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増税後の地方景気は 特売効果なく じわり失速
消費増税から4カ月。駆け込み需要の反動減は「想定内」との声が多く、雇用や消費の経済指標は上向き始めた。ただ、都市と地方の格差は依然大きい。北海道が地盤のアークスの横山清社長は、全国350社の食品スーパーが加盟する業界団体会長も務める。増税後の地方景気を聞いた。
――消費増税の影響をどう見ていますか。
「販売動向を見ると、6月下旬から失速している。販売減少は『想定通り』という世論が形成されているが、各地でトップシェアの中堅スーパーの経営者が『ちょっとまずいんじゃないか』とささやき始めた。特売が効かない。従来の見通しを修正する必要がある」
「大都市と比べて、地方の賃金水準は低い。景気回復に伴う賃金上昇の力はまだ弱く、世帯収入は限られている。多くの消費者が増税後、レシートを見て『あれれ、少し高いな』と思ったのではないか。財布のひもを締め始めたのが6月下旬ごろだとすれば、今後は全く楽観できない」
――都市と地方で消費動向に違いはありますか。
「高級時計の『ロレックス』が売れたといっても一部の大都市の話。地方の百貨店はアベノミクスの波に乗り切れていない。次は消費税率が10%になる予定。五輪開催に向け、物価が上昇していく東京と地方の格差はさらに広がるだろう」
――政府のインフレ目標をどう見ていますか。
「生活者には好ましい話ではない。税や社会保障の負担が膨らみ、可処分所得は減少傾向にある。消費増税もあり、節約に走るのは目に見えている」
「我々は『生活防衛隊』という立場で少しでも安く商品を供給する努力を続けていく。低価格と品ぞろえを強みにコンビニなどから消費者を奪い返す」
――スーパー業界の再編も活発になっています。
「長くオーバーストアの状態が続いている。集約に進むのが自然な流れだ。前回の消費税率引き上げがあった1997年は7月のアジア通貨危機で経済環境が一気に暗転した。不安は波及する。何か一つ引き金となる出来事が起これば、再編は急速に進む。年明けごろに加速するだろう」
「アークスとしては何が起こっても対応できるように現金を積み増して財務の安定性を高めておく」
――食品の市場が小さくなるなか、生き残るスーパーの条件は何でしょう。
「地域の食品販売で30%のシェアを確保できるかが一つの目安になる。小さくても強いエリアを持っていれば、配送効率が高まり、食品メーカーとの価格交渉も有利になる。アークスの過去の経営統合もこの考えを前提にしてきた」
よこやま・きよし 1953年に高卒で炭鉱に就職。北大水産学部を経て、60年海産物問屋に入社。61年、アークスの前身のスーパー発足と同時に転籍。85年社長。北海道出身。79歳
聞き手から一言 地方スーパー、存亡かけ競争
スーパーの既存店売上高は2013年まで17年連続で減少した。少子高齢化に伴う市場の縮小は今後も避けられず、コンビニエンスストアやドラッグストアなどとの業種を越えた競争も厳しさを増す。
横山社長は14年度を「スーパー業界、激動の1年」と予言する。人口が少しずつ減っていく中で、手をこまぬいていると、いずれ企業の存続が難しい状況にまで追い込まれるだろう。現状に甘んじることなく、厳しさを増す生存競争を生き抜く備えが各社に求められる。
(細川幸太郎)
[日経新聞7月27日朝刊P.7]
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増税後の消費減大きく
稲田義久 甲南大学教授
消費税率の引き上げから3カ月以上たった。増税のショックは想定していたより厳しくはないという見方が広がりつつあるが、本当にそうであろうか。また、7〜9月期に日本経済は増税の影響から脱することができるであろうか。CQM(超短期予測モデル)をもとに点検する。
筆者らが手がけているCQMは、日々発表される様々な月次経済指標を国民所得統計とリンクさせ、実質国内総生産(GDP)やインフレ率などがどのように変化するかを今四半期と次の四半期のみという超短期、かつ週次ベースで予測するものである。日本経済の予測頻度としては他に例はなく、月次データの変化をコンスタントに取り込むことにより、具体的な数値とトレンドを示せる特徴がある。
重視しているのは消費や投資などの指標から予測する支出サイドモデルである。生産サイドと、支出・生産両モデルの予測平均値も参考系列として公表している。
現在、4〜6月期のGDP推計に必要な基礎月次統計のほぼ3分の2が発表された。CQMはこれらに加え、4〜6月期の未発表分と7〜9月期の月次データを時系列モデルで予測し、それをGDP構成項目に変換したうえで、それぞれの実質成長率を予測している。4〜6月期の姿がだいぶみえてきた段階で、支出サイドの最新予測からGDP構成項目の動向を検討して景気を診断してみたい。
GDPは国内需要と純輸出からなり、国内需要はさらに民間需要と公的需要に分かれる。民間需要のうちシェアが最も高く重要なのは、民間最終消費支出である。メディアの最近の報道をみると「百貨店復調、消費底堅く」とか「反動減の影響が縮小」というような表現が多い。消費支出の反動減は比較的軽微であるかのような印象を与える。
注意が必要なのは、これらは前年同月と比較した話だということである。月が経過するにつれて前年比の減少幅は縮小していくが、そのことと反動減の大きさとは別物である。季節要因を取り除いたうえで駆け込み需要が発生した1〜3月期と比較して4〜6月期の水準がどう変化したのかをみることが重要である。
まず民間消費の総合的な指標である消費総合指数(季節調整値)は5月に前月比1.3%上昇し、4月の8.1%マイナスから小幅に回復した。しかし4〜5月の平均は1〜3月平均を4.9%下回る。一方、5月の家計調査の実質家計消費(同)は前月比3.1%減とマイナスが続き、4〜5月平均は1〜3月平均より9.2%低い。
4〜5月平均の消費を生産統計の出荷指数(確報値)から確認すると、耐久消費財が1〜3月平均比で7.5%、非耐久財は5.3%の幅でそれぞれ低下し、特に耐久財の反動減が大きい。
1〜3月期の実質民間最終消費支出の前期比の伸びは2.2%と前回の増税直前(1997年1〜3月期)とほぼ同じだったが、耐久消費財に限ると前回の3倍程度の上振れが起こっている。一方、サービス支出は前回よりも低い。今回は2月に大雪があり外出が控えられたという特殊事情の影響が強く表れているためである。その意味で今回は(潜在的な)駆け込み需要は前回より強めとみてよい。
これらの結果、4〜6月期の実質消費支出は前期比4.2%減と相当厳しい結果を予想している。前回の増税直後の97年4〜6月期の3.5%を上回るマイナス幅となる。
民間住宅では建設工事費予定額(居住用)を重視している。4〜5月平均の季節調整値(筆者推計)は1〜3月平均を10.6%下回る。1〜3月期は新設住宅着工の前期比10.3%減に対し、実質民間住宅は3.1%増だった。GDPは進捗ベースで計上されるため、増税前の駆け込みの反動はこれから本格化する。4〜6月期は11.7%減と大幅なマイナスを予測する。
民間企業設備を予測するうえでは、資本財出荷指数の動向が重要となる。5月の資本財指数(確報値)の4〜5月平均は1〜3月平均を7.6%下回り、大幅に低下した。ただソフトウエア投資に関連する情報サービス業の売上高は好調であるため、4〜6月期の実質民間企業設備は前期比0.5%減と小幅のマイナスを予測している。
民間需要は最終消費支出、住宅、企業設備のすべてが前期比で減少しており、大幅な落ち込みが避けられない。
公的需要はどうか。公的固定資本形成の動向をみていこう。建設総合統計では、5月の公共工事の出来高は季節調整値(筆者推計)の前月比で5.3%増と6カ月ぶりのプラスとなった。
4〜6月期の公共工事請負金額は季節調整値(同)の前期比で26.3%増と大きく伸びた。ところが建設総合統計では、5月の公共工事の未消化残高は前年同月比25.7%増と高水準が続く。請負金額の増加がただちに工事の拡大につながらないことには注意が必要である。4〜6月期の実質公的固定資本形成は前期比0.7%増とわずかにプラス寄与となった。
次は純輸出である。貿易統計(速報)によると5月の貿易収支(季節調整値)の4〜5月平均の赤字額は1〜3月平均比41.9%縮小した。4〜6月期の実質輸出は前期比0.8%増、実質輸入は同4.0%減と予測する。輸出の拡大は緩やかだが、駆け込み需要による輸入増は剥落する。実質純輸出の実質成長率に対する寄与度は前期比で0.8ポイントとなり、4四半期ぶりに成長率を引き上げる。
以上、GDPを構成する主要項目の最新予測を説明した。図が示すように、これらを総合した最新のCQMの支出サイドモデル予測では、4〜6月期の実質成長率は前期比年率でマイナス6.9%(前期比で同1.8%)となる。生産サイドモデルは同6.3%、支出・生産の平均は同6.6%である。
10日発表の市場コンセンサス(日本経済研究センターのESPフォーキャスト7月調査)の実質成長率は、マイナス4.9%。CQMの直近1カ月の予測動態はマイナス3%から7%程度へと、コンセンサスを上回るペースで下方トレンドを示している。
支出サイドのマイナス6.9%という成長率は、前回増税時の97年4〜6月期の同3.7%を上回り、東日本大震災時の同6.9%に匹敵するマイナス幅となる。反動減の厳しさは当初の想定よりも深まっているといってよい。
4〜6月期の落ち込みが厳しいほど気になるのは、7〜9月期の景気動向である。CQMの支出サイドモデルは実質成長率を前期比年率で6.2%とプラス転換を予測。4〜6月期の大幅な落ち込みからの回復である。純輸出が引き続き拡大し、内需が反転拡大するためである。補正予算執行の遅れもあり、7〜9月期に公的固定資本形成が景気を押し上げる。
生産サイドの予測は同0.8%と低く、両モデルの平均は3.5%である。一方、コンセンサス予測は同2.65%である。CQMでは4〜6月期の落ち込み幅がコンセンサスよりも大きい分、反発力が大きく出る。
しかし、7〜9月期の民間消費最終支出や民間住宅が前年同期の水準を下回るとみられる点には注意が必要である。景気の持続性という観点からは、実質所得の拡大が重要となる。加えて、前回の増税後は、秋口のアジア金融危機を契機として国内金融不安の高まりにより、景気が大きく落ち込んだ。今回も景気落ち込みのリスクは海外発となる可能性があり、十分な注視と準備が必要である。
〈ポイント〉
○耐久消費財の駆け込みの反動減が大きく
○4〜6月期実質成長率はマイナス6.9%
○7〜9月期は回復も所得や外需には注意
いなだ・よしひさ 52年生まれ。神戸大博士。専門は応用計量経済学
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