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『ニューズウィーク日本版』2014−7・29に掲載の記事。
「シュール革命はかつて万能薬と歓迎されたが、実際は代替燃料の開発を後回しにする口実になったのではないか。この革命はあくまで応急処置にすぎない。時間を稼げる問に持続可能なエネルギーの開発を急ぐべきだ」という結論。
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『ニューズウィーク日本版』2014−7・29
P.21
「世界最大の産油国」
米シェール革命はバブル
国産原油ブームの陰で忘れられていたシェールオイルの致命的な弱みとは
アメリカは石油開発ブームの真っただ中にある。今月バンク・オブ・アメリカが発表した報告書によると、今年アメリカはサウジアラビアもロシアも抜いて世界最大の産油国になった。地下深いシュール(頁岩)層にある原油や天然ガスを掘削する技術が、エネルギー生産に革命を起こしたのだ。
だが革命が永遠に続くとは限らない。テキサス州のエネルギーアナリスト、アーサー・パーマンや、カナダの地球科学者デービッド・ヒューズは、これは既にバブルだと警告する。
例えば国際エネルギー機関(IEA)の予測では、カナダを含む北米の産油量は19年にピークを打ち、他の国々が追い付いてくる30年代初頭には世界一の座を譲ることになるという。
シュール革命は、エネルギー供給の予測がいかに難しいかを示す典型例だ。数年前までは、中東原油への依存がアメリカの大きな政治課題だった。ブッシュ前大統額は06年、「アメリカの石油中毒」は「世界の不安定な地域」への依存を意味すると危機感を募らせていた。当時誰が、シェール革命でアメリカが世界最大の産油国になるなどと予想しただろう。
シュール産業の将来も同様に予測は難しい。地下に膨大なシュールガスとシェールオイルが埋蔵されていることは聞達いない。だがその量を知るのは困難だ。例えば米エネルギー省は最近、カリフォルニア州モンテレーのシェールオイルの推定可採埋蔵量を140億バレルから6億バレルへ大幅に下方修正した。
原油安なら赤字に転落
埋蔵量より重要なのは採算性だ。初期投資の回収にどのくらい時間がかかるのか、リスクに見合う利益は出るのか。シュール革命が本格化した08年頃、アメリカの産油量は1946年以降で最低の水準にあった。シェールオイルを比較的安く採掘できる技術が確立される一方、原油価格が高騰して利益が期待できるようになつたのもこの頃だ。
すべては価格次第だ。シュール層の岩盤を破砕して原油やガスを取り出す「フラツキング(水圧破砕法)」という掘削技術はコストが高いので、採掘した原油・ガスが高く売れなければ利益は出ない。今の国際価格は1バレル=100ドル超だからいいが、90ドルを下回れば採算割れになるかもしれない。
原油価格下落の要因はいくらもある。アメリカとイランの関係が改善してイランの原油輸出が解禁になるとか、イラク情勢が安定するとか、あるいは中国の景気が悪くなれば世界的な原油需要も減るだろう。
価格が上がり続けたとしても、この数年維持してきた規模の生産量を続けるのは容易ではない。
在来型の油田は数十年の寿命がある。20世紀半ばに操業を開始したサウジアラビアのガワール油田は、今も日量500万バレルを産出し続けている。
アメリカはシュールの落日に備えるべきだと、パーマンやヒューズは言う。数十万の雇用が失われ、アメリカは再び中東原油と原油価格の乱高下に翻弄されることになるかもしれない。
被害を小さくする1つの方法は、燃費効率を高めること。そして太陽光発電や燃料電池などの再生可能エネルギーの開発に本腰を入れることだ。
シュール革命はかつて万能薬と歓迎されたが、実際は代替燃料の開発を後回しにする口実になったのではないか。この革命はあくまで応急処置にすぎない。時間を稼げる問に持続可能なエネルギーの開発を急ぐべきだ。
ロジャー・ハワード」
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