と同じような認識を持っていた市場参加者がいったん売りを出してきた可能性もある。グリーンスパン氏の予想はもう少し腰を据えた調整かと思われ、31日の米株の下落をもって予想が的中したとは言えないが、金融政策ではなくマーケットの見方として、グリーンスパン氏の分析は念のため意識しておく必要もあるかもしれない。
31日の米株の急落のきっかけは、欧州での株式市場の下落にあった。欧州の株式市場の下落は、欧米による対ロシア制裁により欧州経済に大きな影響が出ることも予想された上に、ポルトガルのBESが公的資本の注入を迫られるとの観測なども影響したようである。直接的な影響はさておき、アルゼンチンの債務問題をめぐる懸念も不安要因となり、中東などでの地政学的リスクも意識されていた可能性がある。
ただし、欧州の債券市場では特にリスク回避のような動きは出ておらず、ドイツの10年債利回りはほとんど居所は変わっていなかった。さらに米債をみると一時10年債利回りは一時2.60%するなど、31日の欧米の株式市場の下落はリスクオフといった動きではなかった。
ダウ平均やS&P500の最近の日足チャートをみると目先の高値をつけたあと、ここにきて少し調整売りが入っていた。31日はその動きが加速したものとの見方もできる。米雇用統計の発表を控えてはいるが、チャートはいつ崩れてもおかしくない格好であり、いったん利益確定売りに押された結果、予想以上の下げとなってしまったように思われる。
この下げがFRBの利上げが意識されてのものとの見方もあった。30日に発表された米国の4〜6月期の実質GDPは年率でプラス4.0%となり予想も上回った。FRBの利上げはかなり慎重に行うであろうとの見方も多い。30日のFOMCの声明文からも慎重姿勢は伺える。しかし、その声明文は市場が早期利上げ観測で動揺することをなるべく抑えたいがための表現との見方もできる。
10月でのテーパリング終了を宣言しているのに、利上げは意識していないはずもなく、テーパリングが可能となった段階で次のステップを視野にいれない方がむしろおかしい。半年程度の期間をおいての利上げはある程度、想定されるはずだが、市場では慎重派も多い。GDPを受けて慎重派が利上げ予想時期を前倒してきたことが、株安の一因となった可能性もありうるか。
米10年債利回りが2.60%まで上昇したことをみてもそれは伺えるが、その後押し目買いから2.56%まで戻しており、利上げ観測が強まっても米長期金利の上昇は抑制されている。実はこれ、以前の日本でもみられたことであった。
2006年3月に日銀は量的緩和政策を解除し、7月にゼロ金利政策を解除した。10年債の利回りは2006年1月に1.4%台となっていたが、日銀の量的緩和解除の可能性が高まってきたことからほぼ一貫して利回りは上昇を続けた。3月の量的緩和解除後も長期金利は上昇を続け、5月には長期金利は2.005%をつけてきたが、ここがピークとなった。7月のゼロ金利解除により再び2%近くまで10年債利回りは上昇したもののこの際には、2%には届かずに、利上げが実施されたにも関わらず、その後の長期金利はむしろ低下傾向を強めた。
米長期金利でいえば3%ラインが、2003年当時の日本の長期金利の2%ラインのような感じてある。日本とまったく同様の動きとなるとは言わないが、長期金利の決定要因として政策金利の居所が大きく影響していることも確かであり、利上げがあったとしても政策金利が大きく跳ね上がるわけではなく、その意味で長期金利も大きく跳ね上がることは考えづらい。
話がいつの間にか、長期金利となってしまったが、今回の米株の大幅下落はテクニカルな部分を含めての調整売りかと思われる。株式市場も次第に利上げを織り込むことも予想され、むしろ利上げができる環境となっていることを材料視してくることも考えられる。さらに長期金利の上昇が株価を抑えるようなことも考えづらい。グリーンスパンの予言は短期的に当たったかもしらないが、本格的な調整を迎えるまでには至らないのではないかと思われる。
久保田 博幸
金融アナリスト
フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。
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