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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第86回 正しい少子化対策
http://wjn.jp/article/detail/0536799/
週刊実話 2014年8月7日 特大号
少子化問題の「正しい解決策」について語りたい。そもそも、なぜ我が国では少子化が進行しているのだろうか。
政府は少子化の原因について、
●結婚しない・できない者の割合が増加している
●結婚する時期が遅くなっている
●夫婦が持つ子どもの数が少なくなっている
の3つを挙げている。「結婚しない・できない者の割合が増加している」及び「結婚する時期が遅くなっている」は、確かにその通りである。
だが、「夫婦が持つ子どもの数が少なくなっている」については、実は正しくない。
何しろ、日本の有配偶出生率はすでに底を打ち、回復しつつあるのだ。有配偶出生率とは、有配偶女性1000人当たりの出生数になる。
我が国の有配偶出生率は、平成2年には66人だったのだが、平成22年には79.4人と、長期的には持ち直しの傾向にある(日本の有配偶者出生率は、昭和45年頃には100を超えていたのだが)。
問題はむしろ、婚姻率の劇的な低下(未婚率の上昇)である。
日本の未婚率の推移を見ると、男性の場合1970年には、「25〜29歳 46.5%」、「30〜34歳 11.7%」、「35歳〜39歳 4.7%」だったのが、2010年にはそれぞれ「71.8%」「47.3%」「35.6%」と著しく増加している。
また、女性の未婚率も1970年の「25〜29歳 18.1%」、「30〜34歳 7.2%」、「35歳〜39歳 5.8%」から、2010年に「60.3%」「34.5%」「23.1%」と、これまた大幅に増えている。
要するに、我が国の少子化の「真因」は、未婚率の上昇なのである。
政府は小手先の少子化対策ではなく、若者の婚姻率の上昇を目標に定めるべきなのだ。
若者の婚姻率を高めるには、どうしたらいいのか。
婚活に力を入れるのも結構だが、それ以前に、現代の若い世代が「所得」が少なすぎて結婚できないという、根源的な問題を解決しなければならない。
'98年のデフレ深刻化以降の日本国民の所得縮小は、婚姻率を引き下げ、少子化の主因となっている。
特に、若い世代は、働いて稼ぐ所得で生活必需品を購入するのが精一杯な状況に至っている人が少なくなく(我が国には年収200万円未満の「男性」だけで、600万人もいる)、子供をつくる以前に、結婚できない。
さらに言えば、彼、彼女らは自動車や住宅といった高額商品を、購入することが困難というよりは、不可能になってしまっている。結果、内需が伸びず、生産者の賃金も上がらない。
しかも、消費税増税という強制的な物価引き上げにより、現実の消費や住宅投資が目を覆いたくなるほどの落ち込みになってしまっているのが現在の日本なのだ。
信じがたいことに、政府は国民の(特に若年層の)実質賃金が下落している環境下で、労働規制緩和や外国移民(=外国人労働者)受け入れ拡大に動いている。
現在の日本が「賃金を引き下げる」ことが目的の政策を推進すると、少子化は悪化することはあっても、好転することはない。実質賃金が下がり、「日本人」の少子化が更に進行することになる。
しかも、例えば年間20万人の外国移民を受け入れ、出生率が引き上げられたとしても、それは「移民が多産」であるためであり、日本人が増えるわけではない。
少子化の主因に手を付けず、外国移民に頼り、人口を維持しようとすると、100年後の日本はネイティブな日本人が少数派になっているだろう。
それはもはや、日本国ではない。
2100年を超える「日本国」は、その時点で消滅したも同然になる。
それどころか、少子化による人手不足の対処として外国移民を受け入れ、所得が下がると、若者はますます結婚できなくなり、少子化が進むという悪循環に陥る。
昨今は実質どころか名目金額でみた所得ですら、下落を続けている有様なのだ。
厚生労働省が7月15日に発表した国民生活基礎調査結果によると、2012年の1世帯当たり平均所得は537万2000円と、前年比で2.0%減少した。何と、24年前の1988年の545万3000円をも下回り、データが残る'85年以降では、過去4番目の低さとなってしまったのだ。
さらに、所得金額の分布をみると、200万円以下が19.4%に達している。300万円以下の場合、32.7%。我が国の世帯の3割強が、年収300万円以下なのである。
世帯主の年齢階級別に1世帯当たり平均所得金額をみると、最も低いのが「29歳以下」の323万7000円。世帯人員1人当たり平均所得金額の場合、最も低いのがやはり「29歳以下」の169万9000円だ。
少子化を解消するためには、この層(29歳以下)の所得の押し上げが必須なのだ。
それにもかかわらず、現実の日本政府は所得が低い層の税率が相対的に高くなる(消費性向が高いため)「消費税増税」を断行し、さらに各種の労働規制の緩和や外国人移民受け入れにより、労働者の所得を抑制する方向に動こうとしている。
まずは、日本国民が安倍(晋三)政権の労働規制緩和や外国移民受け入れ策が「少子化促進策」であることを理解せねば、現状は変えられないだろう。
「日本人の少子化」を解消するためには、日本の若い世代の所得を押し上げる政策を打たねばならない。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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